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2020年6月30日 (火)

貧打の上にリリーフ陣が大量失点で勝てないタイガース!!!

    R H E
阪  神 0 0 0 0 0 0 0 0 0   0 5 1
中  日 0 0 0 0 0 1 4 0 x   5 6 0

 

貧打のゼロ行進の上に頼みのリリーフ陣が大量失点では勝てません。関西に引っ越してほぼ3か月が経過し、楽しみにしていたプロ野球もようやく開幕しましたが、ここまで阪神が負け続けでは楽しくもありません。

 

明日は、
がんばれタイガース!

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いずれも市場の事前コンセンサスから下振れした鉱工業生産指数(IIP)と雇用統計をどう見るか?

本日は月末最終の閣議日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲8.4%の減産を示し、失業率は前月から+0.3%ポイント上昇して2.9%、有効求人倍率は前月から▲0.12ポイント低下して1.20倍と、雇用も悪化しています。いずれも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものと考えるべきです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月鉱工業生産、8.4%低下 6月予測は5.7%上昇
経済産業省が30日発表した5月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比8.4%低下の79.1だった。低下は4カ月連続。生産の基調判断は「急速に低下している」に据え置いた。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比5.8%低下だった。
出荷指数は8.4%低下の77.2で、在庫指数は2.5%低下の103.4。在庫率指数は6.9%上昇の148.1だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では、6月が5.7%上昇、7月は9.2%上昇を見込んでいる。
5月の完全失業率2.9% 前月比0.3ポイント上昇
総務省が30日発表した5月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.9%で前月比0.3ポイント上昇した。QUICKがまとめた市場予想の中央値は2.8%だった。
完全失業者数(同)は197万人で、19万人増加した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は7万人増、「自発的な離職」は4万人増だった。就業者数(同)は6629万人で4万人増加した。
5月の有効求人倍率、1.20倍 下げ幅は46年ぶりの大きさ
厚生労働省が30日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.12ポイント低下の1.20倍だった。下げ幅は第1次石油危機後にあたる1974年1月(0.20ポイント低下)以来、46年ぶりの大きさだった。倍率は2015年7月以来4年10カ月ぶりの低水準で、QUICKがまとめた市場予想の平均の中心値である1.22倍を下回った。新型コロナウイルス感染症の影響で飲食業や宿泊業のほか、娯楽業や製造業など幅広い業種で求人数が減少した。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率は1.88倍と、前月比で0.03ポイント上昇した。正社員の有効求人倍率は前月比0.08ポイント低下の0.90倍だった。厚労省の担当者は今後の求人動向について「5月後半の経済活動再開にあわせて一部業種で求人を再開する動きがあり、持ち直しの兆しもみられている」と説明している。

いくつかの統計を取り上げていますのでとても長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は▲5.8%の低下との見込みながら、レンジでは▲7.5%~▲3.8%でしたので、下限を下回る大きな減産となっています。昨日の商業販売統計では「下げ止まり」に小売業販売額の基調判断を上方修正した経済産業省ですが、さすがに、今日の鉱工業生産指数(IIP)は「急速に低下」で据え置いています。季節調整済の系列の前月比で見て、▲8.4%減のうち、我が国のリーディング・インダストリーである自動車工業が寄与度で▲2.52%、生産用機械工業が▲0.95%など、我が国を代表する産業が大きな減産を記録しています。なお、引用した鉱工業生産指数の記事の最後のパラにもあるように、製造工業生産予測調査では今月6月が+5.7%、7月も+9.2%といずれも増産が見込まれています。しかし、この指標は過大推計のバイアスがあり、6月の補正値試算の結果は+0.2%の増産と示されています。レンジでも、▲0.8%~+1.2%と試算されていますので、増産の可能性がやや大きいくらいで、減産の可能性も十分あります。加えて、先月の統計公表の際、5月の補正値は▲5.7%と示されていましたが、実績は▲8.4%だったわけですから、わざわざ、日経新聞が記事のタイトルに加えるほどの信頼性があるのかどうか疑問です。ただ、さらにその先の7月については、下振れバイアスがあるとはいえ、前月比で+9.2%の増産と見込まれていますので、さすがに、このころになれば増産に転じているような気もします。いずれにせよ、上のグラフのうちの上のパネルを見ても明らかな通り、生産が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で大きな減産が続いており、下のパネルを見ても判るように、その減産の要因は、いくぶんなりとも輸出の寄与がある企業部門ではなく消費者向けの耐久財などで生じています。しかも、この先、回復はかなり緩やかと考えられます。企業向けに雇用維持を目的とする施策ももちろん必要ですが、家計や消費者に対する支援策をもっと手厚くする必要があります。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、ほかと同じように、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。いずれも記事にある通りですが、失業率に関して日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは4月の2.6%から5月は2.8%に上昇するという見込みだったところ、実績はコンセンサスを上回る2.9%でしたし、有効求人倍率も日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは4月の1.32倍から5月には1.22倍に低下する予想が示されていたものの、実績はコンセンサスを下回る1.20倍でした。すなわち、マーケットの予想を上回るペースで雇用の悪化が進んでいる、と考えるべきです。正社員向けの有効求人倍率についても長らく1倍を上回っていましたが、先月の4月統計から1倍を下回るようになり、本日発表の5月統計でもさらに下げています。ただ、引用した記事の最後のパラにあるように、雇用の先行指標と見なされている新規求人については、求人数も求人倍率もいずれも5月統計では反転して改善を見せています。これは、記事にあるように、5月後半からの経済活動再開に合わせた求人増なのかもしれません。また、先月の雇用統計公表時に注目した休業者についても、総務省統計局による「就業者及び休業者の内訳」によれば、激増した4月の597万人から5月は423万人と減少しました。もちろん、1~2月の200万人弱の水準から見ればまだ多くなっています。ただ、我が国も含めて先進国経済の底は4~6月期であったことは緩やかなコンセンサスがありますから、COVID-19の第2波や第3波のパンデミックの有無や規模次第ではありますが、こういった我が国の雇用指標を見るにつけても、最悪期を脱した可能性も十分あります。しかし、日本経済も世界経済も回復過程はかなり緩やかなものとなり、COVID-19パンデミック前の水準に戻るまで長い期間がかかることは覚悟せねばなりません。

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2020年6月29日 (月)

2ケタ減が続く商業販売統計はホントに下げ止まりつつあるのか?

本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲13.7%減の10兆9290億円、季節調整済み指数でも前月から▲9.6%減を記録しています。大きな落ち込みは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものと考えるべきです。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

 

5月の小売販売額は12.3%減 基調判断は「下げ止まり」に上方修正
経済産業省が29日発表した5月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比12.3%減の11兆650億円となった。減少は3カ月連続で、5月としては比較可能な1980年以降で最大の減少率だった。新型コロナウイルスの感染防止を目的とした外出や営業の自粛が続き、自動車や衣料品などの販売が振るわなかった。ただ、経産省は単月でみると4月が底だったとして、小売業の基調判断を「下げ止まりがみられる」に上方修正した。
小売販売額を業種別で見ると、9業種のうち7業種がマイナスだった。外出自粛により客数が伸びず、普通自動車や軽乗用車が不振だった自動車は35.2%減だった。百貨店やスーパーなどの各種商品は34.9%減、織物・衣服・身の回り品は34.3%減だった。一方、野菜の相場高などを背景に飲食料品は2.2%増と2カ月連続で増加した。
大型小売店の販売額では、百貨店とスーパーの合計が13.4%減の1兆4555億円だった。百貨店は臨時休業や営業時間の短縮、インバウンド需要の落ち込みなどが響き、64.1%減の1744億円となった。減少率は過去最大だった前月に次ぐ大きさだった。一方、スーパーは内食需要などを背景に主力の飲食料品が好調で、6.9%増の1兆2811億円となった。
コンビニエンスストアの販売額は9.6%減の9271億円だった。おにぎりや調理パン、カウンターコーヒーのほか、たばこや日用品なども不調だった。オフィス街や繁華街を中心に客数が減ったことが響いた。

 

続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期であり、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

 

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消費の代理変数となる小売販売額を見ると、繰り返しになりますが、季節調整していない原系列の前年同月比は4月▲13.9%に対して、5月は▲12.3%であり、確かにマイナス幅は縮小していますし、同じ小売販売額の季節調整済の系列の前月比を見ても、4月▲9.9%から、5月は+2.1%に小幅なリバウンドを見せていますが、少なくとも、卸売販売額は前年比でマイナス幅を拡大しており、季節調整済みの前月比でもまだマイナスを続けています。もちろん、外出自粛が続く中で、ほとんど唯一といってもいいくらいの外出と支出の機会が、スーパーでの食料品や日用品をはじめとする買い物だったのは事実で、小売販売額の中でも飲食料品小売業では4月の前年同月比+0.3%増から、5月は+2.2%増に上向いていることは確かです。しかし、自動車小売業や燃料小売業などはマイナス幅を拡大していますし、業種別のバラツキが大きいことも忘れるわけにはいきません。加えて、いわゆるその昔のエンゲル係数の議論ではないのですが、先進国である日本では食料品の売上が消費を牽引するというのも考えにくいところです。いずれにせよ、日本に限らず、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)で大きなダメージを受けた世界経済の底は4~6月期である可能性が高いとはいえ、第2波や第3波の可能性も排除できませんし、何よりも、回復ペースは決してV字ではなく、かなりなスローペースを覚悟する必要がある、というのは多くのエコノミストの緩やかなコンセンサスではないかと私は受け止めています。

 

特に、ここ何日かの東京都におけるCOVID-19新規感染者数の推移を見ていると、第2波の可能性は私には不明ながら、繰り返しになりますが、経済の回復は長期戦になりそうだという予感があります。また、私が東京都民でなくなってから3か月あまりが経過して、すでに都知事選挙の投票権は持っていないものの、ダイヤモンド誌の記事にあるような都立病院の独法化を進めようとする小池都政に待ったをかける必要も感じます。強く感じます。

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2020年6月28日 (日)

やっぱり5安打1得点では勝てないタイガース!!!

  RHE
阪  神100000000 150
横  浜30001032x 9140

5安打1得点の貧打で横浜に逆転負けでした。やっぱり、昨夜のような最終回ツーアウトから逆転劇なんて、1年にそうそうありませんし、まあ、まぐれに近いと考えねばなりません。この先も、ジタバタと手を替え品を替えて戦いを進めることになるんでしょうか。

ナゴヤドームの中日戦は、
がんばれタイガース!

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リクルートジョブズによる5月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

明後日6月30日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる5月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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アルバイト・パートの時給の方は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、ジワジワと停滞感を増していますが、他方、派遣スタッフの方は5月のデータが跳ねています。上のグラフの通りです。現時点で判断するのはややムリなのですが、何かがあったのかもしれません。
アルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は+3%近い伸びからジワジワと低下して、三大都市圏の5月度平均時給は前年同月より+2.3%、+24円増加の1,075円を記録しています。職種別では「営業系」(+72円、+5.7%)、「事務系」(+34円、+3.1%)、「専門職系」(+20円、+1.7%)、「製造・物流・清掃系」(+17円、+1.6%)の4職種で前年同月比プラスとなった一方で、マイナスは「販売・サービス系」(▲14円、▲1.3%)、「フード系」(▲9円、▲0.9%)の2職種でした。地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。他方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2019年7月統計から先月2020年4月統計まで10か月連続でマイナスを続けた後、5月度平均時給は前年同月より+3.6%、59円増加の1,695円に跳ね上がりました。職種別では、「営業・販売・サービス系」(+81円、+5.7%)、「医療介護・教育系」(+42円、+2.9%)、「IT・技術系」(+31円、+1.5%)、「クリエイティブ系」(+23円、+1.3%)の4職種が前年同月比プラスとなり、マイナスは「オフィスワーク系」(▲20円、▲1.3%)だけにとどまっています。また、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアでプラスを記録しています。1年近く前年同月比マイナスを続けてきた派遣スタッフの時給がジャンプしたのですが、アルバイト・パートの時給上昇率はジワジワと停滞し始めていますし、2008~09年のリーマン・ショック後の雇用動向を見た経験からも、COVID-19の経済的な影響は底を打った用に見えるものの、雇用については遅行するケースが少なくないことから、先行き、非正規雇用の労働市場は悪化が進む可能性がまだ残されていると覚悟すべきです。ただ、意外と底堅いという印象もあります。

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2020年6月27日 (土)

土壇場最終回にサンズ選手のスリーランで横浜に逆転勝ち!!!

