そうそう逆転はならず中日に競り負ける!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
中 日 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 11 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 7 | 0 |
中日と競り合いながら敗戦でした。結果が結果だけに、つまんない試合だったんですが、最終回の粘りが明日につながることだけを期待します。
明日は藤浪投手先発を大いに期待して、
がんばれタイガース!
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中日と競り合いながら敗戦でした。結果が結果だけに、つまんない試合だったんですが、最終回の粘りが明日につながることだけを期待します。
明日は藤浪投手先発を大いに期待して、
がんばれタイガース!
本日、内閣府から7月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、7月はまたまた▲0.9ポイント低下して37.8となり、何と、10か月連続で前月を下回りました。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
7月の消費者心理、14年の増税時並み水準に悪化
内閣府が31日発表した7月の消費動向調査によると、消費者心理を示す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整済み)は前月より0.9ポイント低下して37.8となった。前月を下回るのは10カ月連続。2014年4月以来5年3カ月ぶりの低水準だった。10月の消費税率引き上げを前に、消費者の間で暮らし向き悪化への警戒感が強まっているようだ。
指数を構成する4指標は「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」で、7月は全てが前月より低下した。内閣府は「月々の給料や年金が大きく増える見通しがないなかで、身の回りの商品の値上げや増税の予定が消費者心理を悪化させたのではないか」としている。指数の下げ幅は小さいとして、消費者心理の基調判断は「弱まっている」に据え置いた。
消費者心理は14年の消費増税前より悪い水準にある。名目賃金は増加傾向にあるものの、物価上昇のペースに追いつかず、実質の賃金は伸び悩んでいるためだ。社会保障制度の持続可能性に対する不安も、若者を中心とした節約志向につながっている。
実際の消費は大型連休の効果などで、底堅く推移している。総務省が毎月発表している家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は最新の5月分まで6カ月続けて前年同月を上回った。政府は7月の月例経済報告でも、個人消費について「持ち直している」との見方を維持した。
いつもながら、包括的に取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
季節調整済の指数の前月差で見て、消費者態度指数を構成するコンポーネント4項目のすべてがマイナスを示し、そのマイナス幅の大きい順に、「耐久消費財の買い時判断」▲2.2ポイント減が特に大きな落ち込みを見せており、夏季ボーナスを手にして消費税率引き上げを控えた時期であるにもかかわらず、耐久消費財を購入しようという意欲が大きく低下しているわけです。かなり消費者マインドは深刻と私は受け止めています。加えて、「暮らし向き」▲0.5ポイント減、「雇用環境」▲0.4ポイント減、「収入の増え方」▲0.3ポイント減、となっています。消費者マインドの悪化はどこまで続くんでしょうか?
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
中 日 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 0 | 6 | 15 | 0 | |
阪 神 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | 2x | 7 | 15 | 4 |
ソラーテ選手の逆転サヨナラホームランで中日に先勝でした。インタビューで実感が感じられなかった浜地投手の初勝利もめでたい限りです。あれほど安定していたジョンソン投手が中日戦で打たれるのは困ったもんですが、今夜の試合の流れから仕方ない面もあるのかもしれません。それにしても、ソラーテ選手の2ホーマーにはびっくりでした。ただ、守備の負担を軽減するために、もっと楽なポジションを守らせ、ショートは鳥谷選手でどうでしょうか?
明日も、
がんばれタイガース!
本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも6月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲3.6%もの大きな減産を示した一方で、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.3%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント低下したものの1.61倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
6月の鉱工業生産3.6%低下 18年1月以来の下げ幅
経済産業省が30日発表した6月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比3.6%低下の101.1だった。低下は3カ月ぶりで、18年1月(4.2%低下)以来の下げ幅だった。QUICKがまとめた民間予測の中心値(1.9%低下)を下回った。経産省は生産の基調判断は「生産は一進一退」に据え置いた。
業種別では、15業種中13業種で減少した。5月の上昇を受けた反動減で自動車工業や電気・情報通信機械工業が伸び悩んだ。このほか、生産用機械工業や汎用・業務用機械工業で6月から7月へと納期ズレを起こした企業があったことも全体を押し下げた。
出荷指数は3.3%低下の100.6と3カ月ぶりに減少した。自動車工業や生産用機械工業など11業種で減少した。在庫は0.3%増の104.6だった。在庫率は2.8%増の109.4だった。
4~6月期の生産指数は前期比0.5%上昇の102.9だった。4、5月の指数の堅調な伸びが上昇に寄与した。
製造工業生産予測調査によると、7月は2.7%上昇だった。8月は0.6%の上昇を予測している。7月に実施した対韓輸出管理の強化については「大きな影響はないとみている」(経産省)という。
同予測は下振れしやすく、経産省が予測誤差を除去した先行きの試算(7月)は0.3%低下だった。
女性就業者、初の3000万人突破 6月労働力調査
総務省が30日発表した2019年6月の労働力調査によると、女性の就業者数(原数値)は3003万人と、比較可能な1953年以降で初めて3千万人を突破した。前年同月に比べて53万人増え、就業者全体の伸びの9割近くを女性が占めている。専業主婦らが新たに仕事に就くことが増えているためだ。6月の完全失業率(季節調整値)は2.3%で前月から0.1ポイント下がった。
男女合わせた就業者は6747万人。女性の就業者が全体の44.5%を占め、09年平均と比べて2.6ポイント上昇した。欧米の主要先進国の大半は40%台後半で、日本もその水準に近づきつつある。
女性の就業者を年代別にみると、65歳以上の伸びが目立ち、19年6月は359万人と09年平均と比べて145万人増えた。一方、65歳以上の女性の就業率は17.7%で、男性(34.3%)と比べて低く、引き続き増加が見込まれる。日本の人口全体の減少が続くなか、「女性」「高齢者」が働き手の不足を補う意味で存在感を増している。
女性の生産年齢人口(15~64歳)の就業率は71.3%で、前年同月に比べて1.9ポイント上昇し過去最高になった。年代別では15~24歳は50.5%と、同年代の男性を上回る。25~34歳は78.1%、35~44歳は77.8%と10年前より10ポイント以上高い。
女性の場合、30歳前後から結婚や出産を機に仕事を辞め、就業率が下がる「M字カーブ」が課題とされてきたが、解消に向かっている。政府による育児休業制度の充実などが寄与した。ただ働き方には課題が残る。女性の雇用者のうち、全体の55%がパートなど非正規だ。男性の非正規は23%で2倍以上の差がある。
働き方の違いから、女性管理職の割合が欧米と比べて低くなっている。独立行政法人の労働政策研究・研修機構によると、日本の管理職に占める女性の割合は16年時点で12.9%にとどまる。一方、米国は43.8%、フランスは32.9%だ。
日本では終身雇用と長時間労働を前提とする働き方がなお主流だ。出産や育児で休職や短時間労働が必要になる女性は昇進する際、依然として不利になりやすい。人口の減少が続くなか、安定した経済成長を保つためには働き手の多様化が欠かせない。勤務年数でなく、能力に応じて評価する仕組みづくりなど、男女を問わず働きやすい環境を整える必要がある。
6月の男女合わせた完全失業者数は前年同月比6万人減の162万人だった。新たに転職活動する人などが減ったことが影響した。一方、厚生労働省が30日発表した6月の有効求人倍率(同)は前月から0.01ポイント低下し1.61倍。低下は2カ月連続だ。正社員の有効求人倍率は1.15倍と、前月から横ばいだった
2つの統計を並べると、とても長くなってしまいました。特に、女性の雇用に関して強く注目された記事のようです。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。
まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲1.9%の減産であり、レンジでも▲2.2~▲1.3%の減産でしたから、下限を突き抜けての大きな減産であることは間違いなく、同時に、製造工業生産予測指数による先行き見通しについても、7月+2.7%、8月+0.6%の増産と見込んでいますが、製造工業生産予測指数はバイアスの大きい統計であり、予測誤差の加工を行った補正値では7月▲0.3%の減産と試算されており、6月に大きな減産を記録した後に、7月も小幅ながら2か月連続で減産となる可能性も十分あります。業種別でもっとも減産幅が大きかったのが我が国のリーディング・インダストリーである輸送機械工業であり、6月統計で前月比▲7.9%減を示し、続いて、生産用機械工業▲6.9%減、電気・情報通信機械工業▲4.7%減がマイナス寄与度の順となります。輸送機械工業以外でも、我が国の製造業をけん引する産業が並んでいるわけです。また、四半期でならせば、今年2019年1~3月期の前期比▲2.5%減からはプラスに転じ、4~6月期は+0.5%増を記録しています。来週金曜日の8月9日には内閣府から4~6月期GDP速報、いわゆる1次QEが公表される予定ですが、4~6月期はプラスの成長率と予想されるひとつの根拠であろうと私は受け止めています。もっとも、1~3月期のマイナス幅に比較して4~6月期の戻りは小さいといえます。最後に、昨日の商業販売統計を取り上げた際にも言及しましたが、本日公表の鉱工業生産指数(IIP)では輸出を含むので、国内需要だけの傾向を読み取るのは難しいんですが、それでも、少なくとも自動車には消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響は小さい、というか、駆け込み需要そのものが小さいような気がしてなりません。
続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2%台前半まで低下し、有効求人倍率も1.61倍と高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.15倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年近くに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、雇用は生産の派生需要であり、生産が鉱工業生産指数(IIP)で代理されるとすれば、基調判断は「一進一退」であり、先行き、賃金上昇に直結するかどうかはビミョーなところです。ただ、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、雇用者そのものが増加して失業者が減少したり、あるいは、雇用の中身として非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。またまた、逆接の接続詞で、しかしながら、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却にも影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。
本日、経済産業省から6月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.5%増の11兆8220億円、季節調整済み指数は前月から横ばいを記録しています。統計作成官庁である経済産業省では、小売業販売の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」と、前月までの「一進一退」から上方修正しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
6月の小売販売額、0.5%増 増税前の駆け込み需要、基調判断を上方修正
経済産業省が29日発表した6月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は大型家電の好調などを背景に、前年同月比0.5%増の11兆8220億円となった。増加は20カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。
業種別で見ると、9業種のうち5業種でプラスとなった。エアコンや洗濯機など「機械器具小売業」は消費増税前の駆け込み需要が入り、5.6%増となった。6月は気温があまり上昇せず、風邪薬など「医薬品・化粧品小売業」も2.0%増と32カ月連続で上昇した。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.3%減の1兆5977億円だった。既存店ベースでは0.5%減だった。コンビニエンスストアの販売額は1.4%増の1兆116億円で、76カ月連続の増加となった。
いつもながら、包括的に取りまとめられた記事だという気がします。次に、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。
ということで、今年2019年に入ってからの小売業販売額の季節調整済み系列の前月比を並べると、2019年1月に▲1.8%減とドカンと落ちた後、2月+0.4%増、3月+0.2%増、4月▲0.1%減、5月+0.4%増の後、本日公表の6月は前月から横ばいとなり、2月以降は緩やかな増加を見せています。ただ、6月統計では、季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比が+0.5%増ですから、先々週7月16日公表の消費者物価指数(CPI)の6月ヘッドライン上昇率の+0.7%に及びませんでしたので、ウェイト構成が違うとはいえ、直感的にはCPIでデフレートした実質の小売業販売額≅消費は前年比でマイナスだった、という結論も出て来そうです。季節調整済み系列の前月比が横ばいというのは、前月統計が10連休のゴールデンウィークで通常よりも上振れていると考えるべきですから、まったく悲観するには当たりません。それから、私は長らく公務員をしていましたので、夏季ボーナスは6月30日と決まっていて、ボーナス支給は6月の消費支出には間に合いませんでしたが、7月の小売業販売額≅消費は、ほとんどの場合、ボーナス支給後でしょうから、来月統計を見てみたい気がします。
また、引用した記事には家電などを含む機械器具小売業の販売額がプラスとなっていることから、エアコンや洗濯機などについて10月1日の消費税率引き上げを前にした駆け込み需要が始まっているような報道ぶりです。ただし、家電と並んでもうひとつの大型耐久消費財の代表として自動車小売業の販売額を見ると、前年同月比で▲0.6%減でした。自販連の普通乗用車と小型乗用車の合計販売台数で見ても6月は前年同月比▲1.8%減でしたから、台数ベースでも金額ベースでも前年比マイナスを記録しています。ですから、もちろん、業種や品目別に見ていっせいに駆け込み需要が始まるわけでもないんでしょうが、政府の政策として駆け込み需要やその後の反動減をならす政策としてポイント還元などが準備されており、また、今回2019年の引き上げ幅が2014年よりも小さいこともあり、直感的には、駆け込み需要は小さい印象を私は持っています。ただし、繰り返しになりますが、夏季ボーナスを手にした消費者が7月にどのような消費行動を取っているかについては注視したいと思います。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 4 | 11 | 2 | |
読 売 | 7 | 0 | 2 | 2 | 0 | 4 | 0 | 1 | x | 16 | 16 | 1 |
今日は、捨てゲームで大敗でした。初回に7失点した岩田投手を続投させ、中継ぎ投手陣への負担を軽減した点がよかったかもしれません。
甲子園に戻っての中日戦は、
がんばれタイガース!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | 十 | 十一 | R | H | E | ||
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 6 | 0 | |
読 売 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 11 | 0 |
もう8月も近づいて土日もナイターだと勝手に思い込んで、まったく試合は見ていませんが、大山選手の決勝打で延長戦を制して巨人に連勝でした。相変わらず、先発西投手には援護がないんですが、序盤でポロポロ失点していては、やや同情心も割り引かれてしまいます。昨夜も同じことを書いたんですが、 2位横浜に連敗した後に首位巨人に連勝したんですから、阪神はたとえ広島を追い抜けずに、クライマックスシリーズに出られなくても、セリーグを面白くしていることは事実として受け止めようと考えています。明日はしっかりテレビ観戦したいと思います。
明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!
