明後日公表の7-9月期GDP統計1次QEの予想やいかに?
先々週の政府統計の公表などを終えて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、今週木曜日11月14日に7~9月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。今回は、繰り返しになりますが、消費税率引き上げ直前の実績成長率と直後の見通しということで、先行きについても多くのシンクタンクで言及があり、テーブルの上から順に、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研の5機関は明確に見通しを取り上げ、伊藤忠総研についても「輸出動向がカギ」で締めくくっています。これらの機関はやや長めに、ほかもそれなりに引用しています。ただし、大和総研については、引用した後にも、GDP需要項目別に住宅投資・設備投資・公共投資・輸出と続きがあるんですが、取りあえず、個人消費のパラで打ち止めとしてあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +0.2% (+0.7%) | 10~12月期を展望すると、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減に加え、台風19号などの自然災害が消費と生産の重石となり、5四半期ぶりのマイナス成長となる見込み。もっとも、良好な雇用・所得環境や高水準の企業収益を背景とした内需主導の景気回復基調は途切れておらず、マイナス成長は一時的にとどまると予想。 |
大和総研 | +0.2% (+0.9%) | 先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。 個人消費は、駆け込み需要の反動減が生じた後は、一進一退が続くとみている。個人消費の鍵を握る所得は、増加ペースの鈍化が見込まれるものの、消費増税時に実施されている各種経済対策が消費を下支えすることで、増税後の消費の腰折れは回避されるとみている。ただし、消費増税対策は公共投資の比重が大きく、家計に限れば消費増税に伴う負の所得効果を全て相殺できないことから、消費はいくらか抑制されるだろう。また、先行きの消費のかく乱要因として、キャッシュレス決済時のポイント還元制度の終了(2020年6月末)前後に駆け込み需要・反動減が生じ得ることなどが挙げられる。 |
みずほ総研 | +0.3% (+1.3%) | 今後の日本経済は、10~12月期については消費増税の反動減が下押しする投資の調整圧力が高まるほか、その後も弱い伸びに留まる見通しだ。 輸出は、IT関連需要の底打ちがプラス材料となるものの、世界経済の減速が続くことから、伸びは弱いとみている。設備投資は、省力化投資が下支えするものの、機械設備や建設投資における調整圧力の高まりが下押し要因になり、当面横ばい圏で推移するだろう。 個人消費は、力強さを欠く見通しだ。消費増税の反動減が見込まれることに加え、世界経済の先行き不透明感や企業収益の弱含みを背景に、所得が伸び悩むことが影響しよう。 |
ニッセイ基礎研 | +0.1% (+0.2%) | 2019年10-12月期は、前回増税時に比べれば規模は小さいものの、駆け込み需要の反動減が発生すること、税率引き上げに伴う物価上昇によって実質所得が低下することから、民間消費が大きく減少し、明確なマイナス成長になることが予想される。 |
第一生命経済研 | +0.3% (+1.0%) | 前回増税対比では抑制されたとはいえ、個人消費の駆け込み需要は一定程度生じたとみられる。この部分については 10-12月期に反動が出ることは必至である。加えて、増税による実質購買力の抑制による悪影響も懸念されるところだ。増税に備えて様々な対策が実行に移されたことから、14年と比較すれば悪影響は小さくなるだろうが、それでも一定の下押し圧力は受けざるを得ない。10-12月期の個人消費は大幅な減少が予想され、実質GDP成長率もはっきりとしたマイナスに転じるとみている。 |
伊藤忠総研 | +0.0% (+0.2%) | 7~9月期の実質GDP成長率は前期比+0.0%(年率+0.2%)、4四半期連続のプラス成長ながら概ね横ばいを予想。個人消費は消費増税前の駆け込み需要を悪天候の影響が相殺、公共投資や設備投資の増加も輸出の減少によって減殺された模様。潜在成長率を上回る成長を取り戻すかどうかは輸出動向がカギ。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.1% (+0.4%) | 2019年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比+0.1%(年率換算+0.4%)と4四半期連続でプラス成長を維持したと予想される。もっとも、消費増税前の駆け込み需要があったことを考慮すると、伸びは弱い。 |
三菱総研 | +0.5% (+1.9%) | 2019年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+1.9%)と、4四半期連続でのプラス成長を予測する。消費税増税前の駆け込み需要による押し上げ効果もあり、内需が堅調に拡大したとみられる。 |
ということで、+1%弱といわれている潜在成長率近傍を予想するシンクタンクが多いんですが、高いところで三菱総研の年率+1.9%成長、低いところでも伊藤忠総研の年率+0.2%となっていて、少なくともマイナス成長を見込むシンクタンクはありません。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、中央値で年率+0.8%成長、レンジでも+0.2~+1.9%となっています。基本的に、10月1日からの消費税率引上げ直前の駆込み需要が下支えしており、サステイナブルではないプラス成長ではありますが、ほぼ、私の実感とも合致しています。ただし、下方リスクは小さくなく、特に、悪い話ではないんですが、消費税率引上げ前の駆込み需要が、前回2014年4月時よりも小さく、しかも、大型消費の耐久消費財で小さかったわけですので、私の実感としては、プラスはプラスでも、かなりゼロに近い成長率に仕上がっている可能性が高いと感じています。ただし、駆込み需要が大きかったとすれば、在庫調整が進んだ可能性もあります。これも悪い話ではありません。いずれにせよ、プラス成長というエコノミスト間のコンセンサスは当然なんですが、潜在成長率をやや下回る、と私は予想しています。
下の画像はコンポーネントの寄与度に分解したGDP成長率の推移のグラフをニッセイ基礎研のサイトから引用しています。
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