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2019年8月 2日 (金)

米国雇用統計は堅調ながら金融緩和は続くのか?

日本時間の今夜、米国労働省から7月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+164千人増と貿易摩擦などでやや伸びは鈍ったものの、まずまず堅調な推移を見せた一方で、失業率は先月と同じ3.7%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の8パラを引用すると以下の通りです。

Employers added solid 164,000 jobs in July, underscoring sturdy economy
U.S. job growth was solid for a second straight month in July as employers added 164,000 jobs, further allaying recession worries and doing little to bolster the Federal Reserve's case for another interest rate cut next month.
The unemployment rate was unchanged at 3.7%, just above a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists expected 165,000 job gains, according to a Bloomberg survey.
Mildly disappointing: Payroll gains for May and June combined were revised down by a total 41,000. May's additions were revised from 72,000 to 62,000, and June's, from 224,000 to 193,000.
Hiring has slowed this year to an average monthly pace of 165,000 from 223,000 in 2018, but that's still a solid performance and more than enough to keep lowering the jobless rate. Economists largely blame the downshift on fading effects of federal tax cuts and spending increases, the sluggish global economy and President Trump's trade war with China, which has damped business confidence and investment. Also, the low unemployment rate means employers have a harder time finding available workers.
The increase was close to expectations while the unemployment rate was unchanged from 3.7 percent in June.
The upshot is that consumer spending - which makes up 70% of the economy - is healthy and jobs in service industries such as health care and professional services continue to grow smartly. But manufacturing payrolls, which depend more on sales abroad, largely have been stagnant.
The Fed lowered its key interest rate this week for the first time in more than a decade because policymakers worry the global troubles, lackluster business spending and stubbornly low inflation eventually could derail the record 10-year-old economic expansion. Another cut could be on the way as soon as September if those risks combine with an escalating trade war and weakening labor market.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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ということで、引用した記事にもある通り、ブルームバーグの調査によれば、市場の事前コンセサスは+165千人増でしたので、ほぼほぼジャストミートしたと受け止められていますが、ただ、先々月の5月統計と先月の6月統計がともに下方改定、すなわち、5月が+72千人増から+62千人増に、6月が+224千人増から+193千人増に、それぞれ下方改定されていますので、やや割り引いて考える必要はあるかもしれません。上のグラフのうちの上のパネルを見ても直感的に理解できる通り、雇用の増加は堅調とはいいつつも、2019年に入ってからの雇用者の増加幅は2018年よりもややシフトダウンしたことは明らかです。他方で、失業率は3.7%と50年ぶりの低水準を記録しています。マクロ経済政策としての金融政策の舵取りが難しい局面だという気がしますが、米国の連邦準備制度理事会(FED)は先月7月末の連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイントの利下げを決定し、実に、2008年12月以来の利下げの決定でした。そして、焦点は早くも次なる金融政策動向に移って来ており、トランプ米国大統領が昨日8月1日に残りの約3000億ドルの輸入に対して、中国への制裁関税第4弾を発動すると表明しており、今回の雇用増の鈍化を受けて、早期に追加利下げの可能性が浮上するものと私は予想しています。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高める段階にあります。すなわち、5月は前年同月比で+3.1%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して、半年以上に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですので、利上げを停止したり、あるいは、前のパラで論じたように金融緩和に転じたりして、それで物価の方は大丈夫なんだろうか、という心配もあるにはあるものの、基本的に、左派エコノミストである私は金融緩和には賛成だったりします。

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