  RHE
阪  神200030003 8110
横  浜200112000 6110

サンズ選手の逆転スリーランで横浜に勝利でした。最終回ツーアウトからのまさに起死回生の一発でした。まさに、外国人選手の大砲にはこういった打棒を望むんだと、いわんばかりのホームランでした。9回裏は藤川投手が走者を出しながらも粘りのピッチングで抑え切り、今シーズン2勝目です。昨シーズンは大山選手を4番に固定して、結果的には失敗だったと私はみなしているんですが、今シーズンはコロコロと打線を組み替えて、投手も短い間隔でつないで、それでもやっぱり失敗しているように見えます。でも、私は今季のようにジタバタしつつも、いろいろと手を替え品を替えてみるのも一案だと評価しています。

明日も、
がんばれタイガース!

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今週の読書は経済学の学術書をはじめとして計4冊!!!

ようやく今週に至って、本格的な学術書の経済書も含めて週4冊までピッチが上がりました。らいしゅうも少なくとも1冊は経済書をすでに借りてありますが、ペースは少し落ちそうな気もします。

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まず、古川顕『貨幣論の革新者たち』(ナカニシヤ出版) です。著者は、我が母校である京都大学経済学部の名誉教授であり、経済学史、特に金融史がご専門のようです。ジョン・ローやJ.S.ミルから始まって、私のような中途半端なエコノミストには知られていないような貨幣論者を取り上げています。ジョン・ローなんかは、私には例のバブルの語源にもなった「南海泡沫事件」でしか知りませんが、スコットランドに貨幣が足りないという主張についても、私は不勉強にして知りませんでした。貨幣の起源に関する議論は私には興味ないんですが、貨幣が資本に転化するというマルクス主義的な見方も登場すれば、銀行が貨幣を創造するという、今でいえば、MMTの「キーストローク」マネーのような見方まで、幅広い貨幣論を取り上げ、預金を受け入れて信用を創出する銀行により貨幣が生み出されるように、経済そのものが進化するとともに、経済理解の進化もうかがえます。ただ、本書でも主張されているように、実際の歴史を振り返れば、物々交換経済なんてものはなかったでしょうし、信用は貨幣に先立って経済活動の仲介を始めているのは間違いないと私は考えています。その点で、MMT学派が主張するように、政府が税金を収めるために貨幣を負債として発行する、というのは難点が大きいと思っています。自然発生的だったのは信用であり、その信用が貨幣という形になったのだろうと私は考えています。いずれにせよ、完全に学術書だと考えるべきですが、貨幣や信用、さらにひいては銀行活動などの理解に役立つと思いますが、私には、むしろ、その貨幣をヴェールとしてしか扱わなかった古典派経済学の考えこそが不思議で、なぜそうなったのかにも興味あります。

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次に、岡部直明『分断の時代』(日経BP) です。著者は、日経新聞のジャーナリストであり、2016年の米国大統領選挙と英国のBREXIT国民投票の少し前からの世界的な国際政治の潮流を概観しようと試みています。ジャーナリストらしく、米国のトランプ政権のポピュリズム路線にはとても批判的で、「米国ファースト」をかかげた分断よりも協調と連合を目指す姿勢はとてもいいんですが、これまたジャーナリストらしく、具体的に何を目指して、どのような道筋で進めるかについては、ほとんど言及ありません。本書の立場ではないかもしれませんが、ジャーナリズムのひとつの立脚点として、時の権力に対しては、一定の緊張感を持って対応し、「何でも反対」とまではいわないとしても、一定の冷めた反対意見を提示するのも必要そうな気がしています。その点で、本書の内容は今の米国や欧州の分断の時代に一石を投じていて、それなりの価値はあります。加えて、私がこういった時代の流れを解説した本に求めているのは、今の流れは一時的、というか、循環的なものなのか、それとも、かなり一直線に進むのか、という点です。例えば、今は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で人の流れが止まっているのかもしれませんが、いわゆるグローバル化という流れは押し止めることのできない一直線なものであるのに対して、本書で焦点を当てている分断化というのは、このグローバル化の流れに抗した一時的・循環的な揺り戻しに過ぎないのではないか、という視点を私は持っています。もちろん、だからといって放置すれば元のグローバル化や世界協調の時代に戻るとは考えていませんし、キチンと反対の声を上げることはとても重要だとは思いますが、本書の視点はちょっと違うような気がします。

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次に、金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社現代新書) です。著者は日本への留学経験のある韓国出身ジャーナリストです。初等中等教育のころはいわゆる偏差値の高い大学進学を目指し、大学入学後は大企業への就職を目指し、就職した後も会社内での強烈な競争に勝ち抜くことを目指し、なかなか日本人からは想像もできない韓国の強烈な競争社会をルポしています。私は教員ですので、ついつい、大学を目指した競争や大学生の就活の一環としての競争などに目が行きましたが、エコノミストとして、ここまで不毛の競争をすことに何の意味があるのか、という観点は本書には抜けています。少なくとも私が本書を読んだ範囲では、おそらく、教育投資の平均リターンはマイナスでしかないでしょうから、こういった競争は経済活動として成り立ちません。ですから、社会的に不毛の競争は参加者が減少するしかないと思いますが、そうなっていないようです。また、私が経営学のケーススタディに疑問を持つ点として、成功した企業の裏側に大量の失敗企業があるハズ、というのがありますが、その逆で、ここまで強烈な競争をするからには、人い斬りながら成功者がいるのではないか、と想像するわけですが、その方面の実態は本書からはうかがいしれません。ジャーナリストのケーススタディですので、経営学と同じで、都合のいい事例だけを取り出しているような気がしないでもありませんが、もう少し幅広い取材が必要だったのではないか、やや一面に偏りが見られる、と感じる読者もいそうな気がします。

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最後に、守屋淳『『論語』がわかれば日本がわかる』(ちくま新書) です。著者はよく判らないんですが、「大手書店勤務後、中国古典の研究に携わる」とありますので、いわゆる市井の研究者的な存在かもしれません。最近、大学時代の友人から、私の読書感想文を見て読書会のオススメを問われて、小説の好みであれば青山七恵の純文学、お勉強モノなら宮崎市定先生の中国史とかアジア史、とオススメしておきましたが、まあそういった分野なのでしょう。ということで、私は数年前に、どこかの新書で出版された『論語と算盤』を読んだ記憶がありますが、本書でも、新しい一万円札を飾るにふさわしい渋沢栄一翁の思想もひも解きつつ、日本人の『論語』性に考えを巡らせています。長幼の序とか、空気を読むとか、『論語』に起源ある日本人の気質とか組織運営とかに加えて、本書では、論語になく日本的な要素として男尊女卑を加えたいくつかのポイントを『論語』的価値観として列挙して、学校生活、職業生活、などなどをひも解こうと試みています。ただ、比較対象が米国を始めとする西欧ですので、中国や韓国なんかはどうなのだろうか、と疑問に感じる読者は私だけではないと思います。特に、私の場合は、直前に感想文をおいた韓国事情の新書も読んでいますのでなおさらでした。でもまあ、何となく、「日本あるある論」としては説得力ある内容ではないかと思わないでもありません。『論語と算盤』も併せて読みたい気がします。

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2020年6月26日 (金)

何をやっても負け続ける阪神タイガース!!!

  RHE
阪  神000000000 050
横  浜00001005x 6141

横浜にも負けてまたまた3連敗です。西投手も7回1失点で負け投手というのは悲しすぎます。敗戦の大きな原因は、やっぱり、打てなかった打線でしょう。左ピッチャーで右打者を並べても、何をしても負け続けです。北条選手の代打糸原キャプテンとか、1点差での小川投手への継投なんぞを見ていると、矢野監督の選手起用も何やらムチャクチャになっている気もしますが、ジタバタといろんなことを試みるのは私は決して嫌いではありません。それにしても、ひょっとしたら、「暗黒時代」の再来なのでしょうか?

明日は、
がんばれタイガース!

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新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で日銀短観に見る企業マインドは大きく下げる予想!!!

来週7月1日の公表を控えて、シンクタンクから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画はもちろん今年度2020年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、いつもの通り、足元から先行きの景況感に着目しています。ただし、先行きについては新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の終息次第という面があり、一部にとても長くなってしまいました。それでも、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
3月調査 (最近)▲8
+8
<▲0.4%>
n.a.
日本総研▲23
▲17
<▲3.8%>
先行き(9月調査)は、全規模・全産業で6月調査対比+2%ポイントの上昇を予想。足許で経済活動が再開しつつあるため、最悪期は脱するものの、消費活動が限られている面もあることなどから、DIの持ち直しは総じて緩やかにとどまる見込み。回復に時間を要するとみられるインバウンドや輸出の影響を受けやすい産業では低迷が続く見通し。
大和総研▲28
▲11
<▲2.6%>
足元では国内外ともに経済活動が再開され、緩やかな回復基調に転じたことが、製造業・非製造業ともに先行きの業況判断を改善させよう。ただし、一定の感染拡大防止策が引き続き実施されていることや、新型コロナウイルス感染第2波への懸念も強いことから上昇幅は小幅に留まるとみている。
みずほ総研▲24
▲7
<▲6.4%>
製造業・業況判断DIの先行きは5ポイント改善を予測する。国内では、緊急事態宣言の解除後に生産活動が持ち直すとみられるほか、欧米諸国でもロックダウンの解除後、徐々に経済活動が再開していることを受けて、生産や輸出が緩やかに回復していくとみられ、業況は改善に向かうであろう。また、テレワークの拡大に伴い、サーバーやPCなどの需要増が見込まれることから、情報関連業種の業況が改善するだろう。ただし、感染防止策が当面続くことから、本格的な経済活動の再開には時間を要するほか、感染再拡大への警戒感も残存しているため、業況の大幅な改善は見込みづらい。
非製造業・業況判断DIの先行きは8ポイント改善を見込む。休業要請の緩和を受けて多くの企業が営業を再開した、小売業や飲食業等で業況の回復が見込まれる。また、テレワークの浸透に伴い、ソフトウェア投資の増加が見込まれることから、情報通信サービスも改善するだろう。一方で、感染再拡大への懸念により不要不急の外出は引き続き控えられることや感染予防策の継続が予想されるほか、インバウンド需要の回復が見込みがたいことが、運輸・郵便や宿泊業、対個人サービスを中心に業況改善の重石になりそうだ。
ニッセイ基礎研▲32
▲17
<▲3.0%>
先行きの景況感については、大企業では持ち直しが示されると予想。コロナ感染拡大の鈍化を受けて、既に国内外で経済活動が段階的に再開されており、今後の景気回復が見込まれるためだ。ただし、景気回復は緩やかなペースに留まるとの見方が一般的であるほか、感染第2波への警戒もあり、先行きの景況感改善は小幅に留まるだろう。また、中小企業はもともと先行きを慎重に見る傾向が強いだけに、今回も先行きにかけて景況感のさらなる悪化が示されると予想している。
第一生命経済研▲34
▲30
<大企業製造業+7.2%>
大企業・製造業の業況判断DIは、前回比▲26ポイントと大幅に悪化する見通しである。マクロ景気は、この 4~6 月が大底となり、企業の景況感も大幅に悪化するだろう。注目点は、雇用判断DIがどこまで悪くなるか、企業収益の見方がどこまで厳しくなるかである。資金繰りや金融機関の貸出態度の変化にも警戒しておきたい。
三菱総研▲37
▲42
<▲1.9%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業は▲40%ポイント、非製造業は▲45%ポイントと、いずれも悪化を予測する。新型コロナウイルスの感染終息や経済活動正常化の時期が見通せず、さらなる拡大や長期化も予想される。また、世界的な雇用・所得環境の悪化が内外需の重しとなる見込みだ。先行きの業況に対する不安は、製造業・非製造業を問わず強いとみられる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲31
▲9
<大企業全産業+3.0%>
日銀短観(2020年6月調査)の業況判断DI(最近)は、大企業製造業では、前回調査(2020年3月調査)から23ポイント悪化の-31と、新型コロナウイルスの感染拡大が大きく影響し、6四半期連続で悪化すると予測する。先行きについては、感染抑制と経済活動の均衡を探るフェーズに移行したことで、足元が景気の底だとの認識が支配的となりつつあり、7ポイント改善の-24となろう。

