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2019年6月10日 (月)

1-3月期GDP統計2次QEは1次QEからわずかに上方改定される!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.6%、年率では+2.2%と、1次QEからわずかに上方改定されています。2四半期連続のプラス成長で、1~3月期は前期よりも成長が加速しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期のGDP改定値、年率2.2%増に上方修正 速報は2.1%増
内閣府が10日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算では2.2%増だった。速報値(前期比0.5%増、年率2.1%増)から上方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.5%増、年率2.2%増となっており、速報値から小幅に上振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%増(速報値は0.8%増)、年率は3.4%増(同3.3%増)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.1%減(同0.1%減)、住宅投資は0.6%増(同1.1%増)、設備投資は0.3%増(同0.3%減)、公共投資は1.2%増(同1.5%増)。民間在庫の寄与度はプラス0.1%(同プラス0.1%)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.1%(同プラス0.1%)、輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.4%(同プラス0.4%)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス0.1%(同プラス0.2%)だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/1-32018/4-62018/7-92018/10-122019/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.1+0.6▲0.6+0.5+0.5+0.6
民間消費▲0.1+0.6▲0.3+0.3▲0.1▲0.1
民間住宅▲2.3▲2.0+0.8+1.4+1.1+0.6
民間設備+1.0+2.6▲2.6+2.7▲0.3+0.3
民間在庫 *(▲0.2)(▲0.0)(+0.2)(+0.1)(+0.1)(+0.1)
公的需要▲0.1▲0.1▲0.2+0.3+0.2+0.2
内需寄与度 *(▲0.2)(+0.6)(▲0.5)(+0.8)(+0.1)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.0)(▲0.1)(▲0.2)(▲0.3)(+0.4)(+0.4)
輸出+1.0+0.7▲2.0+1.2▲2.4▲2.4
輸入+0.7+1.0▲1.0+3.0▲4.7▲4.7
国内総所得 (GDI)▲0.4+0.4▲0.9+0.4+0.9+1.0
国民総所得 (GNI)▲0.5+0.7▲1.1+0.5+0.7+0.8
名目GDP▲0.2+0.3▲0.6+0.5+0.8+0.8
雇用者報酬+1.0+1.5▲0.5+0.3+0.1+0.1
GDPデフレータ+0.5▲0.1▲0.4▲0.3+0.2+0.1
内需デフレータ+0.9+0.5+0.6+0.5+0.3+0.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

photo

ということで、1~3月期GDP統計2次QEは先月の1次QEから大きな変化はありませんでした。法人企業統計などの1次統計の追加と反映を受けて、住宅投資が下方改定された一方で、設備投資が上方改定され、ほかにも細かな修正はありますが、季節調整済みの系列で見て、全体として実質GDI成長率が1次QEの前期比+0.5%、前期比年率+2.1%からわずかに、前期比+0.6%、前期比年率+2.2%と上方修正されています。内需寄与度はほぼゼロで、外需の寄与によりプラス成長を実現していますが、輸出の伸びではなく輸入の減少がGDPの増加に貢献しているわけで、その輸入の減少の背景には内需の伸び悩みがあるわけですから、内容としては望ましい姿と判断するエコノミストは少なそうな気がします。ただし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、前期比年率+2.2%の成長率予想でしたが、先週木曜日6月6日にシンクタンクによる2次QE予想を取りまとめた時点では、「1次QEから上方改定を見込んでいるのが3機関、修正なしが1機関、下方修正が4機関」で、下方修正を予想するシンクタンクも決して少なくなかったことから、1次QE公表時にも正直に書いてしまいましたが、景気後退期年はいくぶんなりともさらに和らいだと考えてよさそうです。
1次QEから大きな違いはないといいつつも、先行きまで含まて、簡単に本日公表されたGDP統計の中身をレビューしておきたいと思います。まず、GDPトータルについて考えると、昨年2018年7~9月期に天候や災害などの影響によりマイナス成長を記録し、直後の2018年10~12月期はリバウンド要因があったにもかかわらず、やや力強さに欠けるプラス成長となり、今年2019年1~3月期は輸入の減少というややトリッキーな要因によりプラス成長の結果となりました。足元の4~6月期はマイナス成長を見込むエコノミストがかなりいます。私が大雑把に見た範囲で、日本総研と 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2機関以外の大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研は軒並み4~6月期はマイナス成長と見込んでいます。しかし、7~9月期は10月からの消費税率引き上げを前にした駆け込み需要があることから、たとえ4~6月期がマイナス成長であったとしても、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルな景気後退シグナルが出る可能性は少ないと私は考えています。10月の消費増税引き上げ後の景気動向については、私には謎なんですが、政府が多彩に準備を進めているプレミアム商品券、ポイント還元などの効果など、残念ながら、私にはまだ十分判っていません。特に、ポイント還元については、政府の中小企業向けの政策措置だけでなく、事業者の独自判断によるポイントを活用した実質値引きなどもあるようですし、そもそも、何がどうなるのか、官庁エコノミストを3月いっぱいで定年退職して、それほど熱心な情報収集もしていませんので、私には総合的な実態把握もいまだにできていません。軽減税率も含めて過去に例のない政策もあって、私にはより判りにくくなっている気がします。ただ、今回の消費増税対策については、各種資料を見る限り、景気対策としては防災・減災、国土強靱化などの公共投資が過半を占めているようで、相変わらずの土建国家ぶりが示されており、不公平感の解消がどこまで図られるかにも私は注目しています。というわけで、消費増税が国内要因の中では最大のリスクなんですが、もちろん、日本経済の先行きに関して最大のリスクは海外要因であり、米中の貿易摩擦の余波による輸出不振という需要面よりも、米国の連邦準備制度理事会(FED)が金融緩和に転じて金利引き下げとなれば為替が円高に振れる可能性があり、この価格面のインパクトの方が、マインドへの影響もありますから、より大きなリスクになりそうな気がしています。日銀はどのように円高に対応するんでしょうか。量的緩和の拡大以外に何か手はあるんでしょうか。
お話をGDPトータルから需要項目別に移すと、在庫の動きがやや判りにくい気がします。判りにくいことだらけで、繰り返しになりますが、昨年2018年7~9月期の自然災害要因により売れ残りの後ろ向きの在庫が積み上がった後、2018年10~12月期から今年2019年1~3月期にかけて、3四半期連続で在庫は増え続けています。今日公表された1~3月期の2次QEでは、1次QEから小幅に下方修正されたものの、相変わらず在庫は増加しており、それはそれでGDP成長率にはプラス寄与しているわけですし、ひょっとしたら、今年2019年10月の消費増税前の駆け込み需要を当て込んだ前向きの在庫積み増しかもしれませんが、現時点では、在庫調整が進んでいない可能性も含めて、判断する材料はまだ十分ではありません。

photo

最後に、本日、内閣府から5月の景気ウォッチャーが、また、財務省から4月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.2ポイント低下の44.1を記録した一方で、先行き判断DIも▲2.8ポイント低下の45.6となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆7074億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーで、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。下は経常収支で、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。これも、色分けは凡例の通りとなっています。

広く報じられているように、金融庁が6月3日に公表した金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」において、65歳からの高齢期において「20年で約1,300 万円、30年で約2,000万円」の貯蓄の取り崩しが必要と指摘しています(p.16)。こんなふうに政府にいわれれば、老後不安から消費者のマインドはさらに冷え込んでせっせと貯蓄に励みそうな気がしますし、シルバー民主主義が今よりもっと幅を利かせる懸念もありますし、大丈夫なんだろうかと思わないでもありません。

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