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2020年3月 7日 (土)

2月の米国雇用統計には新型コロナウィルスの影響はまだ限定的!!!

日本時間の昨夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+273千人増と新型コロナウィルス(COVID-19)の影響はまだ限定的で、雇用は予想外の伸びを示し、失業率も先月から0.1%ポイント低下して3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy adds booming 273,000 jobs in February as unemployment rate falls to 3.5% from 3.6%
The labor market turned in another strong showing in February as employers added 273,000 jobs despite a slowing economy, worker shortages and early coronavirus fears.
The unemployment rate fell from 3.6% to 3.5%, matching a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Also encouraging: Job gains for December and January were revised up by a total 85,000. December's was upgraded from 147,000 to 184,000, and January's, from 225,000 to 273,000.
Many economists said coronavirus concerns were unlikely to significantly affect the February jobs totals because the outbreak didn't begin to have a bigger impact on the economy and stock market until late February. The employment survey is conducted earlier in the month. The outbreak, however, could sharply reduce payroll gains in the months ahead.

まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期だったんですが、米国経済が長らく景気回復・拡大を続けているために、このグラフの範囲外になってしまいました。

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まず、Bloomberg のサイトによれば、市場の事前コンセンサスは雇用者の前月からの伸びが+175千人増、失業率は前月と同じ3.6%、ということなんですが、雇用者数はこれを大きく上回って伸び、失業率も低下を示しました。もちろん、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響はまったくないわけでもなかったんでしょうが、引用した記事にもある通り、本格的なインパクトはこれから出るわけで、2月統計ではまだ限定的な影響しか現れていないだけ、というわけなんでしょう。ですから、今週火曜日の3月3日に、米国連邦準備制度理事会(FED)が50ベーシスの大きな利下げを断行したところなんですが、3月17~18日には開催される定例の米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、わずかに2週間ながら、追加利下げがあるとする織込みが昨日3月5日の先物市場では、なんと100%に達しました。それだけではなく、再び0.5%の大幅利下げに踏み切るとの予測も8割を超しています。我が国では、小中高校の休校を政府が要請するなど、COVID-19の感染拡大を必死で食い止めようとしているところですが、ゼロ金利が長らく続いて金融政策による追加緩和もままならず、現在国会で審議中の政府予算はまっ赤っかの大赤字で財政出動もためらわれて、COVID-19の経済へのインパクトを相殺・緩和できるような経済政策のカードの持ち合わせがない我が国としては、米国と違ってCOVID-19感染拡大から経済への経路を遮断することが難しいわけですので、感染拡大そのものをいかに防止するか、ということが重要なわけです。

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ということで、米国雇用統計に戻ると、物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、一昨年2018年8月以来、賃金上昇率も3%台の水準が続いており、2月も前年同月比で+3.0%の上昇とインフレ目標を上回る高い伸びを示しています。ただ、上のグラフに見られるように、インフレ目標の+2%を大きく超えるとはいえ賃金の伸びが鈍化しているのは、米中間の貿易摩擦の影響もあって、雇用増が製造業ではなく賃金水準の低いサービス業、例えば、Leisure and hospitality や Health care and social assistance などで発生している点もひとつの要因です。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別としても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困対策や格差是正の観点を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。

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