いまさら感すらありますが、企業マインドは大きな冷え込みを見せており、日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは前回3月調査の▲8から大きくマイナス幅を拡大するものと見込まれています。いずれのシンクタンクでも大きなマインド悪化は共通していて、ただ、大企業製造業で見て▲15ポイントから▲30ポイント近くまで、悪化幅にはやや開きが見られます。このあたりは私にも判断がつきかねますが、少なくとも、過去の統計を調べると、リーマン・ブラザーズの破綻後の2009年3月に大企業製造業で▲30ポイントを超える悪化がありましたから、それに近い悪化、しかし、リーマン・ショックまでの悪化には至らない、と見ることも出来ます。ともかく、私は予測モノについては、重要性は認識していながらも、なかなか手が伸びず、特に現在のようなCOVID-19の影響はまだまだ抜け切らないうちは、何とも考えが及びません。しかし、COVID-19はごく一部の例外を除いて多くの企業のマインドを低下させるのであろう点だけは確かです。
下のグラフは日本総研のサイトから引用しています。落ち方の傾きとしてはリーマン・ショック時と同様にかなりスティープですが、少なくとも6月調査の時点の水準は、まだリーマン・ショック時ほど深くはない、といえます。

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2020年6月25日 (木)

クローザーの藤川投手がまさかの被弾でヤクルトに連敗!!!

  RHE
阪  神000000010 140
ヤクルト000000003x 380

クローザーの藤川投手がまさかの被弾でヤクルトに連敗でした。8回の梅野捕手のホームランによる虎の子の1点は守り切れませんでした。先発の秋山投手が7回途中までパイスピッチングでヤクルト打線を抑え、勝利の方程式で岩崎投手とスアレス投手が7回、8回までゼロを並べましたが、最後の最後に頼みの藤川投手が被弾してしまいました。まあ、こういう試合もあります。敗戦の大きな原因は、やっぱり、打てなかった打線かもしれません。昨夜と同じ4安打1得点という貧打ではなかなか勝てません。

明日の横浜戦は、
がんばれタイガース!

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国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し改定」では新型コロナウィルス感染症の影響により成長率が下方修正される!

日本時間の昨日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update, June 2020 が公表されています。ヘッドラインとなる世界経済の成長率は、2020年については4月の見通しから▲1.9%ポイント下方修正されて▲4.9%と、さらに大きなマイナス成長となると見込まれている一方で、2021年についても▲0.4%ポイントの下方修正で+5.4%と、リバウンドもやや小さめに修正されています。特に目新しさは感じないものの、国際機関のリポートを取り上げるのは、この私のブログの大きな特徴のひとつですし、pdfの全文リポートIMFのブログサイトから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のテーブルは、IMFのブログサイトから Latest World Economic Outlook Growth Projections と題する成長率見通しの総括表を引用しています。ホントに簡略化された総括表だけですので、リポート p.7 Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections のページだけを抜き出したpdfファイルにリンクを張ってありますから、クリックすると別タブで開くと思います。繰り返しになりますが、ヘッドラインとなる世界経済の成長率は、2020年については4月の見通しから▲1.9%ポイント下方修正されて▲4.9%と、さらに大きなマイナス成長となると見込まれている一方で、2021年についても▲0.4%ポイントの下方修正で+5.4%と、リバウンドもやや小さめに修正されています。先進国の中でも我が日本は、2020年▲5.8%と4月見通しから▲0.6%ポイント下方修正されており、2021年も+2.4%と同じく▲0.6%ポイント下方修正されています。大雑把に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)については、先進国ではほぼ終息に向かい、中国を別にすれば、途上国や新興国での感染拡大が焦点となっているように感じていましたし、今回のIMF見通しでも、2021年については先進国全体としては上方修正、新興国・途上国では下方修正、という結論です。ですから、別タブで開くリポート p.7 Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections に示された先進国の中で2021年成長率が下方修正されているのは米国と日本だけだったりします。

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次に、上のグラフは、IMFのブログサイトから A deeper recession と Output losses の2つのグラフを引用しています。上の棒グラフでは、2000年成長率見通しの修正が見て取れます。COVID-19感染拡大前の1月見通しでは+3.3%成長と見込まれていた世界経済なんですが、感染拡大に対応するロックダウン真っ最中の4月には▲3.0%のマイナス成長と大きく下方修正された後、かなりの程度に先進国でのロックダウンが解除された6月時点でもまだ下方修正されている、ということになっています。

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最後に、IMFではベースラインのほかに、上下のリスクを考慮して、Scenario 1: A Second Global COVID-19 Outbreak in Early 2021 および Scenario 2: A Faster Recovery をシナリオ分析しています。上のグラフは、リポートから Scenario Figure 1. June WEO 2020 Alternative Scenarios (Deviation from baseline) のうちの1から4までを引用しています。というのも、さらに下に5以下のグラフが続いて、政府支出は政府債務残高などのグラフもあるんですが、諸般の事情によりカットしました。当然ながら、2021年初頭に第2波の感染拡大を迎えるとするシナリオ1の赤いラインはベースラインを大きく下回りますし、早期終息のシナリオ2の青いラインはベースラインを上回ることになります。

最後の3枚目のグラフからはカットしてしまいましたが、IMFではCOVID-19感染拡大防止や経済活動の下押しによる税収への効果などから、政府債務がまたまた気にかかり始めているような印象もあります。私のように政府部門の経験が長いながら、政府財政に関してはMMT学派並みに楽観的なエコノミストは少数なのかもしれません。

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2020年6月24日 (水)

ボーア選手に初ヒット出るも打線が得点できずヤクルトに完敗!!!

  RHE
阪  神001000000 140
ヤクルト30002100x 6101

ボーア選手初ヒットも打線が湿りっぱなしで、ヤクルトに完敗でした。ガンケル投手は初回から3点を献上し、中継ぎ投手も次々と失点した上に、相変わらず、打線はゲッツーの間の得点のみという貧打では勝てません。

明日は、
がんばれタイガース!

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企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇率はかろうじてプラスが続く!!!

本日、日銀から5月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+0.8%と、2月統計の+2.1%、3月統計の+1.6%から4月統計は+0.8%と大きく縮小し、5月統計でも同じ+0.8%の上昇となっています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じように縮小し、+0.8%を記録しています。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の企業向けサービス価格、増税除き1.0%下落 前月並み下落率
日銀が24日発表した5月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は103.6と、前年同月比で0.8%上昇した。19年10月の消費税率引き上げの影響を除くと前年同月比で1.0%下落した。下落率は4月と同じだった。政府の緊急事態宣言による経済活動の停滞で、広告や宿泊サービスで価格が大きく下落した。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、サービス価格には下押し圧力がかかっている。テレビや新聞の広告では、幅広い業種で企業が広告の出稿を手控える動きが広がった。宿泊サービスでもインバウンド(訪日外国人)需要の蒸発や国内での外出自粛の影響が引き続き大きく、価格の下落が続いた。
一方で国内の航空輸送では価格が持ち直している。航空需要は弱い状態が続くが、航空会社が5月以降に大幅な減便をしたことで需給が引き締まった。特に国内航空貨物輸送では価格上昇圧力が大きいという。
国内では緊急事態宣言の解除とともに経済活動が再開し始めたとはいえ、経済の先行きには不確実性が高い。日銀は「6月以降、サービス価格の下落圧力が弱まるかどうかは新型コロナの感染状況に依存する」(調査統計局)としており、今後の影響を注視する姿勢だ。
企業向けサービス価格指数は、輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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繰り返しになりますが、消費税を含んだベースの企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、昨年2019年10月の消費税率引上げに伴って+2%に達した後、今年2020年に入って2月+2.0%まで+2%台を続けた後、先々月3月+1.6%、先月4月+0.8%と上昇幅を縮小し、さらに、今月の4月統計では先月と同じ+0.8%を記録しています。先々月の3月統計では消費税の影響を除くベースの前年同月比上昇率が▲0.1%とマイナスに転じた後、4月統計では▲1.0%と下落幅を拡大し、今月統計でも同じ▲1.0%が続いています。いうまでもなく、SPPIの上昇率縮小は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による影響と考えるべきです。サービス価格について、SPPIはもちろん、CPIのコンポーネントでも、人手不足に起因して堅調と考えられていましたが、雇用がかなり怪しくなり始めた印象もありますし、宿泊サービスのように需要が「蒸発」すれば、需給ギャップに従って価格が弱含むのは当然です。もちろん、宿泊サービスだけでなくCOVID-19の影響により、さまざまな分野のサービスへの需要が低迷しており、本日公表の5月統計のSPPIのコンポーネントである大類別について、消費税の影響を除くベースの前年同月比▲1.0%に対する寄与度を見ると、景気に敏感な広告が▲0.64%、さらに、不動産が▲0.15%、情報通信が▲0.09%となっています。

結局、日銀の異次元緩和は現時点では物価目標を達成できておらず、先週の6月15日に明らかにされた第一生命経済研のリポートの中にデフレの蟻地獄から抜け出せない日本経済」と題するものを見かけましたが、よく雰囲気が出ていますし、まさに、そんな感じなのかもしれないとミョーに納得したりしています。

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2020年6月23日 (火)

先発の青柳投手がナイスピッチングで今季初勝利!!!

  RHE
阪  神300001000 4120
ヤクルト000000001 140

2020年開幕3連戦は3連敗で始まりましたが、ヤクルトに勝ってようやく今季初勝利でした。何といっても、青柳投手のナイスピッチングが光ります。打線も、ボーア選手がまだ目覚めないものの、初回の先制パンチが効きました。今日のような試合が従来からの阪神の勝ちパターンであり、ほぼほぼ数年に渡って進歩ないんでしょうね!

明日も、
がんばれタイガース!

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旅行需要はいつごろから本格化するのか?

緊急事態宣言が解除され、さらに、移動の自粛要請もなくなり、いよいよ、来月にはプロ野球などがスタジアムに観客を入れて試合を行うなど、着々とポストコロナの生活が取り戻されつつあります。本来であれば8月の夏休み時期の旅行などの計画が6月には進んでいそうなんですが、現状ではまだ昨年レベルから比較すると遅れ気味で、しかも、政府の「Go To Travelキャンペーン」が国民をサポートするどころか、不透明でずさん極まりないなどと報じられている始末です。

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ちょうど1週間前の6月16日付けでインテージから明らかにされた「自粛要請解除後 初の旅行はどうなる?」では、図表1として 自粛解除後の初の旅行 | 具体的な時期 と題するグラフを示しており、引用すると上の通りです。「時期に関わらず行かない」という回答が無視できない比率を示していますが、年内ではやっぱり夏休みの旅行シーズンである8月に自粛要請解除後の初の旅行を計画との回答が多くなっています。

我が家は世代的に自ら帰省するというよりも、すでに独立した子供達の帰省を待つということになります。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で今年はやや異例の対応ながら、通常であれば、大学教員というのは8月のお盆のころが前期試験明けになり、後期の始まる10月までの1ト月あまりが夏休み相当ということになります。研究にいそしむ先生方も多くなりますが、今年の場合、私はひたすら骨休めしたいと考えないでもありません。

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2020年6月22日 (月)

第一生命経済研のリポート「インドネシア: 中銀は『財政ファイナンス』を厭わず政策運営はギャンブルの様相」やいかに?

