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2020年3月23日 (月)

今週から引越し体制に入りブログはお休み!!!

今週は引越し体制に入ります。
新しい職場の研究室には来週3月30日から出勤し始め、新しい京都の住まいでのインターネット開通はその翌日の3月31日になります。そのころか、あるいは、4月に入ってから再開するまでブログはお休みする予定です。

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2020年3月21日 (土)

明日の日曜日は暖かいが月曜日は寒の戻りで気温が10度ダウン!!!

昨日今日と着々と引越し準備を進めています。
明日まではいいお天気だそうで、明日中には荷造りを終えたいと考えています。

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明日中に荷造りを終えたいのは、明日の日曜日まで暖かで、明後日の月曜日から寒くなるから、というのもあります。上の画像は、22日の予想天気図と23日の上空1500m付近の気温をウェザーニュースのサイトから引用しています。もっとも、私が適当に結合させて縮小をかけています。

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2020年3月20日 (金)

東京最後の読書感想文!!!

3月第1週で読書は終わりと考えていましたが、いろいろな分野の予約してあった本が次々と利用可能となり、先週も今週も割合とまとまった数の本を読んでしまいました。おそらく、来週に京都に引越しすれば、公共図書館サービスは東京都区部と比較してものすごく貧弱になることが容易に想像されますので、私の読書もかなり影響を受けることと思います。ということで、今週こそ最後の読書感想文になるかもしれません。かなり話題を集めた経済書を中心に以下の4冊です。

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まず、ジョナサン・ハスケル + スティアン・ウェストレイク『無形資産が経済を支配する』(東洋経済) です。著者は、英国インペリアル・カレッジの研究者と英国イノベーション財団ネスタのやっぱり研究者なんだろうと思います。英語の原題は Capitalism without Capital であり、2018年の出版です。タイトル通りに、有形の資本、典型的には工場の建屋や機械設備、あるいは、政府が整備する道路や港湾などのインフラから、無形の資本の重要性が高まって来ていて、まあ、邦訳タイトルをそのまま引用すると「経済を支配する」ということを論証しようと試みています。そして、そういった無形資産が支配する無形経済になれば、格差の拡大などを招いたり、長期停滞につながったり、経営や政策運営の変更が必要となる可能性を議論しています。確かに、本書で展開しているのは極めてごもっともなところですが、逆に、かなりありきたりな印象です。特に新しい視点が提示されているようには見えません。おそらく、1970年代における2度の石油危機を経て、1980年代から指摘されていたような点をなぞっているだけで、4つのSとして、スケーラビリティ、サンク性、スピルオーバー、相互のシナジーを上げていますが、本書でまったく用いられていない用語でいえば、無形資産はたとえ私的財であっても公共財の性格を併せ持つ、ということで一気に説明がつきます。この点について、とても最新の研究成果とも思えない「スーパースター経済」などを援用しつつ議論しているだけで、もちろん、それなりに新しい研究成果も取り入れているんですが、特に新しい視点が入っているようには見受けられません。今までの無形資産に関する議論を整理するという点では、とても有益な読書でしたが、それだけ、という気もします。

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次に、ダロン・アセモグル & ジェイムズ A. ロビンソン『自由の命運』上下(早川書房) です。著者は、マサチューセッツ工科大学とシカゴ大学の研究者で、というよりも、前著の『国家はなぜ衰退するのか』のコンビです。英語の原題は The Narrow Corridor: State, Societies, and the Fate of Liberty であり、邦訳タイトルは原著のサブタイトルの3つめを取っているようです。2019年の出版です。冒頭で、ソ連東欧の共産諸国が崩壊した後、すべての国の政治経済体制が米国のような自由と民主主義に収れんするという意味のフランシス・フクヤマの「歴史の終わり」と、その5年後のロバート・カプランの「迫りくるアナーキー」を対比させ、実は現在の世界はアナーキーに満ちているのではないか、という視点から本書は始まります。そして、著者の結論を先取りすれば、自由を実現し国民が自由を享受するためには法律とそれを強制する権力を持った国家が必要である、というものです。

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そして、上の画像のように、縦軸に国家の力、横軸に社会の力のカーテシアン座標に、その両者のバランスの取れた回廊がある、ということになっています。そこは国家が専横に陥ることなく、逆に、国家の力がなさ過ぎてアナーキーに陥ることもない、という意味で、ホントの自由が実現される回廊である、ということを議論しています。国家というリヴァイアサンに足かせを付ける、という表現も多用されていますし、国家が強力になったら同時に社会もパワーアップする必要がある、という意味での赤の女王の法則もしばしば言及されます。ただし、私は本書には2点ほど誤解があるように思います。第1に、自由と民主主義の混同、というか、取り違えです。本書では「自由」に力点を置いていますが私は「民主主義」ではなかろうかという気がしています。第2に、社会ではなく市民の力だと思います。まず、アナーキーと対比すべきで、本書で論じているのは、自由ではなく民主主義です。すなわち、アナーキーというのはある意味ではカギカッコ付きの「自由」であり、個々人が異なるウェイトを持った弱肉強食の世界といえます。資本主義下の株主総会の世界であり、単純に貨幣といってもいいのかもしれませんが、購買力によってウェイト付けされた社会です。格差を認めた上での不平等であり、民主的な1人1票の世界とは異なります。私はむしろウェイト付けのない民主主義の実現こそが本書で目指している世界ではないか、という気がします。そして、そういった社会における市民あるいは国民の資質を問うべきです。俗な表現に「民度」という言葉があり、少し保留が必要かもしれませんが、かなり近い概念です。例えば、識字率がある程度高まらないと民主的な投票行動も自由にできない、という側面は見逃すべきではありません。ですから、社会のパワーを考える基礎として市民の問題も考えないと、社会が市民なくしてポッカリと空中に浮かんでいるわけではありません。その意味で、もう少し教育の重視を指摘して欲しかった気がします。いずれにせよ、読めば判るんだろうと思いますが、前著の『国家はなぜ衰退するのか』に比べると、かなり見劣りします。その点は覚悟の上で読み始めた方がいいと私は考えます。

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次に、というか、最後に、デヴィッド・ウォルシュ『ポール・ローマーと経済成長の謎』(日経BP社) です。著者は、米国のジャーナリストであり、ボストン・グローブ紙の経済学コラムを担当しています。念のためですが、経済学コラムであって、経済コラムではないようです。英語の原題は Knowledge and the Wealth of Nations であり、邦訳タイトルに含まれているローマー教授だけではなく、むしろ、スミスの『国富論』になぞらえており、2019年の出版です。ということで、650ページを超える大著で、邦訳タイトルのローマー教授だけでなく、ノーベル経済学賞受賞者クラスのキラ星のような経済学者がいっぱい登場します。そして、誠に申し訳ないながら、この読書感想文をアップする現時点で、実は、まだ読み終えていません。これは15年近くのこのブログの歴史で初めてかもしれません。60歳を過ぎて、極めて異例な状況に置かれており、ご寛恕を乞う次第です。また、読み終えましたら、然るべき読書感想文をアップしたいと思いますが、これまた誠に申し訳ないながら、しばらくの間、このブログの更新は途絶えるかもしれません。

ということで、この3連休は引越し準備の荷造りに明け暮れる予定です。連休明けの3月25日に東京から荷物を搬出して、その翌26日に京都の新しい住まいで荷物を受け取る予定となっています。ただ、かなり早くから手配したつもりなんですが、インターネット回線の開通は3月31日です。それまで、新しい勤務先である私大の研究室に行って勤務を始めるつもりですが、3月31日ないし4月1日までブログの更新がストップしますので、悪しからずご了承下さい。

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2020年3月19日 (木)

新型コロナウィルスの影響により石油価格が下落し消費者物価(CPI)の上昇率も縮小!

本日、総務省統計局から2月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し縮小して+0.6%を示しています。また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+0.6%でした。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の消費者物価、コロナ影響じわり マスク3.7%上昇
総務省が19日発表した2月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.9と前年同月比0.6%上昇した。38カ月連続でプラスとなったが、伸び率は前月より縮小した。原油安などを背景に、エネルギー構成品目が2カ月ぶりに下落に転じたことが影響した。
材料費や人件費の高止まりを受け、外食は引き続き物価上昇に寄与した。一方、電気代や都市ガス代などの下落幅が拡大。ガソリン価格の上昇幅も縮小したことから、物価上昇の伸び率は前月(0.8%上昇)から縮んだ。携帯電話の通信料も大手各社の値下げの影響で、引き続き物価の下げ圧力となった。
足元で感染が拡大する新型コロナウイルス感染症のCPIへの影響については「一部の品目で影響が出た可能性があるが、全体に与える影響は小さかった」(総務省)と分析している。
具体的に新型コロナの影響が出た可能性があるものとしては、マスクの価格は前年同月比3.7%上昇した。宿泊料も下落幅が拡大。総務省は「新型コロナの感染拡大を受け訪日客が減少し、宿泊料値下げにつながった可能性もある」とみていた。
2月の生鮮食品を除く総合では397品目が上昇した。下落は106品目、横ばいは20品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
2月の全国CPIで、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.8と0.6%上昇した。生鮮食品を含む総合は102.0と、0.4%の上昇。暖冬の影響で、キャベツなどの生鮮野菜の出荷水準が高く、野菜価格が高騰していた19年2月に比べると「価格が下がっている」(総務省)という。
総務省は昨年10月の消費税率引き上げの影響を機械的に調整したCPIの試算値も公表した。消費税率引き上げと幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、2月の生鮮食品を除く総合の物価上昇率は0.2%上昇と、1月(0.4%上昇)から伸び率は縮小した。

やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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ということで、新型コロナウィルス(COVID-19)は物価にまで影響をもたらしているのは明らかで、半ば面白おかしく、上で引用した記事でも、「マスク」は値上がりで、「宿泊料」は下げ、ということになっています。加えて、「外国パック旅行」や下げているようです。でも、私が考えるCOVID-19の我が国物価への最大の影響は石油価格を通じた価格押下げ圧力です。現在の国際商品市況における石油価格がかなり大幅に下げていることは広く報じられており周知の事実ですが、これはかなりの程度にCOVID-19の影響を受けたものです。すなわち、COVID-19の感染拡大を防止するため、我が国でも一部の国からの入国制限を設けており、逆に、我が国からの入国制限を課している国も少なくないことなど、ヒトやモノの移動が停滞しており、加えて、株式市場だけでなくマクロ経済の低迷が鮮明になっていることから、石油への需要が大きく減退している上に、産油国の間では価格支持のための減産合意どころではなく、逆に、サウジアラビアが増産するなど、世界的に石油の需給が緩んだことから、日経新聞のサイトで報じられているように、世界的な石油価格の指標となるWTI先物がバレル20ドルの安値を付けていたりします。ですから、かなりの程度に、先行き物価動向もCOVID-19次第の部分があります。

