「悪化」から「下げ止まり」に基調判断が上方修正された景気動向指数!
本日、内閣府から5月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月差▲0.7ポイント下降して95.2を、CI一致指数は+1.1ポイント上昇して103.2を、それぞれ記録し、基調判断は「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
5月の景気一致指数、1.1ポイント上昇 基調判断「下げ止まり」に上方修正
内閣府が5日発表した5月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.1ポイント上昇の103.2と2カ月連続で上昇した。内閣府は一致指数の動きを機械的に求める景気の基調判断を「悪化を示している」から「下げ止まりを示している」に上方修正した。
基調判断を上方修正するのは2016年10月以来、2年7カ月ぶり。「下げ止まり」の表現を使うのは2013年4月以来、6年1カ月ぶりとなる。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5系列が指数のプラスに寄与した。デスクトップ型パソコンを含む「生産指数(鉱工業)」、海外向けの液晶パネル製造装置を含む「投資財出荷指数(除輸送機械)」、鉄鋼・非鉄金属を含む「鉱工業生産財出荷指数」など生産関連指標が堅調だった。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.7ポイント下落の95.2で、2カ月ぶりに下落した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は0.4ポイント上昇の105.0で、2カ月ぶりに上昇した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面がビミョーな時期に入りましたので、かなり熱心に取材したのかインタビュー結果も多く、通常の月に比べてとても長い記事になっています。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。
ということで、引用した記事にもある通り、基調判断は「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されています。ここでおさらいですが、今年2019年に入ってからの景気動向指数の基調判断を振り返ると、1~2月は「下方への局面変化」、3~4月は「悪化」と着実に下方修正された後、5月には「下げ止まり」に上方修正されました。景気動向指数の基調判断の上方修正は2016年10月以来だそうで、2年7か月振りです。取りあえず、メディアなどで注目されていた景気後退懸念は大きく和らいだと私は受け止めています。すなわち、景気転換点ないし景気後退局面入りが同定されるためには、悪化の度合いのdepthとともに悪化局面のdurationが必要、として、最低でも6か月くらいというのがエコノミストの間での大雑把なコンセンサスですので、2か月の「悪化」で景気後退と同定するのはムリがあると考えるべきです。5月統計を少し詳しく見ると、これも引用した記事にある通り、生産指数(鉱工業)、投資財出荷指数(除輸送機械)、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数などのプラス寄与が大きかった一方で、有効求人倍率(除学卒)や商業販売額(卸売業)(前年同月比)がマイナス寄与を示しています。やっぱり、鉱工業生産指数(IIP)の影響が大きいと改めて実感させられました。
繰り返しになりますが、昨年暮れから今年2019年1~3月期に景気転換点があったんではないか、という議論は今回の景気動向指数で後景に退くことと思いますが、10月には消費税率の引き上げが控えていますし、世界経済の動向次第では今年度後半に1年遅れで、というか、何というか、景気後退に陥る可能性がまだ残されています。というか、少なくともゼロではありません。繰り返しになりますが、今年1~3月期にすでに景気後退に陥っていた、という可能性が大きく低下しただけですので念のため。
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