相変わらず、今週の読書も経済書をはじめとして、小説まで含めて計6冊を読んでいます。私の好きな青春小説の中でも、おそらく、一番に評価している吉田修一の『横道世之介』の続編も読みました。来週の読書はほぼ手元に集め終わっており、何と、経済書よりも小説の方が多くなりますが、やっぱり数冊読む予定です。
まず、井上智洋『純粋機械化経済』(日本経済新聞出版社) です。著者は駒澤大学のマクロ経済学の研究者で、本書は読み方にもよりますが、経済書と考えるよりも文明についての教養書や哲学書として読む読者も多そうな気がします。私のように経済書と考える読者は、第3章と第4章で論じられている人工知能(AI)により仕事が奪われるか、とか、労働のインプットを必要としない純粋機械化経済における格差、などに比重を置いた読み方になりそうな気がしますし、文明論とか哲学書と考える読者は最後の第7章と第8章あたりに興味を持ちそうです。まあ、出来はともかく、この最終章あたりは『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』のような雰囲気が感じられます。AIがどういった仕事や職業を奪う、というか、代替するのかについては英国オックスフォード大学のフレイ-オズボーンの研究成果に言及されており、実は、AIによる純粋機械化経済は労働のインプットを必要としないことから、資本ストックの限界生産性の逓減が生じなくなり、経済成長が一気に加速する、と結論しています。ただ、私は疑問で、AIによる純粋機械化経済で成長が一気に加速するのは生産性、というか、供給サイドであって、需要サイドがこれに追いつかなければ、単なる過剰生産のデフレに陥りかねません。その中で、本書では言及されていませんが、「スーパースター経済」のような格差が一挙に拡大する可能性を示唆します。Average is over. というわけです。なお、AIによる経済成長の爆発的な加速を本書では「テイクオフ」と名付けていますが、もちろん、ロストウ的な比喩といえます。その上で、狩猟採集経済から農業経済への第1の分岐、さらに、いわゆる狭義の産業革命に伴う農業経済から工業経済への第2の分岐に続き、近い将来に、AI利用による爆発的な経済成長の加速が実現できるかどうかによる第3の分岐が生じると指摘します。そして、ユニバーサルなベーシックインカム(BI)の必要性などが解明されます。特に、私の印象が鮮明だったのは、主流派経済学で半ば自明な前提とされている長期均衡について著者が否定している点です。マンキュー教授のその昔のテキストなどでは短期の不均衡と長期の均衡から経済のお話が始まり、長期には伸縮的な価格調整により雇用も含めて市場均衡が実現されるとされていますが、実は、私自身も懐疑的なんですが、著者はこの長期の均衡を否定し、長期にも雇用をはじめとする不均衡が残る可能性を示唆します。おそらく、私の直感なのですが、この著者の長期の不均衡理論をキチンとモデル化して突き詰めれば、いわゆる現在貨幣理論(MMT)が成立する可能性が出てくるような気がします。ただし、これは人類がAIを使いこなせれば、という前提であり、場合によっては、人類ではなくAIが主人公になる経済も視野に入れる必要があると私のような悲観派は考えています。そのAIが主人公になる経済社会では、人類は現在のイヌ・ネコのようなAIのペットになるのかもしれません。
次に、巣内尚子『奴隷労働』(花伝社) です。著者はフリーのジャーナリストであり、Yahoo! ニュースの連載を大幅に加筆し書籍化されています。副題が「ベトナム人技能実習生の実態」となっているように、ベトナム人を中心に技能実習制度の下での移住労働者の人権侵害の実態について取り上げています。低賃金の単純作業でありながら、技術協力や国際貢献の名の下に、外国人技能実習生がパワハラやセクハラにとどまらず、モロの暴力があったり、雇用の場だけでなく強制的に住まわせられる住居の家賃でも不当な高額を請求され、転職もままならず、徹底的に虐げられる現場を取材して明らかにしています。ただ、その背景に、ボージャス教授の『移民の政治経済学』にあったように、外国人労働者の受け入れによって膨大な利潤を企業が得ているという経済的な事実を本書では見落としています。ですから、あとがきの中で、、謝辞の前の事実上最後の技能実習制度の構造的問題の小見出しで「日本社会におけるモラルハザード」を原因に上げているのには、実にがっかりさせられました。企業の活動目的が利潤の極大化であり、人権擁護や、ましてや、国際協力ではないことは理解できないのでしょうか。本書の中でも、特に、ベトナム人技能実習生を中心に取り上げているわけですから、送り出す側のベトナムで、国策として「労働輸出」が奨励されている背景にマルサス的な貧困があるのかどうか、仲介するベトナム側の企業の業務のクオリティに関する情報が一党独裁政権下で何らかの不都合ないか、といった取材、さらに、受け入れ側の日本では、「モラルハザード」はまったく取材されていないようですし、ましてや、技能実習生を受け入れている企業の収益状況などは視野にないようです。少なくとも、送り出すベトナムでも、もちろん、受け入れる日本でも、企業が利潤極大化の行動の一環として技能実習生を送り出し、あるいは、受け入れている、という事実は忘れるべきではありません。そして、その基礎の上に、我が国の現状の労働市場でどれほど人手不足が実感されているのか、そして、その人手不足にもかかわらず賃金上昇が鈍い背景として女性や高齢者の労働市場参入とともに、本書でも指摘されているように、すでに30万人に上る外国人労働者がどのように作用しているのか、などなどの解明が望まれます。もちろん、今上げたポイントはジャーナリストの手に余る可能性もありますから、その場合は研究者を巻き込むことも必要でしょう。ただ、「モラルハザード」で済ませる程度の問題として著者が認識しているとすれば、本書の値打ちが大いに下がるような気もします。加えて、左派・リベラル派を標榜する私の基本的な姿勢を明らかにすると、ホントに人手不足であるなら、市場でその情報が非対称性を克服して十分に活用され、労働力の希少性に見合った賃金の価格付けができないと市場経済の意味はありませんし、その希少性に見合った賃金を支払えない企業は市場から退出すべきです。さらに、外国人の移住労働者については情報の非対称性が日本人よりも大きいでしょうから、政府の役割もそれだけ大きくなるべきと考えます。
次に、岡山裕・西山隆行[編]『アメリカの政治』(弘文堂) です。著者・編者は米国政治の研究者と考えてよさそうです。基本的には、大学初学年などのテキストと私は受け止めていますが、米国政治に関心あるビジネスパーソンでも十分に読みこなせる内容です。2部構成となっており、第1部で総論として歴史、機構、選挙と政策過程などが概観された上で、第2部において人種とエスニシティや移民、ジェンダー、教育と格差などの政治学上の争点を解明しようと試みています。本書でも鋭く指摘しているように、我が国では考えられないような政治上の争点が米国にはいっぱいあります。典型的には銃規制であり、先日の我が国の参議院議員選挙などの国政選挙レベルで銃規制が争点となることはありえない、と私をはじめとして多くの国民は感じていますが、米国で銃規制がまったく進まないのは、これまた、多くの日本国民が感じているところではないでしょうか。移民による国家としての成立と先住民やアフリカ系米国人への人種差別なども我が国では実感ありません。ダーウィン的な進化論を否定し聖書の『創世記』の天地創造を初等・中等教育で教えることは、欧州のキリスト教国でも選択肢にならないのではないでしょうか。さらに、北欧とは真逆と考えられている自己責任を強調する社会福祉政策についても、なかなか理解しがたいと受け止める読者もいそうな気がします。私はいまだに理解できなかったのは、世界における米国の軍事力のあり方であり、すなわち、20世紀初頭の第1次世界大戦への参戦を躊躇し、モンロー主義という孤立主義を貫いていた米国が、第2次世界大戦後は当時のソ連との冷戦を考慮しても、突如として世界の警察官になり、そして、21世紀の現在はその地位から下りようと模索しているのは、専門外の私には理解できませんでした。こういったように、それぞれの分野の米国政治の専門家が、それぞれの分野において何がどのような文脈で争点化し、それらをめぐってどのような主体がいかなる立場で政治過程に関与し、どのような政策が作られ、執行されてきたのかを解説することに力点が置かれており、コンパクトで判りやすいテキストに仕上がっています。米国の政治についてはいまだにフランス人思想家であるトクヴィル『アメリカのデモクラシー』が金字塔として引用されますが、本書についても、外国人労働者の受け入れなどが進み国際化が進展する我が国の現状を考え合わせれば、大いに参考になると私は評価しています。
次に、ホルヘ・カリオン『世界の書店を旅する』(白水社) です。著者は、スペインの文芸評論家であり、本書は著者が世界を旅行した際に訪れた書店についてのエッセイです。スペイン語の原題は Librerías であり、まさに、複数形ながら、書店、というか、本屋、そのものです。英訳書のタイトルは Bookshops となっており、基本は英訳書が邦訳の底本隣、必要に応じてスペイン語原書を参照したと邦訳者があとがきで書いています。スペイン語原書は2013年の出版、英訳書は2016年の出版です。まず、どうでもいいことながら、私は英国にいったのは国際会議で短期間だったので少し判りにくいんですが、米国では首都ワシントンDCで連邦準備制度理事会(FED)のリサーチ・アシスタントをしていたころ、bookshopは米国ではおかしい、bookstoreが正しい、と訂正された記憶があります。というのは、米国人にとって shop とは、何か作業をするところであり、典型的には workshop や散髪屋さんの barber's shop があります。それに対して、store は製品を置いておくだけ、というニュアンスです。もう30年前になりますが、私がFEDにいた1989年にワシントンDCにタワーレコードが出店したので、リサーチ・アシスタント仲間で繰り出そうと相談していたところ、私が record shop というと、record store と訂正された次第です。ちなみに、タワーレコードの後に、そのころ米国進出を果たしていたキリンイチバンをみんなで飲みに行った記憶があります。それはともかく、残念ながら、本書ではワシントンDCの本屋は出てきません。米国で一番注目されているのはストランド書店です。ニューヨークは4番街にあり、私も行ったことがあります。これもどうでもいいことながら、私はエコバッグはストランド書店のデニム地のものを使っています。それから、大使館の経済アタッシェとして3年間勤務したチリの首都サンティアゴではロリータ書店が何度か言及されています。誠に残念ながら、私は記憶がありません。でも、隣国アルゼンティンの首都ブエノスアイレスのノルテ書店については、ほのかに記憶があり、アレではないか、と思わないでもない建物が脳裏にあったりします。我が国の書店では、東京の丸善が黒澤明との関係で言及されています。しかし、京都出身の私は、丸善といえば、私の学生時代に河原町通蛸薬師にあった京都丸善です。そうです。梶井基次郎の「檸檬」に登場し、爆弾に見立てられた檸檬で木っ端みじんにされるのを主人公が想像する京都丸善です。
次に、奈倉哲三『天皇が東京にやって来た!』(東京堂出版) です。著者は歴史の研究者です。副題、というか、実は「錦絵解析」というのがくっついていて、私はこれに大いにひかれて借りました。私は自分でも自覚していますが、天皇個人についてはともかく、天皇制に関しては日本人の中でもかなり少数派に属すると考えていて、天皇が東京に行くかどうかについてはまったく興味ありませんが、明治期初年の東京について、さらに、その当時の東京の人が天皇をどう受け止めていたのかについては興味あります。加えて、上の本書の表紙画像を見ても理解できるように、税抜き2,800円にもかかわらず、フルカラーのとても見ごたえある図版がふんだんに盛り込まれており、誠に失礼ながら、歴史研究者の文章を一切読まずに、フルカラーの図版をながめるだけでも値打ちがあるような気がします。ということで、明治天皇は2度江戸、というか、東京に行幸して、2度めの行幸でそのまま東京に居ついたわけですが、本書では第1回目の東京行幸、言葉を替えれば、はじめての東京行幸の際の錦絵を解析して、歴史的な知見を得ようと試みています。錦絵の一覧はpp.18-20に取りまとめられています。2度めの東京行幸については、京都の公家衆に明治天皇を取り込まれることを回避すべく、東京に行きっ切りになることが想定されていたんでしょうが、第1回目の東京行幸については、東京府民はすべてが新政府に完全に服したわけではなく、江戸城が無血開城したこともあって、反政府的な勢力も一掃されたわけではない中で、新政府、というか、天皇の朝威を示し恩恵を施すことを目的としていました。東京滞在中に、天皇は武蔵の国の一宮である氷川神社を訪れ、東京府民へ御酒下賜を敢行し、東京府民は2日間に渡って天盃頂戴を祝います。それらを錦絵に収めているわけですが、一瞬ですべてを記録する写真とは違いますから、隅々まで正確に描写できているわけもなく、それなりに版元や絵師の思い入れがある部分が散見されるわけです。ですから、記録や報道に徹して出来るだけ客観的な描写を試みた例の他に、新政府寄りの姿勢を示す例、逆に、反政府的な要素を入れようと試みた例があります。行列を描写した錦絵が多いんですが、御酒下賜と天盃頂戴の錦絵にも見るべきポイントはあります。酒樽に、やたらと、「天下泰平」が多く見受けられます。江戸城は無血開城したとはいえ、上野彰義隊などの市街戦はあったわけで、平和を願う一般市民の気持ちは今も昔も変わりないことを実感しました。
最後に、吉田修一『続 横道世之介』(中央公論新社) です。タイトルから明らかなように、吉田修一御本人による青春小説の金字塔『横道世之介』の続編です。私はもともと青春小説が好きで、特に、『横道世之介』は愛読し、高良健吾と吉高由里子が主演した映画も見ました。ということで、この作品は、世之介が与謝野祥子と別れて、さらに、大学を卒業したものの、バブル最末期の売り手市場に乗り遅れて、パチプロ、というか、フリーターをしている1993年4月からの12か月が対象期間となっています。世之介と大学からの親友の小諸=コモロンのほか、パチンコ屋や理容室で顔見知りになった浜本=浜ちゃんという女性の鮨職人、小岩出身のシングルマザーの桜子と子供の亮太、また、その兄や父親などの日吉一家、などなどが登場します。そして、世之介は桜子に2度に渡ってプロポーズしながらも受け入れられず、さりとて、明確に別れるでもなし、といった、相変わらずのちゅつと半端な恋愛状態が続きます。このあたりは、前作の与謝野祥子との恋愛関係の方が濃厚だったと評価する読者もいるかもしれません。そして、最後は、東京オリンピック・パラリンピックで桜子の子供の日吉亮太の活躍と、亮太に向けた桜子の兄、というか、亮太の叔父からの手紙で終わります。前作は世之介の母の手紙で終わっていたような記憶がありますので、それを踏襲しているわけです。そして、何といっても、桜子の兄の日吉隼人が勝手に投稿した地方都市主催の写真コンテストで世之介の写真が佳作に入賞し、賞の審査委員長だった大御所的な存在のプロの写真家の事務所に出入りし、手伝いなどをしつつカメラマンに成長していく萌芽をにおわせます。そして、何よりも、この写真の師匠が世之介の作品を「善良」であると評価し、この「善良」というキーワードが世之介について回ることになります。もちろん、世之介が電車の事故で亡くなるという事実に変更はありません。ただ、世之介の運転が桁外れに安全運転であることとか、コモロンとの米国旅行とかの軽い話題に交じって、何ともさりげなく、桜子の兄の隼人の中学生のころの喧嘩の贖罪といった思い出来事をサラリと紛れ込ませ、それでも、全体として世之介の善良さを全面に押し出して、いろんな登場人物の前向きで現状を肯定して先に突き進む姿勢を明るく描き出し、とてもいい仕上がりになっています。ここまで書けば、続々編がありそうな気がしますが、世之介が電車事故で亡くなるという事実に変更はないわけですから、前作のお金持ちの令嬢だった与謝野祥子に対して、本作では元ヤンのシングルマザーである日吉桜子と、世之介の恋愛対象が大きくスイングしたわけですので、真ん中の中道を行く恋愛が次にあり得る続々編で見たい気もします。それから、おそらく、前作と同じ読後の感想なんですが、私自身は世之介のような善良な人間にはなれそうもありませんので、世之介のような善良な友人・隣人が欲しい気がします。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 4 | 10 | 2 | |
読 売 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 | 0 |
狭い東京ドームとはいえ、新外国人ソラーテ選手の特大決勝ホームランにはびっくりでした。甲子園でも文句なしのスタンド入りでしょう。私が常々批判的に見ていたクローザーのドリス投手を登録抹消して1軍に上げた甲斐もあろうかというものです。9回に登場した藤川投手もピシャリとはいきませんが、さすがに粘り強いピッチングでゼロに抑えました。惜しむらくは、先発で好投した高橋投手に勝ち星が欲しかったところかもしれません。いずれにせよ、2位のベイスターズに連敗した後、ジャイアンツに勝ったんですから、たとえ、クライマックスシリーズに進出できなくても、タイガースはセリーグを盛り上げるのに貢献しているといえそうな気がします。
明日も、
がんばれタイガース!
来週火曜日7月31日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる6月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。
ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の6月度平均時給は前年同月より+2.4%、+25円増加の1,054円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+43円、増減率+4.1%)、「フード系」(同+24円、+2.5%)、「販売・サービス系」(同+25円、+2.4%)、「製造・物流・清掃系」(同+22円、+2.1%)など全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年3~5月はマイナスを示していたんですが、6月統計では前年同月より+0.2%、+3円増加の1,641円となっています。職種別では、「IT・技術系」(前年同月比増減額+67円、増減率+3.3%)、「クリエイティブ系」(同+41円、+2.4%)、「医療介護・教育系」(同+30円、+2.1%)、「オフィスワーク系」(同+19円、+1.3%)の4職種がプラスなんですが、「営業・販売・サービス系」(同▲6円減、▲0.4%減)が前年同月比マイナスとなっています。また、地域別でも、関東・関西は前年同月比プラスを記録しています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトや派遣スタッフも人手不足の影響がまだ強いと私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用には注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
横 浜 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 6 | 10 | 2 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1 |
久々の先発秋山投手の力投も虚しく、またまた、サウスポーを打てずに横浜にボロ敗けでした。それから、私は鳥谷選手のファンですから、スタメンで出場してくれるのはうれしい限りなんですが、昨日、唯一の得点となるソロホームランを打った北條選手は、代打ですら出してもらえない選手起用は、私には疑問だらけです。昨夜も書きましたが、横浜と広島を追い抜いてAクラスに達するのは厳しいかもしれないと感じさせる一戦でした。
ジャイアンツ戦は、
がんばれタイガース!
本日、日銀から6月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.7%を示しています。前月の+0.9%から上昇率が縮小したものの、引き続き+1%近い伸びを続けています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率もヘッドラインと同じ+0.7%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の企業向けサービス価格、0.7%上昇 17年7月以来の低い伸び
日銀が25日発表した6月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は102.8と、前年同月比で0.7%上昇した。伸び率は5月確報から0.2%縮小し、17年7月(0.6%上昇)以来の低い伸びとなった。人手不足の影響で土木建築サービスなどの値上がりが続く半面、燃料費の下落の影響で外航貨物輸送が前年比でマイナスとなった。
前月比では0.1%下落した。前月比のマイナスは3カ月連続。米中摩擦などを背景とした貨物需要の落ち込みで、国際航空貨物輸送の値下がりが目立った。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。
やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
先日7月10日に日銀から公表された企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は、とうとうマイナスを記録したんですが、企業向けサービス価格指数(SPPI)については、上昇幅は縮小させつつもプラスを続けており、かなり+1%に近い結果となっています。大類別で見ても、引き続き、労働者派遣サービスや土木建築サービスなどを含む諸サービスが、SPPI全体の前年同月比+0.7%の半分を超える寄与度の+0.37%を示していますが、他方で、この諸サービスの上昇率がが5月の+1.3%から6月には+1.1%に縮小し、寄与度の前月差では▲0.07%ポイントの上昇率引き下げ要因ともなっています。SPPIの中で諸サービスのウェイトは⅓を超えており、少しの上昇率の変化にも寄与度差による影響力がかなり大きくなっています。加えて、引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の低下が運輸・郵便に現れています。前月からの寄与度差は▲0.04%となっています。ただし、SPPIヘッドラインとコアSPPIの上昇率が同じですので、それほど大きな影響はなさそうな気もします。また、景気敏感業種である広告も新聞広告が5月のプラスから6月は前年同月比上昇率が下落に転じ、▲0.04%のマイナス寄与を記録しています。
この先の物価の見通しについては、もちろん、10月1日からの消費税率引き上げの影響を除いたベースで考えると、全般的に、昨年2018年の10~12月期にピークだった国際商品市況の石油価格に左右されるわけですから、やや弱含みというのは間違いないところで、加えて、消費者物価(CPI)については幼児教育の無償化や携帯電話料金の引き下げなどが上昇率を下押しすると考えられ、企業物価(PPI)や企業向けサービス価格(SPPI)についても、貿易摩擦による世界経済の減速に従って上昇率が縮小ないしマイナスに転ずる可能性が高くなります。今月末の日銀「展望リポート」では、どのような方向が示されるのでしょうか?