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2020年3月18日 (水)

中国からの輸入が激減した2月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から2月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲1.0%減の6兆3216億円、輸入額も▲14.0%減の5兆2117億円、差引き貿易収支は+1兆1098億円の黒字を計上しています。なお、新型コロナウィルス(COVID-19)に関連して注目された中国向け輸出額は▲0.4%減、輸入額は何と▲47.1%減を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

2月の貿易収支、中国からの輸入額47%減 86年8月以来の減少幅 新型コロナ響く
財務省が18日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、中国からの輸入額は前年同月比47.1%減の6734億円だった。輸入額の下げ幅は、中国政府が経済引き締め策を実施した影響が出た1986年8月(47.3%減)以来の大きさとなる。財務省は「新型コロナウイルス感染症の拡大で中国国内で生産活動の停止などの動きがみられたことから、その影響が出た可能性がある」とみる。
中国からの輸入減少に最も響いたのは、衣類・同付属品で65.7%減った。次いで携帯電話(45.3%減)、パソコンなどの電算機類(37.2%減)だった。輸出額は、半導体等電子部品などの輸出増加を支えに1兆1361億円と0.4%の減少にとどまった。
中国からの輸入額が大幅に減少した一方で、中国への輸出額は小幅減少にとどまったため、差し引きの中国との貿易収支は4627億円の黒字となった。対中国の黒字は2018年3月以来で、黒字額は過去最大となった。
対世界全体の輸出額は1.0%減の6兆3216億円と15カ月連続で減少した。輸入額は14.0%減の5兆2117億円と10カ月連続の減少で、差し引きの貿易収支は1兆1098億円の黒字となった。黒字は4カ月ぶりで、黒字額は2007年9月以来の大きさとなった。
輸出は中国向けの半導体等電子部品が増えた一方、米国向けの自動車や中国向けの金属加工機械が減少した。輸入はオーストラリアからの液化天然ガス(LNG)が減少したことが大きく影響した。
対米国の貿易収支は6268億円の黒字と2カ月連続の黒字、対欧州連合(EU)の貿易収支は183億円の赤字と8カ月連続の赤字だった。対EUは今回の統計から英国を除いた数字となっている。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で+9172億円の貿易黒字が予想されていましたので、+1兆円をやや上回る貿易黒字とはいえ、まずまず、大きなサプライズをもたらしたわけではありません。ただ、上の輸出入のグラフ、特に下のパネルの季節調整済の系列でトレンドを見ると、明らかに輸出入ともに減少のトレンドにあります。特に、2月の貿易は中国発のCOVID-19の影響で輸出入とも減少しましたし、特に、中国の輸出、というか、我が国の中国からの輸入は、引用した記事のタイトルにもあるように、激減しています。ただし、中国との貿易に関しては、中華圏の春節の影響がとても大きいですから注意する必要があり、特に、昨年2019年の春節は2月5日からスタートし、今年2020年は逆に本来は1月30日までと、1月中に収まる予定でしたので、この上下の違いは大きいと考えるべきです。すなわち、季節調整していない原系列の貿易統計をそのまま見たりすれば、輸出入ともに今年2020年1月は大幅減で、逆に、2月は大幅増、となるのが通常の動きと考えるべきです。しかし、大幅増となると想定されていた今年2月の中国との貿易は逆に減少しました。いうまでもなく、COVID-19の影響であり、我が国からの輸出額こそ▲0.4%減という小幅な減少だったものの、中国からの輸入額は▲47.1%減とほぼ半減しました。強制的に春節休暇が継続され、操業停止が解除されたのが2月中旬ですから、当然です。中国国内の生産が大きくダウンしたわけですので、中国からの我が国の輸入も激減しており、まあ、何と申しましょうかで、マスクなんかが品薄になっているのも当然です。もちろん、マスクが品薄になっているのは中国での生産停滞だけではありません。ただし、少なくとも、中国ではCOVID-19の感染拡大は終息に向かっており、むしろ、現時点では欧州の方で感染が拡大しているのが実情のようです。いずれにせよ、COVID-19の経済的な影響は、私には何とも判りかねます。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ただし、OECD先行指標については、1月統計が公表されていません。OECDのプレスリリース "Release of OECD Composite Leading Indicators Cancelled for March 2020" によれば、"CLI sub-components for many countries are not yet able to capture the effects of the more widespread Covid-19 outbreak." というのが理由とされています。ということで、世界経済とともに中国の景気も最悪期を脱し、これから上向きになろうかという矢先のCOVID-19でしたので、繰り返しになりますが、ダイレクトに中国向けだけでなく、中国向け輸出比率の高いアジア諸国向けの輸出も、我が国では当然に欧米諸国などよりも割合が高く、輸出を通じた日本経済へのダメージは少なくないものと考えます。中国向けの直接の輸出だけでなく、加えて、サプライチェーンの中で中国の占めるポジションからして、部品供給の制約から貿易への影響を生じる可能性も無視できません。欧米向け輸出についても、OECD先行指数を見る限り最悪期を脱したと考えられますが、中国経済の変調とともに、欧州でのCOVID-19の感染拡大もあって、今後の動向は不透明です。

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2020年3月17日 (火)

新型コロナウィルスの影響緩和のための経済対策を考える!!!

先週金曜日の3月13日付けで、第一生命経済研から「新型コロナウィルスで必要とされる経済対策」と題するリポートが明らかにされています。私のこのブログで何度か書きましたように、一昨年2018年10~12月期を山として、我が国景気はすでに景気後退局面に入っていた上に、昨年2019年10月から消費税率の引上げが実施され、加えて、今年2020年に入ってからは中国発の新型コロナウィルス(COVID-19)により、我が国経済は大幅な景気の停滞を経験しています。第一生命経済研のリポートでは、この景気局面を脱するための経済対策について論じられています。まず、リポートから1ページ目の(要旨)にある5項目のうち第1項と第2講を引用すると以下の通りです。

(要旨)
  • 経済対策の規模については、景気後退+消費増税+新型コロナウィルスの3重苦に対して、大型の補正予算が組まれることが予想される。しかし、景気後退+消費増税に伴うGDPギャップを解消するのに必要な規模の経済対策を前提とするだけでも9.8兆円規模の追加の経済対策が必要になる。
  • 東日本大震災と2014年4月消費増税の時は、GDPの実績がトレンドからそれぞれ▲3.8兆円、▲3.7兆円程度下方に乖離。消費増税の影響も前回はトレンドから▲0.9%の乖離に対し、今回は▲2.3%もトレンドから下方に乖離していることから、すでに新型コロナウィルス緊急対応策に加えて、需給ギャップの解消に必要な需要創出額10兆円以上の財政措置が必要となる。市場の不安を軽減するという意味でも規模は重要。

現在、参議院で来年度予算が審議中ですが、早くも年度が明けて4月に入れば経済対策の策定が予定されています。その規模感と中身の案などをこのリポートでは議論しているところ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、リポート p.2 から引用したGDPギャップの推計結果です。「ESPフォーキャスト2月調査」を利用して延伸して推計した結果です。ただし、3月13日付けの内閣府の今週の指標No.1233で「2019年10-12月期GDP2次速報後のGDPギャップの推計結果について」において、2次QEの下方改定に従ってGDPギャップのマイナス幅も拡大したのは織り込まれていません。ですから、経済対策としては軽く10兆円を超える規模が想定されます。ということで、リポートでは、リーマン・ショック後の2009年4月の「経済危機対策」における財政支出の規模15.4兆円に言及しています。
経済対策の中身についてリポートでは、リーマン・ショック後の定額給付金方式では貯蓄に回って需要が顕在化しない可能性があると指摘し、すでに予定されているマイナンバーカードへのマイナポイントに加えて、リーマン・ショック後のエコポイントに近いキャッシュレスポイント還元に加えて、大胆にも、時限措置による消費税率の引下げまで踏み込んで主張しています。さらに、COVID-19対策としての意味もあるリモート設備導入に向けた補助制度の拡充、特に、学校や家庭にリモート学習可能な設備の導入補助の必要性などを論じています。

新しい経済対策が議論される4月になれば、私も私大教員として日本経済に携わる立場に復帰しています。景気も私の立場もともにビミョーな時期ながら、現在の緊縮財政を打破すべく、いろんな議論が行われるのはいいことだという気がします。

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2020年3月16日 (月)

2か月連続で前月比プラスとなった機械受注の今後の見通しやいかに?

本日、内閣府から1月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+2.9%増の8,394億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

1月の機械受注は2.9%増 基調判断「足踏みがみられる」で据え置き
内閣府が16日発表した1月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.9%増の8394億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(1.2%減)を上回った。内閣府は機械受注の基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業の受注額は前月比4.6%増の3803億円だった。17業種のうち10業種で増加した。電気機械業でクレーンなど運搬機械が伸びた。非鉄金属業において原子力原動機の受注も伸びた。
非製造業は1.7%減の4607億円だった。12業種のうち5業種で減少した。運輸・郵便業が低調だったほか、金融・保険業でCPU(中央演算処理装置)をはじめとした電子機器の受注が振るわなかった。
受注総額は11.5%増、外需の受注額は9.1%増だった。官公需の受注は大型案件の受注が寄与して87.8%増だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.3%減だった。
1~3月期の「船舶・電力を除く民需」の見通しは前期比2.0%減だった。製造業は1.0%減、非製造業は5.2%減を見込む。今回の調査で季節調整値の改訂をしたため、見通しの数字も修正された。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比▲1.2%減でしたが、予測レンジ上限は+4.2%増でしたから、実績の+2.9%は増はレンジに収まっており、それほど大きなサプライズはないという印象です。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いています。コア機械受注の前月比+2.9%増を製造業と非製造業に分けて見ると、製造業は昨年12月の+2.4%増に続いて、2か月連続の前月比プラスで1月も+4.6%増、他方、非製造業は12月▲18.8%減に続いて、これまた2か月連続のマイナスで1月も▲1.7%減となっていて、明暗がクッキリと分かれています。製造業に関しては、いわゆる5Gといわれる第5世代移動通信システムへの対応による投資増加の可能性が指摘れされており、他方、非製造業においては、私には要因不明ながら、人手不足の影響大きいといわれている運輸業・郵便業が2か月連続で現象を見せており、この寄与が大きくなっています。しかし、何といっても、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大の影響が先行き最大のリスクと考えるべきです。まず、マインドの冷え込みが懸念されますし、消費はもちろん、需要の低迷に加えて、中国国内をはじめとしてサプライ・チェーンへの影響という供給サイドの要因も世界経済停滞の深刻化や長期化をもたらすわけで、今後のマインドと需要要因と供給要因の動向を注視する必要があるのは明らかです。ただ、私のような専門外のエコノミストは注視するだけで、それ以上は手の施しようがありません。

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2020年3月15日 (日)

健康を守るためのマスクと本末転倒に関する本日の雑感!!!

