京都に引越して最初の読書感想文はわずかに2冊!!!
久し振りの読書感想文ですが、新刊に近い読書はわずかに2冊です。今までの私の読書はほぼほぼ東京都という財政基盤が盤石な地方公共団体に支えられていたのだということを実感しました。先週今週と購読している朝日新聞の書評欄を参考に、お近くの京都市図書館に予約を入れようと試みましたが、まだ所蔵されていなかったりして、やや驚きでした。どうでもいいことながら、私がよく活用していた城北地区の図書館であれば、練馬区立図書館は予約でいっぱい、板橋区立図書館と来た区立図書館はかなり借りやすく、足立区立図書館は、おそらく、都内の公立図書館の中でももっとも借りやすい図書館のひとつではないか、という気がしていました。
まず、加藤政洋『酒場の京都学』(ミネルヴァ書房) です。著者は、立命館大学の研究者であり、専門は人文地理学と聞き及んでいます。大雑把に、タイトル通りの内容で、私が年に何冊か読む京都本といえます。でも、現在の21世紀の京都の酒場の案内ではなく、むしろ、明治末期から対象・昭和初期を中心とする時代背景を持っています。そして、酒場で酒を飲むのは現在のようなサラリーマンではなく、三高の学生はんが想定されています。その中心人物は織田作之助だったりします。実は、私も40年ほど前はその三高の後身である京都大学の学生だったりしたんですが、本書が主たる対象としている時代背景と比較すると、よくも悪くも格差是正が進んでおり、私の学生時代には考えられないような「豪遊」を学生がしているような気がします。父親が労働者階級だったせいもあって、私の学生時代の酒場での活動はもっと慎ましやかでした。また、京都南部出身であり、現在も東京から引越して出身地とよく似たところに住まいしている私の興味を引いたのは、京都の酒場では灘の生一本がよく飲まれていて、決して伏見の地場のお酒ではなかった、という点です。あくまで一般的な理解ですが、関西で酒作りが盛んな本場は灘と伏見であり、灘は剣菱などに代表されるように辛口、他方、伏見はやや甘口の酒を特徴としています。本書で「豪遊」が伝えられている三高の学生はんは東京に帰省していたりしますので、やや京都の地場の学生とは嗜好が異なっているのかもしれません。
次に、そして、最後に、柿埜真吾『ミルトン・フリードマンの日本経済論』(PHP新書) です。著者は、学習院大学大学院博士後期課程に所属する大学院生であり、新書ながら、かなり忠実に学術書の書き方に則った図書となっています。本書では、冒頭部分でごく簡単にフリードマン教授の人となりや業績をかいつまんで紹介した後、日本経済に対するフリードマン教授の分析や日本国内における行政や日銀の対応などをなかなか克明に跡付けています。フリードマン教授はいうまでもなく市場重視のマネタリストであり、ハイエクなどとの類似性を持って、やや日本では重視されていない気もしますが、特に、現在の黒田総裁に交代してからの日銀ではマネタリスト理論を背景とする金融政策が実行されており、現在でも在野のエコノミストでリフレ派とされる人達はマネタリスト的な政策への理解が深いといえます。私は左派リベラルですので、それほどフリードマン教授に対する評価は高くありませんが、本書でも適確に指摘されている通り、1980年代後半から90年代にかけて、我が国の通商政策に米国が介入を試みた際に、リビジョニストと呼ばれる人々が「日本特所論」を声高に叫んだ折には、フリードマン教授が強く反論した点は記憶していたりします。加えて、フリードマン教授の大きな業績は、分析対象となる経済モデルに関してキチンと定量的な把握を試みた点です。何となくの印象論で議論を進めるのではなく、今風の用語を用いれば、evidence based policy making の観点を重視していました。この定量分析重視は今でも学界に強く受け継がれているといえます。
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