石油価格に連動する企業物価とマインド悪化を反映する法人企業景気予測調査!!!
本日、日銀から2月の企業物価 (PPI) が、また、財務省から1~3月期の法人企業景気予測調査が、それぞれ公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.8%と、先月統計の+1.5%から縮小し、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲0.8%の下落と試算されています。続いて、法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は昨年2019年10~12月期の▲6.2に続いて、足元の今年2020年1~3月期は▲10.1と、さらに、先行き4~6月期には▲4.4と3四半期連続でマイナスを記録した後、さらにその先の7~9月期には+4.2とプラスに転ずると見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2月の企業物価指数、前年比0.8%上昇 原油安が重荷
日銀が12日発表した2月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.0と、前年同月比で0.8%上昇した。4カ月連続で上昇したものの、伸び率は1月の1.5%から縮小した。消費税率の引き上げが押し上げ要因となる一方、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた原油価格の下落が重荷となった。
前月比では、0.4%の下落だった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年同月比で2.1%下落し、10カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%上昇した。輸入物価は前年同月比1.8%下落し、前月比は0.1%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。消費増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は2月、前年同月比で0.8%下落した。下落率は3カ月ぶりの大きさだった。
大企業景況1-3月マイナス10.1 14年4-6月以来の低さ
財務省と内閣府が12日発表した法人企業景気予測調査によると、1~3月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス10.1だった。マイナスは2四半期連続で、2014年4~6月期(マイナス14.6)以来の低さとなる。前回調査の19年10~12月期はマイナス6.2だった。先行き4~6月期の見通しはマイナス4.4だった。
1~3月期は大企業のうち、製造業がマイナス17.2で、非製造業はマイナス6.6だった。中小企業の全産業はマイナス25.3だった。
2020年度の設備投資見通しは前年度比1.5%減だった。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

引用した記事のタイトルがやや誤解を招きかねないんですが、国内企業物価のコンポーネントとしての石油・石炭製品の上昇率は大きく縮小したとはいえ、まだプラスの前年同月比を保っています。すなわち、石油・石炭製品の前年同月比で見て、1月には+9.0%の上昇だったのが、2月統計では+1.6%に縮小しています。ただ、季節調整していない国内企業物の前月比▲0.4%のうちの▲3.2%は石油・石炭製品の寄与であることは事実です。また、輸入物価のコンポーネントである石油・石炭・天然ガスでは、国内通貨建ての前年同月比で見て、1月統計で▲0.6%の下落だった結果が2月には▲0.7%と、わずかにマイナス幅を拡大しています。ただ、WTIでバレル30ドル近辺まで下がっていますから、3月には国内企業物価の石油・石炭製品がマイナスに転じたり、輸入物価の石油・石炭・天然ガスのマイナス幅が拡大する可能性が十分あるのはその通りですし、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大とサウジアラビアの原油生産動向次第では、さらにマイナス幅が大きくなったり、期間が長引く可能性も否定できません。私がこのブログで常々指摘しているように、我が国の物価動向は日銀の金融政策よりも石油価格の方に大きく連動します。加えて、新型コロナウィルスの物価への影響については、中国では供給サイドに現れて物価上昇が生じたように報じられていますが、我が国では需要サイドと石油価格の影響などから、物価を下押しする方向の効果の方が大きいと、私をはじめとする多くのエコノミストは見ています。

続いて、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。これまた、直近の2018年10~12月期を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。ということで、BSIは昨年2019年10~12月期から足元の2020年1~3月期、さらに、次期の4~6月期まで、4四半期連続のマイナスが見込まれており、7~9月期になってようやくプラスに転ずる見通しが示されています。まあ、これもCOVID-19の感染拡大次第で、どちらに転ぶのか私にはまったく不明で先行き不透明であることはいうまでもありません。COVID-19の感染者がさらに急ピッチで拡大して終息まで長期化し、しかも、致死率が高かったりすれば経済へのダメージ大きく、早期に被害少なく終息すれば、あるいは、V字回復の可能性すらあります。マインドもそれに従って振れるんだろうと覚悟すべきです。現時点で、そういった方面に専門性ない私のようなエコノミストには何とも判りかねます。ただ、我が国のケースでは、ほかの国と違って、オリンピック・パラリンピックを控えていますから、これが中止になったり、あるいは、延期されたりすれば、他国にないダメージもあり得ると考えるべきです。
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