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
横 浜 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 6 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 7 | 1 |
競り合った試合ながら、結局、サウスポーを打てずに横浜に完敗でした。まあ、何といっても順位通りの結果なんでしょう。横浜を追い抜いてAクラスは厳しいかもしれないと感じさせる一戦でした。
明日は、
がんばれタイガース!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | 十 | 十一 | 十二 | R | H | E | ||
横 浜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 6 | 8 | 1 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 14 | 0 |
終盤もつれにもつれた試合で、延長戦では押しに押しながら、結局、クローザーが最終回に打たれたのが響いて横浜と引き分けでした。この試合、何といっても、私は鳥谷選手の先発ショートでのスタメン出場に大感激でした。横浜の2番筒香選手ほどのインパクトありませんが、下位打線ながら6-7番に鳥谷選手が控えてショートストップの守りを固めているのは、なんとも心強い限りです。8回ウラの逆転機こそショボいバッティングに終わりましたが、明日もスタメンでしょうから、私は大いに期待します。それにしても、今夜の試合は0.5敗にカウントすべきであり、クローザーはそろそろ交代させて、8回ドリス投手、9回ジョンソン投手の配置転換はいかがでしょうか?
明日は、
がんばれタイガース!
本日の閣議で、本年度の「経済財政白書」が報告されています。400ページを軽く超えるボリュームですので、細かなポイントまでは目が届いていないことと思いますが、公表当日に取り上げる意味はあると思いますので、雇用に関して賃金と多様化だけながら、グラフを2点引用して簡単に見ておきたいと思います。
まず、「経済財政白書」 p.80 第1-3-9図 人手不足と賃金 を引用すると上の通りです。(1) が賃金フィリップス曲線であり、(2) は賃金上昇率の回帰分析結果です。上のパネルを見ると、青の1990年代から緑の2000年代、そして、赤の2010年代と、最近になるほどフィリップス曲線がフラットになっており、因果関係ではない相関関係ながら、人手不足の代理変数である失業率に対して賃金の反応が鈍くなっていることが見て取れます。そして、下のパネルから、パラメータの大きさはそれほど差がないものの、人手不足よりも労働生産性向上の方が賃金上昇との相関が強い、ということが明らかにされています。
次に、「経済財政白書」 p.204 第2-3-2図 多様な人材と生産性 を引用すると上の通りです。生産性が賃金上昇をもたらすわけですから、その生産性の向上に結び付く要因を探って、従来の日本型雇用慣行のような青年・壮年・中年の男性雇用一点張りではなく、女性の活躍を促し高齢者も参加できる雇用という意味で、雇用の多様性という結論に達するものの、単に多様性があればそれでOKというわけでもないようで、雇用の多様性に加えて、計画やビジョン、あるいは、柔軟な働き方を組み合わせると生産性がさらにアップする一方で、そういった取組なしの多様性はかえって生産性を低下させる、という結論を導いています。なお、生産性は最近5年間の全要素生産性(TFP)で代理しています。ただ、私の目には疑問と映る分析結果が2点あり、第1に、正規雇用に加えて非正規雇用の増加による雇用形態の多様化は、生産性向上をもたらす雇用多様化なのでしょうか。第2に、雇用の補完関係と代替関係について、「高齢者雇用の増加が若年層の賃金や雇用(採用)を抑制するとの関係性はみられておらず、若年層が抱えていた高齢者の増加に対する懸念は必ずしも正しくない」(p.208)、また、「産業等をコントロールした簡単な回帰分析を行ったところ、外国人従業員の伸びと日本人従業員の伸びには有意に正の関係があるとの結果が得られた」(p.211) などと結論されており、高齢者雇用が若年層の賃金や雇用に負の影響を及ぼすことはなく、外国人雇用と日本人雇用にはむしろ補完関係が見られる、ということになっています。分析手法についてはともかく、結論については直感的に疑問が残ります。繰り返しになりますが、分析手法などについて詳細に見ているわけではないものの、平たくいえば、単に景気のいい会社が、高齢者も雇えば若年層の賃金も上げて、外国人雇用を増やせば日本人の雇用も増加させる、逆に、景気の悪い会社は高齢者も若年層も関係なく雇用を減少させ、外国人も日本人もどちらも雇わない、ということなのではないか、という気がします。直感的な私の理解であり、根拠はありません。
繰り返しになりますが、極めて限定的な範囲でしか目が届いておらず、従って、もっと重要な点を見逃がしている可能性が大いにあるんですが、「経済財政白書」の公表当日に取り上げるのもひとつの値打ち、と考えています。
広く報じられているように、今週、7月24日(水曜)と7月26日(金曜)に来年の東京オリンピック・パラリンピック2020に向けた交通対策の総合的なテストが実施されます。組織員会と警視庁の関連サイトは以下の通りです。
今週の交通対策のテストのうち、高速道路での交通規制の予定図を組織委員会のサイトから引用すると上の通りです。加えて、交通対策の一環なんでしょうが、我がオフィスでも、交通需要マネジメント (TDM) なるものが実施され、時差通勤が試行されるようです。もっとも、私の場合は、フルタイム勤務ではなくパートタイムですので平日休みがあり、その平日休みに合わせて時差出勤割り当てがなされて、結果として、時差出勤はしないで済むようです。
こういった交通規制に対抗する、というわけでもないんでしょうが、リモートワーク推進のサイボウズでは、去る7月12日に都内ビジネスパーソン400人に聞く「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会混雑への働き方対応」に関する調査の結果を明らかにしています。そのうち、大会中の通勤や仕事上の移動についての回答の円グラフと「不安」の理由の棒グラフをサイボウズのサイトから引用すると上の通りです。これを受けて、大会開催時期には本音では会社を休みたいと考えているビジネスパーソンは70.6%に上っています。ものすごくサンプル数が少ないので統計的な信頼性に疑問あるものの、何となく私にも判る気がします。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
ヤクルト | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 2 | x | 5 | 7 | 1 |
西投手2か月ぶりの勝利でヤクルトを2タテでした。5回は近本外野手の逆転スリーラン、8回は代打鳥谷選手のクリーンヒットを口火に押し出しが続いてダメを押し、少ないチャンスをモノにしました。この両チームのゲームで9時前に終わるのはめずらしい?
次の横浜戦も、
がんばれタイガース!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
ヤクルト | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 3 | 8 | 0 | |
阪 神 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1x | 4 | 11 | 0 |
巨人と中日に連続で3タテされた後、何とかヤクルトに勝って連敗脱出でした。ただし、クローザーが9回に追いつかれてのサヨナラ勝ちですので、それほどほめられた勝ち方ではないと考えるべきです。
そろそろ西投手の勝ち星も欲しいところで、
がんばれタイガース!
今週の読書は、経済書らしきものをはじめとして、小説まで含めて、以下の通りの計6冊です。ただ、最初の『世界統計年鑑』は通して読むようなものではなく、パラオラとページをめくっただけです。今日はすでに図書館回りを終えていて、来週の読書の分の本も借りてきたんですが、来週も数冊の充実した読書になりそうな予感です。
まず、英エコノミスト誌『The Economist 世界統計年鑑 2019』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) です。英国のエコノミスト誌の編集部による「世界統計年鑑」です。英語の原題は Pocket World in Figures 2019 であり、1991年度の初版発行以来27年間、毎年データのアップデートと収録項目の見直しを経て発行され続けているそうです。どうでもいいことですが、私は数年前に英語の原書を利用したことがあり、ハードカバーだったと記憶していますが、この2019年度版の邦訳書はペーパーバックでした。今は英語の原書もペーパーバックになっているのかもしれません。前半第1部が世界ランキングであり、国土面積や人口などの世界各国のランキングが示されており、後半第2部が国別の統計となっています。有人宇宙飛行の歴史とかのごく一部の例外を除いて、いわゆるクロスセクションの統計であり、タイムシリーズで示されているものはほとんどありません。まあ、私のように図書館で借りてパラパラとページをめくるよりは、購入して座右に置いて必要に応じて参照する、という使い方が正当なのかもしれない、と思わないでもありません。なお、邦訳の2019年度版は東京23区の区立図書館の中でも、千代田区立図書館と渋谷区立図書館と文京区立図書館と墨田区立図書館と世田谷区立図書館の5館しか蔵書しておらず、しかも、千代田区立図書館と渋谷区立図書館では禁帯出となっていますから、借り出せるのは極めてわずかとなっています。ある意味で、希少価値が高い、といえるかもしれません。
次に、エイミー・ゴールドスタイン『ジェインズヴィルの悲劇』(創元社) です。400ページを超える大作であり、著者は、ワシントンポスト紙で30年のキャリアを持つジャーナリストです。英語の原題はズバリ Janeseville であり、2017年の出版です。タイトルの街は米国ウィスコンシン州の南部に位置しています。本書のpp.426-27に地図があります。本書にも紹介されている通り、GMの大きなプラントがあった企業城下町であり、パーカー万年筆の発祥の地でもあります。そして、サブプライム・バブル崩壊後の2008年12月にGMが工場を閉鎖した前後から物語が始まります。かつては、工場のブルーカラーとして三交代の勤務で時給28ドルを稼いでいた熟練工の正規雇用された労働者が、非正規で半分の時給の仕事しかなくなって、一方でGMの工場再開や別の企業の工場誘致に希望をかけて、町おこしや企業へのインセンティブ付与を進めようとするグループがあり、他方で、新しい雇用・労働市場に対応するべく職業訓練や能力開発のために地域のブラックホーク技術大学に通い始める人々、あるいは、家計を支えるためにアルバイトを始める高校生などなど、著者は現地インタビューはもちろん、かなり膨大な情報を収集した跡がうかがわれます。そのうち、統計情報が補遺1で「ロック郡における調査の説明および結果」と補遺2で「職業再訓練に対する分析の説明および結果」とそれぞれ題して巻末に収録されています。そして、著者も私も不思議なのが、ブrックホーク技術大学、2年制だそうですから、おそらく、米国的なコミュニティ・カレッジに近い教育機関だと思いますが、こういった大学での学び直しや職業訓練・能力開発を受けた場合、かえって、再就職率が低かったり、再就職できても時間当たり賃金が少なかったりする、という統計的に分析された事実です。通常の理解とは逆に見えます。サンプルがそう大きくもないでしょうから、きわめて大きなバイアスが母集団にかかっている可能性は否定できません、例えば、もともと再就職率が困難だったり、高賃金が望めなかったりするグループが、こういった大学での学び直しや能力開発を受けた可能性はあるものの、本書のこの結論、というか、分析結果については議論を呼びそうな気もします。左派は能力開発が中途半端で不足している可能性を指摘して、一層の施策の充実を提案しそうな一方で、右派は能力開発が効果的でない可能性を議論して、こういった施策の廃止ないし縮小を求めそうな気がします。でも、全体として、暗い雰囲気のリポートながらも、将来に向けた明るさも感じられる内容でした。
次に、ジェリー Z. ミュラー『測りすぎ』(みすず書房) です。本書冒頭で著者自ら記しているように、著者は本来米国の歴史研究者です。ただ、資本主義に歴史や思想史についても研究しているようで、経済学とまったく関係ないともいえないようです。英語の原題は The Tyranny of Metrics であり、2018年の出版です。ここで経済学に関する小ネタですが、本書の英語の原書タイトルの元ネタがあるように私は感じています。というのも、ヤング教授による "The Tyranny of Numbers" という学術論文があり、1990年代前半までのアジア新興国・途上国の経済成長は資本や労働といった要素投入に支えられたものであり、全要素生産性(TFP)はそれほど伸びていない、という点を実証し、さらに、このヤング教授の論文を受けてクルーグマン教授が "The Myth of Asia's Miracle" を書いて、1997~98年のアジア通貨危機を「予言」した、とされています。何ら、ご参考まで。ということで、本書では定量的に把握、すなわち、計測できる点を重視した経営や政策運営などを鋭く批判しています。エコノミスト、特に右派のエコノミストにとっては、マイクロな市場における価格が絶対唯一の情報であって、価格に従った資源配分こそが効率性を保証する、と考えられており、この市場における価格に類似した指標をついつい求めてしまいがちな傾向を本書では戒めています。私が考えるに、何かを定量的に把握し、それを改善の指標とする場合、3つの間違いが生じる可能性があります。第1に本来のパフォーマンスの代理変数にならない指標を採用する間違いで、第2に計測のミス、第3に目的外の利用です。本書でも、第1のポイント、すなわち、学校や病院などのパフォーマンス指標として不適当な指標が取られている例が大量に指摘されています。例えば、患者の死亡率でもって病院のパフォーマンスを代理すれば、重篤な患者を受け入れない可能性が高まり、ホントにそれで病院の社会的使命が果たされるのか、という気がします。第2のポイントで、計測ミスはいっぱいあって、私の直感ながら、我が国のサービスの生産性は正しく計測されていない可能性があります。ここまで、「おもてなし」の精神でいっぱいの飲食店や宿泊の生産性が、他の先進国と比較して低いとはとても思えません。ほとんど事故なく正確極まりない運行を誇る新幹線の生産性が低いとはとても思えません。第3のポイントでは、学校の生徒のテスト結果を教師の評価と考えるのか、校長の評価と考えるのかでは、かなり受け止め方が異なるような気もします。最後に、第4の観点があり得るとすれば、評価すべきでないものを評価しようと試みている場合もありそうな気がします。総合的に、興味ある評価の計測に関する批判が本書には詰め込まれています。また、巻末のチェックリストも参考になりそうです。
次に、松本佐保『バチカンと国際政治』(千倉書房) です。上の表紙画像からはピンと来ないかもしれませんが、A5のかなり大きな版でページ数も300ページを上回り、ボリューム感は十分あります。著者は、国際関係史の研究者であり、タイトル通りに、19世紀くらいから直近のフランシスコ教皇まで、バチカンが国際政治にかかわった歴史をひも解こうと試みています。ただ、私なんぞは、おそらくバチカンに親近感を持っているであろう著者が、どこまでバイアスをかけていえるのかが判断しにくく、直感的ながら、国際政治におけるバチカンの影響力を過大に評価しているリスクはありそうに感じてしまいました。ただ、本書ではスコープ外のようですが、15すぃきまつのコロンブスによる新大陸発見の後、スペインとポルトガルの間で西半球の米州大陸を西経に沿って分割したトルデシリャス条約は、当時の強硬アレクサンデル6世が仲介していますし、本書でも言及されている通り、チリとアルゼンティンの長い長い国境紛争はしばしばバチカンによって仲裁されています。私が在チリ大使館に勤務していた時にも経験しました。ということで、影響力の大きさにはやや眉に唾つけて読むとしても、本書で著者が指摘する通り、国際政治の中でバチカンが旗幟鮮明だったことは確かです。特に、第1次世界大戦の戦中から戦後にかけては一貫してドイツ寄りの立場を示して戦勝国からは煙たがられましたし、第2次大戦後の東西冷戦の中では、一貫して西側や米国寄りの反共の立場を堅持しました。そして、やはり、フランシスコ教皇の下でバチカンもかなり大きく変化しようという兆しや雰囲気は私のような部外者も感じ取っています。教皇専用の豪華専用車を廃してバスや列車のような公共交通機関を利用して移動したり、飛行機ではエコノミークラスの登場したり、と本書で指摘されている事実に加えて、私はフランシスコ教皇がカバンをもって飛行機のタラップを上る写真を見てびっくりした記憶があります。国際的なさまざまなテーマは、時代が進むにつれて広がりを見せ、通商問題などの経済関係はさすがにまだ手が伸びていないようですが、戦争と平和の問題はもちろん、地球規模での環境問題など、通常の国民国家やその集合体である国連などの国際機関に加えて、バチカンのようなトランスナショナルなパワーが活躍する場が増え、必要とされるようになったように私も感じています。そのためにも、ひいき目やバイアスなしでバチカンの力量を評価できる研究が必要です。
次に、古澤拓郎『ホモ・サピエンスの15万年』(ミネルヴァ書房) です。著者は、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の研究者であり、本書は、自然科学的な内容は豊富ながら、基本的には、私は歴史書だと受け止めています。まず、上の表紙画像に見られるように、副題は「連続体の人類生態史」となっています。「連続体」とは、英語でスペクトラム、フランス語でスペクトル、であり、文字通り、人類史を連続で捉えようと試みています。しかも、伝統的な歴史学の観点ばかりではなく、生物学や医学に加えて、地理学や社会学、もちろん、人口動態学まで、さまざまな学問領域を横断的に駆使しつつ、人類の異文化体験や多様化について解明を志向しています。特に、男女の性別まで含めて、もちろん、人種や文化の違いなどについて対立的、というか、何らかのグループの特徴を区別する要素として用いるのではなく、人類15万年の歴史を連続で捉えようとする試みは、私はそれなりに歴史分野に詳しいつもりでしたが、かなり新鮮な視点・分析方法だったような気がします。もちろん、白人の優位と有色人種の劣等性はすでに否定されて久しいものの、どこぞの超大国の現職大統領のように、人種差別的な発言を繰り返す輩も少なくないですし、まだまだ、分断的に世界を捉える感覚は広く残っています。エコノミスト的な視点から、本書で注目したのは、経済学的な視点も入れつつ、格差を論じている点です。例えば、生物的な身長に個人間で3倍の差があることはまれでしょうし、体重は身長よりもう少し差が出来そうに感じないでもありませんが、本書では、代謝量なども含めて個人間の格差はせいぜい3~4倍と結論しています。そして、狩猟採集社会における生まれながらの格差は3倍程度であるのに対し、農耕社会では11倍、牧畜社会では20倍と算出した上で、現代社会における2桁も3桁もの大きさに及ぶ経済的な格差、例えば、所得や消費の金額や居宅の広さなどが、生物的に必要かどうか、社会経済的に許容できるかどうかを鋭く問うています。確かに、我と我が身を振り返れば、実用的な範囲では、例えば、自動車は標準的な家族に3台もあれば十分ですし、いかな大食漢も人の5倍を毎日のように食べ続けるのは、かえって苦痛の方が大きいように感じます。ルソー的な自然状態では格差3~4倍という本書の議論は、受け入れられる素地が十分にありそうな気がします。
最後に、今村昌弘『魔眼の匣の殺人』(東京創元社) です。著者は、2017年の前作『屍人荘の殺人』で第27回鮎川哲也賞を受賞しデビューした若手のミステリ作家です。前作はタイトルそのままに映画化され、主人公の剣崎比留子役は浜辺美波が務めるそうです。本作品が第2作になり、主人公というか、ワトソン役のストーリーテラーとホームズ役の謎解きに当たる探偵役は前作から共通しており、シリーズというか、前作の続編と考えるべきです。さらに、犯罪発生のシチュエーションも前作と同じで、ほぼほぼクローズド・サークルだったりします。超能力開発を目的とする斑目機関の謎に迫ろうと試みますが、一定の前進はあるものの、もちろん、解明には至りません。次回作に続きます。本作品では、デビュー作のようなゾンビ菌によるテロという非現実的な出来事ではなく、予言や予見といったオカルト的な要素はあるものの、あくまで現実の人間心理に基づく超常現象なしでの謎解きがなされます。そして、実に、論理的な犯人像の解明がなされますが、単独犯でなく協力者の存在がカギとなります。そして、最後に謎解きの本質には関係しませんが、大きなどんでん返しがあります。これはよく考えられたプロットだと感心してしまいました。ただ、このどんでん返しがあってもなくても殺人犯の解明には関係しないのは、少し残念な気がします。ミステリの謎解き、特に、長編ミステリの場合、好みにもよりますが、私はタマネギの皮を剥くように、少しずつ着実に謎が解明されていくようなプロセスが好きなんですが、この作品では、「名探偵、みなを集めて『さて』といい」のようなカンジで、最後の最後に一気に謎が解明されます。それはそれで、好きなミステリファンもいそうな気がします。相変わらず、地名や人名の固有名詞にセンスないんですが、それはそれとして、私は続編も読みたい気がします。
