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2019年5月10日 (金)

大和総研による米国の対中国製品関税率25%への引き上げの影響試算やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週月曜日の5月7日に大和総研から「『米中冷戦』再開の政治経済分析」と題するリポートが明らかにされています。米中間の通商協議が決裂した際の政治力学的な解析と世界および日本経済への影響試算がなされています。前者の政治力学的な解析はやや専門外ですので、世界経済と日本経済への影響試算に限って、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、リポートから要約5点のうち世界経済・日本経済への影響試算に関する2点を引用すると以下の通りです。

[要約]
  • 【世界経済に与える影響の網羅的分析】米国の対中関税は、2,353億ドルの輸入品目に対して賦課される。追加関税総額は現行で305億ドルだが、25%へ引き上げられれば588億ドルとなる。なお、今回問題となる約2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税については、記憶装置の部品などの電子機器の部品、携帯電話を含む電話機のウェイトが大きい。大和総研のマクロモデルを用いた試算によれば、GDPの下押し効果は中国▲0.22%、米国▲0.28%、日本▲0.02%となる。
  • 【日本経済への含意】日本にとって最も懸念すべき問題は「二次的効果」だ。すなわち、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の対中輸出が顕著に減少する効果である。他方、米中冷戦が深刻化するほどに同盟関係が重要となり、米国による対日関税の引き上げリスクが後退することや、米中が関税を相互に賦課することで日本における代替生産が増加する「代替効果」は、日本経済にとって言わば「漁夫の利」となりうる点にも留意しておきたい。

まず、リポートでは、米中間の通商協議が難航している可能性が高いと指摘しつつ、決裂の可能性が高く、さらに、米中冷戦は両国間における経済のみならず安全保障や軍事・外交面も含めた覇権争いが決着するまで解決しない、と指摘し、米国は軍事的優位性を維持する上で経済力をはじめとする総合的な国力の両国間の格差の維持を必要とすることから、減税と関税が大きな意味を持つ一方で、冷戦は消耗戦であり同盟諸国による中国包囲網を必要とする、と結論しています。このあたりは、専門外の私にはよく判りませんが、そうだという気もします。

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その上で、関税引き上げの影響試算の概要を上のグラフのように試算しています。その前提は、今回の約2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税については、記憶装置の部品などの電子機器の部品、携帯電話を含む電話機のウェイトが大きく、パブリック・コメントを受けて除外された品目では、化学製品や原料プラスチック製品などの金額が大きかったとし、他にはスマートウオッチなどの消費者家電、繊維、農産品などもリストの対象から外れている、と指摘し、他方で、中国の対米報復関税は、対象品目の輸入総額1,109億ドル、追加関税総額は165億ドル、対象品目に対する平均追加関税率は14.9%と見込んでいます。そして、我が国に対する経済的影響としては、モデル上の試算は2次効果と代替効果が描写できない深刻な弱点を抱えている、と指摘しつつ、前者については、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の我が国からの対中輸出が顕著に減少するリスクがある一方で、後者については、逆に、「漁夫の利」があり得るとし、米中が関税を相互に賦課することで日本をはじめとする周辺関係国が相対的な価格競争力を向上させて代替生産が増加する可能性を指摘しています。

最後に、私の直感なんですが、このリポートでも欠けているのは、国内の企業や消費者のマインドを低下させる効果です。昨日公表された消費者態度指数でも消費者マインドは引き続き低下を続けていることが示され、米中間の貿易摩擦は企業や消費者の将来見通しを通じて内需の回復に水を差す可能性もあり得ることは忘れるべきではありません。

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