数日前に、Yahoo! ニュースで見たんですが、どこかのドンキホーテでのマスクの売り方が話題になっていました。箱ではなく袋に7枚入ったマスクで「お一人様1点目までの価格は298円(税別)、2点目から9999円(税別)」の価格をつけているそうです。画像もありました。ツイッターでは賛否両論が見受けられるそうです。もっとも、大量のコメントが付けられるツイッターでは賛否両論なく、すべてが賛否のどちらかになる、なんてケースは考えられません。
ということで、実は、我が家の近くのドラッグストアでも、今日になって私も発見しましたが、マスクを売っていたと思しき痕跡が見られました。マスクの価格札の残った空っぽのワゴンや棚とか、入り口に開店前に並ぶ列を指定する張り紙などです。
我が家は私が花粉症ですから、シーズンインの前にマスクは少しばかり買い込んであり、まずまず今月いっぱいは買い足す必要はありませんし、いくらなんども3月中にはマスクが出回るものと楽観していて、開店前の早朝から並ぶことはまったく考えていません。ただ、マスクの購入については、私もいくつかエピソードを聞いていて、実際の目的と KPI=Key Performance Indicator を取り違えた本末転倒のケースがいくつか典型的に見られるような気がします。
まず、我が家もそうだったんですが、新型コロナウィルス(COVID-19)の流行が始まったころ、カミさんや帰省して来た下の倅などにドラッグストアの前を通る際にマスクを売っているなら買うように言い置いたところ、要するに、ドラッグストアにマスク販売の有無を確認しに行くというKPIが自己目的化して、本来の目的であるマスクを買うのではなく、ドラッグストアに行けばOK、というカンジになっていました。そして、次に、朝の開店前のまだ寒い中を早くから並んでマスクを買おうとする行為は、むしろ健康にはよくないような気がします。すなわち、本来は、健康を守るという目的だったのが、そのKPIのひとつであるマスクを買うというのが自己目的化してしまって、本来の目的である健康を犠牲にしてまでも早朝から開店前のドラッグストアに並んでマスクを買い求める、という行動になるんだろうという気がします。
まあ、このような本来の目的とKPIを取り違えうケースというのはいっぱいあって、例えば、企業経営でも、本来、企業というのは経済学的には利潤最大化を目的にするハズなんですが、その前段階のKPIとして売上の目標を設定したり、さらにその前段階のKPIとして来店客数を設定する例の少なくありません。でも、例えば、売上を伸ばすために大幅なディスカウントをしたりすれば、利潤最大化には阻害要因となる場合があるかもしれません。

後10日ほどとなった残り少ない東京の日々を、いろいろと考えて過ごしている週末でした。

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2020年3月14日 (土)

今週の読書も経済書などをついつい読んで計4冊!!!

本格的な読書は先週までと考えていたんですが、今週もついつい読み過ぎたような気がします。おかげで引越し作業がなかなかはかどりません。来週も、実は、話題のアセモグル & ロビンソン『自由の命運』がすでに図書館に届いており、また、ユヴァル・ノア・ハラリの『21 Lessons』やウォルシュの『ポール・ローマーと経済成長の謎』なども予約順位が迫っており、ひょっとしたら、それなりの読書になるかもしれません。なお、本日の朝日新聞の書評欄を見ると、2月1日の読書感想文で取り上げた『ワンダーウーマンの秘密の歴史』とその次の週の2月9日に取り上げた『男らしさの終焉』の書評が掲載されていました。1か月以上も新聞に先んじるのはそれなりに気分がいいものかもしれません。

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まず、ハロルド・ウィンター『やりすぎの経済学』(大阪大学出版会) です。著者は、米国オハイオ大学の経済学研究者です。英語の原題は The Economics of Excess であり、2011年の出版です。副題が、上の表紙画像に見られるように「中毒・不摂生と社会政策」とされており、古くは、ベッカー教授とマーフィー教授による "A Theory of Rational Addiction" なんて、画期的な論文もありましたが、もちろん、今どきのことですから、行動経済学の知見も取り入れて、非合理的な選択の問題にも手を伸ばしています。ただ、大阪大学出版会から出ているとはいえ、各章の最後に置かれている文献案内を別にすれば、決して学術書ではありません。一般ビジネスマンなどにも判りやすく平易に書かれていて、その肝は時間整合性に的を絞っている点だろうと私は理解しています。本書冒頭では、時間整合的でその点を自覚している人物、時間非整合でありながらそれを自覚していない人物、時間非整合でそれを自覚している人物、の3人の登場人物を軸にして、時間割引率に基づく時間整合性のほかの非合理性には目をつぶって、もちろん、誤解や認識上の誤りは排除して、さらに、喫煙、肥満、飲酒の3つのポイントだけを取り上げて議論を進めています。その上で、温情的=パターナリスティックな政策の効果などについても視点を展開し、価値判断ギリギリの見方を提供しています。薬物に関する議論を書いているのはやや物足りないと感じる向きがあるかもしれませんが、私は基本は喫煙の先に薬物中毒があると受け止めていますので、特に本書の大きな欠陥とは思えません。ただ、何せ10年近く前の出版ですので、セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞する前であり、最近の行動経済学の展開がどこまで反映されているかに不安を覚える向きがありそうな気もしますが、かなりの程度に一般向けですので、そこまで気にする必要はないように思います。

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次に、ウルリケ・ヘルマン『スミス・マルクス・ケインズ』(みすず書房) です。著者は、ドイツの経済ジャーナリストです。本書のドイツ語の原題は Kein Kapitalismus Ist Auch Keine Lösung であり、巻末の訳者解説に従えば、日本語に直訳すると「資本主義を取り除いても解決にならない」という意味だそうです。2016年の出版です。ということで、かなりリベラルな立場から主流派経済学、というか、ネオリベ的な経済学を批判しており、その際の論点として、邦訳タイトルにある経済学の3人の巨匠に根拠を求めています。実は、すでに定年退職してしまった私なんですが、大学を卒業して経済官庁に、今でいうところの就活をしていた際に、「大学時代に何をやったか」との問いに対して、「経済学の古典をよく読んだ」と回答し、スミスの『国富論』、マルクスの『資本論』、ケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を、リカードの『経済学および課税の原理』とともに上げた記憶があります。当然のリアクションとして、「マルクス『資本論』を読んだというのはめずらしい」といわれてしまいましたが、無事に採用されて定年まで勤め上げています。まあ、私の勤務した役所の当時の雰囲気がマルクス『資本論』くらいは十分に許容できる、というスタンスだったと記憶しています。でも、さすがに、私は役所の官庁エコノミストの中では最左派だったのは確実です。周囲もそう見なしていたと思います。本書の書評に立ち返ると、自由放任とか見えざる手で有名なスミスについても、著者の間隔からすれば十分に社会民主主義者であったであろうし、マルクスが実生活はともかく共産主義者であった点は疑いのないところですし、ケインズは逆に自分自身では保守派と位置付けていたにもかかわらず、ネオリベ的なコンテキストで考えると十分左派であるのもそうなんだろうと思います。本書では、格差の問題などの現代的な経済課題を取り上げ、副題にあるような危機の問題も含めて、資本主義経済の問題点をいくつかピックアップした上で、決して、資本主義が社会主義に移行することが歴史の流れではないし、資本主義経済の諸問題の解決にもならない、としつつ、ネオリベ的な市場に任せた処方箋を明確に否定し、3人の古典的なエコノミストにも依りつつ、解決策を探ろうと試みています。ただ、シュンペーター的な技術革新や独占化の進展、さらに、デリバティブ取引の拡大などを指して経済の金融化の進展、などなど、かなりいいセン行っているんですが、最後の結論は少し私には違っているように見受けました。

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次に、デイヴィッド・スローン・ウィルソン『社会はどう進化するのか』(亜紀書房) です。著者は、米国ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の進化生物学の研究者であり、いわゆるマルチレベル選択説の提唱者です。英語の原題は This View of Life であり、2019年の出版です。がん細胞、免疫系、ミツバチのコロニーから、「多細胞社会」としての人間まで議論を進め、進化生物学の最前線から人間の経済社会活動のメカニズムを解剖しようと試みています。がん細胞はマルチレベル選択の実証的ですぐれた例を提供するとしています。経済学との関係では、特に、ノーベル経済学賞を受賞したエレノア・オストロム教授が提唱した失敗と成功を分かつ8つの中核設計原理(CDP)をベースにした解説はそれなりに説得力あります。8つのCDPとは、CDP1: 強いグループアイデンティティと目的の理解、CDP2: 利益とコストの比例的公正、CDP3: 全員による公正な意思決定、CDP4: 合意された行動の監視、CDP5: 段階的な制裁、CDP6: もめごとの迅速で公正な解決、CDP7: 局所的な自立性、CDP8: 多中心性ガバナンス、です。その上で、自由放任=レッセ・フェールとテクノクラートによる中央計画はどちらも機能しないといい切り、変異と選択の管理プロセスを機能する方法のひとつと位置付けています。典型的なマルチレベル選択説であり、社会的な協調が文化的な進化を進める原動力、ということなのだろうと私は受け止めています。ですから、望ましい経済社会を形成して維持し続けるための政策を立案するに当たっては、進化生物学の視点が不可欠、ということなんでしょうが、本書でも指摘しているように、進化と進歩は同一ではありませんし、進化とは望ましい方向という面はあるにせよ、実は、何らかの変化に対する適応のひとつの形式なんではないか、と私は思っています。がん細胞が正常な細胞を阻害するわけですから、進化生物学がよき社会のために、あるいは、安定した経済のために決定的に重要、とまでは断定する自信はありません。

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最後に、アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』(創元推理文庫) です。著者は、2018年の『カササギ殺人事件』で邦訳ミステリでミステリのランキングを全制覇し、一躍著名作家に躍り出ましたが、何と、本書で2年連続の邦訳ミステリのランキング全制覇だそうです。英語の原題は The Word Is Murder であり、2017年の出版です。『カササギ殺人事件』では、瀕死の名探偵アティカス・ピュントが謎解きを見せましたが、本書では刑事を退職したダニエル・ホーソーンが事件解決に挑み、何と、著者ホロヴィッツ自身が小説に実名かつ現実の作家や脚本家として、探偵のホームズ役のホーソーンに対して、記録者としてワトソン役を務めます。ということで、財産家の女性が、自分自身の葬儀の手配のために葬儀社を訪れた当日に絞殺されるという殺人事件から始まり、被害者の女性が約10年前に起こした自動車事故との関連が調査されるうち、被害者の女性の息子で有名な俳優も殺される、という連続殺人事件の謎解きが始まります。巻末の解説にあるように、すでにホーソーン探偵を主人公に据えた第2作の原作がすでに出版されていて、ピュントのシリーズも今後出版される予定だそうです。ミステリとしては実に本格的かつフェアな作品に仕上がっており、ノックスの十戒にも則って、犯人は実にストーリーの冒頭から登場します。いろんな伏線がばらまかれた上に、キチンと回収されます。我が国の新本格派も同じで、殺人まで進むにはやや動機に弱い点があったり、探偵役のホーソーンのキャラがイマイチですし、著者自身がワトソン役を務めるという意外性などは私自身は評価しませんが、ミステリとしてはとても上質です。ミステリファンであれば読んでおいて損はないと思います。

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2020年3月13日 (金)

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響は経済見通しにどのように現れているか?