本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月からやや縮小して+0.6%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の全国消費者物価0.6%上昇 通信料値下げで伸びは鈍化
総務省が19日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比0.6%上昇した。プラスは30カ月連続となったが、上昇幅は前月(0.8%)に比べて縮小しており、2017年7月(0.5%)以来の低水準となった。携帯電話大手が通信料金を引き下げたことが物価の下げ圧力となった。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は同じく0.6%上昇だった。電気代などが前年に比べると依然として高い水準にあることや、人件費などが上昇している外食が、全体の物価を押し上げた。
もっとも、伸び率は前月からプラス幅が0.2ポイント縮小した。ガソリンが前年同月比でマイナスに転じたほか、足元で電気代や都市ガス代の上昇幅が縮小したことが響いた。携帯電話の通信料は大手各社の値下げの影響で、前年同月比で5.8%の低下となった。
生鮮食品を除く総合では全体の57.9%にあたる303品目が上昇した。下落は162品目、横ばいは58品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.5と前年同月比0.5%上昇、生鮮食品を含む総合は101.6と0.7%上昇した。天候不順の影響で、さくらんぼなどの価格が上昇したことが影響した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。
ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.5~+0.7%のレンジで中心値が+0.6%したので、ジャストミートしたといえます。また、引用した記事のタイトルはいかにも携帯電話の通信料金が、生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)上昇率縮小の要因であるかのような雰囲気を出していますが、私が従来から指摘している通り、我が国の物価はむしろエネルギー価格に敏感であり、特に、6月統計ではガソリンが5月の前年同月比+2.8%上昇から6月には▲2.7%と下落に転じたことから、ガソリンだけで5月から6月にかけての寄与度差が▲0.12%あり、ガソリンを含むエネルギー全体では寄与度差が▲0.19%となっていて、ほぼほぼエネルギー価格の動向だけでコアCPI上昇幅の縮小が説明可能です。他方、通信料(携帯電話)の前年同月比上昇率は、5月の▲4.2%下落が6月に▲5.8%に拡大したものの、寄与度差はわずかに▲0.03%に過ぎません。携帯電話通信料が消費者物価を押し下げたのは事実ですが、エネルギー価格ほどの影響ははなかったといえます。物価の先行きについて考えると、幼児教育の無償化が10月から始まれば、エネルギー価格の鈍化と相まって、この先CPI上昇率はさらに縮小すると私は予想しています。すなわち、消費税率引き上げの影響を除くベースで考えて、当面の足元では6月統計並みの+ゼロ%台半ばが続き、10月以降はゼロ%台前半にまで上昇率が縮小する可能性が高いと考えるべきです。
本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲6.7%減の6兆5845億円、輸入額も▲5.2%減の5兆9950億円、差引き貿易収支は+5895億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月輸出6.7%減、アジア向け減少 上期は8888億円赤字
財務省が18日発表した6月の貿易統計は、輸出が前年同月比6.7%減の6兆5845億円となった。減少は7カ月連続。米中貿易摩擦の影響で、中国を含むアジア向けが大幅に減った。2019年上期(1~6月)も16年下期以来5期ぶりの輸出減となった。
日本の輸出で5割強を占めるアジア向けは、6月が前年同月比8.2%減の3兆5636億円となった。このうち、中国向けは10.1%減の1兆2459億円と4カ月連続で減少した。液晶デバイスに使う半導体等製造装置が27%減、自動車部品は30%減だった。
中国は4~6月の国内総生産(GDP)が物価変動を除いた実質で前年同期比6.2%増と、統計を遡れる1992年以降で過去最低となった。需要が縮小し、日本からの輸出も幅広い品目が減少した。米国政府による中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への事実上の輸出禁止も影響が出ている。
一方で、米国向けは4.8%増の1兆3555億円だった。半導体製造装置や自動車の輸出が好調だった。
6月の輸入額は5.2%減5兆9950億円だった。6月の輸出額から輸入額を差し引いた収支は、19%減の5895億円の黒字だった。
19年上期の輸出は前年同期比4.7%減の38兆2404億円だった。上期の貿易収支は8888億円の赤字と、2期連続で赤字となった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、6月の貿易収支は+4000億円余りの黒字でしたので、実績で+6000億円近い貿易黒字はやや上振れた印象と私は受け止めています。ただし、輸出入ともに、前年同月から数パーセント減少した上での差し引きの貿易黒字ですから、まあ、縮小均衡と捉える向きもあるかもしれません。もちろん、世界経済の減速が大きな要因となった輸出入額の減少と考えるべきです。やや別の観点ながら、引用した記事もそうなんですが、ついつい、ボリューム感で中国に注目しがちなところ、実は、韓国についても6月貿易統計では輸出入とも減少しており、中国との輸出入の減少幅を上回る2桁減となっていることは忘れるべきではありません。すなわち、数字を少し詳しく取り上げると、6月単月の貿易統計ながら、季節調整していない原系列の統計で見て、対中国貿易は輸出額が▲10.1%減、輸入額が▲5.3%減ですが、対韓国貿易は輸出額が▲14.8%減、輸入額も▲13.6%減を記録しています。今年2019年上半期の1~6月期の統計で見ても、対中国輸出額が▲8.2%減に対して、対韓国輸出は▲11.1%減を示しています。中国については米中間の貿易摩擦とそれに起因する中国経済の減速が大きな要因なんでしょうが、韓国については、まだ情報が十分ではないものの、外交関係の冷え込みないし輸出規制が統計に表れ始めている可能性も否定できません。
輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、まず着目すべきは、ここ数か月の輸出額の減少はほぼほ数量が減少に寄与している点は見逃すべきではありません。6月統計では、季節調整していない貿易指数の前年同月比で見て、輸出額が▲6.7%減で、これを数量と価格に分解すると、価格の寄与は▲1.2%に過ぎず、数量が▲5.5%の寄与を占めています。輸出数量指数は昨年2018年11月から8か月連続で前値比マイナスが続いています。国別で見ると、一番下のパネルの中国の先行指数は、まだ前年同月比でマイナスながら、最悪期は脱して底入れしているようにも見えますし、真ん中のパネルの先進国もそろそろ底入れしそうに見えなくもないんですが、米中間の貿易摩擦の本格化や激化により、決して、世界経済とともに貿易関係も単調に回復に向かうかどうか、私は自信がありません。
続いて、国際機関のリポートを2本取り上げたいと思います。まず、貿易や経常収支とも関連して、昨日7月17日に、国際通貨基金(IMF)から 2019 External Sector Report が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。上のグラフは、リポート p.2 Figure 1.1. Evolution of Current Account Balances and Exchange Rates の 1. Current Account Balances, 1990-2018 (Percent of world GDP) を引用しています。黒い折れ線グラフで示された経常収支の黒字額と赤字額の合計の対世界GDP比は、2006~07年の6%近くから2013年の約3.5%へと急激に縮小した後、縮小ペースがやや鈍化し、2018年には約3%を記録しています。加えて、この不均衡縮小は新興国・途上国の寄与部分が大きく、先進国の不均衡はそれほど縮小していない、と指摘しています。また、フローの経常収支不均衡は縮小しているものの、ストックとしては依然として拡大を続けています。従って、ということで、何分、100ページを超える英文リポートですので、このリポートを取り上げた IMF Blog のサイトの表現を借りれば、主要国で対外債務がさらに拡大すれば、コストの大きい破壊的な調整を誘発する恐れがある "a further increase in countries' external debts in key countries could trigger costly disruptive adjustments" ことから、赤字国も黒字国も協力して、世界経済の成長と安定を支えるかたちで過度の世界的な不均衡を是正できるように取り組まねばならない "both surplus and deficit countries must work together to reduce excess global imbalances in a manner supportive of global growth and stability" と結論しています。その上で、不均衡是正の方法 How to tackle imbalances としては、貿易を歪めるような政策は世界の貿易・投資・経済成長に犠牲をもたらしがちであり、各国ともそうした政策は避けるべきである "all countries should avoid policies that distort trade, as they tend to come at the expense of global trade, investment, and growth" と、間接的な表現ながら、米中間の貿易摩擦を批判的に見ているようです。当然です。
さらに、本日7月18日、アジア開発銀行(ADB)から Asian Development Outlook 2019 Supplement が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。上のテーブルは、リポート p.3 Table 1 Gross domestic product growth (%) を引用しています。アジア途上国の成長率については、貿易摩擦の緊張が続いているものの内需の拡大に支えられ、4月時点の見通しと同じ2019年+5.7%、2020年+5.6%に据え置く "This Supplement maintains ADO 2019 projections from April for growth in developing Asia at 5.7% in 2019 and 5.6% in 2020, with domestic demand supporting expansion as trade tensions persist" と結論しています。
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甲子園で巨人に3タテされた後、何と中日にも3タテされて泥沼の6連敗でした。あまりにもベンチワークがつたなく、ただただ漫然とした試合運びに見えます。投手の打順で代打を送って継投、以外のベンチワークはほとんど見られません。それにしても、木浪選手をスタメン落ちさせたのはいいとしても、ショートの先発が鳥谷選手でなく植田選手だったのには とさせられました。私は鳥谷選手の猛烈なファンです!!!
もうやけくそで、
がんばれタイガース!
先週7月12日金曜日に日銀ワーキングペーパー「賃金上昇が抑制されるメカニズム」が、日銀調査統計局の職員と東大社研の玄田教授との共著で明らかにされています。もちろん、pdfでもアップされており、ダウンロードができます。玄田教授は、先年、『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』という本を編集しており、私もこのブログの2017年5月20日付けの読書感想文で取り上げています。ということで、本論文を私が読んだ範囲でのエッセンスについて簡単に取り上げると以下の通りとなります。
まず、第1に、本論文では、非正規雇用の労働市場がルイス転換点を迎えると、それ以前に比べて賃金はより急速に上昇する、と基本的な考えを明らかにしています。それが上のグラフで、ワーキングペーパーの p.4 (図表2) から引用しています。ルイス転換点に達すると労働供給曲線の傾きがスティープになります。ただ、上のグラフの右上がりの太線の労働供給曲線が賃金に対して弾力的であれば、すなわち、少しの賃金上昇で労働供給が大きく増加するのであれば、均衡賃金の増加は小幅にとどまり、2000年代には非正規雇用の労働供給の主要な担い手であった女性や高齢者は、まさに、この通りに労働供給の賃金弾力性が高かった、と指摘しています。
第2に、企業マインドや企業行動のひとつのパターンとして、賃金の上方硬直性を指摘する見方も紹介されています。すなわち、賃金はもともとケインズの指摘を待つまでもなく下方硬直性があるわけですが、この下方硬直性に起因して、将来の賃金引き下げを回避するために現時点では賃上げしない、という企業マインドや企業行動が観察されると指摘します。
第3に、ルイス転換点にホントに近づいているのか、という疑問に答えるため、留保賃金の動向からの分析があります。それが上のグラフで、ワーキングペーパーの p.10 (図表4) から引用しています。私はこの点がもっとも大きな疑問となっており、実は、ルイス転換点はまだそれほど近づいていないのではないか、別の表現をすれば、賃金上昇がみられない現状は完全雇用ではない、と考えなくもないんですが、この疑問にかなり正面から回答しようと試みています。その結果、男性と55歳以上高齢者は留保賃金が高くてまだルイス転換点には近づいておらず、潜在的な労働供給拡大の余地が残されている一方で、女性は留保賃金が低くてルイス転換点が近づいており、女性の労働供給をさらに増加させるためには大幅な時給上昇は不可欠、と結論しています。追加的に、労働力調査のフローデータの分析から、労働力人口ストックの拡大は女性と55歳以上高齢者が労働市場から退出あるいは引退しないことにより押し上げられていると指摘しています。
第4に、ある意味で日本的な賃金支払い方法として賞与の分析がなされています。それが上のグラフで、ワーキングペーパーの p.28 (図表20) から引用しています。見れば理解できる通り、特別給与=賞与は好景気-賃金上昇局面と不況期-賃金抑制局面で非対称性があり、企業の売上高利益率の1%の下落は今期のボーナスに対して4~5%程度の変化をもたらす一方で、利益率1%の上昇はボーナスを1~2%程度しか押し上げておらず、ボーナスには賃金上昇を抑制する方向での非対称性が存在する、と結論しています。ただ、惜しむらくは、この非対称性の原因は追求されていません。加えて、ボーナスと雇用流動性や転職との関係も分析されており、特別給与は人材流出対策として中高年よりも流動性が高い若年に手厚く配分されてきており、この点も賃金上昇を抑制する要因のひとつとなっていると指摘しています。
最後に、必ずしも賃金上昇に完結するトピックではなく、賃金上昇から物価上昇につながるルートについても分析が行われており、賃金と生産性と単位労働コストの関係については、特に、製造業、建設業、飲食・宿泊業等で賃金上昇を生産性の向上が相殺し、単位労働コストの上昇を抑制して、さらに、物価上昇に波及しないようなメカニズムができている、と指摘しています。ただし、運輸・郵便業では生産性向上は見られるものの、人手不足による賃金上昇の方が大きく、単位労働コストは結果として上昇しており、また、医療福祉業では賃金上昇とともに生産性も低下しており、単位労働コストが上昇している、と結論しています。
最後の最後に、今後の課題として上げられているうちで私の目を引いたのが、外国人労働者の就業は人工知能(AI)による技術革新とともに、労働需要の増大を緩和し賃金上昇を抑制する可能性です。その通りだと思います。
途中でも書いたように、私は、ホントに労働市場がルイス転換点に近づいているのか、別の表現をすれば、フィリップス曲線の傾きがスティープになる局面に入っているのか、その意味で、ホントに人手不足なのか、という疑問がありました。本論文による留保賃金の分析から、その点はかなりクリアになった気がします。ただ、1点だけマクロ経済の観点から労働分配率の低下が見逃されている気がします。すなわち、昨年2018年8月23日のこのブログで取り上げたように、IMF Working Paper WP/18/186 では、「先進国において雇用保護規制の緩和は15パーセントに相当する平均的な労働分配率の低下に寄与した可能性がある」("job protection deregulation may have contributed about 15 percent to the average labor share decline in advanced economies") と指摘しており、この労働分配率の低下が賃金上昇の抑制にどのような影響を及ぼしたのか、あるいは、逆なのか、すなわち、賃金上昇の抑制が労働分配率の低下につながったのか、が残されたマクロ経済学的な論点のひとつだという気がします。
先週相次いで、7月9日に東京商工リサーチから、さらに、7月11日に帝国データバンクから、消費税率の引き上げに関する企業の意識を問うアンケート調査の結果が明らかにされています。私の見るところ、ビミョーに結果が異なっています。
まず、上のグラフは東京商工リサーチから引用しています。見れば判る通り、予定通りの実施が51.4%の過半を制しています。また、昨年2018年9月時点の調査から、+4.4%ポイントの上昇となっています。ただし、消費税率引き上げの帰結として、景気がよくなるはわずかに0.7%であったのに対して、悪くなるは65.0%に上っています。
他方、上のグラフは帝国データバンクから引用しています。こちらは、予定通りの実施は44.1%を占めるに過ぎず、延期や実施しないなどの否定的見方が44.3%とほぼ拮抗する水神に達しています。しかも、昨年2018年10月の調査から+0.8%ポイントしか上昇していません。ですから、東京商工リサーチの調査結果に比較して、帝国データバンクの方は消費税率引き上げにやや否定的な見方を示している、というふうに私は受け止めています。
まあ、大雑把に、企業規模が小さくなるほど消費税率引き上げには否定的ですから、帝国データバンクに比較して東京商工リサーチの調査対象がやや大企業に偏っているんだろうと私は想像しています。あるいは、業種別に見ると、おそらく、小売業が飛び抜けて否定的な見方を示すでしょうから、そのあたりのサンプルのバイアスがあるんだろうと思います。当然ながら母集団は同じと考えるべきですから、このやや似通った両社の調査結果を見る時のサンプルの偏りを垣間見たような気がします。
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阪 神 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 0 | |
中 日 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | x | 4 | 10 | 0 |
オールスター戦でのタイガース選手の活躍こそ華々しかったんですが、甲子園でジャイアンツに3連敗した後は、中日にも競り負けました。チームのシーズンスローガンを実践しようという気がまったく感じられず、誰も何もぶち破ることなく、ただただ漫然とした試合運びに見えます。ベンチワークはほとんど見られず、投手の打順で代打を送って継投を考えるだけ、なんでしょうか。ベンチだけでなく、打者も投手も、誰も何もぶち破ろうという気はなく、私が長らく勤務していたお役所仕事のような野球でした。
がんばれタイガース!
