読み逃していた何冊かの本の読書感想文!!!
大学の図書館も、地域の公立図書館も、すべて非常事態宣言で閉館されてしまい、その直前に大学の図書館で借りた本を中心に読み終えたものを取り上げてみました。
まず、C.P. キンドルバーガー & R.Z.アリバー『熱狂、恐慌、崩壊』(日本経済新聞出版) です。ノーベル賞受賞者であるキンドルバーガー教授の代表作のひとつであり、キンドルバーガー教授はすでに2003年に亡くなっていますので、その後はアリバー教授が引き継いでおり、2人とも米国の研究者です。私が読んだのは原書第6版で、上の画像に見られるように、英語の原題は Manias, Panics, and Crashes です。近代に入ってからのバブルの歴史をひも解き、第9章では和楽のに1980年代後半のバブル経済も取り上げています。最後は第13章のリーマン・ショックであり、キンドルバーガー教授はその時点ですでになくなっていますので、アリバー教授の分析に従えば、「避けられた」と結論されています。古典とまではいえないとしても、おそらく、歴史に残るであろう、そして、50年先には古典となっている可能性も十分ある大著です。なかなか重厚な味わい深い読書でした。
次に、トーマス・フリードマン『レクサスとオリーブの木』上下(草思社) です。著者は米国のジャーナリストであり、本書はグローバル化を称賛する書として有名なところです。私は同じ著者のこの次の著書である『フラット化する世界』を読んだ記憶はあるんですが、この最初の有名になった著書はまだ読んでいませんでした。大きな理由は、本書は2000年の3月か4月ころに邦訳が出版されたと記憶しているんですが、その夏には幼稚園児を連れての海外赴任でジャカルタに出発する予定で多忙を極めており、ジャカルタにつくとベストセラーとなっていた本書の入手が困難となっていたからです。マクドナルドが店舗展開している国同士は戦争をしないなど、読んでいなくても聞いたことのある本書の主張はいくつかあると思います。でも、さすがに、20年前の主張ですので何ともいえない違和感はあります。何年待っても古典にはならないような気がします。
最後に、ナシーム・ニコラス・タレブ『ブラック・スワン』上下(ダイヤモンド社) です。著者は基本的に投資家だろうと思うんですが、実務家として大学の口座を持っていたりもするようです。本書では、リーマン・ショックの直前に確率分布から、「ファットテール」とか、必ずしも正規分布に従わない分布の場合に何が起こるかを論じていて、その上で、金融資産の価格については、正規分布に従わず、平たくいえば、とんでもないことが起こりがち、という結論を導いています。本書は2007年か2008年に邦訳が出版され、ちょうど長崎大学に出向しているときに全国的に注目が集まったと記憶していて、よく覚えていませんが、長崎で入手できなかったんだろうと思います。というのも、長崎大学では研究費はかなりPC回りにつぎ込んでしまい、ハードとソフトにかなり使ってしまい、その分、粗製乱造ながら論文はいっぱい書いたんですが、図書まで研究費が回りませんでした。東京に戻って、統計局勤務になった際には、統計局が依拠している正規分布に対する「冒涜的な記載」があるとかで、周囲の同僚などからよくない評判が聞かれたりして、結局、読む機会を失った気がします。
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