先週金曜日の6月19日付けで、第一生命経済研から「インドネシア: 中銀は『財政ファイナンス』を厭わず政策運営はギャンブルの様相」と題するリポートが明らかにされています。先週木曜日の6月18日には同じ第一生命経済研のチリに関するリポートを取り上げましたし、何となく、やっぱり、3年間を過ごしたその昔の赴任地の状況は気にかかるものです。ということで、やっぱり、第一生命経済研のリポート、インドネシアに関するリポートを取り上げておきたいと思います。

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リポートから図1 新型肺炎の新規感染者数と死亡者数(累計)の推移 を引用すると上の通りです。先週木曜日に取り上げたチリと同じように、赤い折れ線グラフの死亡者数は累計ですので右肩上がりなのは当然としても、感染者数も一向に終息しそうな気配すら見られません。従って、我が家が3年間滞在した首都ジャカルタでは非常事態宣言を発令して移動制限や娯楽施設の閉鎖、公共交通機関の利用制限及び罰則付きの行動制限措置などロックダウンに加えて、ラマダン明けの帰省や国内外への旅行が禁止されるなど、国内外を対象に移動制限を課す措置が実施されました。今年のラマダンは4月下旬から5月23日の日没で明けたんではないかと記憶しています。
しかし、上のグラフに見られるように、5月下旬から6月上旬に感染者数の増加ペースが落ちたのを捉えて、6月初めから行動制限措置が一部緩和されたほか、中旬にはショッピングモールの営業が再開されるなど、経済活動の正常化を始めてしまい、移動の活発化を受けて足下の感染者数の拡大ペースはむしろ加速してしまったとのことです。その上で、リポートのタイトルにあるように、中銀が大幅な金融緩和策を取っているんですが、このあたりの評価は私とリポートではかなり異なるので、論評は控えておきます。

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2020年6月21日 (日)

実力の差はいかんともしがたくジャイアンツに3タテされる!!!

  RHE
阪  神100000000 150
読  売00052000x 7110

異例の時期ながら、2020年開幕3連戦は、打線が沈黙しまくってジャイアンツに3タテされました。実力の差といえばそれまでですが、3連戦でここまで大きく打線を組み替えて対応し、私は何となく、こういった形ながらジタバタするのは、決して嫌いではありません。昨日に続く収穫は、ルーキー小川投手のピッチングでしょうか。今日は1イニングを3人で抑えました。

次のヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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2020年6月20日 (土)

昨年から何の進歩も見られず打線が沈黙して連敗!!!

  RHE
阪  神000100000 151
読  売10020080x 1190

2020年開幕第2戦も、打線には何の進歩も見られずジャイアンツに連敗でした。実力の差といえばそれまでですか、長かったオフの間に一体何をしてきたのかです。左右の先発投手でここまで打線を組み替えるのも疑問です。唯一の収穫はファンにルーキー小川投手をご披露したことだけでしょうか?

明日はガルシア投手を援護して、
がんばれタイガース!

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今週の読書は新書1冊を含めてわずかに2冊!!!

今週の読書もわずかに2冊で、うち1冊は新書です。なぜか、私の奉職する大学の図書館は新書を豊富に取りそろえてくれていて、というか、地域の公立図書館もそうなんですから、むしろ、大学図書館では新書は人気なく貸し出されていない方が目について、ついつい、私が借りたりして稼働筆を引き上げています。しばらく、大学転職1年目で忙しいこともあり、東京都のように予算が潤沢でなくて図書館や体育館がそれほど利用可能ではないので、これくらいのペースの読書が続きそうな気がします。でも、私にしては大きなペースダウンなんですが、週2冊ということは年間100冊ですから、世間一般ではそれなりの熱心な読書家、と勝手に自任してもよさそうな気がしないでもありません。

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まず、宇野常寛『遅いインターネット』(幻冬舎) です。著者は、評論家であり、批評誌『PLANETS』編集長だそうですが、私はよく知りません。知らないものの、私が奉職する大学の卒業生ではないかと聞いたことがあります。本書では、かなり正面切って民主主義について考えています。そのきっかけは、読み進めば、どうも、2016年の英国のBREXITと米国のトランプ大統領当選にあるようなんですが、ポピュリズムと民主主義について、デモをする意識の高い市民と投票に行く意識の低い大衆を対比させて、論じています。そして、私には議論の飛躍と映るんですが、吉本隆明の『共同幻想論』に話が進みます。私の拙い理解では、共同幻想とはマルクス主義のコンテクストでは、いわゆる上部構造であり、その下部構造たる経済を論じる必要がありそうな気もしますが、その部分をすっ飛ばしているのがやや気がかりです。米国民は選挙人制度というのを外せば現在の米国大統領であるトランプ候補に投票したのは少数派といえますが、英国民についてはLEAVEに投票したのが多数派であり、その背景は経済だけでなく年齢・性別・学歴などをはじめとして、かなり明らかに分析されています。最後に、速報性を重視するのではなく、調査報道的なスロージャーナリズムに加えて、本書のタイトルにした遅いインターネットを持ち出しますが、結局、私の目から見てカギカッコ付きながら「全共闘的」な上滑りの議論にしか見えませんでした。このタイトルにして、国民目線の議論を期待した私が悪いのかもしれません。

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次に、橘木俊詔・迫田さやか『離婚の経済学』(講談社現代新書) です。著者は、京都大学や同志社大学などで研究者をしていたマイクロな労働経済学の研究者師弟です。50年ほども昔のシカゴ学派のベッカー教授のような経済学帝国主義的な分析を展開していて、それなりの面白くはあるんですが、もともと、極めてデータが限られた世界の分析をサーベイしているもんですから、かなり都合のいい結果を引き出せているような気がしてなりません。というのも、本書の展開からしてかなり都合よく編集されていて、論旨がとても飛び跳ねています。チャプターごとに別の著者がいるのではないかとすら感じてしまうほどです。ですから、ついつい200ページあまりの新書ですから、私の悪いクセで読み飛ばしてしまうんですが、キチンと読めば章ごとに論旨が矛盾している点も上げられそうな気すらします。どこだったか忘れましたが、著者が章ごとに査読を付けている、かのような記述がありましたが、逆にいえば、全体の査読はないわけで、そこは出版社の編集者の責任かもしれませんが、それほど出来のいい本ではありません。新書でももっと出来のいい紳士はいくらでもあります。というか、単行本に出来なかったから新書に回されているのかもしれません。ということで、ひとつひとつのトピックとしては面白い出来ですし、カーネマン教授が『ファスト&スロー』の目的として強調していた点で、部分的に取り出せば職場の井戸端会議で話題として持ち出せるような気がしますから、それはそれで重要な出版物の目的となります。最後に、私の経験からして、離婚するのは、現時点での目の前の結婚に失望したからではなく、その先の再婚に希望を見出しているケースが一定の割合であるような気がします。不倫の果ての離婚と再婚のケースが典型なので気がひけるんですが、分析の時間軸が違っているのかもしれません。

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2020年6月19日 (金)

西投手1人切りのタイガースの開幕戦はジャイアンツに惜敗!!!

  RHE
阪  神001010000 270
読  売00010020x 380

打って投げてと西投手の活躍した2020年開幕戦でしたが、実力の差を見せつけられてジャイアンツに惜敗でした。どこかのサイトで見かけましたが、今日の試合は西タイガースVS読売ジャイアンツの一線でした。スーパーマンでもない限り、西投手1人ではジャイアンツ9人を相手に勝つのはムリです。野手の打棒に期待します。

明日は岩貞投手を援護して、
がんばれタイガース!

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消費者物価(CPI)上昇率は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響による原油価格の下落によりマイナス続く!!!

本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月と同じ▲0.2%を示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.4%でした。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により国際商品市況で石油価格が下落しているのが背景となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の全国消費者物価、0.2%下落 2カ月連続下落、コロナによる原油安で
総務省が19日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比0.2%下落した。2カ月連続の下落で、QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.1%下落)より下げ幅は大きかった。新型コロナウイルスの感染拡大を背景に原油安が進行し、ガソリンや灯油のほか、電気代などエネルギー関連価格の落ち込みが顕著だった。総務省は「エネルギー価格の下落は6月以降もしばらくは続く」と説明した。
外出自粛の影響で宿泊費が落ち込んだほか、家庭用耐久財の価格も下がった。4月からの高等教育無償化や19年10月からの幼児教育無償化の影響で幼稚園や保育所、大学授業料も下落した。
需給が逼迫していたマスクは、4月は5.4%上昇となっていたが、5月は供給が徐々に拡大したことから2.4%上昇と上げ幅を縮小した。
生鮮食品を除く総合では401品目が上昇した。下落は109品目、横ばいは13品目だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は102.0と前年同月比0.4%上昇した。生鮮食品を含む総合は101.8と0.1%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.1%の下落でしたので、実績の方がやや下落幅が大きいものの、まずまずジャストミートしたといえます。CPI上昇率がマイナスに落ち込んだ先月4月統計ではエネルギーは▲4.7%の下落で、ヘッドラインCPIの前年同月比上昇率に対する寄与度が▲0.37だったんですが、5月はさらに下げ足を速めて▲6.7%の下落で、寄与度も▲0.54とマイナス幅が拡大しています。石油をはじめとするエネルギー価格からの影響が大きい物価下落といえます。ですから、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は4~5月ともに▲0.2%だったんですが、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIで見ると4月の+0.2%から5月統計では+0.4%とむしろ上昇率が拡大しています。ただし、先行きの物価について考えると、石油価格下落の影響は一定のラグを伴って経済全体に価格下押し圧力となるのは明らかですし、少なくとも前年同月比で見る限り、秋口の9月までは昨年から需要が減退しているのも明白ですから。需給ギャップの観点からも夏から秋にかけてCPI上昇率は下落幅を拡大するものと私は考えています。物価上昇率の底は夏であり、おそらく、コアCPI上昇率は▲1%前後の下落までマイナス幅を拡大する、とかなり多くのエコノミストが考えているようです。ただ、本日の「月例経済報告」でも、ひょっとしたら希望的観測を含めつつ、経済が最悪期を脱して「下げ止まりつつある」可能性を示唆しています。ただし、ほかの経済指標と同じで、石油価格次第、そして、何よりもCOVID-19次第とはいえ、夏にCPI上昇率が底を打つ可能性は十分あるものの、その後の回復はかなり緩やかなものにとどまることは覚悟すべきです。

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2020年6月18日 (木)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)になすすべなしのチリはどうなるのか?

私が在チリ大使館の経済アタッシェをしていたのは1991-94年ですから、もう30年近くも昔のことなんですが、そのころからチリは経済的には「中南米の優等生」とされていました。私のような左派・リベラルのエコノミストには決して快くはありませんでしたが、アジェンデ政権をクーデタで倒したピノチェト大統領のもとにシカゴ学派のエコノミストが集まって、ジャーナリストのナオミ・クライン女史のいうところの「惨事便乗型資本主義」でもって、メチャメチャな経済運営をしながら、銅という天然資源に恵まれて順調な経済発展を続けて来ました。
長らく、チリ経済についても注目されてこなかったのですが、一昨日の6月16日第一生命経済研から「チリ: 感染『第2波』直撃もなす術なし、事態収束の見通しはみえず」と題するリポートが出ていることを知りました。すなわち、昨年10月の地下鉄料金引上げをきっかけとした反政府デモが激化し、11月のAPEC首脳会議の開催が放棄された、ところまでは知っていましたが、加えて、12月のCOP25も開催できず、国際的な信認を失墜していた上に、さらにさらにで、世界を覆った新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の抑え込みにも失敗し、リポートでは、「中南米で政治の流動化が懸念される上、チリがその発火点となる可能性にも注意が必要である。」とすら指摘されています。

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チリでは3月にCOVID-19感染者が確認され、政府は感染封じ込めに向けて国境封鎖のほか市民の移動制限を実施した結果、4月下旬にはピニェラ大統領が「感染拡大のピークは過ぎた」と発言して外出制限の解除に踏み切ったんですが、外出制限が解除されたことで5月から感染者数が急拡大したため、再び5月中旬に首都サンティアゴなどを対象に強制的な外出制限を課す事実上のロックダウン措置を取ったものの、その後も感染拡大が収まっていません。上のグラフの引用元である第一生命経済研のリポートでは、タイトルでもそうなっていて、「第2波」と考えているようですが、私のようなシロートが上のグラフを見る限り、そもそも第1波も終わっていないのではないのか、とすら思えます。例えば、チリの累積の感染者数は約18万人と中南米地域ではブラジルの約89万人、ペルーの約23万人に次いで3番目となっていますが、ブラジルなんぞとは人口規模がケタ違いですから、人口対比では突出しています。
しかも、本格的な夏に向かう我が国などの北半球と違って、チリなどの南半球はこれから気温が下がって冬に向かい、まあ、日本でいえばインフルエンザが流行したりするシーズンに入るわけです。私が滞在したのは30年近く前のことですが、50年前の1970年9月の大統領選挙ではアジェンデ大統領が当選し政権に就いた歴史を考えれば、今年は50周年に当たります。果たして、チリはどこに向かうのでしょうか?

