石油価格に連動して大きく下落した4月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?
本日、日銀から4月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲2.3%の下落と、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響による原油価格の大幅下落などから、とうとう、先月公表の3月統計からヘッドラインでもマイナスに転じ、4月統計ではマイナス幅を拡大しています。また、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲3.7%の下落と試算されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
4月の企業物価指数、前年比2.3%下落 原油安響き2年半ぶり低水準
日銀が15日発表した4月の企業物価指数(2015年平均=100)は99.6と、前年同月比で2.3%下落した。下落は2カ月連続で、下落率は16年11月以来の大きさだった。新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済活動の停滞で原油価格が大きく下落し、影響を受けやすい石油・石炭製品や化学製品の価格に下押し圧力が大きかった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。指数が100を下回るのは17年11月(99.8)以来だ。水準としては17年10月(99.4)以来2年6カ月ぶりの低さだった。円ベースでの輸出物価は前年同月比で6.6%下落した。下落は12カ月連続。前月比では1.1%下落した。輸入物価は前年同月比13.1%下落し、前月比でも5.6%下落した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。19年10月の消費税率引き上げの影響を除いたベースでの企業物価指数は98.1と前年同月比で3.7%、前月比で1.4%下落した。前年同月比の下落率は16年8月以来の大きさだった。
4月は原油の国際指標油種のひとつであるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物で当時の期近物が史上初めてマイナスとなるなど、原油価格が大きく下落した。品目別では原油価格の影響を受けやすい石油・石炭製品や化学製品の価格に下押し圧力が大きかった。新型コロナ拡大による需要減少で鉄鋼や飲食料品の価格も下落した。
外出自粛による家庭での食料品需要の高まりから農林水産物の価格は上昇した。もっとも5月に入っても本格的な経済活動の再開には至っていない。今後も新型コロナによる価格下落圧力は続くとみられ、日銀は今後も物価動向を注視していく姿勢だ。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

ということで、繰り返しになりますが、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率が▲2.3%の下落で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲1.5%の下落ながら、予想レンジの下限は▲2.4%でしたから、ギリギリでレンジの範囲内ということです。別の観点では、引用した記事にもある通り、季節調整していない原系列の前月比で見て4月は▲1.5%の下落ですから、前年同月比▲2.3%下落のうち、かなり大きな部分が4月単月で生じていて、決して、1年間12か月かけてジワジワと下げたわけではない、と考えて差し支えありません。しかも、その単月の下げの大きな部分が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、ロックダウンとまでいわないとしても、日本に限らず世界規模で外出などの自粛や営業の規制が実施され、移動をはじめとする石油需要が激減し、石油価格が大きく低下した結果であると考えるべきです。もちろん、石油価格以外にも経済活動の停滞ないし需要の減退に伴う幅広い価格下落も含めてCOVID-19の影響が見られます。
例えば、最大の物価下落要因のひとつである石油価格について、Bloomberg などをはじめとして広く報じられているように、WTIの5月先物は4月20日の終値でバレル▲37.63ドルのマイナス値をつけています。ただし、このマイナス値は、あくまで、米国で在庫が積み上がり、保管スペースが確保できなくなるとの見方から、差金決済のための投げ売りが加速した一時的な結果であり、当然ながら、石油のマイナス値にサステイナビリティはなく、その後はプラス値に回帰しています。そして、通常時でも私は石油価格などの相場モノには見識ないんですが、COVID-19禍の現状ではますますわけも判らず、ひとさまのリポートを引用すると、大和アセットマネジメントのリポートのように、「原油は7月から需要超過になるか」とのタイトルの下、「今年半ばから原油在庫が順調に減少していけば」との仮定付きながら、「原油価格が堅調に推移する展開が期待できる」とする分析もあり、加えて、いつものみずほ証券のリポート「マーケット・フォーカス 商品:原油 (4月21日付け)」を引用すると、「20年後半~21年に世界経済が回復に向かえば原油価格も戻りを試しそう」であるとし、「4-6月期の原油価格の予想レンジは1バレル=15~30ドルと予想」しています。まあ、今年後半に石油需要が回復する可能性をともに示唆している一方で、価格についてはそれほど上昇するとも思えず、石油価格に連動する我が国の物価は引き続き低空飛行が続きそうな予感がします。強くします。
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