とても旧聞に属するトピックで、まだ梅雨も明けていない段階ながら、先々週の木曜日7月4日にインテージから「汗とニオイ対策調査2019」の結果が明らかにされています。かなり大きなタイトルなんですが、中身は制汗剤市場の動向から始まっています。グラフをいくつか引用して簡単に取り上げておきたいと思います。
ということで、まず、上のグラフはインテージのサイトから制汗剤の市場規模推移と形状の構成比推移のグラフを引用しています。実は、2枚の別のグラフなんですが、私の方で勝手に結合させています。今年の調査結果の特徴のひとつは、上の棒グラフに重ねてある折れ線グラフに見えるように、2018年度に、長らく制汗剤市場でトップシェアを誇っていたパウダースプレータイプをシートタイプの売り上げが抜いた点であるとインテージは主張しています。調査で判明している15年間で、パウダースプレータイプは205億円から116.2億円と4割以上の減少を見た一方、シートタイプは41億円から116.4億円と3倍近く増加を示しています。ただ、私はトータルの制汗剤市場の規模にも着目していて、基本的に右肩上がりの売れ筋商品ながら、2014年度に落ち込みを見せているのは消費税率の引き上げがあったからなのかどうか、制汗剤市場を取り巻く個別の何らかの要因もあるのかもしれませんが、やや気にかかるところです。いずれにせよ、私はほとんど制汗剤を使用したことがなく、市場規模などについてもやや実感に薄いところです。というのも、やや理屈っぽいんですが、制汗するというよりも、自然に汗をかいた上で、そのニオイをどうするかの対策の方がいいんではないか、と考えていたりするからです。
ほかにも興味深い調査結果はいくつかあるんですが、大胆に割愛して最後に、上のグラフはインテージのサイトから行っている汗・ニオイ対策のグラフを引用しています。上位15位までであり、トータルのほかに男女でも判るようになっています。少し縮小していますので見にくいかもしれませんが、明らかに、女性の方が対策を実施している割合が高く、逆に、何もしていない割合は男性の方が高くなっています。当然です。特に大きな差が見られるのは、本調査のメインテーマである「制汗剤を使う」となっているようです。ただ、洗濯や食事で気を遣うのは家族任せにしている男性もいそうな気はします。ちなみに、私自身は汗をかきやすい季節だけでなく、オールシーズンで「フレグランスや香水を使う」だったんですが、定年退職する前の研究所と違って、今のオフィスはやや人口密度が高いような印象があり、加えて、まだ本格的に汗をかく夏の前の梅雨が続いていて、現状は「対策はしていない」ということになっています。私の場合は、それほど汗かきでもなく、むしろ、プールで泳いだ後のカルキのニオイが抜けなかったりして、ついついフレグランスに頼ってしまいます。プールの後のカルキのニオイも含めて、あるいは、年齢的な加齢臭まで含めて、まあ、定年退職した60代ですので、多少のエチケット違反は大目に見てもらえるんではないか、という甘い気がしなくもありません。でも、そのうちに今の職場でもフレグランスにチャレンジしたいとは思っています。
最後に、実は、インテージのサイトにある最新の調査結果のニュースは、7月9日に明らかにされた「食事法・食スタイル実態2019」であり、ローカーボ食とか、ヴィーガンやマクロビアンとかのベジタリアンとか、グルテンフリーとか、ファスティングなどの食スタイルに着目しているんですが、少なくとも、私は60歳を超えてからは、ダイエットや体重についてはまったく関心を失いました。というのは、年齢的に暴飲暴食の機会も多くありませんし、暴飲暴食の量も昔ほどではなく、たとえ暴飲暴食で体重が増加したとしても、その後、下痢や食欲不振に陥って数日で体重が戻ります。知り合いの、特に、女性からはとてもうらやましがられる場合があるんですが、それほど健康的というわけでもないような気がしてなりません。
このところ、経済書はやや失敗読書が続いていたんですが、今週は一昨日に取り上げた『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』もよかったですし、バルファキス教授の話題の本もよかったです。ということで、今週も経済書をはじめとして、計7冊の読書でした。今日、読書感想文でまとめて取り上げるのは6冊ですが、ご寄贈いただいた『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』を一昨日に取り上げており、これを勘定に入れて計7冊という意味です。なお、梅雨の中休みをついて、本日のうちに、すでに自転車で図書館をいくつか回っており、来週も数冊の読書になりそうです。
まず、ヤニス・バルファキス『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社) です。著者は、ギリシア出身の経済学の研究者にしてギリシアが債務危機に陥った際に政権を取った急進左派連合シリザのツィプラス政権で財務大臣に就任し、大胆な債務削減を主張しています。このブログの4月28日付けの読書感想文で取り上げたバルファキス『黒い匣』で詳細にレポされている通りです。本書も『黒い匣』以上に話題の書です。原書はギリシア語だそうですが、邦訳の底本となった英訳書の原題は Talking to My Daughter about the Economy であり、2013年の出版です。ということで、10代半ば、ハイスクールに通う娘にエコノミストの父親が経済について解説しています。ここで経済とは資本主義経済のことを指しています。ですから、まず、経済格差の解明のために経済史を振り返ります。すなわち、必要最低限の生産だったものが余剰が出ることにより、それを我が物にする階級が現れ、その根拠付けのために宗教などが動員されるわけです。明記はされていませんが、背景には生産力の増進があります。そして、この歴史の考えはマルクス主義的な唯物史観そのものです。その中で、産業革命がどうして英国で始まったのかについて、p.67で解説されています。3番目の観点は、いかにもノースらの制度学派的な見方で、私は目を引かれました。そして、産業経済から金融経済の勃興、さらに、産業経済の中でも製造業における機械化の進展、20世紀に入って世界恐慌からケインズ経済学による政府の経済への介入、最後は、ギリシア的にアリストテレスのエウダイモニアに行き着くんですが、その前に、すべてが商品化される資本主義経済に対して、著者は「すべてを民主化しろ」と叫びます。常々、このブログで私が主張しているところですが、資本主義経済と民主主義は矛盾します。民主主義は1人1票の制度ですが、資本主義経済では株主総会のような購買力による格差があります。この矛盾を背景に、著者は資本主義経済ではなく民主化の方向を志向します。この点はキチンと読み取るべきです。
次に、飯田泰之『日本史に学ぶマネーの論理』(PHP研究所) です。著者は、明治大学の経済学の研究者であり、リフレ派に近いと私は認識しています。本書は、タイトル通りの内容を目指しているようなんですが、前半の「日本史に学ぶ」部分はともかく、タイトル後半の「マネーの論理」はどこまで迫れているのか、やや疑問です。本書の対象とする期間は、7世紀の律令制の時代、我が国では古典古代の時代から、19世紀の江戸期までで、近代は対象外となっています。そして、本書の冒頭は、白村江の戦いで倭が唐の水軍にボロ負けするところから始まり、唐に敗北した国家の再建、というか、国家とは広範囲における安定した統治の実現である、というところから貨幣の鋳造が志向された、と解説しています。まあ、本書のスコープからすればそうなんでしょうが、もちろん、貨幣鋳造以外にも、律令という名の法制度の整備、碁盤目状の街路を整備した首都、あるいは、宗教上のシンボルとしての大仏、などなど、少しは言及して欲しい気もします。そして、本書のスコープそのものであるマネーの論理、というか、貨幣論についても、かなりガサガサだというふうに私は受け止めました。貨幣とは、あくまで、他の人々も貨幣として受け取ってくれる、という同義反復的な定義が適用されるというのは、私もその通りだろうと思います。ただ、歴史を紐解いているわけですから、もう少し厳密に歴史に当たって欲しかったです。特に、史料の残っている江戸期については、私でも徳川幕府による三貨制の金貨・銀貨・銭だけでなく、いかにも封建的な領主による藩札の発行もあれば、堂島の米切手が貨幣と同じように、すなわち、みんなが貨幣として受け取ってくれるがゆえに貨幣の役割を果たしていた点も、中央政府の発行する貨幣でないから無視したのか、それともご存じないのか、私には判りかねますが、マネーの論理とともに、歴史についても、もう少し読み応えある展開が欲しかったです。決してブードゥー・エコノミクスではありませんし、右派的な経済論が展開されているわけでもないんですが、ピント外れというか、経済書にしてはとても物足りなかった読書でした。
次に、リジー・コリンガム『大英帝国は大食らい』(河出書房新社) です。著者はイングランドの歴史研究者です。本書の英語の原題は The Hungry Empire となっており、直訳すれば「腹ペコの帝国」とでもなるんでしょうか。2018年の出版です。ということで、大英帝国における食の探求と大英帝国の形成そのものの密接な関係について、グローバルな視点から歴史的に解き明かそうと試みています。4部20章の構成となっています。各章のタイトルが中身のトピックをかなり詳細に表現しています。大英帝国とは、明らかに、海の帝国であり、世界各地からいろんな食材と調理方法を本国に持ち帰ります。ただ、基本は食べる方ですので、カリブ海のラム酒なども垣間見えますが、お酒をはじめとする飲み物はメインではありません。大英帝国の本国は欧州の西端に位置する島国であり、産業革命を経て工業や商業、とりわけ金融業については世界をリードしていた時期が長かったわけですが、農業や食料生産については決して恵まれた条件にはなく、世界各地、特に北米植民地や大洋州のオーストラリア・ニュージーランドなどの農業生産に適した植民地からかなり大量に食料を輸入して食卓が出来上がっているわけです。また、帝国主義時代には戦争や軍事衝突も少なくなく、保存食の研究なども世界に先駆けて行われています。大英帝国の前のポルトガルやスペインなどによる大航海時代には、アジアの胡椒を入手するのが大きな目標だった時代もあるんですが、大英帝国では食そのものの通商が盛んになります。インドの紅茶にカリブ海やブラジルの砂糖を入れ、カナダやオーストラリアの小麦で作ったパンを食べる、といった大英帝国の食生活が徐々に確立していく段階を歴史的に跡付けています。ただ、必ずしも記述の順が一貫性なく、少なくとも編年体では構成されていません。ですから、場合によっては、章を進むと時代がさかのぼる、といったことも起こります。ただ、さすがに歴史から敷く、イングランドとイギリスの区別はちゃんとされています。ユーラシア大陸の反対側の東端に位置する島国の日本はほとんど登場しませんが、世界的な食生活の歴史がとても分かりやすく展開されています。グローバル化の進展の中で、EUを離脱しようとしている英国の栄光の時代の記録かもしれません。最後に、注を入れれば400ページを超えるボリュームで、とても面白い本ながら、読むにはそれなりの覚悟を要します。
次に、北岡伸一『世界地図を読み直す』(新潮選書) です。著者は、長らく東大の政治学の研究者だった後、国連代表部大使を務め、現在では国際協力機構(JICA)の理事長職にあります。実は、私の高校の先輩で、その昔には東京の同窓会会長だったりもしたと記憶しています。本書は、新潮社の『フォーサイト』に連載されていたコラムを単行本に取りまとめています。副題は「協力と均衡の地政学」となっていて、確かに地政学的な考察も盛り込まれていますが、まあ、基本はJICA理事長として訪問した世界各国の紀行文に近いと私は受け止めています。ですから、悪くいえば、世界各国の実情について国際協力の供与サイドから「四角い部屋を丸く掃く」ような紀行文と考えるべきです。しかも、国際協力=ODA実施機関の理事長の訪問先ですので、ほぼほぼすべてが途上国となっていて、欧米をはじめとする先進国は取り上げられていませんし、中国も対象外となっているのかもしれませんから、やや世界地図や地政学を銘打つにしては対象が狭い印象があります。ということで、著者の視線としては3つのポイントを据え、すなわち、第1に、先進国や中国が抜けているにもかかわらず、地政学の観点からのアプローチを取ろうと試みています。この点は、私は専門外ながらハッキリいって、失敗しているよな気がします。これは取り上げている国に偏りがあるからで、先進国や中国に加えて、アジアでもASEAN創設時のオリジナル加盟国5か国がスッポリと抜け落ちています。第2に、日本とのかかわりの中で途上国をとらえようと試みています。この点はまあいいんではないでしょうか。ただ、JICAの前身が海外移住事業団でしたから、ブラジルなどはしょうがないんでしょうが、やや現地移住者からの情報に偏りがあるような気がしないでもありません。かなりさかのぼって、歴史的に我が国との関係を把握しているのは心強い限りです。最後に第3に、著者のJICA理事長職としての機能的あるいは権能的な部分だけでなく、研究者や国連大使経験者としての幅広い観点からの人脈が生かされているように見えます。この点はさすがであると受け止めています。JICA理事長には、かつての緒方貞子女史のような個性豊かな国際派が就任したりしていましたが、政治学の研究経験者もいいんではないか、と思わせるものがありました。でも、開発経済学の専門家もJICA研だけでなく、JICA本体のトップにもいかがでしょうか?