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2020年6月17日 (水)

ダダ下がりの貿易統計もそろそろ底を打つか?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲28.3%減の4兆1847億円、輸入額も▲26.2%減の5兆181億円、差引き貿易収支は▲8334億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月の輸出28.3%減 リーマン危機後以来の落ち込み
財務省が17日発表した5月の貿易統計(速報)によると、輸出額は4兆1847億円と前年同月比28.3%減った。新型コロナウイルスの感染拡大が響き、下げ幅はリーマン・ショックの影響が残る2009年9月以来の大きさとなった。米国向けは50.6%減り、対米貿易黒字は過去最少の102億円まで縮んだ。
輸出の減少幅は3月の11.7%、4月の21.9%からさらに拡大した。コロナ禍で世界的に経済活動が停滞し、特に自動車は64.1%減と大きく落ち込んだ。
輸出はほぼ全ての地域向けで低迷した。米国向けは50.6%減の5884億円で、09年3月以来の落ち込みになった。自動車が78.9%減り、自動車部品も73.2%減った。欧州連合(EU)向けは33.8%減の3638億円。自動車が47.6%減と大きく減った。
経済活動の再開が一足早く進む中国向けは1兆1262億円で1.9%減にとどまった。下げ幅は4月の4.0%より縮小した。非鉄金属が増えるなど持ち直しの動きがみられる。化学品原料や自動車、半導体製造装置の輸出は減った。対アジア全体は2兆7449億円と12%減少した。
輸入額は全体で26.2%減の5兆181億円。減少率は4月の7.1%から拡大した。原油が78.9%減った。輸出から輸入を差し引いた貿易収支はマイナス8333億円で2カ月連続の赤字だった。
輸入を地域別にみると米国からは27.5%減の5781億円、EUからは29.6%減の5751億円だった。中国からは2.0%減の1兆5112億円。マスクなどが増えた一方、自動車部品が落ち込んだ。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲1兆円を超える貿易赤字が予想されていましたし、前年同月の2019年5月も▲9654億円の赤字を計上していましたので、▲8334億円の赤字は、ある意味で、いかなる角度から見てもマイナスはマイナスながら、輸出がそれなりに踏み止まった、といえるのかもしれません。もちろん、国際商品市況で石油価格が大きく下落して、我が国の輸入原油への支払いが減っているのも一因です。例えば、原油及び粗油の5月の輸入はキロリットル単位の数量ベースでは前年同月比で▲36.0%減ですが、価格とかけ合わせた金額ベースでは▲78.9%減と、何とも⅕まで減少しています。なお、今日のブログのタイトルに「ダダ下がり」と付しましたが、貿易に限らず、生産も消費も全部ダダ下がりなのではないか、との反論あるかもしれません。しかし、何度か書いたように、今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響については、交易の利益が失われるというのが最大のマイナスであると私は考えています。例えば、私自身については、経済を分析して政府のお仕事を進めたり、大学生に教えたりしてお給料をもらって、それを基に食品や衣類を買ったり、各種のサービスを受けたりしているわけで、国内でも得手不得手=比較優位に従った交易の利益が生まれますが、いうまでもなく、交易の最大の利益は天候や天然資源をはじめとして生産要素賦存やスキルが大きく異なる外国との交易で生み出されることは当然です。その意味で、COVID-19の経済的な影響の最大のものは貿易で生じる可能性が高い、と私は考えています。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、一番下の中国のパネルのOECD先行指数について、2月は前年同月比で▲15%近い落ち込みなんですが、それにスケールを合わせると、米国雇用統計のように、別の部分でわけが判らなくなるような気がして、意図的に下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。今のところ、私自身も直観的に感じていますが、第1次パンデミックに応じたロックダウンなどによる世界経済の最大のネガティブな影響は5月であった、と多くのエコノミストは考えています。ですから、我が国貿易統計のように、季節調整しない原系列の統計の前年同月比で見れば、まだまだマイナスは続きますが、大きなトレンドで見て季節調整済みの系列の前月比では、いくつかの重要な経済指標は6月からプラスに転じる可能性が高い、といえます。我が国と多くの先進国の輸出もそうではないかと考えられます。もちろん、第2次パンデミックが生じて、第1次を上回る経済的影響をもたらす可能性もなくはないのでしょうが、この先は方向性としては経済は改善の方向に向かうのではないかと期待されます。ただ、問題はそのスピードです。多くの国では政府が財政赤字を積み上げましたし、金融政策でも大きく緩和が進められました。そういった政策手段の制約も含めて、この先、経済の方向はプラスながら、回復スピードはかなり緩やかなものとなる可能性が高い、と覚悟すべきです。貿易も例外とはなり得ません。

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2020年6月16日 (火)

ニッセイ基礎研リポート「健康に力を入れている企業の従業員は健康か?」

先週金曜日6月12日にニッセイ基礎研から「健康に力を入れている企業の従業員は健康か?」と題するリポートが明らかにされています。今年2020年3月にニッセイ基礎研が実施したアンケート調査の個票を用いた分析結果なんですが、リポートには「コロナ」の単語も現れません。ややリポートのピントがボケているような気がしないでもありませんが、「健康」という単語が何を意味するか、3月調査時点でどのように受け止められていたのかも少し気にかかりつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のテーブルは、ニッセイ基礎研のリポートから p.4 図表2 推計結果 (健康増進に熱心かに関する標準化係数) を引用しています。標準化計数が空欄のままにされているのは、要するに、統計的な有意性が出なかったということなんだろうと解釈して、テーブルの疾病の有無の上の2列、すなわち、脳卒中、心臓病、慢性の腎不全(人工透析治療)の既往歴、さらに、同一の病気やケガによる14日以上の通院歴、といった私にはいかにも重篤に見える従業員の健康については企業が健康に力を入れているかどうかで差はなかった、という結論のようです。ただし、疾病の有無の中でも、心理的ストレスがある(K6が5以上)とは負の相関が認められ、健康に力を入れている企業の従業員は心理的なストレスは少ないようです。次の自覚症状と生産性の列については、自覚症状の個数と自覚症状があった日数については、健康に力を入れている企業では少ないとの結果がある一方で、かといって、それが自覚症状がある場合の生産性との有意な相関はないようです。従業員にとっては自覚症状が少なくていいんでしょうが、企業としては生産性の上昇にはつながっていない、という結果です。私は従業員の立場から、健康に力を入れている企業で従業員の何らかの自覚症状が少ないとか、短いというのは大いにいいことだという気がしていますが、もっと企業サイドのコスト・コンシャスな面からは、企業の生産性に結びついていないのであれば「ムダ玉」という見方をしそうな右派エコノミストもいそうな気がします。さらに、企業が従業員の健康に力を入れていれば、従業員の方でも、ヘルスリテラシーや主観的な健康感が高かったりするのは当然のように見えます。ただし、因果関係は逆かもしれない点には注意が必要です。すなわち、個々の従業員のヘルスリテラシーが高いので、従業員の集合体としての企業が健康に力を入れている、というような気もします。
最後に、従業員の健康行動については、いっそう判りにくくなっています。企業が従業員の健康に力を入れていれると、喫煙や食生活の乱れが少ないというのは、特に、喫煙については今日びのご時世ですから、これはよく判ります。でも、健康診断を受けなくなるというのはモラルハザードを生じるんでしょうか。加えて、運動習慣がモノにならず、過度な飲酒も矯正されない、というも同様にモラルハザードで、勤め先が健康に力を入れていれば、多少の不健康な行為をしても何らかの救済措置が期待できる、ということなんでしょうか。ただ、リポートではモラルハザードの指摘ではなく、「過度な飲酒や運動習慣は、職場における取り組み以上に、個人の価値観やライフスタイルの影響が大きいのかもしれない。」と個人責任で結論しています。個人の責任で結果が出るんなら、こんな調査は意味ないと思うエコノミストは私だけでしょうか?

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2020年6月15日 (月)

労働政策研究・研修機構による「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」(一次集計)結果やいかに?

労働政策研究・研修機構(JILPT)と連合総研の共同研究による「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」に関して、1次集計結果が取りまとめられて、先週水曜日の6月10日に明らかにされています。連合総研のサイトにはJILPTのリポートへのリンクが貼られているだけですので、JILPTのリポートを見ておきたいと思います。ただ、必ずしもJILPT主導の調査かというとそうでもなく、例えば、「5月調査」と呼んでいる今回の調査のうちのいくつかの設問は、「4月調査」と呼んでいる連合総研による「第39回勤労者短観 新型コロナウイルス感染症関連 緊急報告」と経時比較が出来るように設計されています。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響について、雇用や収入、特に、残業を含む実労働時間、通常月の月収と比較した直近の月収額、就労面での取組状況、仕事面での不安、それも、雇用者だけでなくフリーランスも含め、さらに、性別・年齢別・地域別・年収別はもちろん、業種別や企業規模別、正規・非正規といった雇用形態別、それも、非正規の中でもパート・アルバイトや派遣など詳細に分類されており、職種も管理職・事務職・サービス職などなど、極めて詳しいカテゴリーで調査が実施されています。今のところは1次集計なんですが、連合総研は私はよく知りませんが、短期間とはいえ勤務経験のあるJILPT研究員の計量分析能力は十分承知していますので、これから、2次集計結果やあるいは3次集計などなど、加えて、4~5月調査だけでなく6月以降の調査結果も含めて、私は大いに期待しています。

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今回明らかにされた1次集計結果の中から、特にCOVID-19の前後で大きな変化あった1点だけ、すなわち、p.11 図表7「在宅勤務・テレワーク」日数の変化 を引用すると上の通りです。見れば判ると思いますが、1週間当りの在宅勤務・テレワーク日数について、COVID-19の影響が現れる前の通常時、4月第2週の全国レベルの緊急事態宣言直前時、5月第2週の全国の緊急事態宣言時、の3時点の結果です。私の経験からしても、定年退職する前の役所に勤務していた時もテレワークはありましたし、私もやったことがあります。でも、正直なところ、年2回ほどで、週あたりにならせばゼロという回答になりそうです。そして、東京の役所勤めから関西に引越しての大学教員ですから、地域も職種も違うので単純な比較は出来ませんが、4月第2週も5月第2週もほぼ週に1日しか大学には出勤しませんでした。上のグラフではテレワークが週4日に分類されるような気がします。私の場合、正規職員という点では大きな変化ないものの、繰り返しになりますが、東京から関西に引越しましたし、定年退職前の公務員から大学教員に転職しましたし、COVID-19の前後で別の意味で大きな変化を経験していて、単純に比較することはムリがありますから、自分自身の実体験だけではなく、こういった周到に準備された統計的な調査の結果を参考に、エコのミストとしていろいろと考えを巡らせたいと思います。

