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2019年7月11日 (木)

ご寄贈いただいた松尾匡『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』(青灯社) を読む!

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ご寄贈いただいた松尾匡『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』(青灯社) です。ご著者は、松尾先生と「ひとびとの経済政策研究会」となっていて、私は松尾先生にお礼のメールを差し上げておきました。すでに、役所を定年退職して、もともと大したことのなかった影響力がすっかりなくなったにもかかわらず、いまだにご著書をご寄贈いただけるのは有り難い限りです。
まず、どうでもいいことかもしれませんが、少しは気にかかるところで、本書タイトルの「左派・リベラル派が勝つ」というのは、何に勝つのか、という点なんですが、基本的に選挙に勝って政権を奪取する、という意味のようです。まあ、単なる選挙での躍進で議席数を増やして、与党が改憲に必要な議席数に到達するのを阻止する、というのも意味あるかもしれませんが、私はそれでは物足りません。政権を取って政策を実行する足がかりとすべきと考えます。また、どうでもいいことながら、自称マルキストの中には、政権奪取のためには選挙ではなく、もっと暴力的な手段に訴えかねない人たちがいる可能性は否定しませんが、私自身はそんなことはありませんし、おそらく、ご著者の方々も私と同じではなかろうかと想像できます。しかも、政権選択選挙ではありませんが、参議院議員選挙という国政選挙がすでに公示されているタイミングです。
本書は2部構成で、前半は松尾先生が左派・リベラル派の経済政策のバックグラウンドとなる理論を展開し、第1部の末尾にはQ&Aまで付し、第2部では選挙の際のマニフェストの案が示されています。ということで、世論調査や内閣支持率の分析から本書は始まります。そして、若い世代では経済政策を重視し現政権支持率が高い一方で、年配世代は内閣支持率低い、という事実を明らかにしています。私も定年退職するまで、総理大臣官邸近くのオフィスに通っていましたから、官邸や国会議事堂などに向けて何らかの意思表明する人々を見かけることも少なくなかったんですが、大雑把に、年配は左翼的な主張、若者は右派的な意見表明、というパターンが多かったような実感を持っています。そして、少なくとも、現在の安倍内閣で経済や雇用が改善したのは事実です。本書でも、pp.38-40のいくつかのグラフで定量的に実証しています。もちろん、背景には、その前の民主党政権の経済政策がパッとしない、というか、ハッキリいえば、ひどいものだったので、安倍内閣になってその前に民主党政権時の経済政策が否定されただけでOK、という面があるのも確かです。ただ、さらにその前を振り返れば、小泉内閣の時のいかにも右派的な構造改革という名の供給サイド重視の経済政策で実感なき景気回復の果てに、2008年の米国のサブプライム・バブル崩壊による世界不況が民主党への政権交代を促したのも事実です。ですから、1992年の米国大統領選挙時に、当時のクリントン候補が標榜していた "It's the economy, stupid!" というのは今でも真実なんだろうと思います。それに対して、本書で指摘しているように、左派・リベラル派は景気拡大に対してとても冷たい態度を示し、「脱成長」を主張する場合すらあります。ですから、年金をもらってぬくぬくと生活している高齢世代はともかく、リストラされないように必死に働いている若い世代の間で左派への支持が低いのは、ある意味で、当然です。本書でも、米国のトランプ大統領、フランス大統領選挙で一定の支持を集めたルペン党首、など、経済政策的には反緊縮で金融緩和支持の左派的な政策志向を示すポピュリストが少なくないと指摘しています。実は、ナチスのヒトラーがそうだったわけですが、同時に、現在では、欧米の主要な左派、すなわち、英国労働党のコービン党首、スペインのポデモス、米国のサンダース上院議員などと大きな違いはありません。ですから、本書で明確に指摘されているわけではありませんが、右派と左派で大きく経済政策が異なるのは先進国では日本くらいのものかもしれません。第2部の選挙マニフェスト案では、消費税を5%に戻すとともに、法人税を増税し、所得税の累進性を強化することにより、医療や教育の充実を図る、との方向が示されています。従来から、私はインフラ投資はまだ必要なものが残っている、と主張しているんですが、第2部のマニフェスト案でも必要な公共投資は実行するとされています。そして、ベーシックインカムの導入に加えて、目立たないんですが、TPPは白紙に戻すとされています。私は全面的に賛成です。ただ、私の単なる趣味かもしれませんが、ベーシックインカムが格差是正の政策というのは理解するものの、ベーシックインカムと累進税制の強化のほかにも何か格差是正策があれば、なおいいんではないかと思います。

最後に、本書でも簡単に触れられているんですが、米国のサンダース上院議員の経済ブレーンであるケルトン教授らの支持する現代貨幣理論(MMT: Modern Monetary Theory)に関して、現時点では直感的に成り立つ可能性を私は感じているんですが、不勉強にして、それほど大きな確信があるわけではありません。その昔の税収に関するラッファー曲線は、レーガン大統領の時のブッシュ副大統領が "voodoo economics" と評したらしいんですが、よく考えると、税率ゼロで税収ゼロは当然としても、税収は税率の上昇に従った単調な増加関数ではない可能性も十分あり、どこかで税収を最大にする税率がありえることは直感的に理解できなくもありません。ラッファー曲線と同列に議論するのは気が引けるものの、現時点では日米両国の財政当局や中央銀行からMMTはかなり批判されているように見受けられる一方で、確かに、財政赤字がGDP比で発散すれば何らかの不均衡を招く可能性が高いと私は考えるものの、自国通貨建ての国債発行で財政資金を調達し、その国債は中央銀行が市中から買い上げれば、いわゆる「雪だるま式」に発散しない可能性も理解できなくもありません。もう少し勉強したいと思うのですが、なかなか能力も時間も不足しています。

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