次に、横山秀夫『ノースライト』(新潮社) です。著者は、ファンも多いベテランのミステリ作家です。最近では、映画化もされた『64』の原作を私は読んだ記憶があります。本書は、建築家、というか一級建築士の青瀬稔という人物を主人公に、その建築士が設計して、「平成すまい200選」にも選ばれた家の施主が一家ごと集団で失踪した事件を、その建築士が自ら謎を解明すべく事実の確認に当たる、というものです。そこに、主人公の家族、子供のころも父母と少し前までの妻と子供、離婚してから思春期に差しかかった娘、そして、勤務する小規模な建築事務所の直面する危機などを織り交ぜながら、かなり時間軸として長い物語が展開します。なぞ解きのミステリとしてはともかく、家族や人生を長期に展開する大作といえます。ということで、主人公の青瀬の子供時代は、父親がダム建設に関する熟練工でありことから、経済的には恵まれた状態にありながら、高度成長期の日本各地を転々とする生活を送ります。大学は中退したものの一級建築士の資格を取得し、バブル経済期には豪勢な生活を送って結婚もし子供もできる一方で、バブル崩壊後は転落の人生の危機を迎え、結局、大学の同級生が所長をする建築事務所に勤務するものの、結婚生活は破綻し子供とは月に1度しか会えません。そして、青瀬の代表作となり「平成すまい200選」にも掲載されたY邸の施主と連絡が取れなくなり、信濃追分のY邸まで青瀬が出向いたところ、Y邸には施主一家が引っ越した後がなく、タウトの椅子が置いてあるだけでした。他方で、青瀬の勤務する建築事務所は著名芸術家の記念ミュージアム建設のコンペに参加する権利を獲得したものの、市政との癒着を全国紙で指摘され、コンペは辞退し建築事務所の所長は入院した病院から転落死してしまいます。最後が、かなり一気に終わる、というか、途中までタマネギの皮をむくようにジワジワと真実に迫った青瀬なんですが、なぞ解き部分が建築事務所の所長の葬儀あたりから一気に進んで、割合とあっけなく謎が解明されます。そうでなくても、かなりのボリュームを要した大作ですから、これ以上長くするのにはムリがあったのかもしれませんが、ここまで余剰を残した終わり方なのであれば、もう少しなぞ解きの部分もゆっくりと進めるわけにはいかなかったのか、と、やや残念に思わないでもありませんが、途中まで見事に読者をミスリードしながら、実に見事、というか、やや不自然ながらも予期せぬ終わり方には、それなりの感慨もなくはありません。なお、タイトルは北からの採光を意識した住まいのつくりのことで、北半球では柔らかな採光になるような気がしますが、何度かこのブログでお示ししたように、私の在チリ大使館勤務のころの経験として、ごく当然ではあるんですが、南半球では太陽は北を回りますから、北向きのベランダの採光がすぐれています。どうでもいいことながら、ご参考まで。
最後に、朝倉かすみ『平場の月』(光文社) です。何となく、舞台が東武東上線沿線っぽくって、朝霞、新座、志木といったあたりの地域性が出ているような小説です。基本は長編小説ですが、各章を短編に見立てて読めば立派な連作の短編集といえるかもしれません。読み方次第だという気もします。作者は北海道出身の小説家であり、私は不勉強にして、この作品を初めて読みました。この作品で山本周五郎賞を受賞するとともに、直木賞候補に上げられています。私はこの作品は大衆小説とかエンタメ小説ではなく、純文学であると受け止めています。まあ、私の解釈からすれば、落ちはない、ということです。そして、ラブストーリーです。50歳に手が届く中学校の同級生だった中年男女のラブストーリーです。ということで、舞台は埼玉の中でも東京に近い地域であり、登場人物は主人公の男性、青砥のほか、中学の同級生が多く登場します。特に、青砥が中学のころに告白したこともある須藤が青砥とペアをなします。青砥は検査を受けた腫瘍が良性であった一方で、須藤の腫瘍の方はがんと宣告されたりもします。そして、第6章、あるいは、第6話から須藤はストーマ、すなわち、人工肛門を付けることになります。抗ガン剤治療で髪も抜けます。そして、最後には須藤は死にます。50歳でがんなんですから、常識的に死ぬんだろうと思います。そういう意味では、ラブストーリーの中でも悲恋の物語なのかもしれません。第2章のタイトルにもなっていますが、「ちょうどよくしあわせ」というのがひとつのキーワード、というか、本書のテーマになっています。でも、ラブストーリとしては物足りません。50歳だから、というのでもないのでしょうが、燃え上がるものがない一方で、生活感が充満しています。ただ、それを評価する読者も少なくなさそうな気がします。私は、まあ、もういいかな、というカンジです。ワクワクする読書ではありませんでした。ただ、何度も逆接でつなぎますが、それがいいという読者もいそうな気がします。
旧聞に属する話題ながら、先週木曜日の7月4日付けで、マクロミル・ホノテから「2019年会社員の夏休み」調査の結果が明らかにされています。私の勤務するオフィスでも、今週あたりから夏休みの休暇予定の取りまとめが始まり、梅雨も明けないうちから雰囲気が盛り上がっているのかもしれません。まず、マクロミル・ホノテのサイトから調査結果のTOPICSを6点引用すると以下の通りです。
TOPICS
- 会社員の夏休み、タイミングは"お盆"がダントツ。一方で、会社員の5人に1人が"夏休みなし"
- 連休日数は平均「6.5連休」。最多は「9連休」で22%
- 連休日数の"理想と現実"の間には1.2日の差。昨年よりも差が縮まる
- 4月からスタートした有給休暇の取得義務化。
"夏休みにつなげて有休取得"が「推奨されている」26%、「義務付けられている」5%- 休みの予算は、平均48,977円。昨年よりも大きく減少
- 夏休みの過ごし方、1位は「家でゆっくり」49%。その2人に1人が「たっぷりと睡眠をとる」
元官庁エコノミストとして気になっているのは、5点めの夏休み予算の激減なんですが、それも含めて、いくつか図表を引用しつつ、週末前のお気楽なテーマとして、簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上はマクロミル・ホノテのサイトから会社員の夏休みの有無と時期のグラフを引用しています。「夏休みの有無」というのが、会社員ではなく公務員だった私には判りにくいんですが、製造ラインを止めるとかで特定の日付を休みにする制度がある、という意味なんでしょうか。私が定年退職まで勤務していた役所には、連続であれば有給休暇にプラスして3日の休みが追加で取れる、という制度はありました。これも夏休みなんでしょうか。よく判らないながら、8割の会社員は夏休みがあり、その夏休みの時期は8月のお盆周辺が過半を占めています。これは判りやすい結果となっています。
次に、上はマクロミル・ホノテのサイトから夏休みと有給休暇をつなげることが推奨または義務付けられているかのグラフを引用しています。見て判る通り、推奨が26%、義務が5%となっています。その昔から、日本人は働き過ぎで労働時間が長い、とされていますので、夏休みがあるケースでは有給休暇とすなげて、より長い休暇を取るように推奨したり、あるいは、義務付けたりするのもアファーマティブ・アクションとしてよさそうな気もします。ただ、パーソナルな予定とミートしない夏休みの設定の場合、義務とされてしまうとかえって苦しくなる可能性もあるんではないかという気がします。
最後に、上はマクロミル・ホノテのサイトから最大連休日数の理想と現実、また、予算の平均を示す画像を引用しています。連休日数の理想と現実については、昨年2018年のその差2日余りから、今年2019年は1日余りに激減しました。ついでに、平均予算も1万円近く激減しています。マクロミル・ホノテのサイトでも考慮しているように、今年はゴールデンウィークが10連休と超大型でしたので、お休みもお休みで使う予算もゴールデンウィークと夏季で分散したのだろうと私は受け止めています。
ご寄贈いただいた松尾匡『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』(青灯社) です。ご著者は、松尾先生と「ひとびとの経済政策研究会」となっていて、私は松尾先生にお礼のメールを差し上げておきました。すでに、役所を定年退職して、もともと大したことのなかった影響力がすっかりなくなったにもかかわらず、いまだにご著書をご寄贈いただけるのは有り難い限りです。
まず、どうでもいいことかもしれませんが、少しは気にかかるところで、本書タイトルの「左派・リベラル派が勝つ」というのは、何に勝つのか、という点なんですが、基本的に選挙に勝って政権を奪取する、という意味のようです。まあ、単なる選挙での躍進で議席数を増やして、与党が改憲に必要な議席数に到達するのを阻止する、というのも意味あるかもしれませんが、私はそれでは物足りません。政権を取って政策を実行する足がかりとすべきと考えます。また、どうでもいいことながら、自称マルキストの中には、政権奪取のためには選挙ではなく、もっと暴力的な手段に訴えかねない人たちがいる可能性は否定しませんが、私自身はそんなことはありませんし、おそらく、ご著者の方々も私と同じではなかろうかと想像できます。しかも、政権選択選挙ではありませんが、参議院議員選挙という国政選挙がすでに公示されているタイミングです。
本書は2部構成で、前半は松尾先生が左派・リベラル派の経済政策のバックグラウンドとなる理論を展開し、第1部の末尾にはQ&Aまで付し、第2部では選挙の際のマニフェストの案が示されています。ということで、世論調査や内閣支持率の分析から本書は始まります。そして、若い世代では経済政策を重視し現政権支持率が高い一方で、年配世代は内閣支持率低い、という事実を明らかにしています。私も定年退職するまで、総理大臣官邸近くのオフィスに通っていましたから、官邸や国会議事堂などに向けて何らかの意思表明する人々を見かけることも少なくなかったんですが、大雑把に、年配は左翼的な主張、若者は右派的な意見表明、というパターンが多かったような実感を持っています。そして、少なくとも、現在の安倍内閣で経済や雇用が改善したのは事実です。本書でも、pp.38-40のいくつかのグラフで定量的に実証しています。もちろん、背景には、その前の民主党政権の経済政策がパッとしない、というか、ハッキリいえば、ひどいものだったので、安倍内閣になってその前に民主党政権時の経済政策が否定されただけでOK、という面があるのも確かです。ただ、さらにその前を振り返れば、小泉内閣の時のいかにも右派的な構造改革という名の供給サイド重視の経済政策で実感なき景気回復の果てに、2008年の米国のサブプライム・バブル崩壊による世界不況が民主党への政権交代を促したのも事実です。ですから、1992年の米国大統領選挙時に、当時のクリントン候補が標榜していた "It's the economy, stupid!" というのは今でも真実なんだろうと思います。それに対して、本書で指摘しているように、左派・リベラル派は景気拡大に対してとても冷たい態度を示し、「脱成長」を主張する場合すらあります。ですから、年金をもらってぬくぬくと生活している高齢世代はともかく、リストラされないように必死に働いている若い世代の間で左派への支持が低いのは、ある意味で、当然です。本書でも、米国のトランプ大統領、フランス大統領選挙で一定の支持を集めたルペン党首、など、経済政策的には反緊縮で金融緩和支持の左派的な政策志向を示すポピュリストが少なくないと指摘しています。実は、ナチスのヒトラーがそうだったわけですが、同時に、現在では、欧米の主要な左派、すなわち、英国労働党のコービン党首、スペインのポデモス、米国のサンダース上院議員などと大きな違いはありません。ですから、本書で明確に指摘されているわけではありませんが、右派と左派で大きく経済政策が異なるのは先進国では日本くらいのものかもしれません。第2部の選挙マニフェスト案では、消費税を5%に戻すとともに、法人税を増税し、所得税の累進性を強化することにより、医療や教育の充実を図る、との方向が示されています。従来から、私はインフラ投資はまだ必要なものが残っている、と主張しているんですが、第2部のマニフェスト案でも必要な公共投資は実行するとされています。そして、ベーシックインカムの導入に加えて、目立たないんですが、TPPは白紙に戻すとされています。私は全面的に賛成です。ただ、私の単なる趣味かもしれませんが、ベーシックインカムが格差是正の政策というのは理解するものの、ベーシックインカムと累進税制の強化のほかにも何か格差是正策があれば、なおいいんではないかと思います。
最後に、本書でも簡単に触れられているんですが、米国のサンダース上院議員の経済ブレーンであるケルトン教授らの支持する現代貨幣理論(MMT: Modern Monetary Theory)に関して、現時点では直感的に成り立つ可能性を私は感じているんですが、不勉強にして、それほど大きな確信があるわけではありません。その昔の税収に関するラッファー曲線は、レーガン大統領の時のブッシュ副大統領が "voodoo economics" と評したらしいんですが、よく考えると、税率ゼロで税収ゼロは当然としても、税収は税率の上昇に従った単調な増加関数ではない可能性も十分あり、どこかで税収を最大にする税率がありえることは直感的に理解できなくもありません。ラッファー曲線と同列に議論するのは気が引けるものの、現時点では日米両国の財政当局や中央銀行からMMTはかなり批判されているように見受けられる一方で、確かに、財政赤字がGDP比で発散すれば何らかの不均衡を招く可能性が高いと私は考えるものの、自国通貨建ての国債発行で財政資金を調達し、その国債は中央銀行が市中から買い上げれば、いわゆる「雪だるま式」に発散しない可能性も理解できなくもありません。もう少し勉強したいと思うのですが、なかなか能力も時間も不足しています。
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読 売 | 1 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 10 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 8 | 0 |
メッセンジャー投手が早々にノックアウトされて、なすすべなく巨人にボロ負けでした。スカイAでテレビ観戦していたんですが、解説の掛布さんの分析がいちいちごもっともで、早く監督になっていただきたいと感じずにいられませんでした。原口選手を早めに代打で投入して勝負をかける、というのは、私が昨夜の試合で主張した8回の糸原キャプテンの打席での投入、というのと相通ずるものがあったような気がします。いずれにせよ、メッセンジャー投手がボロかった一方で、先発をつないだリリーフ陣はほぼほぼ完璧だったんですが、いつもの貧打が続き、決定打なく得点力に欠けます。ベンチも、選手も、漫然と野球しているような気がしてなりません。
オールスター期間はしっかり休んで、
がんばれタイガース!
本日、日銀から6月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.1%の下落と、とうとうマイナスになってしまいました。前年比マイナスは2016年12月の▲1.2%以来、1年半ぶりです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の企業物価、前年比で下落に転じる 2年半ぶり 米中摩擦響く
日銀が10日発表した6月の国内企業物価指数(速報値、2015年平均=100)は101.2と、前年同月に比べて0.1%下落した。前年比で下落に転じるのは2016年12月以来2年半ぶり。前月比でも0.5%下落した。米中間の貿易摩擦懸念の高まりを背景に国際商品市況の悪化が国内企業物価を押し下げた。
米中の追加関税引き上げ措置などを受けて米中貿易摩擦への懸念が再燃した。商品市況の悪化を背景に、銅など非鉄金属が前年比9.3%下落と前月から下落幅を拡大したほか、スクラップ類も同15.4%下落した。
日銀調査統計局は「米中摩擦に対する市場の見方が商品市況にどう影響するかに大きく左右される展開が続くとみられる」という。
公表している744品目のうち、前年比で上昇したのは378品目、下落したのは275品目だった。上昇から下落を引いた品目がプラスとなるのは27カ月連続だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、ヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率で見て+0.3%と、大きくプラス幅が縮小するものの、まだプラス圏内ということだったんですが、実績ではマイナスの結果となりました。予測のレンジでも、下限がゼロでしたので、その下限を突き抜けたマイナスですので、ややびっくりです。米中貿易摩擦に起因する国際商品市況の下落が大きな要因と考えられ、例えば、すべて前年同月比で見て、国内物価では非鉄金属が▲9.3%、石油・石炭製品が▲5.5%、化学製品が▲2.4%などが大きなマイナスをつけています。ただ、電力・都市ガス・水道についてはタイムラグがあって+5.4%の上昇を記録しています。また、同じように、輸出物価でも化学製品▲12.2%、金属・同製品▲5.8%が大きなマイナスで、輸入物価でも金属・同製品▲8.4%、石油・石炭・天然ガスが▲7.0%、化学製品が▲6.8%などとなっています。国際商品市況における動きの激しい品目や中国の需要に大きく左右される品目の下落が大きい印象です。そして、これらの国際商品市況の動向については、実需もさることながら、米中間の貿易摩擦やそれに基づく世界経済の先行きなどに関する期待の影響が大きく、ひょっとしたら、企業物価については日本国内の金融政策よりも国際経済動向の方にウェイトがあるのかもしれません。日銀の物価目標はあくまで消費者物価(CPI)、それも生鮮食品を除くベースのコアCPIですが、当然ながら、その川上に当たる企業物価(PPI)の影響も強く受けます。合わせて、為替動向も見極めて、米国連邦準備制度理事会(FED)の金融政策動向も考慮に入れつつ、日銀による金融政策の舵取りが難しくなってきたように感じています。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
読 売 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 5 | 1 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 0 |
今夜の敗因はベンチワークの差でした。選手はよくやっていますが、8回ウラの攻撃は近本選手がバントで送った後は、糸原キャプテンながら代打原口選手ではなかったでしょうか。9回表に選手はベンチの指示なしによく守りましたが、9回ウラのジャイアンツの細かな継投を見るにつけ、ベンチワークの差が際立ちます。9回ウラにツーアウト一塁で原口選手を代打に送るのであれば、8回のワンアウト二塁で打席に立たせたかった気がします。大胆さも繊細さも感じられない漫然たるベンチワークでした。
明日は3タテを防ぎ5割をキープすべく、
がんばれタイガース!
やや旧聞に属する話題かもしれませんが、7月4日にJTBから2019年夏休みの旅行動向が明らかにされています。ここでの夏休みとは、7月15日の海の日から8月31日いっぱいまでです。もちろん、詳細なpdfの全文リポートもアップされています。まず、JTBのサイトから調査結果のヘッドラインを4点引用すると以下の通りです。
2019年夏休みの旅行動向
- 海外旅行人数は過去最高
- 総旅行人数は7,734万人(▲0.1%)と微減
- 国内旅行人数 7,435万人 (▲0.2%)
- 海外旅行人数 299万人 (+3.5%)
ということで、今年は7月も8月もそれぞれ海の日と山の日の3連休がありい、カレンダーの日並びはいい一方で、夏季ボーナスが昨年より減少したり、米中貿易摩擦に起因してビジネス環境の不透明感が広がったりと、様々な条件を考慮して策定されているようです。加えて、この夏から秋にかけてのイベントとしては、香川県と岡山県の12の島と港で開催される現代美術の国際芸術祭「瀬戸内国際芸術祭2019」(7月19日~8月25日)や、来年2020年を前に開催されるスポーツイベントなどがあるそうです。海外旅行に関しても、為替がやや円高に振れていることや、座席供給数の増加などから、特に、若い世代の海外旅行意欲が高い、と結論しています。2000年以降の総消費額と旅行者数の推移をプロットしたグラフは下の通りです。
我が家は、私がもう定年退職して、老夫婦で旅行するというよりも、子供達が夏休みに帰省で我が家に帰って来るのを待つ姿勢に変化してしまいました。近場に繰り出すことはあっても、たぶん、旅行らしい旅行はしないような気がします。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
読 売 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 4 | 9 | 1 | |
阪 神 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 12 | 1 |
4番大山選手がブレーキで巨人競り負けでした。ただ、投手陣もピリッとせず、打者に決定打がなければ、投手も抑え切ることも出来ず、西投手やジョンソン投手がボロボロと崩れて失点し、打者はチャンスに外野フライも打てずに凡退し残塁の山を築く、といった歯がゆい阪神らしい試合だった気がします。広島を叩いて、巨人を手助けし、今年のセリーグはジャイアンツの独走をタイガースがアシストするのでしょうか?