今週月曜日3月9日に内閣府から公表された昨年2019年10~12月期GDP統計速報2次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから短期経済見通しがボチボチと明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、年半ばの東京オリンピック・パラリンピックの後、今年2020年いっぱいくらいまで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2019/10-122020/1-32020/4-62020/7-92020/10-12
actualforecast
日本経済研究センター▲1.8
(▲7.1)
▲0.7+0.5+0.8+0.3
日本総研(▲2.7)(+1.2)(+5.8)(+1.2)
大和総研(▲4.3)(+4.9)(+2.3)(+0.8)
ニッセイ基礎研▲1.1
(▲4.2)
+1.1
(+4.6)
+0.7
(+2.9)
+0.2
(+0.9)
第一生命経済研▲0.9
(▲3.6)
+0.3
(+1.2)
+0.8
(+3.3)
+0.7
(+2.8)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲1.3
(▲5.0)
+1.2
(+5.0)
+2.8
(+11.7)
▲0.3
(▲1.3)
SMBC日興証券▲1.5
(▲5.8)
+0.7
(+2.7)
+1.5
(+6.1)
+0.7
(+2.9)
農林中金総研▲0.2
(▲0.8)
+0.2
(+1.0)
+0.9
(+3.5)
▲0.5
(▲1.8)
東レ経営研▲1.3+0.6+0.9+0.6

各列の計数については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。2019年10~12月期までは内閣府から公表された2次QEに基づく実績値、今年2020年1~3月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、日本経済研究センターと東レ経営研のリポートでは前期比の成長率しか出されておらず、逆に、日本総研と大和総研では前期比年率の成長率のみ利用可能でしたので、不明の計数は省略しています。ということで、見れば明らかなんですが、10月の消費税率の引上げの後、2019年10~12月期が大きなマイナス成長となったのに続き、足元の1~3月期もマイナス成長が確実と見込まれています。ただ、これまた、すべての機関で4~6月期にはプラス成長に回帰し、オリンピック・パラリンピックといったイベントもあることから、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大が終息すれば、年央の4~6月期や7~9月期には、かなり大きなリバウンドが予想されています。ただし、その後の101~2月期には景気は息切れし、成長率は大きく減速して、シンクタンクによってはマイナス成長を見込む機関すらあります。
我が国景気に対する私の基本的な見方は、足元の2020年1~3月期もマイナス成長を記録し、テクニカルな景気後退シグナルが発せられるとともに、景気動向指数などの指標を見るにつけ、2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか、というものです。直近の景気動向指数CI一致指数のピークは2018年10月の104.1であり、鉱工業生産指数(IIP)でも2018年10月の105.6です。2019年3月に定年退職した私のそのあたりまでの景気の実感として、このCI一致指数やIIPのピークの2018年10月あたりが景気の山と考えるべきではないか、という気がしています。それにしては、景気後退の落ち方のスロープが従来のパターンに比べて緩やかなんですが、人手不足を背景とした雇用が国民生活の安定を支えたことに加えて、東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設需要、さらに、緩和の続く金融政策が経済活動を下支えしている、といったあたりが理由と考えられます。ただ、何としても不透明な要因として、新型コロナウィルス(COVID-19)の流行拡大があります。多くのシンクタンクなどの見通しでは、一部繰り返しになるものの、~6月期に終息し、年央は東京オリンピック・パラリンピックで景気も盛り上がり、年末にかけて息切れする、というのが基本シナリオなんですが、東京でのオリンピック・パラリンピックの開催がそもそも不可能となり、一気に景気が奈落の底に突き落とされる、という可能性もゼロではありません。まあ、何としても避けたいシナリオであることは間違いありませんが、私ごとき専門外のエコノミストには予測のしようがありません。
下のグラフは、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2020年3月12日 (木)

石油価格に連動する企業物価とマインド悪化を反映する法人企業景気予測調査!!!

本日、日銀から2月の企業物価 (PPI) が、また、財務省から1~3月期の法人企業景気予測調査が、それぞれ公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.8%と、先月統計の+1.5%から縮小し、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲0.8%の下落と試算されています。続いて、法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は昨年2019年10~12月期の▲6.2に続いて、足元の今年2020年1~3月期は▲10.1と、さらに、先行き4~6月期には▲4.4と3四半期連続でマイナスを記録した後、さらにその先の7~9月期には+4.2とプラスに転ずると見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の企業物価指数、前年比0.8%上昇 原油安が重荷
日銀が12日発表した2月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.0と、前年同月比で0.8%上昇した。4カ月連続で上昇したものの、伸び率は1月の1.5%から縮小した。消費税率の引き上げが押し上げ要因となる一方、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた原油価格の下落が重荷となった。
前月比では、0.4%の下落だった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年同月比で2.1%下落し、10カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%上昇した。輸入物価は前年同月比1.8%下落し、前月比は0.1%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。消費増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は2月、前年同月比で0.8%下落した。下落率は3カ月ぶりの大きさだった。
大企業景況1-3月マイナス10.1 14年4-6月以来の低さ
財務省と内閣府が12日発表した法人企業景気予測調査によると、1~3月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス10.1だった。マイナスは2四半期連続で、2014年4~6月期(マイナス14.6)以来の低さとなる。前回調査の19年10~12月期はマイナス6.2だった。先行き4~6月期の見通しはマイナス4.4だった。
1~3月期は大企業のうち、製造業がマイナス17.2で、非製造業はマイナス6.6だった。中小企業の全産業はマイナス25.3だった。
2020年度の設備投資見通しは前年度比1.5%減だった。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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引用した記事のタイトルがやや誤解を招きかねないんですが、国内企業物価のコンポーネントとしての石油・石炭製品の上昇率は大きく縮小したとはいえ、まだプラスの前年同月比を保っています。すなわち、石油・石炭製品の前年同月比で見て、1月には+9.0%の上昇だったのが、2月統計では+1.6%に縮小しています。ただ、季節調整していない国内企業物の前月比▲0.4%のうちの▲3.2%は石油・石炭製品の寄与であることは事実です。また、輸入物価のコンポーネントである石油・石炭・天然ガスでは、国内通貨建ての前年同月比で見て、1月統計で▲0.6%の下落だった結果が2月には▲0.7%と、わずかにマイナス幅を拡大しています。ただ、WTIでバレル30ドル近辺まで下がっていますから、3月には国内企業物価の石油・石炭製品がマイナスに転じたり、輸入物価の石油・石炭・天然ガスのマイナス幅が拡大する可能性が十分あるのはその通りですし、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大とサウジアラビアの原油生産動向次第では、さらにマイナス幅が大きくなったり、期間が長引く可能性も否定できません。私がこのブログで常々指摘しているように、我が国の物価動向は日銀の金融政策よりも石油価格の方に大きく連動します。加えて、新型コロナウィルスの物価への影響については、中国では供給サイドに現れて物価上昇が生じたように報じられていますが、我が国では需要サイドと石油価格の影響などから、物価を下押しする方向の効果の方が大きいと、私をはじめとする多くのエコノミストは見ています。

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続いて、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。これまた、直近の2018年10~12月期を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。ということで、BSIは昨年2019年10~12月期から足元の2020年1~3月期、さらに、次期の4~6月期まで、4四半期連続のマイナスが見込まれており、7~9月期になってようやくプラスに転ずる見通しが示されています。まあ、これもCOVID-19の感染拡大次第で、どちらに転ぶのか私にはまったく不明で先行き不透明であることはいうまでもありません。COVID-19の感染者がさらに急ピッチで拡大して終息まで長期化し、しかも、致死率が高かったりすれば経済へのダメージ大きく、早期に被害少なく終息すれば、あるいは、V字回復の可能性すらあります。マインドもそれに従って振れるんだろうと覚悟すべきです。現時点で、そういった方面に専門性ない私のようなエコノミストには何とも判りかねます。ただ、我が国のケースでは、ほかの国と違って、オリンピック・パラリンピックを控えていますから、これが中止になったり、あるいは、延期されたりすれば、他国にないダメージもあり得ると考えるべきです。

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2020年3月11日 (水)

国際通貨基金(IMF)が新型コロナウィルス感染拡大防止のための財政措置を要請!!!

