上昇幅が縮小した6月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から6月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.7%を示しています。前月の+0.9%から上昇率が縮小したものの、引き続き+1%近い伸びを続けています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率もヘッドラインと同じ+0.7%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の企業向けサービス価格、0.7%上昇 17年7月以来の低い伸び
日銀が25日発表した6月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は102.8と、前年同月比で0.7%上昇した。伸び率は5月確報から0.2%縮小し、17年7月(0.6%上昇)以来の低い伸びとなった。人手不足の影響で土木建築サービスなどの値上がりが続く半面、燃料費の下落の影響で外航貨物輸送が前年比でマイナスとなった。
前月比では0.1%下落した。前月比のマイナスは3カ月連続。米中摩擦などを背景とした貨物需要の落ち込みで、国際航空貨物輸送の値下がりが目立った。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。
やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
先日7月10日に日銀から公表された企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は、とうとうマイナスを記録したんですが、企業向けサービス価格指数(SPPI)については、上昇幅は縮小させつつもプラスを続けており、かなり+1%に近い結果となっています。大類別で見ても、引き続き、労働者派遣サービスや土木建築サービスなどを含む諸サービスが、SPPI全体の前年同月比+0.7%の半分を超える寄与度の+0.37%を示していますが、他方で、この諸サービスの上昇率がが5月の+1.3%から6月には+1.1%に縮小し、寄与度の前月差では▲0.07%ポイントの上昇率引き下げ要因ともなっています。SPPIの中で諸サービスのウェイトは⅓を超えており、少しの上昇率の変化にも寄与度差による影響力がかなり大きくなっています。加えて、引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の低下が運輸・郵便に現れています。前月からの寄与度差は▲0.04%となっています。ただし、SPPIヘッドラインとコアSPPIの上昇率が同じですので、それほど大きな影響はなさそうな気もします。また、景気敏感業種である広告も新聞広告が5月のプラスから6月は前年同月比上昇率が下落に転じ、▲0.04%のマイナス寄与を記録しています。
この先の物価の見通しについては、もちろん、10月1日からの消費税率引き上げの影響を除いたベースで考えると、全般的に、昨年2018年の10~12月期にピークだった国際商品市況の石油価格に左右されるわけですから、やや弱含みというのは間違いないところで、加えて、消費者物価(CPI)については幼児教育の無償化や携帯電話料金の引き下げなどが上昇率を下押しすると考えられ、企業物価(PPI)や企業向けサービス価格(SPPI)についても、貿易摩擦による世界経済の減速に従って上昇率が縮小ないしマイナスに転ずる可能性が高くなります。今月末の日銀「展望リポート」では、どのような方向が示されるのでしょうか?
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