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2019年11月29日 (金)

基調判断が下方修正された鉱工業生産指数(IIP)とタイトな状況続く雇用統計!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲4.2%の減産を示しています。失業率は前月と同じ2.4%、有効求人倍率も前月から横ばいの1.57倍と、いずれもタイトな雇用環境がうかがえるものの、指標は雇用の改善のストップないし悪化を示し始めているように見受けられます。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

10月の鉱工業生産 車・機械、台風で低調 4.2%低下
経済産業省が29日発表した10月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比4.2%低下し98.9だった。低下は2カ月ぶり。台風19号の影響で自動車や生産用機械など幅広い業種で減産となった。企業の先行き予測も弱く、経産省は基調判断を「弱含み」とした。
QUICKがまとめた民間予測の中央値(2.1%低下)を上回る低下率となった。下げ幅は18年1月以来、1年9カ月ぶりの大きさ。前回増税直後の14年4月は同じ2015年基準で4.4%の低下で、前回増税時並みの大きなマイナスとなった。
業種別では15業種中12業種が低下した。最もマイナス寄与が大きかったのが自動車で、前月比7.8%低下した。10月に上陸した台風19号で部品の調達が滞り生産に影響した。生産用機械も台風の影響で6.4%低下と振るわなかった。前月に大型案件によって上昇幅が大きくなった汎用・業務用機械は13.0%の低下と反動も出たようだ。
出荷は4.3%の低下と2カ月ぶりのマイナスだった。在庫は1.2%の上昇で4カ月ぶりに前月を上回った。
経産省が28日発表した10月の小売販売額は前年同月比7.1%の低下と前回の増税直後よりも大きなマイナスだった。ただ生産面では「消費増税の影響が大きく出たとは考えていない」(同省)とした。
SMBC日興証券の宮前耕也氏は「台風の影響だけなら在庫は減るはず」と指摘。その上で「増税前の駆け込み需要に対応した中小企業の設備投資がなくなった反動や、外需の低調が影響したとみるべきだ」と述べた。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、11月は前月比1.5%の低下、12月は1.1%の上昇見込みだ。経産省は「生産に弱さが感じられる状態が続いている」と指摘。基調判断はこれまでの「このところ弱含み」から「弱含み」に修正した。
失業率横ばいも…失業者は2カ月連続増 製造業に陰り
総務省が29日に発表した10月の完全失業率(季節調整値)は前月から横ばいの2.4%だった。働く女性の増加が続く一方、米中貿易戦争の影響を受けている製造業などで雇用に陰りが見られ、完全失業者数は2カ月連続で増加した。厚生労働省が同日発表した10月の有効求人倍率(同)は前月から横ばいの1.57倍。全体では堅調な雇用情勢が続いているとした。
就業者数は前年同月比62万人増の6787万人。女性が46万人増と大幅に増えたことが影響した。就業率も男性が0.2ポイント上昇の84.4%、女性が1.3ポイント上昇の71.8%でともに増加した。
一方、完全失業者数は前年同月比1万人増の164万人で、2カ月連続で増えた。「勤め先や事業の都合による離職」が3万人増だった。特に製造業と、インターネット通販の普及などで需要が減っている卸売業・小売業で正社員などの就業者を減らす動きがみられた。製造業の就業者は20万人減の1032万人、卸売業・小売業は16万人減の1072万人だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率も横ばいの1.13倍。雇用の先行指標となる新規求人倍率は前月から0.16ポイント改善し2.44倍だった。
新規求人数は前年同月比4.0%減の102万7758人で、3カ月連続で減少した。製造業が9カ月連続で減っている影響などを受けた。

いくつかの統計を取り上げていますので長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、中央値で▲2.1%の増産、レンジでも▲2.8%~▲0.6%の幅でしたので、下限を突き抜けた大きなマイナスと受け止めています。基本は、消費税率引上げ後の反動減と、これまた、新幹線も止めた超大型の台風19号の合わせ技の結果です。でも、それも織り込んだ市場の事前コンセンサスを超えるマイナスなんですから、ネガティブなサプライズといえます。季節調整済みの前月比で低下したのは、寄与度順で見て、自動車工業▲7.8%減、汎用・業務用機械工業▲13.0%減、生産用機械工業▲6.4%減、電気・情報通信機械工業▲4.6%減、など、我が国のリーディング・インダストリーがズラリと並んでいます。しかも、先行きについても製造工業生産予測指数で見て、11月は前月比▲1.5%の減産、しかも、上振れバイアスを補正すれば▲1.8%減ですから、12月予想の+1.1%増産もかすんでしまいます。7~9月期の鉱工業生産は▲0.5%の減産でしたが、10~12月期も2四半期連続で減産を記録する公算が高いと考えるべきです。しかも、10月指数を単純に製造工業生産予測指数で引き延ばすと、10~12月期は▲4%を超える減産となる可能性もあり、これはかなり大きな減産であると私は受け止めています。統計作成官庁である経済産業省では生産に関する基調判断を半ノッチ下方修正しています。すなわち、今年度2018年度に入って、4~7月は「一進一退」、8~9月は「このところ弱含み」だったんですが、本日公表の10月統計では端的に「弱含み」に変更しました。年明け後の我が国経済については、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速の影響で輸出が伸び悩む一方で、これを内需がカバーしてプラス成長を予想するエコノミストが多いんですが、その前の10~12月期は、10月の台風19号の影響もあって、かなり落ち込みが大きい可能性があります。

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続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた期間は景気後退期を示しています。ということで、失業率は2%台前半ないし半ばまで低下し、有効求人倍率も1.5倍超の高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も1倍超を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年余りに渡って1倍以上の水準で推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近いタイトな状態にあると私は受け止めています。ただ、モメンタム、すなわち、方向性については、失業率も有効求人倍率もジワジワと雇用悪化の方向にあることは確かです。私が時折参照している日本政策投資公庫の「中小企業景況調査」の2019年11月調査結果では、従業員判断DIが今年に入って急降下しています。すなわち、季節調整済みの系列で、まだ従業員不測のプラスながら、2018年12月の+28.8から直近調査結果の11月には+10.5まで低下しました。そもそも、雇用は生産の派生需要であり、生産が鉱工業生産指数(IIP)で代理されるとすれば、基調判断は「弱含み」であり、先行き、景気局面が転換して景気後退局面に入れば、雇用は急速に冷え込む可能性もあります。生産が雇用増加をけん引しているのであって、人手不足が景気を拡大させているわけではありません。場合によっては、本格的な賃金上昇が始まる前に景気の回復・拡大局面が終了してしまう可能性も排除できません。

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最後に、本日、内閣府から11月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月から+2.5ポイント上昇して38.7となり、2か月連続で前月を上回りました。消費者態度指数を構成する4項目、すなわち、暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い時判断、のすべてが前月から上昇しています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「弱まっている」から「持ち直しの動き」に上方修正しています。上のグラフの通りです。

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