やや旧聞に属する話題ながら、先週木曜日3月5日に、国際通貨基金(IMF)から新型コロナウィルス(COVID-19)の感染が拡大する下で国民を守るため、適切な財政政策の発動を求めるメッセージ "Fiscal Policies to Protect People During the Coronavirus Outbreak" が公表されています。我が国では、小中高校の休校措置などの国民の負担を強いる感染拡大策が先行していますが、こういった国際機関の政策提言にも耳を傾けるべきと私は考えます。とても強く考えます。COVID-19の感染拡大下で国民の命を守るための主要な財政政策をIMFのサイトから引用すると以下の3点です。

  • Spend money to prevent, detect, control, treat, and contain the virus, and to provide basic services to people that have to be quarantined and to the businesses affected.
    ウイルス感染の防止・検知・抑制・治療・封じ込めを行うため、また、隔離を余儀なくされた国民や影響を受けた企業に対して基本的サービスを提供するために、資金を投入する。
  • Provide timely, targeted, and temporary cash flow relief to the people and firms that are most affected, until the emergency abates.
    緊急事態が鎮静化するまでの間、もっとも深刻な影響を受けた国民や企業に対して、適時に対象を絞った一時的なキャッシュフロー救済措置を提供する。
    • Give wage subsidies to people and firms to help curb contagion.
      感染拡大を抑えるために、国民や企業に賃金助成金を支給する。
    • Expand and extend transfers-both cash and in-kind, especially for vulnerable groups.
      脆弱な集団に対しては、特に、金銭と現物支給の両面で給付を拡充する。
    • Provide tax relief for people and businesses who can't afford to pay.
      納税が困難な国民・企業を対象に税制上の負担軽減措置を提供する。
  • Create a business continuity plan.
    業務継続計画を立てる。

第2点めの一時的なキャッシュフロー提供には、さらに入れ子で賃金助成金などの3点が上げられていますので、インデントしてあるとはいえ少し見にくいかもしれません。私はこれら加えて公衆衛生機関や医療機関の体制拡充なども、当然に必要と考えるんですが、医師などの資格を必要とする人員拡充はすぐには難しいなど、短期に出来ることは限りがありますし、医療や衛生などの直接的なウィルス対策の体制拡充とともに、間接的に国民生活を経済面から支える財政政策に絞った提言なんでしょうから、取りあえずは、この3点ということも理解できるところです。我が国でも、ここは財源を気にせず国民の命を守る財政政策を展開すべき時、と私は強く訴えます。

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2020年3月10日 (火)

帝国データバンク「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」に企業の危機意識の高まりを見る!!!

先週金曜日の3月6日に帝国データバンクから「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」と題するリポートが明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされています。調査結果はかなりありきたりで、それほぼ見るべきものはありませんが、2月後半に日々企業の危機感が高まっていた、という興味深い結果が示されています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のサマリーを3点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 新型コロナウイルス感染症による自社の業績への影響、『マイナスの影響がある』と見込む企業は63.4%。内訳をみると、「既にマイナスの影響がある」が30.2%、「今後マイナスの影響がある」が33.2%となった。「影響はない」とする企業は16.9%だった一方で、『プラスの影響がある』(「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」の合計)と見込む企業は1.7%にとどまった
  2. 『マイナスの影響がある』と見込む企業を日別にみると、日を追うごとに、マイナスの影響を見込む割合が増加し、2月14日の55.7%から2月29日には81.7%まで増加した。新型コロナウイルス感染症の基本方針決定以降は、その傾向が顕著に表れた。特に、「既にマイナスの影響がある」も2月14日の24.5%から2月29日には45.4%まで上昇しており、半数近くの企業でマイナスの影響を受けていた
  3. 『マイナスの影響がある』と見込む企業を業種別にみると、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」と「旅館・ホテル」が89.3%で最も高い。以下、「再生資源卸売」(87.5%)、「繊維・繊維製品・服飾品小売」(87.1%)、「飲食店」(80.9%)が8割台で続く。他方、『プラスの影響がある』と見込む企業は、唯一「医薬品・日用雑貨品小売」(12.0%)が1割台となり最も高かった

これ以上の言及は不要と思いますが、ひとつだけ、リポートから企業業績にマイナスの影響があると回答した企業の割合が2月後半にグングン上昇しているグラフが印象的でした。2週間ほどで25%ポイント以上の上昇を見せています。以下の通り、リポートから引用しておきます。

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2020年3月 9日 (月)

下方修正された10-12月期GDP統計2次QEから現在の景気局面を考える!!!

本日、内閣府から昨年2019年10~12月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲1.8%、年率では▲7.1%と消費税率引上げ直後の反動を受け、大きなマイナスを記録しています。新型コロナウィルスの感染拡大前から、日本経済が消費税率引上げなどを契機に停滞に入っていたということが明らかになりました。1次QEからも下方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年10-12月期GDP改定値、年率7.1%減に下方修正
内閣府が9日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比1.8%減、年率換算では7.1%減だった。速報値(前期比1.6%減、年率6.3%減)から下方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比1.7%減、年率6.6%減となっており、速報値から下振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比1.5%減(速報値は1.2%減)、年率は5.8%減(同4.9%減)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比2.8%減(同2.9%減)、住宅投資は2.5%減(同2.7%減)、設備投資は4.6%減(同3.7%減)、公共投資は0.7%増(同1.1%増)。民間在庫の寄与度はプラス0.0%(同プラス0.1%)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス2.3%(同マイナス2.1%)、輸出から輸入を引いた外需はプラス0.5%分(同プラス0.5%)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス1.2%(同プラス1.3%)だった。
10~12月期は世界経済の減速が尾を引き、消費税率の引き上げもあった。財務省が2日発表した法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の設備投資は前年同期比3.5%減で、16年7~9月期以来13四半期ぶりのマイナス。これまで設備投資をけん引してきた非製造業も13四半期ぶりのマイナスに転じていた。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/10-122019/1-32019/4-62019/7-92019/10-12
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.6+0.5+0.0+0.0▲1.6▲1.8
民間消費+0.4+0.0+0.6+0.5▲2.9▲2.8
民間住宅+1.7+1.5▲0.2+1.2▲2.7▲2.5
民間設備+4.4▲0.4+0.8+0.2▲3.7▲4.6
民間在庫 *(+0.0)(+0.1)(▲0.0)(▲0.2)(+0.1)(+0.0)
公的需要+0.3+0.1+1.7+0.8+0.4+0.3
内需寄与度 *(+1.0)(+0.1)(+0.8)(+0.3)(▲2.1)(▲2.3)
外需寄与度 *(▲0.4)(+0.5)(▲0.3)(▲0.3)(+0.5)(+0.5)
輸出+1.6▲1.9+0.4▲0.7▲0.1▲0.1
輸入+4.3▲4.3+2.0+0.7▲2.6▲2.7
国内総所得 (GDI)+0.4+0.9+0.5+0.2▲1.5▲1.7
国民総所得 (GNI)+0.6+0.7+0.6+0.2▲1.6▲1.8
名目GDP+0.2+1.1+0.6+0.4▲1.2▲1.5
雇用者報酬+0.5+0.5+0.8▲0.4▲0.3▲0.4
GDPデフレータ▲0.6+0.1+0.4+0.6+1.3+1.2
内需デフレータ+0.2+0.3+0.4+0.2+0.7+0.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された昨年2019年10~12月期の最新データでは、前期比成長率が大きなマイナス成長を示し、需要項目別寄与度では、赤の消費と水色の設備投資がマイナスの寄与を示している一方で、黒の外需(純輸出)がプラスの寄与となっているのが見て取れます。

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>まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが中央値で前期比▲1.7%、年率▲6.6%でしたし、レンジ内に入っていますし、予想された範囲のマイナス成長、と見えます。もっとも、このGDP統計を見て、新型コロナウィルスの感染拡大前から、日本経済が消費税率引上げなどを契機に停滞に入っていたということが明らかになりました。足元の2020年1~3月期も消費税率引上げの反動減の影響は和らぐ一方で、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響からマイナス成長はほぼほぼ確実であり、2四半期連続のマイナス成長という形で、テクニカルな景気後退シグナルが明らかになるだけでなく、私をはじめとする一定数のエコノミストは2018年10~12月期を山として日本経済はすでに景気後退局面に入っている、という見方も徐々に広まるような気がします。上のテーブルを見ても、GDP需要項目ほぼほぼすべてで前期比マイナスを記録しています。例外は公的需要だけですが、まさに、こういった景気局面こそ政府支出による景気の下支えが必要です。また、ややトリッキーな現象ながら、輸出入ともに減少する中で、輸入の減少の方が大きいために外需寄与度がプラスを示しています。消費税率引上げなどの国内要因に基づく景気停滞ですので、外需に依存する景気拡大はアリだと私は考えています、というか、ある意味で必要かもしれません。先行きの日本経済については、COVID-19の感染拡大の終息次第なんでしょうが、年央の東京オリンピク・パラリンピックに向けた需要の盛り上がりは見込めるものの、COVID-19の感染拡大が想定外に大きく進めば、オリンピック・パラリンピックの中止や延期も可能性がゼロとはいい切れず、何とも不透明であることはいうまでもありません。また、COVID-19の影響は国内での需要停滞とともに、海外、特に中国を含むサプライ・チェーンの断絶という形で現れる可能性高く、中国人観光客のインバウンド消費という需要サイドからの影響だけではなく、供給サイドから企業活動に影響を及ぼす可能性もあります。加えて、企業活動に伴う需要サイドの設備投資の抑制だけでなく、雇用者所得の抑制につながれば家計の消費の回復にも水を差しかねません。繰り返しになりますが、何とも先行きは不透明です。ただ、私は何ら根拠なく、4~6月期にはCOVID-19の感染拡大は終息するんではないか、と見込んでいたりします。

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GDP統計のほか、本日は、内閣府から2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支も、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲14.5ポイント低下の27.4を、先行き判断DIも▲17.2ポイント低下の24.6を、それぞれ記録しています。ここまで大きな低下は2011年3月の東日本大震災以来ではないかと思います。おそらく、水準の低さも同じだという気がします。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+6,123億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。なお、景気ウォッチャーのグラフで影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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2020年3月 8日 (日)

3月8日の本日の雑感!!!

あまりいいお天気ではなく、時折雨が降りましたが、止む時間帯もあり、昨日から今日にかけて、図書館や買い物などに外出する機会もありました。今日は、午前中に読書感想文をアップしましたが、加えて、この週末土日の雑感です。
まず、図書館の新型コロナウィルス(COVID-19)対策が広がっています。北区立図書館や板橋区立図書館は来館者をシャットアウトしています。出入り口から2~3メートルのところまでしか入れず、予約本の受取りや返却しか対応しておらず、書架まで本を見に行くことすらできません。他方、練馬区立図書館や港区立図書館は、イベントの中止はしているのでしょうが、普通に書架から本を取り出すこともできますし、読書席に座って本を読むこともできるようです。どちらが正しい対応かは評価の分かれるところですが、少なくとも、来館者シャットアウトなんて、親方日の丸の公立図書館だから出来ることであり、フツーの民間ビジネスなら商売上がったりなんだろうと思います。
買い物にでた折にも、花粉飛散のピークを迎えてついついマスクを探しましたが、我が家周辺のドラッグストアへのマスク入荷はまだないようです。でも、区内のドンキではトイレットペーパーが山積みされており、通常の買い方をする人はいましたが、まあ、あれだけ積んであると見向きもされない、というカンジかもしれません。
今日の午後は、阪神の野球をテレビ観戦しました。甲子園での巨人とのオープン戦でしたが、流行語にもなりつつある無観客試合でした。何か、私には違和感ありましたが、解説者の方からは、無観客試合の方がいい成績を残せる選手もいそう、という見方にはナルホドと感じてしまいました。

今シーズンはリーグ優勝と日本一目指して、
がんばれタイガース!