明日は、
がんばれタイガース!
本日、内閣府から5月の機械受注と6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲7.8%減の8429億円を示しており、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.1ポイント低下の44.0を記録した一方で、先行き判断DIは+0.2ポイント上昇の45.8となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆5948億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
5月の機械受注、7.8%減 基調判断は据え置き
内閣府が8日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比7.8%減の8429億円だった。4カ月ぶりの減少で、QUICKがまとめた民間予測の中央値(4.0%減)を下回った。2018年9月以来8カ月ぶりの下げ幅となったものの、直近3カ月でみると堅調さを維持しているとして内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
製造業の受注額は前月比7.4%減の3706億円だった。2カ月ぶりの減少で、17業種のうち7業種で減少した。4月に大型案件があった「造船業」や、好調だった「はん用・生産用機械」での反動減が目立った。
非製造業も同9.0%減の4710億円。前月比で3カ月ぶりの減少となった。「運輸業・郵便業」でのパソコンなどの受注減が響いた。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は3.7%減だった。前月比でみた受注総額は6.0%減、官公需の受注は19.5%増、外需の受注額は0.8%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
6月の街角景気、現状判断指数は3年ぶり低水準 旅行など反動減で
内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は44.0と前の月から0.1ポイント低下(悪化)し、2016年6月以来3年ぶりの低水準となった。悪化は2カ月連続。旅行などのサービス分野で、好調だった5月の10連休の反動が出た。内閣府はウオッチャーの見方を「回復に弱さが見られる」で据え置いた。
家計動向、企業動向、雇用動向の中で家計動向が低下した。サービス関連が3.5ポイント低下したことが響いた。「大型連休の反動もあり、個人の客足が非常に鈍い。企業も団体旅行など足踏み状態であり、様子見」(甲信越の旅行会社)といった声があった。
企業動向関連では非製造業が1.7ポイント低下した。「日中間の輸出入の件数が10%ほど落ち込んでいる」(東海の輸送業)などと、米中貿易摩擦の影響を指摘する声が聞かれた。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は45.8と、前の月から0.2ポイント上昇した。上昇は5カ月ぶり。家計動向、雇用関連が上昇した。「百貨店や家電量販店などで10月に控えた消費増税前の駆け込み期待が見られる」(内閣府)という。
内閣府はウオッチャーの先行きの見方について「海外情勢等に対する懸念がみられる」とまとめた。
調査期間は毎月25日から月末で、29日実施の米中首脳会談の調査結果への反映はまちまちだという。
5月の経常黒字額は15.8%減 中韓向け輸出減で貿易収支の赤字拡大
財務省が8日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆5948億円の黒字だった。黒字は59カ月連続となったものの、黒字幅は前年同月比で15.8%縮小した。中国や韓国向けの輸出が振るわず、貿易収支の赤字幅が拡大したことが影響した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6509億円の赤字(前年同月は3158億円の赤字)だった。中国や韓国向けに半導体等製造装置の輸出が減少したほか、中国向けに自動車部品の輸出も減少した。輸出額は前年同月比6.3%減の5兆9180億円だった。輸入額は同0.9%減の6兆5690億円だった。液化天然ガスや有機化合物の輸入が減った。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は2兆2574億円の黒字だった。一部の特殊要因により海外子会社からの配当金が減少し、前年同月の2兆3994億円の黒字から黒字幅は縮小した。
第2次所得収支は1488億円の赤字(前年同月は1989億円の赤字)だった。輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は1372億円の黒字(前年同月は103億円の黒字)と、黒字幅が拡大した。
とてつもなく長くなりました。この記事さえしっかり読めばそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
ということで、5月の機械受注は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済み系列の前月比で▲4.5%減、レンジの下限でも#x25B2;7.4%減でしたので、やや大きな減少と私は考えたんですが、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いています。というのは、5月の10連休が何らかの影響を及ぼしている可能性がエコノミストの間で取り沙汰されており、その根拠は、今年2019年に入ってから伸びを続けてきた運輸業・郵便業が大きく伸びを鈍化させているからです。いずれにせよ、季節調整済みの系列の前月比で見て、製造業が▲7.4%減、電力と船舶を除く非製造業が▲9.0%減ですから、かなり多くの業種で減少していることが理解できます。コア機械受注は今年2019年に入ってから、1月こそ▲5.4%減を記録したものの、2月は+1.8%増、3月+3.8%増、4月も+5.2%増と3か月連続の前月比プラスとなっていたわけで、4~5月をならしてみればほぼ横ばいですから、大きく減少に転じたとの印象は私にはありません。
続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。景気ウォッチャーを構成する3つのコンポーネントを現状判断DIについて詳しく見ると、家計動向関連が前月から#x25B2;0.5ポイント低下した一方で、企業動向関連は前月から横ばい、雇用関連が+3.2ポイントの上昇となっています。ただ、雇用関連は5月の大型連休が何か影響しているようで、6月統計で大きく上昇したというよりは、5月統計が大きく下がっていた、というのが正しい見方のような気がします。いずれにせよ、上のグラフを見れば明らかで、消費者マインドはかなり長期にわたって低下を続けています。先週7月1日に公表された消費者態度指数は、大雑把に、2017年11月の44.6をピークに1年半余りに渡って下がり続けていますし、景気ウォッチャーも現状判断DI、先行き判断DIともに、細かい動きを別にすれば、2017年10~12月期をピークにトレンドとして低下を続けているように見えます。先週公表された日銀短観を見る限り、企業マインドはまずまず底堅く堅調な印象だった一方で、消費者マインドはまだ低下を継続中のようです。さすがに、景気ウォッチャーを見る限り、ゴールデンウィークの反動減が色濃く出ただけで、そろそろ下げ止まりから反転するんではないか、という期待があるものの、マインド指標は明らかに実体経済の先行指標ですので、10月に消費税率の引き上げを控えて、とても気にかかる指標のひとつです。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの経常収支の+1兆円超の黒字はトレンドとして大きな変更はなく、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めているんですが、5月の経常収支については貿易収支が季節調整済みの系列で▲5000億円近い大きな赤字を計上しています。上のグラフで最新の利用可能な5月統計で、積み上げ棒グラフのうちで黒の貿易収支が大きな赤字となっているのが見て取れると思います。引用した記事にもある通り、中国と韓国向けの輸出が減少したことが大きな要因であり、中国と韓国向けに半導体等製造装置の輸出が減少したほか、中国向けの自動車部品の輸出も減少しています。中国については米中貿易摩擦による経済の減速が要因となっていると私は考えています。韓国についても、我が国からの輸出規制はまだ5月統計には現れていませんが、これから、何らかの影響をもたらすことはいうまでもありません。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
広 島 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | x | 1 | 5 | 0 |
高橋遥人投手の圧巻のピッチングで広島を3タテでした。ラッキーセブンに、4番大山選手のバント失敗の後のタイムリーが唯一の得点で、昨夜は両チームともに2ケタ安打でしたが、今夜は打って変わって、両チーム合わせても1ケタの9安打で終わり、2時間半ほどのスピーディな試合でした。
どうでもいいことながら、クールアース・デーの本日、アンパイアはもちろん、カープの選手もチラホラとグリーンリストバンドをしていたような気がするんですが、タイガースの選手は少ないと感じていたところ、代打で登場した藤川俊介選手と陽川選手が、ともに、左腕にしているのが見えました。
明日からのジャイアンツ戦も、
がんばれタイガース!
今週は、年度初めの4~6月期のお仕事がピークで、昨日に米国雇用統計が入って読書日が1日多いにもかかわらず、先週に続いて少し失敗読書の経済書を含めて、以下の5冊です。昨日の土曜日午前中が梅雨の中休みで図書館回りを終え、今週も話題の経済書をはじめとして数冊の読書になりそうです。
まず、松尾匡『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』(青灯社) です。作者の松尾先生からご寄贈いただきました。ただ、昨日のお届けだったもので、さすがに、まだ読んでいません。日を改めて単独で取り上げたいと思います。先週の読書計5冊の外数です。
まず、ビョルン・ヴァフルロース『世界をダメにした10の経済学』(日本経済新聞出版社) です。著者はフィンランド出身のエコノミストであり、ハンケン経済大学教授を務めた後に米国の大学でも教えたが、1985年に銀行業に転じ、1990年代前半に投資銀行を起業し、現在は北欧最大級の金融コンツェルンであるサンポ・グループの経営者となっています。原題は DE 10 SÄMSTA EKONOMISKA TEORIERNA なんですが、このままでは理解できないので、英語では The Ten Worst Ideas in Economics となるようです。2015年の出版です。ということで、典型的な右派エコノミストの理解なんですが、「邪悪な理論」と指摘され各章のタイトルになっているアイデアに番号を振って整理しつつ羅列すると、(1)緊縮財政は経済成長の足かせになる、(2)資本主義は搾取を生みだす、(3)増税は財政赤字の穴埋めになる、(4)格差是正は経済成長につながる、(5)「インフレ」とは消費者物価の上昇である、(6)市場は非効率である、(7)金利はマイナスにできない、(8)自由市場は存在しない、(9)「陶酔的熱病、恐慌、崩壊」は資本主義の宿痾だ、(10)インフレ退治が中央銀行の唯一の仕事である、ということになります。いつもの論理のすり替えに近いんですが、誰も主張していないことに対して「邪悪な理論」としてあげつらっているものもありますし、まったく的外れなものも少なくありません。特に、あまりまじめに正面からコメントしたくもないんですが、第5章のインフレに対する見方はそれなりに同意できる部分があります。すなわち、貨幣なしの物々交換であればインフレは生じない、という指摘です。ですから、インフレとは物価上昇ではなく貨幣価値の下落であり、それ以外は相対価格の変化に過ぎない、というのは事実なんだろうと思います。
次に、伊丹敬之『平成の経営』と御厨貴・芹川洋一[編著]『平成の政治』(日本経済新聞出版社) です。6月15日の読書感想文で取り上げた『平成の経済』とともに、平成3部作をなす経営と政治の2冊を読みました。経済の平成は明らかにバブル経済とその崩壊で特徴づけられるんですが、経営については、当然ながら、経済と同じでバブル経済とその崩壊が大きく影響します。他方、政治では、何といっても、国際的には冷戦の終了と国内的には小選挙区制の採用が大きな平成の特徴と考えるべきです。ですから、政治的には米ソの冷戦が終了し、米国がソ連や社会主義陣営を圧倒したわけですが、平成の初期には経済や経営ではバブルに浮かれた日本では、政治はともかく、経済や経営では米国よりも日本の方が先進的である、という誤解がったのも確かです。もちろん、バブル経済が崩壊して長期の停滞に陥った日本では、やっぱりダメなのか、という空気が蔓延したのも事実です。ただ、マクロ経済と違って、個々の企業や、あるいは、産業では経営的に優劣がつくわけで、『平成の経営』では自動車産業を持ち上げる一方で、電機産業についてはシャープやサンヨーなどの消滅会社もあるわけですから、厳しい目で見ています。政治にせよ、経営にせよ、ガバナンスという意味では大きな変化が平成の時代に生じています。すなわち、経営では従業員が圧倒的な比重を占めていたところに、株主という要素がジワジワと大きくなっています。グローバル化が進み、ストックとしての株主構成では外国人の比率は決して大きくないものの、売買高ではかなりのウェイトを占め、ガバナンスの点からは外国人の圧力に負けた、というわけでもないんでしょうが、株主への配慮が欠かせなくなっています。他方、政治の政党のガバナンスについては、小選挙区での公認候補に対する影響力から、政党執行部のパワーがとてつもなく大きくなりました。2005年の郵政選挙における「刺客」などに見られる通りです。最後に、とても興味深い点で、私は現在の安倍政権の経済政策がとても左派的であると考えているんですが、『平成の政治』では経済政策だけでなく、安倍内閣そのものの左派制を強調しています。でも、護憲の左派に対して、改憲を大きな政治的目標に掲げているんですから、これは少し疑問が残ります。
次に、鶴ヶ谷真一『記憶の箱舟』(白水社) です。作者は団塊の世代の生まれで、翻訳書を中心とした編集に携わってきたエディターです。本書では、その編集者としての経験から、書物の出現に始まる読書という知的行為と、それに関して記憶という精神作用の間にはどのような歴史があるのかを東西の経験からひと解いています。読書や本という物体は、アレクサンドリアの図書館を例外とすれば、西洋ではキリスト教のカトリック修道院に期限があり、本書でも指摘しているように、文字の記録としての本という形では、ラテン語で記録されているばかりでした。これは信じがたいんですが、その昔のラテン語は文字がびっしりと続いており、アイルランドでようやく単語間にスペースを置く分かち書きが始まり、さらに、コンマやピリオドなどのパンクチュエーションが始まったようです。そうでないと読みにくくて仕方なかったんでしょう。ということで、私は自分をそれなりの読書家であると自任しており、このブログも毎週土曜日の、今週だけは米国雇用統計が間に割って入って日曜日ながら、読書感想文がひとつの売り物になっていますから、通勤やなんやで聞き流しているモダンジャズの音楽鑑賞よりも重視しているつもりなんですが、本書広範の記憶という面では考えさせられるものがありました。ついつい、HDに入っている250枚くらいのアルバムのモダンジャズの音楽をウォークマンで聞き流すのと同じで、私は年間に250冊から300冊位の読書なんだと思うんですが、ついつい読み飛ばして頭に残っていない、というか、記憶に残っていないような気がしないでもありません。私の考える限り、それでいい読書もあります。それは事実です。まあ、何といいましょうか、要するに時間つぶしというヤツです。それはそれで読書のひとつの効用ですが、もちろん、すべての読書がヒマ潰しでよかろうハズもなく、頭にいれるべく勉強んの読書もあるハズです。その比率の問題なのかもしれません。
最後に、ピーター P. マラ & クリス・サンテラ『ネコ・かわいい殺し屋』(築地書館) です。著者は鳥類学者とサイエンスライターです。英語の原題は Cat Wars であり、直訳すればネコに対する戦争、とでもなるんでしょうか、いずれにせよ、ネコの捕食される、というか、狩られる方の鳥類学者の著作ですので、ネコに対する憎しみに満ち溢れているように私には見えます。ということで、これはおそらく事実なんだろうと思うんですが、ネコが人間によって連れて来られて、侵略的な外来種として在来種の絶滅に加担したのは事実なんだろうと私は思います。ただ、おそらく私を含めた多くの人々と著者では、自然というものに対する定義と評価関数が大きく違うと読んでいて気づきました。私の直感では、著者のいう自然とは、著者の考える自然であって、ミルの『自由論』の考え方を借りれば、いわば、トピアリーのような、著者の考える自然を持ってよしとし、ホントのあるがままの自然ではないような気がします。もちろん、あるがままの自然には天然痘ウィルスがいたり、マラリアが蔓延していたりするわけで、そういったものは自然界から駆逐することが許容されると私も同意します。しかし、ネコを天然痘ウィルスと同列に考えて、在来種の復活のために駆逐することに同意する人は少なそうな気も同時にします。ニュージーランドの鳥類の例が本書冒頭に取り上げられていますが、それなら、ニュージーランドに入植した欧州人を去勢して、マオリ族という在来種を復活させようという意見は、おそらく、許容されないような気がします。北米大陸での欧州人および黒人とネイティブ・アメリカンについても同じであろうと私は考えます。だから、ネコもOKというのは短絡的に過ぎるかもしれませんが、著者たちの一派の考えがすべて正しく、それが「自然」というものなのであり、それ以外の考えはすべて非科学的、と言わんばかりの主張には同意できない点がたくさんあった、ということは書き記して残しておきたいと思います。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
広 島 | 0 | 1 | 2 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 | 11 | 1 | |
阪 神 | 3 | 0 | 0 | 3 | 1 | 1 | 0 | 0 | x | 8 | 14 | 0 |
実は、外出していて試合はまったく見ていないんですが、打撃戦を制して甲子園で広島に連勝でした。両チーム合わせて25安打の乱れ打ちのなかなか面白そうな試合だったようです。ルーキー近本選手と糸原キャプテンの1-2番が復活し、3番糸井外野手が好調です。4番大山選手については、私はシーズン開始直後から評価していないんですが、5番マルテ選手が連夜のお立ち台のヒーローで4番をカバーしたようです。投手陣では8-9回のセットアッパーとクローザーが安定してきたようで、これで阪神本来の先行逃げ切りの勝ちパターンが見えてきたような気がします。
明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!