連合総研はともかく、私は労働政策研究・研修機構(JILPT)には研究員として出向していた経験があります。OBなわけです。最近時点では、5月29日に「人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査」なんて、このご時世にトボけた研究成果を記者発表していたりして、研究の方向性を心配していたんですが、COVID-19の最大の影響のひとつは雇用であり、特に格差問題であることは十分認識していたようで安心しました。組織としてはともかく、個々の研究員のレベルがとても高いことは経験から見知っているつもりですので、労働組合をもバックに収集した大量のデータを基にして、タイムリーで政策的なインプリケーション十分な研究成果を期待したいと思います。

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2020年6月14日 (日)

血液型O型は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)にかかりにくいのか?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、米国の遺伝子解析会社、ないし、検査キット販売会社から6月8日付けで "23andMe finds evidence that blood type plays a role in COVID-19" と題するリポートが明らかにされています。要するに、血液型O型は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)にかかりにくい、という解析結果が示されています。我が国でも、いくつかのメディアで取り上げられましたが、私が見たのは以下の時事通信と日経新聞です。我が国メディアはやや慎重な取り扱いのようです。

まず、その23andMeのサイトから75万人を対象に実施した調査結果のポイント6点を引用すると以下の通りです。

a first blush look
  • The preliminary data suggest that O blood type appears to be protective against the virus when compared to all other blood types.
  • Individuals with O blood type are between 9-18% percent less likely than individuals with other blood types to have tested positive for COVID-19, according to the data.
  • There appeared to be little differences in susceptibility among the other blood types.
  • These findings hold when adjusted for age, sex, body mass index, ethnicity, and co-morbidities.
  • Although one study found the blood group O only to be protective across rhesus positive blood types, differences in rhesus factor (blood type + or -) were not significant in 23andMe data. Nor was this a factor in susceptibility or severity in cases.
  • Among those exposed to the virus - healthcare and other front line workers - 23andMe found that blood type O is similarly protective, but the proportion of cases within strata is higher.

すなわち、やや順序を入れ替えて、専門外の私にも判りやすくすると、血液型O型の人、実は、我が家では私と上の倅がそうですが、O型は他の血液型に比較してウィルスに対して"protective"であり、COVID-19への罹患率は9-18%低くなっている一方で、他の血液型には差は見られない、と結論しています。そして、この結果は、年齢、性別、BMIで計測した肥満度、民族、他の併存症を考慮しても成り立つ、ということのようです。私はまったくの専門外で、この結果を評価することはできませんが、薬学ではいわゆる「作用機序」というものを重視し、薬がどのように効くのかという因果関係の順序を解明しようとするのに対して、医学では因果関係よりも大量の観察に基づく相関関係に頼る場合が多いような気がします。実は経済学もそうだったりするんですが、科学的な見地からはバックグラウンドとなるモデルが無視されている気もします。でも、開発が急がれているCOVID-19のワクチンないし特効薬に関する貴重な情報かもしれません。というのは、"with corona" という表現を目にするようになりましたが、私はコロナウィルスと共存するなどはあり得ないと考えています。人類が現時点で撲滅した伝染病は天然痘だけですので、COVID-19が完全に地上から消え去ることはないと思いますが、他の伝染病、例えば、赤痢とか、チフスとか、コレラとかは、天然痘のように撲滅されないまでも、通常の日常生活や経済活動には大きな支障を及ぼさない段階まで抑え込まれています。かつては日本の国民病だった結核もそうです。COVID-19についても、これらのレベルまで抑え込むことが必要であり、日本の厚生労働省が提唱するような「新しい生活様式」による"with corona"は、少なくとも、現時点では長い将来に渡る選択肢ではない、というか、少なくとも有力な選択肢にすべきではない、と感じています。
最後に、その23andMeのサイトからグラフを引用すると以下の通りです。

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2020年6月13日 (土)

今週の読書は経済書なしで計3冊!

今週の読書は経済書はなく、地政学の専門書・教養書のほかに新書が2冊です。大学の対面授業がなく、オンライン授業の資料作成に追われていて、私の実感では、おそらく、対面授業よりも準備に時間がかかっているような気もして、なかなか読書が進みません。それでも、学生がほとんど大学に来ないためなのか、大学の図書館に所蔵されている新書がほとんど借り出されていません。普通は手軽に読める新書は一般の公立図書館では人気があり、私はもともと新書は「借りにくい」という観点から読んでこなかったのですが、ここまで借りやすいとなればせっせと読むことに方針転換しています。

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まず、ペドロ・バーニョス『国際社会を支配する地政学の思考法』(講談社) です。著者は、軍人です。スペイン軍の予備役大佐であり、フランスに本部を置く欧州合同軍の防諜・治安部隊の長官を歴任し、地政学、国家戦略、防衛政策、安全保障、テロリズム、諜報活動、国際関係の第一人者でもある、とのことです。スペイン語の原題は Aí se domina el mundo であり、受動態を能動態にしつつ英訳すると、上の表紙画像に見えるように、How They Rule the World となります。邦訳者がスペイン語の専門家らしい経歴ですので、本書には明記されていないながら、スペイン語からの邦訳なのであろうと私は想像しています。原書は2017年の出版です。ということで、全25章から構成され、冒頭の5章と最後の4章を別にした残りの16章が16の地政学的な戦略として省タイトルになっています。出版社のサイトからコピペでお手軽に羅列すると、ハシゴを蹴り倒す戦略、隣人を弱らせる戦略、上手にあざむく演技派の戦略、ブレイキング・ポイントの戦略、分裂させる戦略、間接的に支配する戦略、法を歪曲する戦略、権利と権力の戦略、敵をつくり出す戦略、大衆を操る戦略、フェイクニュースの戦略、貧者の名のもとの戦略、不和の種をまく戦略、宗教を使った戦略、善人主義という戦略、マッドマン戦略、ということになります。何らかの政府が組織されていて、それなりの制度的な統治機構のある国では、国内的に何らかのルールがあると考えられますが、国際社会におけるせめぎあいではルールはなく、弱肉強食というか、強いものがあからさまに弱い国を支配する、という構図が出来上がっていると本書は主張します。場合によっては、敵対国をおとしめる権謀術数も利用されます。そして、ひとつの行動原理として、広い意味で、経済的な利益を求める背景も指摘されています。私もそう思います。かなり原理的な地政学の考えを展開していて、それはとてもあからさまだったりするんですが、根底にはスペイン人が米国の戦略をどう見ているのか、という点も忘れるべきではありません。日本のように対米従属一辺倒ではなく、本書の著者は日本と同じように米国の同盟国であるスペイン出身ながら、米国とその昔のソ連、今のロシアを等距離で見ているような冷めた視点がところどころに。垣間見えます。なかなかに面白い読書でした。

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次に、中川右介『阪神タイガース1985-2003』(ちくま新書) です。この著者には、角川新書による『阪神タイガース 1965-1978』という著書があり、私は読んでいませんが、本書と同じことなんだろうと思います。その前著が1978年で終わっていて、本書が1985年から始まっていますので、少し隙間があったりするんですが、大きなイベントはなかったという判断なんだろうと思います。前著は阪神がリーグ優勝した1964年の直後から始まっている一方で、本書は日本シリーズにも勝って初めての日本一になった、まさにその年から始まっています。基本的には、バックグラウンド情報が含まれているとはいえ、各シーズンの試合経過を収録していると考えていいと私は受け止めています。もちろん、阪神タイガースのことですから、ストーブリーグ期間中に限らずお家騒動は年中行事となっており、特に、本書の期間はいわゆる「暗黒時代」を長々と含みますので、シーズン途中に監督交代があった年もめずらしくなく、助っ人外国人が退団したあとで他球団で活躍したり、バースもそうでしたが、シーズン途中で帰国したりするのはもっとありふれた時代だった気がします。ただ、本書のスコープとなっている20年近くについては、私は3年ずつ2回の海外勤務をしています。すなわち、1991-94年の在チリ大使館勤務と2000-03年のジャカルタです。本書でも詳細が取り上げられていますが、1992年のスワローズとの優勝争いは、父親がビデオを送ってくれてサンティアゴで見た記憶があります。実に、淡々とジャーナリストらしく事実に基づく記述が続くんですが、それなりの読み応えがあり、私のような阪神ファンには読んでいて引き込まれるものがあります。

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3冊めですぐに最後になってしまい、松本亘正『超難関中学のおもしろすぎる入試問題』(平凡社新書) です。著者は、中学受験専門学習塾を創設した経営者です。私も中学受験をして私立の中高一貫性の中学・高校に進学しましたし、我が家の2人の倅どもも同じです。もちろん、3人とも違う学校です。著者がどうしても首都圏で事業展開をしている学習塾経営者ですので、のっけの灘以外は、開成や麻布などの東京の私立中学入試問題が中心になっていて、実に不愉快(?)なことに、私の出身中学の試験問題は取り上げられていないように見受けます。まあ、それはともかく、なかなかに興味深く読めました。私は大学教員として、1回生の初っ端の演習を担当していて、アカデミック・ライティングを学習しているのですが、なかなか題材が得られにくいので、本書の中に取り上げられている有名私立中学の試験問題のうち、経済的なテーマのものを大学1回生に材料として提示してみようかと考えているところです。

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2020年6月12日 (金)

1-3月期GDP統計2次QEを受けた短期見通しやいかに?

今週月曜日6月8日に内閣府から公表された1~3月期GDP統計速報2次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから短期経済見通しがボチボチと明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、今年度2020年いっぱい、すなわち、2021年1~3月期くらいまで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2020/1-32020/4-62020/7-92020/10-122021/1-3FY2020
actualforecast
日本経済研究センター▲0.6
(▲2.2)
▲7.1+0.5+1.8+1.3▲6.8
日本総研(▲21.2)(+9.7)(+4.2)(+5.0)▲4.6
大和総研▲5.6
(▲20.5)
+1.3
(+5.1)
+1.2
(+4.9)
+1.0
(+4.2)
▲5.1
ニッセイ基礎研▲6.7
(▲24.4)
+1.9
(+8.0)
+2.1
(+8.6)
+1.0
(+4.1)
▲5.5
第一生命経済研▲6.3
(▲23.0)
+2.3
(+9.3)
+1.1
(+4.5)
+0.6
(+2.3)
▲5.3
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲6.3
(▲23.0)
+2.5
(+10.2)
+1.5
(+6.2)
+1.5
(+6.1)
▲4.8
SMBC日興証券▲3.7
(▲13.9)
+0.7
(+2.9)
▲0.1
(▲0.4)
+0.8
(+3.4)
▲4.3
農林中金総研▲5.4
(▲19.9)
+2.1
(+8.7)
+0.5
(+2.0)
+0.2
(+0.9)
▲5.0
東レ経営研▲6.7+0.9+1.8+0.8▲6.3

各列の計数については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。1~3月期までは内閣府から公表された2次QEに基づく実績値、4~6月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、いくつか、前期比のみとか、前期比年率のみの公表のシンクタンクがありますが、カッコのあるなしで見分けられることと思います。それから、三菱総研はシナリオを3通り示して、それぞれの見通し計数を明らかにしているところ、上の総括表では①のシナリオ、すなわち、経済活動抑制が2020年5月末にピークアウトするという、もっとも楽観的なシナリオを取り上げています。ということで、昨年2019年10月の消費税率の引上げを受けて、2019年10~12月期が大きなマイナス成長となったのに続き、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のための経済活動抑制措置が広がり、2四半期連続で1~3月期もマイナス成長が続き、足元の4~6月期がもっとも大きなマイナス成長を記録することが確実と見込まれています。ただ、これまた、すべての機関で7~9月期にはプラス成長に回帰し、その後も多くのシンクタンクはプラス成長を続ける、という見通しを示しています。もっとも、2020年度をならせば成長率は▲4~6%のかなり大きなマイナス成長となる可能性が示唆されています。
昨日、OECDの「経済見通し」を取り上げたのですが、暦年と年度の違いはあるものの、大雑把に整合的ではないかと私は見ています。OECDの単発シナリオでCOVID-19を抑え込めれば、2020年に▲6.0%のマイナス成長に陥った後、、2021年には+2.1%とプラス成長に回帰すると見ている一方で、双発シナリオでは来年もマイナス成長が続く、とされています。私はCOVID-19のパンデミックは減衰しつつも何度か揺り戻しがあるものと覚悟しています。もっとも、減衰の程度を考慮すれば、第2波以降は「パンデミック」の範疇には入らない可能性もあります。こういった方面に無力なエコノミストとしては、早くワクチンか特効薬の開発ができないものかと感じています。下のグラフは、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2020年6月11日 (木)

OECD経済見通しは highly uncertain!!!