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先週の読書は東京でのまとまった最終の読書か?

昨日の記事に米国雇用統計が割り込んで、先週の読書感想文が今日になってしまいました。かなり無理のある戦争や戦闘をマネジメントの視点から取り上げた経営書、啓蒙書などに加えて、大御所作家によるミステリ短編集まで、以下の通りの計5冊です。この先も、パラパラと読書は進めますが、週数冊のペースの読書は、当面、今日の読書感想文で最後になります。3月中に京都に引越してから、大学の研究費を使っての書籍購入の読書、また、京都をはじめとする公立図書館から借りての読書のいずれも、現時点ではどうなるものやら、まだ何ともいえません。

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まず、野中郁次郎ほか『知略の本質』(日本経済新聞出版社) です。著者の1人である野中教授は一橋大学の研究者であり、経営学の泰斗なんですが、この本では戦略論などの観点から、モロに戦争や戦闘を取り上げています。その昔に『失敗の本質』を出版した際のメンバーによく似通っています。兵制や武器に関する知識は、私にはからっきしありませんが、それを差し引いても戦略に関して判りにくさは残りました。日本経済新聞出版社から上梓されている意味が私には理解できませんでした。でも、ビジネス書としてトップテンにランキングされていた時期もあります。私は戦争や戦闘に詳しくないのに加えて、経営にもセンスないのかもしれません。ということで、取り上げているのは、第2次世界大戦以降の戦争や戦闘であり、第2次大戦における独ソ戦、同じく英国の空戦と、海戦、ベトナムがフランスと米国を相手にしたインドシナ戦争、そして最後に、イラク戦争と4章に渡って議論が展開されています。第2章の英国の戦略というか、時の首相だったチャーチルのゆるぎない信念と国民の一致団結した方向性などは経営にも通ずるものがある一方で、第1章のロジスティックス、というか、兵站や補給の重要性については、経営的にどこまで意味あるかは私には不明です。ただ、クラウゼビッツ的に政治や外交の手段としての先頭や戦争については、その通りだと思います。唯物論者の私にとって、圧倒的な後方支援体制、というか、物的生産力を有する米国がベトナムに敗れたのは、大きな謎のひとつなんですが、英国のチャーチルと同じで、ホーチミンもまた民族の独立という大義を全面に押し出し国民感情に訴えることで、広く共感を呼び起こし、国民の団結をもたらし、武力に勝る何らかのパワーを引き出した、といことなのだろうと思いますが、それをどのように経営に応用するんでしょうか?

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次に、スティーブン・ピンカー『21世紀の啓蒙』上下(草思社) です。著者は、米国ハーバード大学の認知科学の研究者です。学識経験者や有識者の世界的な代表者のひとりといえます。英語の原題は Enlightenment Now であり、ハードカバー版は2018年の出版です。ということで、啓蒙についての定義とまではいえないかもしれませんが、世界に関する正しく科学的な認識が生活の豊かさをもたらす、という観点を強調しています。ポストトゥルースやフェイクニュースなんぞはもってのほか、ということです。その意味で、強烈な米国トランプ政権批判の要素を秘めている点は忘れるべきではありません。啓蒙主義の理念は、理性、科学、ヒューマニズム、進歩などであり、私がよく言及するように、保守とは歴史の進歩を否定したり、進歩を押しとどめようとする一方で、左派リベラルは歴史の進歩に信頼を寄せ、パングロシアン的といわれようとも、人類の歴史は正しい方向に進んでいる、と考えています。歴史の流れを押しとどめるのが保守であり、ついでながら、この歴史の流れを逆回しにしようとしているのが反動といえます。本書第2部では、延々と人類の歴史の進歩が正しく実り大きい方向にあった点を跡付けています。その意味で、特に、2016年の米国大統領選挙や英国のEU離脱を決めたレファレンダムあたりから、世界の進む方向が変調をきたした、との論調を強く否定しています。その意味で、「世界は決して、暗黒に向かってなどいない。」との分析結果を示していますし、私はそれに成功していると受け止めています。とてもボリューム豊かな上下2冊であり、中身もそれなりに難解な内容を含んでいますので、読み始めるにはそれなりの覚悟が必要ですが、読み切れば大きな充実感が得られると思います。私は不動産契約のために京都を新幹線で往復した日ともう半日くらいで読み切りましたが、じっくりと時間をかけて読むのもいいような気がします。その意味で、図書館で借りるよりも書店で買い求めるべきなのかもしれません。

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次に、スー・マケミッシュほか[編]『アーカイブズ論』(明石書店) です。著者たちは、もナッシュ大学を中心とするオーストラリアの研究者が多くを占めています。英語の原題は Archives: Recordkeeping in Society であり、2005年の出版です。さらに、原書は12章から構成されていますが、なぜか邦訳書はそのうち半分の6章だけの抄訳書となっています。ということで、私の受け止めながら、集合名詞である「アーカイブズ」とは、何らかの決定に至る過程や論理を後に参照できる形でとどめる広い意味での公文書、ということになります。もちろん、その背景には説明責任=アカウンタビリティの保証があることは当然です。さらに、プリントアウトされたドキュメントだけでなく、マイクロフィルムや電磁媒体はいうまでもなく、アナログ・デジタルを問わず録画や録音も含まれると解されますし、役所のいわゆる公文書だけでなく、企業における経営判断をはじめとして何らかの決定過程を跡付ける資料も含まれます。ですから、オーストラリアには企業公文書施設が存在するそうです。まだ記憶に新しい森友事件における財務省の公文書改ざんなどにかんがみて、こういったアーカイブズに関する学術書が公刊されたんだろうと私は受け止めていますが、出版物を受け入れる図書館だけでなく、アーカイブズを整理して保存する組織や施設の必要性がよく理解できると思います。ただ、繰り返しになりますが、原書の抄訳であり、すっ飛ばされた部分がとても気にかかります。本書のテーマからして、どうしてそのような意思決定がなされたのか、説明責任を果たすべく、何らかのアーカイブズは残すことになるんでしょうか。それとも本書の邦訳者にして、アーカイブズの保存という実行は別問題なんでしょうか。

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最後に、有栖川有栖『カナダ金貨の謎』(講談社ノベルス) です。作者は、ご存じの通り、本格ミステリの大御所作家です。本家クイーンの向こうを張った国名シリーズ第10弾の記念作品です。綾辻行人の館シリーズ第10作がなかなか出て来ませんが、スタートは館シリーズに遅れたものの、コチラの方が第10作目の出版が早かったのは少し驚きました。ということで、作家アリスのシリーズですので、英都大学の火村准教授が謎解きに挑みます。短編ないし中編を5編収録したミステリ短編集で、収録順に、「船長が死んだ夜」、「エア・キャット」、表題作の「カナダ金貨の謎」、「あるトリックの蹉跌」、「トロッコの行方」となっていて、私は冒頭の2編は読んだ記憶があります。表題作は、この作者にしてはややめずらしい倒叙ミステリとなっています。男性の絞殺死体からメイプルリーフのカナダ金貨が持ち去られていたミステリです。最後の「トロッコの行方」は米国ハーバード大学のサンデル教授が取り上げて注目されたトロッコ問題をモチーフにしています。ただし、表題作も含めて、中編の「船長が死んだ夜」、「カナダ金貨の謎」、「トロッコの行方」はいずれもノックスの十戒に従って、すべて殺人事件なんですが、新本格派のミステリらしく少し動機が弱い気がします。これくらいのことで人を殺すかね、というのは私だけの感想ではなかろうと思います。それを別にすれば、極めて論理的な謎解きが展開されます。国名シリーズの10作目として、期待通りの出来といえます。

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2020年3月 7日 (土)

2月の米国雇用統計には新型コロナウィルスの影響はまだ限定的!!!

日本時間の昨夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+273千人増と新型コロナウィルス(COVID-19)の影響はまだ限定的で、雇用は予想外の伸びを示し、失業率も先月から0.1%ポイント低下して3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy adds booming 273,000 jobs in February as unemployment rate falls to 3.5% from 3.6%
The labor market turned in another strong showing in February as employers added 273,000 jobs despite a slowing economy, worker shortages and early coronavirus fears.
The unemployment rate fell from 3.6% to 3.5%, matching a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Also encouraging: Job gains for December and January were revised up by a total 85,000. December's was upgraded from 147,000 to 184,000, and January's, from 225,000 to 273,000.
Many economists said coronavirus concerns were unlikely to significantly affect the February jobs totals because the outbreak didn't begin to have a bigger impact on the economy and stock market until late February. The employment survey is conducted earlier in the month. The outbreak, however, could sharply reduce payroll gains in the months ahead.

まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期だったんですが、米国経済が長らく景気回復・拡大を続けているために、このグラフの範囲外になってしまいました。

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まず、Bloomberg のサイトによれば、市場の事前コンセンサスは雇用者の前月からの伸びが+175千人増、失業率は前月と同じ3.6%、ということなんですが、雇用者数はこれを大きく上回って伸び、失業率も低下を示しました。もちろん、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響はまったくないわけでもなかったんでしょうが、引用した記事にもある通り、本格的なインパクトはこれから出るわけで、2月統計ではまだ限定的な影響しか現れていないだけ、というわけなんでしょう。ですから、今週火曜日の3月3日に、米国連邦準備制度理事会(FED)が50ベーシスの大きな利下げを断行したところなんですが、3月17~18日には開催される定例の米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、わずかに2週間ながら、追加利下げがあるとする織込みが昨日3月5日の先物市場では、なんと100%に達しました。それだけではなく、再び0.5%の大幅利下げに踏み切るとの予測も8割を超しています。我が国では、小中高校の休校を政府が要請するなど、COVID-19の感染拡大を必死で食い止めようとしているところですが、ゼロ金利が長らく続いて金融政策による追加緩和もままならず、現在国会で審議中の政府予算はまっ赤っかの大赤字で財政出動もためらわれて、COVID-19の経済へのインパクトを相殺・緩和できるような経済政策のカードの持ち合わせがない我が国としては、米国と違ってCOVID-19感染拡大から経済への経路を遮断することが難しいわけですので、感染拡大そのものをいかに防止するか、ということが重要なわけです。