日本時間の昨日、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+224千人増と雇用の増加が回復した一方で、失業率は先月から0.1%ポイント上昇したものの3.7%と歴史的に見ても低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから、長くなりますが、記事を10パラ引用すると以下の通りです。
June jobs report: Economy adds 224,000 jobs, easing recession fears
Hiring rebounded strongly in June as employers added 224,000 jobs, easing recession fears and posing a dilemma for a Federal Reserve that's expected to cut interest rates later this month.
The unemployment rate ticked up from its 50-year low of 3.6% to 3.7%, the Labor Department said Friday. Payroll gains for May were revised down to 72,000 from 75,000.
Economists surveyed by Bloomberg expected 160,000 job gains.
"Today's jobs report shows the U.S. economy continues to create jobs at a strong pace even as we enter the longest period of economic expansion on record," said Tony Bedikian, managing director and head of global markets at Citizens Bank in an email.
"The bounce back in the June jobs number may splash cold water on the notion of an imminent Fed rate cut," he added. "We will have to see whether the equity markets can shrug that off when balanced against other macroeconomic factors, such as the hope of a China trade truce."
White House press secretary Stephanie Grisham celebrated the report in a tweet, saying "Thanks to President Trump, America's economy is stronger than ever!"
Economists eagerly awaited the June jobs report after the weak May total stirred recession concerns. Another anemic showing would have amplified those worries but this robust performance underscores that the May number overstated an anticipated cooling in hiring.
Payroll gains are expected to moderate from a monthly average of 223,000 in 2018 to about 160,000 this year as the effects of federal tax cuts and spending increases fade and the low unemployment rate makes it harder to find qualified workers. But a more dramatic slowdown could fuel fears that the trade conflict is having an even bigger impact on hiring or that an economic downturn may be on the horizon.
The Fed, meanwhile, has signaled that it could lower its key short-term interest rate as soon as this month to head off a possible recession amid the Trump administration's trade war with China and a slowing global economy. Markets have priced in a 100% chance of at least a quarter-point rate cut at the Fed's July 30-31 meeting.
This healthy jobs report, however, could give the Fed pause.
やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。
ということで、引用した記事の3パラめにあるように、ブルームバーグの集計による市場の事前コンセンサスでは+160千人増とのことでしたので、これを大きく上回りました。先月5月の雇用増が+72千人でしたから、6月の+224千人増は雇用増が回復し、米国労働市場がかなり完全雇用に近い状態にあることを裏付けていると考えるべきです。ただし、というか、何というか、ADP統計では先月5月の+41千人増に対して、6月も+102千人増にとどまっており、米国労働省の雇用増ほどは増加幅が大きくありません。これも、先月の統計公表時にこのブログで頭の体操をしたように、完全雇用に近ければ労働スラックも尽きかけており、雇用増すら小幅にとどまり、賃金が大きく上昇する、という局面に入ってもおかしくないのかもしれません。下のグラフに見られる通り、もちろん、現実には、そこまで賃金が上昇しているわけではありませんから、労働スラックが尽きているわけではありません。というように、かなりビミョーな局面で、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FED)が金融政策運営で、どのような判断を下すのかに注目が集まっています。
ということで、上のグラフは時間あたり賃金上昇率の推移を前年同月比で見ています。昨年2018年8月に賃金上昇率が+3%に達してから、ほぼほぼ1年の11か月連続で賃金上昇率が3%か3%超を記録しています。先月6月18~19日の米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、雇用などの米国の国内情勢というよりは、中国との貿易摩擦や世界経済の減速などを背景に、利上げをストップし、金融緩和に転じる動きを見せましたが、次回今月7月30~31日のFOMCでは利下げに転じると見られており、特に、金融先物市場ではほぼ100%利下げが織り込まれています。ただ、FOMCメンバーは必ずしも次回FOMCでの利下げで一枚岩かというとそんなことはなく、6月のFOMCでメンバー17人が示した2019年中の年内の利下げを主張した8人に対して、同じく8人は現状維持を予測し、利上げを予想するメンバーすら1人いました。公表されたばかりの6月の米国雇用統計の底堅さは、金融緩和に慎重な「タカ派」の方向に傾く可能性をもたらしそうで、もしもFOMCメンバー間の意見集約が遅れれば、7月FOMCでの利下げが見送られる可能性もゼロではありません。
来週7月10日には、FEDパウエル議長が米国議会下院で議会証言に臨む予定となっていて、それはそれで注目です。このブログで従来から私が指摘しているように、現状の我が国経済の最大の下振れリスクは為替です。米国が利下げに転じれば、円高を防止するために日銀はさらなる金融緩和を模索することになるかもしれません。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
広 島 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 3 | 8 | 1 |
いいゲームでした。甲子園でセリーグ王者広島に完勝でした。打線は相変わらず得点力に乏しいんですが、先発岩田投手の粘り強いピッチングとつないだ藤川投手、そして、何より帰って来たジョンソン投手の安定感が際立ちました。それにしても、ここまで阪神になすすべなく完敗した広島の不振は目を覆うばかりです。今年は巨人なんでしょうか?
明日も、
がんばれタイガース!
本日、内閣府から5月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月差▲0.7ポイント下降して95.2を、CI一致指数は+1.1ポイント上昇して103.2を、それぞれ記録し、基調判断は「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
5月の景気一致指数、1.1ポイント上昇 基調判断「下げ止まり」に上方修正
内閣府が5日発表した5月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.1ポイント上昇の103.2と2カ月連続で上昇した。内閣府は一致指数の動きを機械的に求める景気の基調判断を「悪化を示している」から「下げ止まりを示している」に上方修正した。
基調判断を上方修正するのは2016年10月以来、2年7カ月ぶり。「下げ止まり」の表現を使うのは2013年4月以来、6年1カ月ぶりとなる。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5系列が指数のプラスに寄与した。デスクトップ型パソコンを含む「生産指数(鉱工業)」、海外向けの液晶パネル製造装置を含む「投資財出荷指数(除輸送機械)」、鉄鋼・非鉄金属を含む「鉱工業生産財出荷指数」など生産関連指標が堅調だった。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.7ポイント下落の95.2で、2カ月ぶりに下落した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は0.4ポイント上昇の105.0で、2カ月ぶりに上昇した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面がビミョーな時期に入りましたので、かなり熱心に取材したのかインタビュー結果も多く、通常の月に比べてとても長い記事になっています。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。
ということで、引用した記事にもある通り、基調判断は「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されています。ここでおさらいですが、今年2019年に入ってからの景気動向指数の基調判断を振り返ると、1~2月は「下方への局面変化」、3~4月は「悪化」と着実に下方修正された後、5月には「下げ止まり」に上方修正されました。景気動向指数の基調判断の上方修正は2016年10月以来だそうで、2年7か月振りです。取りあえず、メディアなどで注目されていた景気後退懸念は大きく和らいだと私は受け止めています。すなわち、景気転換点ないし景気後退局面入りが同定されるためには、悪化の度合いのdepthとともに悪化局面のdurationが必要、として、最低でも6か月くらいというのがエコノミストの間での大雑把なコンセンサスですので、2か月の「悪化」で景気後退と同定するのはムリがあると考えるべきです。5月統計を少し詳しく見ると、これも引用した記事にある通り、生産指数(鉱工業)、投資財出荷指数(除輸送機械)、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数などのプラス寄与が大きかった一方で、有効求人倍率(除学卒)や商業販売額(卸売業)(前年同月比)がマイナス寄与を示しています。やっぱり、鉱工業生産指数(IIP)の影響が大きいと改めて実感させられました。
繰り返しになりますが、昨年暮れから今年2019年1~3月期に景気転換点があったんではないか、という議論は今回の景気動向指数で後景に退くことと思いますが、10月には消費税率の引き上げが控えていますし、世界経済の動向次第では今年度後半に1年遅れで、というか、何というか、景気後退に陥る可能性がまだ残されています。というか、少なくともゼロではありません。繰り返しになりますが、今年1~3月期にすでに景気後退に陥っていた、という可能性が大きく低下しただけですので念のため。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 | 1 | |
横 浜 | 2 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 2 | x | 7 | 10 | 1 |
一応、Aクラス争いの戦いだったんですが、横浜にボロ負けしてBクラスの4位転落でした。打線が相変わらず打てない上に、先発投手もリリーフ投手も、これだけホームランを食らっては、なすすべありません。実力の差なのかもしれません。
次の広島戦こそ、
がんばれタイガース!
一昨日の7月2日、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムから Top 10 Emerging Technologies 2019 と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。トップは話題の石油から作られるプラスチックからの脱却で注目されているバイオプラスチックです。トップ10は以下の通りです。
私はもともとがエコノミストでしたし、それも定年退職してしまい、エンジニアとかではなかったわけですから、新しい技術の中身についてはサッパリです。2番めの Social Robots くらいでしたら、まあ、判らなくもありませんし、7.番目の Advanced Food Tracking and Packaging や8番目の Safer Nuclear Reactors なども、「ウン、そうだね」と思うんですが、3番目の Tiny Lenses や4番目の Disordered Proteins となれば、それがそもそも何なのかすら理解できません。まあ、仕方ないのかもしれません。下の画像は、リポートの5ページ目をそのまま画像ファイルにしています。
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | 十 | 十一 | R | H | E | ||
阪 神 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 4 | 9 | 2 | |
横 浜 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 6 | 1 |
延長11回、何とかクローザーが逃げ切って6月22日以来久々の勝利でした。打線を組み替えるとスポーツ新聞にデカデカと記事がありましたが、結局終わってみれば、打線から外した近本選手と糸原選手で決勝点を上げたんですから、監督采配の方がハズレということなのかもしれません。
明日は、
がんばれタイガース!
先週金曜日の6月28日に、リクルートライフスタイルから2019年5月度の「外食市場調査」の結果が明らかにされています。もちろん、pdfのリポートもアップされています。普段は取り上げない情報なんですが、何分、今年のゴールデンウィークは10連休と豪華で、昨日公表の6月調査の日銀短観などでも宿泊業や飲食業などが潤った印象がありますので、軽く見ておきたいと思います。
まず、この調査は、私の知る限り、2012年10月から月次で実施されており、外食実施率、外食頻度、外食単価、外食市場規模の4項目が明らかにされています。季節調整済みの系列は利用不可能で、当然に、毎年12月が実施率でも頻度でも単価でも、これらを総合した市場規模でも、ピョンとスパイクします。まあ、仕方ありません。明らかにされている4項目のうち、総合的な指標と考えられる外食市場規模とその前年同月差のグラフは以下の通りです。
ということで、グラフから明らかなんですが、昨年2018年の4~5月に比べて今年2018年の4~5月が特に市場規模で拡大した、という結果にはなっていません。ただし、今年2019年1~3月期は軒並み前年比マイナスでしたので、それに比べれば前年比でプラスに転じて一息ついた、ということはいえるかもしれません。また、月単位でならした結果ですので、さすがに、ゴールデンウィーク10連休は大入りだった一方で、ゴールデンウィークに含まれない、という意味で、その他4月や5月はやや節約が志向された、というか、ゴールデンウィーク10連休のためにその他4月や5月は外食を控えてゴールデンウィーク10連休に備えた、という形が出たのかもしれません。あるいは、このリクルートライフスタイルの調査地域は首都圏・関西圏・東海圏の都市部に限定されますので、それ以外の飲食店での外食が多かったのかもしれません。いずれにせよ、リクルートライフスタイルの「外食市場調査」の結果だけからは、特に、ゴールデンウィーク10連休や「令和」への改元ないし新時代の祝賀ムードの盛り上がりによる外食の増加は限定的、ということになりそうです。もちろん、10連休や祝賀は外食でなく、家庭料理で豪華に、という選択肢もあったわけですが、それでは宿泊業や飲食業の売上への寄与は小さそうな気もします。よく判りません。
本日、日銀から6月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲5ポイント低下して+7を示した一方で、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+2.3%の増加と3月調査から上方修正されてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月日銀短観、大企業・製造業DIは2期連続で悪化 非製造業は2期ぶり改善
日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス7だった。前回3月調査のプラス12から5ポイント悪化した。悪化は2四半期連続だった。
大企業・製造業DIは16年9月(プラス6)以来の低い水準となった。業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス9も下回った。回答期間は5月28日~6月28日で、回収基準日は6月11日だった。
米中貿易摩擦の激化など、世界経済の先行き不透明感が業況感の悪化につながった。中国の景気減速懸念による生産用機械業や、ITサイクルの調整遅れによる電気機械業の悪化が目立った。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス7と横ばいの見通し。市場予想の中央値(プラス7)と同じだった。世界経済の先行き不透明感が引き続き重荷となる一方、米中貿易摩擦の改善や半導体市況の回復に対する期待感は支えになった。
19年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=109円35銭と、実勢レートより円安・ドル高だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス23と前回を2ポイント上回った。改善は2四半期ぶり。国内消費が総じて堅調なほか、大型連休の需要で宿泊・飲食サービス業が改善した。3カ月先のDIは6ポイント悪化のプラス17だった。五輪関連の需要一服や大型連休の追い風がなくなることなどが先行きの不透明感につながった。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス21となり、前回(マイナス23)から低下幅が縮まった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
19年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比7.4%増と、市場予想の中央値(8.3%増)を下回った。収益増加を受けた設備投資意欲は強く、都市開発関連の需要や人手不足を背景にした省力化投資の需要も追い風となった。
やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。
引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIで見て、3月調査から▲3ポイント低下の+9でしたから、これを下回り、やや弱い数字という印象なんですが、他方で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは大企業非製造業の業況判断DIは3月調査から▲1ポイント低下の+20を見込んでいたものの、実績は+2ポイント改善の+23でしたから、コチラを考慮すれば、強い数字という気がしないでもありません。大企業製造業の業況判断DIは市場の事前コンセンサスの下限近くな一方で、大企業非製造業の方は市場の事前コンセンサスの上限を突き抜けています。今回の6月調査の日銀短観で、評価の分かれるところかもしれません。ただ、大企業製造業の業況判断DIをヘッドラインとして扱っているのは、大企業から中堅・中小企業へ、また、製造業から非製造業へと波及するという経験則が背景にあるわけで、今後の動向を占う上でもっとも重視されるには理由があります。少し詳細に業種別に景況判断DIを見ると、大企業製造業では金属製品のほか、我が国のリーディング・インダストリーである生産用機械、自動車、電気機械などが3月調査からの下げ幅が大きくなっています。当然ながら、米中間の貿易摩擦やそれに伴う中国をはじめとする世界経済の減速の影響、あるいは、それらに対する不透明感が背景にあると考えるべきです。逆に、業況判断DIが改善した大企業非製造業を見ると、物品賃貸、宿泊・飲食サービス、運輸・郵便、卸売、小売などの改善幅が大きく、ゴールデンウィークの10連休や石油価格の再下落などの恩恵が背景にあると考えられます。先行きについては、大企業の製造業と非製造業で、これまた、見方が分かれ、大企業製造業は悪化に歯止めがかかって底堅く横ばいと見込んでいるのの対して、大企業非製造業では▲6ポイントの大きな低下が予想されています。私が従来から最大のリスク要因として注目している為替レートについては、大企業製造業による今年度2019年度の想定為替レートは対ドルで109.35円が見込まれており、市場の実勢よりもやや円安水準と私は受け止めています。為替相場の先行きについては私は何ら見識ありませんが、先行きの企業業績については、場合によっては、下振れする要因となる可能性を頭にとどめる必要がありそうです。
続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。ただ、このところ、設備と雇用については、少し異なる動きを示していますが、大企業製造業の生産・営業用設備判断DIは3月調査の▲2から6月調査では生産・営業用設備判断1に、また、中堅・中小企業製造業でも同様に設備不足感がやや和らいでいます。ただ、±1~2ポイントの変化はどこまで現実的かは議論あると私は考えています。雇用人員判断DIも6月調査では3月調査から1~3ポイント不足感が和らいでいますが、大企業で▲20を超え、中堅・中小企業では▲30を超えていますので、まだまだ人手不足は深刻であると考えるべきです。
日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2019年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で▲2.8%減という水準で始まった後、6月調査では+2.3%増に上方修正されています。設備不足感がやや和らいだとはいえ、設備投資意欲はそれほど低下していないと私は受け止めています。日銀短観の統計としてのクセもありますから、9月調査ではさらに計画が上方修正されるんではないか、と考えるエコノミストが多いだろうと私は想像しています。ただ、2019年度の設備投資計画が前年度比で増加なのは、2018年度の計画が最後の最後で6月調査の実績を見ると、大きく下方修正されているという要因もあります、基本は、人手不足も視野に入れつつ実行される設備投資なんですが、いずれにせよ、2019年度の設備投資計画は前年度比で増加する見込みながら、それほど力強く上向くという実感はないかもしれません。
最後に、本日は、内閣府から6月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月の39.4から6月はまたまた▲0.7ポイント低下して38.7となり、何と、9か月連続で前月を下回りました。コンポーネント4項目のうち、「耐久消費財の買い時判断」と「暮らし向き」と「雇用環境」の3項目が前月から低下し、他方、「収入の増え方」は前月から横ばいとなっています。日銀短観に示された企業マインドも評価が分かれるところですが、消費者マインドの悪化はまだ続くんでしょうか?
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