昨日、経済協力開発機構(OECD)から最新の「経済見通し」OECD Economic Outlook, June 2020 が公表されています。見通しサブタイトルは The world economy on a tightrope とされており、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、従来からの世界経済のパスが大きく下方修正されています。ほかの国際機関などに比べて、この見通しの大きな特徴は、COVID-19がこのまま終息していく「単発シナリオ」single-hit-scenario と今年2020年中に第2波の感染拡大が襲来する「双発シナリオ」double-hit-scenario の両方を分析の対象としていることです。成長率で見て、感染の第2波が避けられる「単発シナリオ」では、今年2020年は▲6.0%の落ち込みの後、来年2021年+5.2%のリバウンドを予想している一方で、第2波により再びロックダウンを招く「双発シナリオ」では今年が▲7.6%のマイナス成長となる上に、来年のリバウンドも+2.8%にとどまる、と見込んでいます。以下、OECDのプレゼン資料OECDの見通し本体のリポートなどからグラフやテーブルを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上の画像は成長率見通しの総括表です。OECDのプレゼン資料の p.5 と pp.20-21 を結合しています。一番上のパネルでは従来シナリオの緑のラインとともに、下方修正された「単発シナリオ」の青いライン、さらに、「双発シナリオ」の赤いラインではさらに下方修正されているのが見て取れます。真ん中と下のパネルではG20やOECD加盟国といった国ごとの成長率見通しの計数が示されています。日本は、「単発シナリオ」では2020年▲6.0%のマイナス成長の後、2021年には+2.1%成長にリバウンドすると見込まれていますが、「双発シナリオ」では2020年▲7.3%まで落ち込んだ後、来年2021年も▲0.5%と、マイナス成長を続ける、と見込まれています。この見通しに従えば、「双発シナリオ」で来年2021年もマイナス成長を続けるのは日本とアイルランドだけとの予想です。

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次に、上の画像は日本に関する経済見通しの総括表です。OECDのリポートの国別見通しのうちの日本について「単発シナリオ」と「双発シナリオ」のそれぞれの見通し表を結合しています。「双発シナリオ」では全体的に「単発シナリオ」から下振れしているのは事実なんですが、特に、民間消費と総固定資本形成の下振れが目立っています。

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OECDの「経済見通し」ですから、政策対応なども盛り込まれているんですが、最後に、上の画像は Key policy messages 3点のスライドです。OECDのプレゼン資料の p.18 を引用しています。保健衛生を含めた健康政策、雇用や企業の継続性とデジタル化などの変革に向けた支援、そして、格差是正にも配慮した景気回復策の3点が強調されています。まあ、そうなんですが、何といってもCOVID-19の終息が最大の課題となりますし、その後はワクチンが実用化されてCOVID-19を特に気にすることなく日常生活や経済活動が続けられるのか、あるいは、日本の「新しい生活様式」のように、COVID-19にも気を配りつつの経済活動再開になるのか、にも大いに関係しますので、私には何とも予見し難いものがあります。

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2020年6月10日 (水)

大きく落ち込んだ機械受注と下げ足を速める企業物価(PPI)!!!

本日、内閣府から4月の機械受注が、また、日銀から5月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲12.0%減の7526億円と大きな減少を示し、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率も▲2.7%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の機械受注、12.0%減少し5年ぶり低水準 設備投資手控え
内閣府が10日発表した4月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比12.0%減の7526億円だった。2カ月連続で減少し、2015年4月以来5年ぶりの低水準となった。減少率は18年9月以来の大きさだった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(8.6%減)以上に落ち込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、設備投資が手控えられた。3月に大型案件が受注額を押し上げていた反動も出た。
内閣府は基調判断を「足元は弱含んでいる」に下方修正した。下方修正するのは6カ月ぶりとなる。
製造業の受注額は前月比2.6%減の3342億円だった。3カ月連続の減少で、17業種のうち11業種で減少した。工作機械などの「はん用・生産用機械」や、航空機など「その他輸送用機械」で受注減少が目立った。
非製造業は20.2%減の4063億円と3カ月ぶりに減少した。減少率は比較可能な05年4月以降で最大となる。前月に大型案件があった宅配などの運輸業・郵便業で反動減が出た。小売店の休業などで「卸売業・小売業」が減少した。
受注総額は前月比8.3%減だった。外需の受注額は21.6%減と3月(1.3%減)から減少幅を広げた。官公需の受注額は7.2%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は17.7%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
5月の企業物価指数、3年7カ月ぶり下落率 原油安など重荷
日銀が10日発表した5月の企業物価指数(2015年平均=100)は99.1と前年同月比で2.7%下落した。3カ月連続のマイナスで、下落率は16年10月以来3年7カ月ぶりの大きさだった。新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした原油価格の下落が、物価の重荷となった。自動車の生産が一時中断した影響で鉄鋼などの価格が下落したことも響いた。前月比では0.4%の下落だった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸入物価は前年同月比17.6%下落した。マイナス幅は16年8月以来の大きさだった。原油やナフサなどの値下がりが大きかった。円ベースでの輸出物価は前年同月比で6.5%の下落、前月比で1.2%の下落だった。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。消費増税の影響を除くベースでの企業物価指数は前年同月比で4.1%下落した。下落率は16年7月以来の大きさだった。

やや長くなりましたが、いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で前月比▲8.8%の減少、レンジ下限は▲22.7%減ということでしたので、まあ、こんなものかという気もします。かなり大きな2桁マイナスでしたので、統計作成官庁である内閣府では基調判断を先月の「足踏みがみられる」から「足元は弱含んでいる」に下方修正しています。コア機械受注の外数で先行指標となる外需の受注額は▲21.6%減を記録しています。産業別には、製造業が先月統計から▲2.6%減で踏み止まっているのに対して、船舶と電力を除くコア非製造業は▲20.2%と大きな落ち込みを記録しています。非製造業のうち、運輸業・郵便業は宅配などで業務の増加が見られると私は考えないでもなかったんですが、先月統計の+82.0%増の反動で▲61.0%減となったほか、特徴的なところでは、卸売業・小売業が▲17.9%減、建設業が▲11.6%減、また、製造業ながら航空機などを含む「その他輸送用機械」が▲30.5%減となっています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で先行き不透明感が大きくなり、設備投資にもマイナスとなって現れるのは当然といえます。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、機械受注のグラフと同じで、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前年同月比▲2.4%の下落、レンジの下限が▲2.7%ということでしたので、まさにその下限ということになります。上のグラフのうちの上のパネルで輸入物価が大きく下げているのは原油価格の下落の影響が大きいと私は考えています。2015=100の季節調整していない原系列の指数で原油価格は、今年2020年に入って1~2月は117.3だったのですが、3月96.8、4月63.9、5月32.2と大きく下げています。国内物価にも一定のラグを伴って波及すると考えるべきです。

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2020年6月 9日 (火)

NBERが景気のピークは2月と同定し米国景気のリセッション入りを認定!!!

私宛てにもメールでお知らせが入ったんですが、NBERが米国景気の直近のピークは今年2020年2月であったと同定し、米国経済はリセッションにあると明らかにしました。なお、NBERからはpdfのステートメントもアップされています。まず、USA Today のサイトから関係する記事を手短に7パラだけ引用すると以下の通りです。

It's official: The US is in a recession, ending longest expansion in history
It's official: The United States is in a recession.
The National Bureau of Economic Research said Monday the U.S. economy peaked in February, ending the longest expansion in U.S. history at 128 months, or about 10½ years.
In truth, the announcement codifies the painfully obvious. States began shutting down nonessential businesses in mid-March to contain the spread of the coronavirus, halting about 30% of economic activity and putting tens of millions of Americans out of work.
The NBER called the recession just over three months after it began, the fastest such determination since the 1980 recession and far shorter than the typical nine months to a year, says Gregory Daco, chief U.S. economist of Oxford Economics.
NBER is a nonprofit organization that conducts research on a wide range of economic issues. But it's best known for its Business Cycle Dating Committee, which calls the beginnings and ends of recessions.
The expansion began in June 2009, ending the Great Recession that started in December 2007.
The economy's quarterly peak occurred in the fourth quarter of last year, NBER said.

記事にもある通り、月次データに基づく景気の山は2020年2月なんですが、四半期では2019年10~12月期と同定されています。月単位と四半期で異なるのはめずらしいと思いますので、NBERもステートメントの中でいろいろと言い訳をしていたりします。いくつか関連するグラフをmarketwatch.comのサイトから引用しておきたいと思います。

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まず、marketwatch.comのサイトから、Record U.S. expansion ended in February と題するグラフを引用しています。1990年代、主としてクリントン政権期の10年120か月を抜いて、2月を山とする今回の景気拡大期は128か月と最長を記録したことが示されています。

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次に、marketwatch.comのサイトから、Mass layoffs didn't begin until March と題するグラフを引用しています。主として、ここでは、米国経済のリセッションは3月に始まった、という点をレイオフの統計から主張しようとしているようです。しかし、私が理解する限り、NBERは景気の山が2月であったと同定したわけで、従って、3月からリセッションが始まっているということなのではないか、要するに違いはないのではないか、と思うのですが、よく判りません。このブログでも景気後退期に影をつけたグラフをしばしばお示ししていますが、少なくとも、私の認識では景気の山の翌月から景気後退が始まる、という認識で景気後退期に影をつけています。米国と日本では違ったりするんでしょうか?

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最後に、本日、厚生労働省から4月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、そろそろ、取り上げてみようかと考えてグラフを書いてみました。統計のヘッドラインとなる名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で▲0.6%減少の27万5022円を示しています。実質賃金も同じく前年同月比▲0.7%の減少です。米国経済のリセッションのトピックに隠れて、こっそりと持ち出しておきたいと思います。

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2020年6月 8日 (月)

1次QEから上方修正された1-3月期GDP統計2次QEはどこまで信頼できるか?