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ということで、米国雇用統計に戻ると、物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、一昨年2018年8月以来、賃金上昇率も3%台の水準が続いており、2月も前年同月比で+3.0%の上昇とインフレ目標を上回る高い伸びを示しています。ただ、上のグラフに見られるように、インフレ目標の+2%を大きく超えるとはいえ賃金の伸びが鈍化しているのは、米中間の貿易摩擦の影響もあって、雇用増が製造業ではなく賃金水準の低いサービス業、例えば、Leisure and hospitality や Health care and social assistance などで発生している点もひとつの要因です。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別としても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困対策や格差是正の観点を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。

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2020年3月 6日 (金)

6か月連続で「悪化」の基調判断続く景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から1月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲0.7ポイント下降して90.3を、CI一致指数は前月から+0.3ポイント上昇して94.7を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、6か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の景気動向指数、基調判断は6カ月連続「悪化」
内閣府が6日発表した1月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.3ポイント高い94.7と、4カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を6カ月連続で「悪化」に据え置いた。08年6月から09年4月まで11カ月連続で「悪化」となって以来の長さとなる。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5項目が指数のプラスに寄与した。自動車や二輪車の生産が堅調で「耐久消費財出荷指数」が伸びた。米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」のサポートが1月に終了したのを受けてパソコンの需要が膨らみ「商業販売額(小売業)」も伸びた。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.7ポイント低下の90.3だった。低下は2カ月ぶり。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比0.4ポイント低い103.4と、3カ月ぶりに低下した。
指数公表にあわせて西村康稔経済財政・再生相が談話を発表した。「新型コロナウイルスの影響が世界全体に広がりつつあり、我が国経済にも相当の影響をもたらしてきている」としたうえで「流行を早期に収束させ得ることが最大の課題」との認識を示した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、CI一致指数について月別の推移を見ると、消費税率引上げのあった昨年2019年10月から12月まで3か月連続で下降した後、本日公表の今年2020年1月統計では+0.3ポイントの上昇を示しましたが、昨年2019年10月の100.7から12月の94.4まで▲6.3ポイントの下降そ示した後の1月統計での+0.3ポイントの戻りですから、まったく力強さに欠けているとしかいいようがありません。このペースで上昇しても、2019年9月の水準に戻るには20か月以上かかることになってしまいます。その上、本日公表されたのは1月統計ですから、基本的に、景気の自律的な推移だけでこの動きを示していて、というのはややおかしいんですが、ハッキリいって、新型コロナウィルス(COOVID-19)の経済への影響はほぼほぼ含まれていないと考えられますので、COVID-19の影響が現れ始めると考えられる2月統計では、さらに景気動向指数の水準が下降するものと覚悟すべきです。1月統計のCI一致指数では、耐久消費財出荷指数や商業販売額(小売業)(前年同月比)などの消費関連指標のプラス寄与が大きく、昨年2019年10月の消費税率引上げのダメージから少しずつ復活の兆しが見え始めていたんですが、COVID-19ですべて吹き飛んだ気がします。私が今日見かけた大和総研のリポート「【改訂】新型肺炎拡大による日本経済への影響度試算」では、短期終息でもGDPは▲4.5兆円程度の減少を示す可能性が示唆されていましたし、webにはアップされていない顧客向けニュースレターながら、SMBC日興証券のリポートでも同様に、感染拡大の期間が2~4月の3か月間にとどまったとしても、経済へのダメージはGDP比で▲0.9%、もしも、感染拡大の期間が2~7月の6か月間で、加えて、オリンピックが中止にでもなればリーマン・ショック並みの大きなインパクトの可能性を指摘しています。そうならないことを願うばかりです。

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2020年3月 5日 (木)

昨年2019年10-12月期のGDP統計2次QE予想と我が国景気の現局面やいかに?

今週月曜日3月2日の法人企業統計の公表を受けて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、来週月曜日3月9日に昨年2019年10~12月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定で、すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしていて、今回は、新型コロナウィルス(COVID-19)に注目が集まっていますが、いつものように、法人企業統計のオマケで明らかにされているリポートも少なくなく、正面から先行きを取り上げているのはみずほ総研と第一生命経済研だけでした。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲1.6%
(▲6.3%)
n.a.
日本総研▲1.8%
(▲7.0%)
10~12月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲7.0%(前期比▲1.8%)と、1次QE(前期比年率▲6.3%、前期比▲1.6%)から下方修正される見込み。
大和総研▲1.6%
(▲6.1%)
2019年10-12月期GDP二次速報(3月9日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲6.1%と、一次速報(同▲6.3%)から僅かに上方修正されると予想する。
みずほ総研▲1.9%
(▲7.4%)
コロナウイルスの日本経済への影響は、①個人消費の下押し、②財・インバウンド輸出の減少、③サプライチェーン寸断による国内生産停止、などが想定される。
既に①個人消費については、感染防止等の観点から活動自粛の動きが足元で進んでいる。過去で近しい動きがみられた、東日本大震災や昭和天皇崩御の際は、特にサービス活動の低下が顕著であり、今回も同様の動きが発生するだろう。②輸出については、グローバルに感染が拡大するなかで、中国以外の他地域向けについても輸出が今後減少する可能性が高い。インバウンドについても、国内感染者数の拡大から、外国人客が日本を避ける動きが強まるとみている。③サプライチェーン寸断による生産活動の停止については、現時点では局所的・一時的な動きに留まっているが、長期化すればリスクが 顕在化する可能性が高まるだろう。
現時点で感染者数の今後の拡大ペースや終息時期は不透明だ。前回SARSの際は、発生から半年程度で終息していることから、現時点では年央頃にコロナウイルス影響が終息することをメインシナリオとしている。その場合、①個人消費や②輸出減が年前半の景気を下押しするものの、③サプライチェーン寸断までには至らず、年後半から持ち直すシナリオを想定している。日本経済は既に景気後退にあるとみており、その中での消費減・輸出減のインパクトは大きい。ただし、現時点ではコロナウイルスの影響はあくまで一時的であるとみており、本格的な雇用調整までには至らないと考えている。
ニッセイ基礎研▲1.6%
(▲6.4%)
19年10-12月期の法人企業統計の設備投資は弱い結果となったが、GDP統計の設備投資は1次速報値の段階ですでに弱い結果(名目・前年比▲3.2%)となっており、本日の法人企業統計の結果を反映した下方修正は小幅にとどまるだろう。
第一生命経済研▲1.7%
(▲6.6%)
新型コロナウイルスの悪影響が顕在化する以前から、既に景気が明確に悪化していたことが改めて確認されると思われる。
1次速報からの修正幅自体はそれほど大きいものではなく、10-12月期までの景気認識について変更を迫られるような内容にはならないと思われるが、問題なのは1-3月期以降の動向だ。筆者は2月17日の段階で1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率▲1.3%と、2四半期連続のマイナス成長になると予想していた。中国経済の悪化に伴う輸出の悪化が予想されることを踏まえたものだったが、その後さらに、日本国内でもイベントの中止やレジャー施設の休止、外出の手控え等、想定以上の影響の拡がりがみられており、サービスを中心とした個人消費の下振れが避けられない状況になっている。1-3月期のマイナス幅は、筆者が従来想定していたよりも大きくなりそうだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲1.8%
(▲7.1%)
落ち込み幅が拡大することで、消費増税のマイナスの影響が思いのほか大きかったとして、先行きの景気に対して慎重な見方が強まる可能性がある。
三菱総研▲1.9%
(▲7.3%)
2019年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲1.9%(年率▲7.3%)と、1次速報値(同▲1.6%(年率▲6.3%))から下方修正を予測する。

ということで、昨年2019年10~12月期のGDP統計2次QEは1次QEからの修正幅はわずかと見られており、大和総研を別にすれば、ほぼ下方修正で足並みがそろっています。大和総研だけは、原材料在庫の上方修正を主因に、在庫変動の前期比寄与度が上方修正されるため、2次QEは1次QEから上方修正と予想しています。いずれにせよ、改定幅はわずかと見込まれています。
2次QE予想とともに、注目されるのは景気の現局面です。というのも、先週水曜日の2月26日にシンクタンクの短期経済見通しを取り上げた際には、私自身の景気局面の見方として、「足元の2020年1~3月期もマイナス成長を記録し、テクニカルな景気後退シグナルが発せられるとともに、景気動向指数などの指標を見るにつけ、2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか、というものです。」と明記していて、現在の日本経済がすでに景気後退局面に入っていると指摘していたのは、ニッセイ基礎件のリポート「景気は 2018年秋頃をピークに後退局面入りしていたと事後的に認定される公算が大きい。」のほか、第一生命経済圏のリポート「18年10月を山として、景気は後退局面が続いている可能性が高い。」さらに、東レ経営研のリポート「景気は2018年10月を山として後退局面入りしていた可能性高まる」がある一方で、日本総研のリポートでは「景気は回復軌道に復帰する見込み」、あるいは、大和総研のリポートでも「2020年は日本の回復期入りが期待される」などと指摘されていて、直感的に、三菱総研のリポートの「日本経済は景気後退の瀬戸際で踏みとどまるだろう。」あるいは、みずほ総研のリポートの「日本経済は弱含んでいると評価」くらいが予測の中央値である可能性が高い、と私は受け止めていたんですが、今回の2次QE予想では、みずほ総研のリポートが明確に「日本経済は既に景気後退にある」と景気サイクルが進んだことを認めつつ、COVID-19次第で景気後退が深刻化したり、長期化したりすると論じています。この先、時間の流れとともに、景気後退局面入りしているとの「リセッション派」のエコノミストが増えそうな気がします。なお、内閣府から明日公表予定の景気動向指数の基調判断をおさらいしておきますと、2018年いっぱいの12月までは「足踏み」が続き、2019年1~2月は「下方への局面変化」に修正された後、2019年3月には「悪化」となり、メディアを大いに賑わせ、この「悪化」が4月も続いた後、2019年5~7月は一時「下げ止まり」になったものの、再び8月以降は「悪化」が続いていますから、ヒストリカルDIを計算するまでもなく、かなり、この景気動向指数の基調判断が正確だった、ということがいえます。繰り返しになりますが、私の景気の現局面の判断は、ピンポイントの景気転換月の指摘はしませんが、2018年10~12月期を景気の山として日本経済はすでに景気後退局面に入っている可能性が高い、ということになります。そして、来週公表予定の2019年10~12月期や足元の2020年1~3月期のGDP統計は、この私の景気判断を裏付けるものになるんではないか、という気がしないでもありません。
最後に、下のグラフは、私が名付けた「リセッション派」に転じたみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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2020年3月 4日 (水)

東洋経済オンライン「在宅勤務制度がある会社」主要550社リストやいかに?

