米中貿易摩擦の世界経済への影響に関する国際通貨基金(IMF)の試算結果やいかに?
明日の6月8日から福岡で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議を前に、また、6月28~29日のG20大阪サミットに向けて、6月5日付けで国際通貨基金(IMF)ラガルド専務理事によるIMFブログへの投稿 How to Help, Not Hinder Global Growth の中で、米中間の貿易摩擦による関税率引き上げの影響の試算結果が明らかにされています。基本的に、昨年2018年7月18日付けのIMFブログへのラガルド専務理事の投稿 "Shifting Tides: Policy Challenges and Opportunities for the G-20" ですでに2020年までに▲0.5%の世界経済への負のインパクト、との試算が明らかにされていますので、それに、今年2019年5月以降の最新情報を付加したアップデート版なんだろうと私は受け止めています。いずれにせよ、国際機関のリポートに着目するのはこのブログの特徴のひとつですので、グラフを引用して簡単に取り上げておきたいと思いまず。
まず、上のグラフはIMFブログから、2018年までの関税率引き上げと今年2019年5月に表明された追加の関税率引き上げに分けた分析が示され、さらに、上のパネルの積み上げ棒グラフに見られるように、直接効果とマインド効果と市場反応の3つに分けた影響としてトータルを試算しています。最近の5月に表明された関税率引き上げにより、2020年の世界GDPの▲0.3%に達する負の影響があり、その半分はビジネス・マインドと市場の反応に起因すると結論し、昨年2018年7月の試算と同じ結果ながら、2020年で世界経済の▲0.5%に上る負のインパクトがあると試算しています。この損失は4550億米ドルに相当し、南アフリカの経済規模を上回るとしています。ただ、上のパネルの積み上げ棒グラフを見る限り、目先の短期的な2019~20年の期間には中国経済への影響の方が米国より大きいようですが、長期的には大きな差はないように見えます。マインドに起因して経済への悪影響が出る可能性を指摘した点は私はとても鋭いと受け止めています。我が国についても実体経済よりもマインドが先行する可能性があると私も考えています。
次に、上のグラフはIMFブログから引用しており、政策を総動員することの重要性を主張する根拠となる試算結果が示されています。特に上のパネルでは、一番下の紺色のベースラインに対して、赤のラインは金融政策の効果を、さらに、緑のラインは金融政策に加えて財政政策を、さらに、一番上のオレンジのラインは金融政策と財政政策に加えて構造調整政策を加えて、米中間の関税率引き上げの負のインパクトは政策を総動員して相殺できる可能性を示唆しています。ラガルド専務理事のブログでは、最後を "By harnessing the "Fukuoka spirit" of openness, policymakers can help remove the stumbling blocks and set the global economy on a more durable and inclusive path." と締めくくっていますが、果たして、福岡、さらに、大阪のG20の場でどういった議論がなされるんでしょうか。我が国のリーダーシップやいかに。

最後に、目を国内の経済指標に転じると、本日、内閣府から4月の景気動向指数が公表されています。今年に入って1月統計でCI一致指数が大きく下降して、基調判断が「事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高い」とされる「下方への局面変化」に修正された上に、3月統計ではさらに「悪化」に下方修正されて注目が集まっているところ、CI先行指数は前月差▲0.5ポイント下降して95.5を、CI一致指数は+0.8ポイント上昇して101.9を、それぞれ記録しています。CI一致指数は上昇しましたが、基調判断は先月統計に続いて「悪化」に据え置かれています。CI一致指数の3か月後方移動平均はプラスに転じたんですが、まだ、プラス幅が1標準偏差に達しない、ということなんだろうと私は受け止めています。
| 固定リンク
コメント