新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミック化防止のため、時差通勤や在宅勤務などが模索されていますが、3月1日付けの東洋経済オンラインで「在宅勤務制度がある会社」主要550社リストと題する記事が掲載されています。そのうち、業界別在宅勤務制度の実施会社比率のテーブルを東洋経済オンラインのサイトから引用すると以下の通りです。

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地方公務員はいざ知らず、国家公務員の勤務する政府官庁は100パーセントなんでしょうね。私も公務員だったころに「テレワーク」と称する在宅勤務をした経験があります。在宅勤務も含めて、「休めるのは"上級国民"だけ」という批判があるのも事実ですが、まあ、こういった制度はあるに越したことはないような気がします。

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2020年3月 3日 (火)

「OECD経済見通し」新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で大きく下方修正!!!

昨日、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し中間評価」OECD Economic Outlook, Interim Report March 2020 が公表されています。副題は Coronavirus: the world economy at risk となっており、そのものズバリです。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。リポートのヘッドラインとなる世界経済の今年2020年の成長率は昨年2019年11月時点から▲0.5%ポイント引き下げて、+2.4%に下方修正しました。いうまでもなく、新型コロナウィルスの影響による下振れです。まず、OECDのサイトから経済成長率見通しの総括的なグラフを引用すると以下の通りです。

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繰り返しになりますが、ほぼほぼ新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、世界経済の成長率見通しは下方修正されています。具体的な数字をお示しすれば、今年2020年+2.4%と昨年2019年11月時点の見通しから▲0.5%ポイント下方修正されています。2020年の成長率見通しを前回2019年11月時点の見通しとの比較でもう少し国別に細かく見ると、米国はわずかに▲0.1%ポイント下方修正の+1.9%成長、ユーロ圏欧州も▲0.3%ポイント下方修正で+0.8%成長、と見込まれている一方で、日本は▲0.4%ポイントの下方修正で+0.2%とギリギリプラス成長と見込まれ、震源地の中国は▲0.8%下方修正の+4.9%成長と+5%を割り込む予想となっています。上のグラフでも、新興国の方が先進国よりも下方修正幅が大きくなっているのが見て取れます。
しかし、今回の見通しではベースケースのシナリオについて、2020年1~3月期が流行のピーク epidemic peak で、その後は徐々に回復すると見ていますので、2021年見通しは逆に上振れる可能性が示唆されています。すなわち、2021年成長率見通しを前回2019年11月時点と比較すると、世界経済全体では+0.3%ポイントの上振れで+3.3%成長が見込まれており、国別では日本とユーロ圏欧州については前回見通しから変化ないものの、米国は+0.1%ポイント上振れ、中国に至っては+0.9%ポイントの上方修正を見込んでいます。このあたりは、COVID-19の流行の広がりと終息時期によりますから、何ともいえませんが、当然ながら、早期にCOVID-19の流行が終息すればV字回復の可能性もあり得る、ということなのだろうと私は考えています。いずれにせよ、先行き経済見通しは現時点では極めて不透明としかいいようがありません。

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本日、内閣府から2月の消費者態度指数が公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月から▲0.7ポイント低下して38.4を記録しました。上のグラフの通りです。なお、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。`消費者態度指数を構成するコンポーネントで詳しく見ると、4項目すべてが前月統計から低下している中で、もっとも大きな落ち込みを示したのが▲2.4ポイント低下の雇用環境でした。コンポーネントは別に収入などがあるとはいえ、GDP需要項目の中で最大のシェアを占める消費の基礎となる雇用に関するマインドが低下したのは気がかりです。なお、統計作成官庁である内閣府による基調判断は「足踏み」で据え置かれています。

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2020年3月 2日 (月)

2019年を通じて企業活動の停滞を示す法人企業統計の先行きをどう見るか?

本日、財務省から昨年2019年10~12月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高はほぼ3年ぶりの減収で前年同期比▲6.4%減の347兆8257億円、経常利益は2四半期連続の減益で▲4.6%減の18兆5759億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで▲3.5%減の11兆6303億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比▲4.2%減となっています。なお、設備投資については、前回からソフトウェアを含むベースに変更されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資、約3年ぶりマイナス 10-12月3.5%減
財務省が2日発表した2019年10~12月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の設備投資は前年同期比3.5%減の11兆6303億円だった。マイナスは16年7~9月期以来13四半期ぶり。世界経済の減速を受け、自動車など製造業で投資が冷え込んだ。これまで設備投資をけん引してきた非製造業も13四半期ぶりにマイナスに転じた。
設備投資の内訳をみると、製造業が9.0%減で2四半期ぶりに減少した。国内外の需要減が鮮明な自動車産業を中心に、生産能力を増強する投資が減った。非製造業は0.1%減で、13四半期ぶりのマイナス。オフィスビルや商業施設への投資が減った不動産業が22.8%減となり、全体を押し下げた。
全産業の売上高は6.4%減と、2期連続で減少した。製造業・非製造業ともに前年を下回った。製造業では自動車や関連部品の販売が低調だった。非製造業では卸売業・小売業が10.2%減り、マイナスに寄与した。
財務省によると、卸売業にあたる商社で石油化学製品などの販売が減少した。小売業だけでは0.5%の増収で「消費増税の影響はこの統計では確認できなかった」(財務省)という。
経常利益は製造業が15.0%減で6期連続の減少。33.7%の減益となった生産用機械では、海外を中心に建設機械の販売が低迷した。大型台風で生産が減った影響もあった。前年より為替相場が円高で推移していたため、自動車などでは為替差損が出た。
新型コロナウイルスの感染が本格的に広がる前の時期に、企業活動が鈍っていた状況が浮かぶ。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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飲用した記事にもある通り、基本的に企業活動は消費税から中立とはいえ、昨年2019年10~12月期は消費需要が大きく低下したわけですので、企業の売上も利益もともに下振れするのは当然ですが、その前の時期から企業活動は鈍化を示しています。すなわち、先の2019年10~12月期の1次QE公表時にも書いた通り、かなり前から、すなわち、「2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか」という見方を示しておきましたが、ひとつの根拠として、この法人企業統計の金融業と保険業を除く全企業の売上が季節調整済みの系列で見て、2018年10~12月期を直近のピークとして、2019年1~3月期から2019年いっぱいの4四半期連続で減少を続けている点が上げられます。上のグラフの通りです。さすがに、リーマン・ショック時の売上や経常利益の落ち方はとても強烈なんですが、その前の時期の落ち方と比較しても、2019年いっぱいの売上や経常利益の落ち方はかなりのもんです。加えて、季節調整済みの系列で見た経常利益については、直近の2019年10~12月期で非製造業がほぼほぼ横ばいの+0.3%増だった一方で、製造業は▲8.6%減を示しており、世界経済の停滞に起因する減益であることは明らかです。設備投資についても2四半期連続のマイナスが続いており、さらに、足元の今年2020年1~3月期には新型コロナウィルスによるダメージが加わる可能性が極めて高く、いっそうの企業活動の停滞につながることは確実です。その先については、私のような凡庸なエコノミストには想像もできません。ただ、短期的な目先の売上や利益や設備投資は新型コロナウィルスにより下振れする可能性がある一方で、感染が収束すれば一気にV字回復する可能性も残されている点は忘れるべきではありません。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、相変わらず、太線のトレンドで見て労働分配率は60%前後で底這い状態から脱することなく低空飛行を続けています。他方、設備投資のキャッシュフロー比率はじわじわと上昇して60%台半ばに達しています。もちろん、一番元気よく右肩上がりの上昇を続けているのは利益剰余金です。ストックですから、積み上がる傾向にあるとはいえ、これを賃金や設備投資にもっと回すような政策はないものでしょうか?

本日の法人企業統計を受けて、来週月曜日の3月9日に10~12月期GDP統計2次QEが公表される予定となっています。基本的に、小規模な修正ながら下方改定されるものと私は考えていますが、いずれにせよ、日を改めて2次QE予想として取り上げたいと思います。

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2020年3月 1日 (日)

【LINEリサーチ】新型肺炎(新型コロナウィルス)に関する調査結果やいかに?

私がすっかり見逃していて、やや旧聞に属する話題ながら、2月25日付けでLINEリサーチ「新型肺炎(新型コロナウィルス)に関する調査結果」が明らかにされています。調査そのものは2月19日に実施されており、その2週間前の2月5日調査結果と対比されています。さすがに、新型肺炎(新型コロナウィルス)に関する認知度は高いものの、それでも1%は「全く聞いたことがない」と回答していたりしますが、まあ、99%は知っているわけです。1%の知らない人というのは、どんな人なんでしょうか。年齢・性別・居住地などの属性がやや気にかかります。ということで、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、LINEリサーチのサイトから、さいきん2週間の間に、生活の中で困ったこと を引用しています。「マスクが手に入らない」49%と「手指のアルコール消毒用品が手に入らない」20%がマーキングしてありますが、2月19日調査では「新型肺炎が流行っている」よりも「花粉症の季節が来た」の方が多くなっています。私も実は困るのは新型肺炎よりも花粉症で、エコノミストですから、新型肺炎への罹患は5%水準で棄却されそうな気がしますが、花粉症はほぼほぼ100%ではなかろうかという気もします。もちろん、罹患するかどうかではなく、2~3%といわれる新型肺炎の致死率を考慮した期待値ベースでは、死には至らなさそうな花粉症よりも新型肺炎の方のマイナスが大きいんでしょうが、まあ、私は確率的には罹患しないだろうと高をくくっています。

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次に、上のグラフは、LINEリサーチのサイトから、あなたの職場での対応や推奨されていることは? を引用しています。「手指のアルコール消毒用品が常備」26%、「マスクの着用の義務/推奨」23%、「イベントや集会の中止」14%がハイライトされています。ただ、「時差通勤の推奨」や「在宅勤務の許可/推奨」はいずれも5%という結果が示されています。今ではもっと比率が上昇している可能性はありますが、「休めるのは"上級国民"だけ」という批判があるのも事実です。

今日、私は何度か買い物や図書館に出かけたのですが、やたらとトイレットペーパーを買って帰る人が多かったような気がします。フェイクニュースにもならないデマのたぐいなんでしょうが、我が家周辺のご近所さんのレベルが低いかもしれないと改めて感じてしまいました。

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今日は女房の誕生日!

今日は、女房の誕生日です。
引越しを間近に控え、忘れないうちにアップしておきたいと思います。いつものくす玉を置いておきます。誕生日祝にクリックして割ってやっていただければ幸いです。

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