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.6%、年率では▲2.2%と、前記の消費税引き上げショックに続いてコロナ禍ショックにより2期連続のマイナス成長を記録しています。ただし、先週公表の法人企業統計など最新の統計を反映した結果、2次QEから見れば上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期の実質GDP改定値、年率2.2%減 速報値より上方修正
内閣府が8日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算では2.2%減だった。速報値(前期比0.9%減、年率3.4%減)から上方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.5%減、年率2.0%減となっており、速報値から上振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.5%減(速報値は0.8%減)、年率は1.9%減(同3.1%減)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.8%減(同0.7%減)、住宅投資は4.2%減(同4.5%減)、設備投資は1.9%増(同0.5%減)、公共投資は0.6%減(同0.4%減)だった。民間在庫の寄与度はマイナス0.1%分(同マイナス0.0%分)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス0.4%分(同マイナス0.7%分)、輸出から輸入を引いた外需はマイナス0.2%分(同マイナス0.2%分)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス0.9%(同プラス0.9%)だった。
同時に発表された2019年度の実質GDPは、前年度比0.0%増(同0.1%減)だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2019/1-32019/4-62019/7-92019/10-122020/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.6+0.5+0.0▲1.9▲0.9▲0.6
民間消費+0.1+0.6+0.1▲3.3▲0.9▲0.5
民間住宅+1.5▲0.2+1.2▲2.7▲2.5▲1.7
民間設備+1.4▲0.2+1.2▲2.3▲4.5▲4.2
民間在庫 *(+0.1)(+0.0)(▲0.3)(+0.0)(▲0.0)(▲0.1)
公的需要+0.3+1.6+0.8+0.3▲0.0▲0.0
内需寄与度 *(+0.1)(+0.8)(+0.2)(▲2.4)(▲0.7)(▲0.4)
外需寄与度 *(+0.5)(▲0.3)(▲0.2)(+0.5)(▲0.2)(▲0.2)
輸出▲1.8+0.2▲0.6+0.4▲6.0▲6.0
輸入▲4.5+1.8+0.7▲2.4▲4.9▲4.9
国内総所得 (GDI)+1.1+0.5+0.2▲1.8▲0.9▲0.6
国民総所得 (GNI)+0.8+0.5+0.1▲1.9▲0.8▲0.5
名目GDP+1.1+0.6+0.4▲1.5▲0.8▲0.5
雇用者報酬+0.4+0.7▲0.3▲0.2+0.7+0.7
GDPデフレータ+0.2+0.4+0.6+1.2+0.9+0.9
内需デフレータ+0.3+0.4+0.2+0.7+0.7+0.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がマイナス成長を示し、需要項目別寄与度では、赤の消費などがマイナスの寄与を示している一方で、極めて疑わしいながら、水色の設備投資がプラスの寄与となっているのが見て取れます。

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先週月曜日6月1日付けで法人企業統計を取り上げた際にも明記しましたが、設備投資が増加しているのは極めて疑わしく、先週木曜日の6月4日に2次QE予想を取りまとめた際にも着目しましたが、法人企業統計では調査票の回収漏れが発生していることに起因しているように受け止めています。すなわち、私のような底意地の悪いエコノミストの目から見れば、成績のいい企業は胸を張って早めに調査票を出す一方で、成績の悪い企業は後からソッと出す、という傾向らしきものが透けて見えますので、回収漏れの調査票は「成績の悪い」モノが少なくなく含まれていると考えるべきです。ですから、2か月後をメドに明らかにされる確報集計では下方修正となる確率が極めて大きく、この法人企業統計に基礎を置く本日公表のGDP統計速報2次QEは過大推計されていると私は受け止めています。私も総務省統計局で消費統計を担当する課長職を務めた経験がありますが、たとえ疑わしい統計であっても公表せざるを得ない立場は厳しいものがあります。ただ、GDP統計は2次統計であって、推計の元となる統計がありますから、まあ、言葉は悪いものの、その元統計に一種の「責任転嫁」する余地は残っていそうな気もします。統計ムラの内輪のお話でした。
ということで、本日公表の1~3月期のGDP統計は、もはや「過去の数字」としかいいようがなく、先行き足元の4~6月期の経済がより重視されるところ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大防止を目指した緊急事態宣言はすでに終了し、一部業種の営業や外出などの自粛要請も徐々に緩和されつつあるとはいえ、私を含めた多くのエコノミストの共通認識では、おそらく、4~6月期の落ち込みは1~3月期を軽く超えて年率で▲20%のマイナス成長、あるいは、それを超えるような数字が出て来るものと考えています。GDP成長率としては足元の4~6月期が最悪である可能性が高いとは考えますが、その後もV字回復は望めず低空飛行が続くものと覚悟すべきです。

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本日、内閣府から5月の景気ウォッチャーが、また、財務省から4月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+7.6ポイント上昇して15.5を、先行き判断DIに至っては+19.6ポイントも上昇して37.3を、それぞれ記録しています。先行き期待感が膨らんでいるように見受けられます。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2627億円の黒字を計上しています。昨年暮れや今年2020年1月には+2000億円の黒字を計上していた旅行収支は、4月統計では+225億円とほぼ「蒸発」しています。いつものグラフだけ上に示しておきます。

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2020年6月 7日 (日)

先週の読書は結局2冊!!!

昨日に一昨夜公表の米国雇用統計が割り込んで、毎週土曜日恒例の今週の読書が「先週の読書」になってしまいました。しかもわずかに2冊なんですが、これくらいのペースが続くような気がします。東京都区部の文教ご予算と京都府南部との差なのか、転職直後の私が時間が取れないのか、何なのか、繰り返しになりますが、来週も3冊以内くらいの気がしてなりません。

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まず、リチャード・ボールドウィン『GLOBOTICS』(日本経済新聞出版) です。著者は、米国出身のエコノミストであり、現在はジュネーブ高等国際問題・開発研究所の研究者です。英語の原題は The Grobotics Upheaval であり、2019年の出版です。日本語タイトルから Upheaval を抜いているんですが、まあ、著者としては本書が学術書ではないという意味で入れた語でしょうから、あってもなくても、どちらでもいいような気がします。ということで、見れば明らかな通り、GLOBALとROBOTICSを組み合わせたタイトルです。グローバル化とロボット化が同時に手を携えて世界を変える、という意味なんでしょうが、やや強引な立論だという気がしました。ただ、もちろん、グローバル化とロボット化が世界経済の大きな変革要因だという点については、当然といえます。本書では、特に、遠隔移民テレマイグレーションという新たな用語も交えて、商品が自由貿易に乗って世界を移動するという大変革になぞらえつつ、ただ、少し残念なのは、AI化というソフトの動向ではなく、ロボット化というハード面に着目したのは、少し違和感あります。また、私は大昔にインターネットの普及に関する書評を書いた折、もっぱら生活面での変革を強調していた書評の対象本に関して、生産過程における変革にどのように応用されているか、にもっと着目すべきという批判をした記憶があり、本書もgローバル化とかロボット化といった大変革が生産過程に何を及ぼすのか、本書でも少しだけ雇用について着目しているんですが、やや私の着眼点とは違うような気がしました。ケインズ的な週3日労働といった形で短時間労働経済はやって来るのか、それとも、相変わらずフルタイムで働く雇用者と完全失業者のグループに大きく分断されるんでしょうか。

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次に早くも最後で、京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター[編]『文明と国際経済の地平』(東洋経済) です。本書は、2019年6月に開催されたG20大阪サミットを受けて開催された京都大学経済研究所のシンポジウムの記録を取りまとめています。何人かのプレゼンやパネルディスカッションです。ですから、木に竹を接いだような内容になっていて、内容に一貫性はありませんが、それはそれでOKなのでしょう。それにしても、藤田先生は私がもっとも尊敬するエコノミストの1人なんですが、ややお年を召した、という印象を受けてしまいました。誠にもって失礼千万で申し訳ありませんが、お読みになれば、私の見方もご理解いただける方が少しくらいいそうな気がしないでもありません。

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2020年6月 6日 (土)

4月からのリバウンドを見た5月の米国雇用統計は底を打ったか?

日本時間の昨夜、米国労働省から5月の米国雇用統計が公表されています。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響から、非農業雇用者数は4月の▲20,687千人減の後、5月統計ではリバウンドして+2,509千人増を記録しています。同じく、失業率も先月からのリバウンドが見られ、13.3%に改善しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから統計を報じる記事を手短に3パラだけ引用すると以下の通りです。

Defying predictions of historic losses, economy gains 2.5M jobs and unemployment eases to 13.3% as businesses start to reopen amid COVID-19
The economy unexpectedly gained 2.5 million jobs in May after record losses the prior month as states began allowing businesses shuttered by the coronavirus to reopen and many Americans returned to work.
The unemployment rate fell to 13.3% from April's 14.7%, which was the highest since the Great Depression.
Economists surveyed by Bloomberg had reckoned that eight million jobs were lost last month following 20.7 million losses in April.

まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期だったんですが、米国経済が長らく景気回復・拡大を続けているために、このグラフの範囲外になってしまっているものの、現在の足元で米国経済が景気後退に入っていることは明らかです。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。

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4月に▲2000万人超の雇用減少を見て、失業者が一気に2300万人に増加した後の+250万人増ですし、失業率も14.7%から13.3%への低下にしか過ぎませんから、4月の大幅悪化から5月統計はリバウンドしたとはいえ、米国雇用がまだまだ改善からはほど遠いことが統計から見て取れます。もちろん、ADP Employment Reports では雇用が▲276万人減少していましたし、Bloombergのサイトによれば、市場の事前コンセンサスは "a decline of 7.5 million in payrolls and a jump in the unemployment rate to 19%" とさらなる雇用悪化が予想されていて、雇用が改善するとは "No one in Bloomberg's survey had projected improvement" だったようですから、雇用が増加して失業率が低下したのはやや驚きともいえます。経済活動の一部再開で一時的に layoff された人材の職場復帰が進んだということなのでしょう。雇用者全体で+250万人増、政府部門ではまだ▲585千人減ですから、民間部門で+3,094千人像を記録しており、いかにもCOVID-19の影響からのリバウンドというカンジで、Leisure and hospitality が+1,239千人増、Retail trade が+367.8千人増となっていますが、どちらも4月統計では▲200万人超の減少の後のリバウンドですから、まだまだ先は長いという気がします。

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2020年6月 5日 (金)

過去最大の下落幅を記録した4月の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から4月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲8.9ポイント下降して76.2を、CI一致指数も前月から▲7.3ポイント下降して81.5を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、9か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の景気動向指数、一致・先行とも過去最大の下落幅
内閣府が5日発表した4月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比7.3ポイント低下の81.5と3カ月連続で低下した。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言や外出自粛、企業活動の停滞などが響き、一致指数の下落幅は統計を開始した1985年1月以降で最大となった。指数の水準は09年10月(80.1)以来、10年6カ月ぶりの低さだった。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のすべてが指数を押し下げた。国内外の需要低迷や工場の稼働停止など生産調整がされたこともあり、「耐久消費財出荷指数」や「鉱工業用生産財出荷指数」、「生産指数(鉱工業)」などがマイナスに影響した。
一致指数の動きから機械的に求める景気動向指数の基調判断は、9カ月連続で「悪化」となった。基調判断が9カ月連続で「悪化」となるのは、08年6月からの11カ月連続以来の長さだ。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比8.9ポイント低下の76.2と、09年3月(74.2)以来、11年1カ月ぶりの低水準となった。先行指数の下げ幅も過去最大を更新した。「消費者態度指数」や「新規求人数(除学卒)」、「鉱工業用生産財在庫率指数」などが指数を押し下げ、先行きに対する見方は依然として厳しいことがうかがえる。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比2.7ポイント低下の98.1だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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3月統計の落ち方もかなりのものだったのですが、4月統計では、引用した記事にもあるように、過去最大の落ち方だそうです。あくまで私個人の直観ながら、現在の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響にによる経済の落ち込みは、おそらく、今年2020年4~5月が底ではないかと考えられますので、来月公表予定の5月統計までこういったカンジが続きそうな気がします。一応、個別系列を見て、CI一致指数の前月差に対するマイナス寄与が大きかったコンポーネントは、耐久消費財出荷指数▲1.42、鉱工業用生産財出荷指数▲1.29、生産指数(鉱工業)▲1.27、有効求人倍率(除学卒)▲1.00などとなっていますが、9系列すべてが前月差マイナスを記録しています。先行指数でも、現時点でデータが利用可能な9系列すべてが前月差マイナスとなっています。先行指数の中で、特にマイナス寄与が大きいのは、消費者態度指数▲1.51、新規求人数(除学卒)▲1.49、鉱工業用生産財在庫率指数▲1.44、最終需要財在庫率指数▲1.43などとなっています。

繰り返しになりますが、COVID-19の我が国経済への影響は4~5月が底ではないかと考えていますが、まだ6月が始まったばかりですし、何より、足元で底を打ったとしても、決してV字回復が期待できるわけではありません。3年から、ひょっとしたら5年くらいは低空飛行が続く可能性があります。

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2020年6月 4日 (木)

来週公表予定の1-3月期GDP統計速報2次QEは1次QEからやや上方改定か?

今週月曜日の1~3月期法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろって、6月8日に1~3月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定で、すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしていて、今回は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が、1~3月期を大きく上回って、おそらく最大となるであろう足元の4~6月期に注目が集まっています。特に、外出自粛の影響をもっとも強く受ける消費に着目しています。ただ、2次QEですので、法人企業統計のオマケの扱いのリポートもいっぱいあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.9%
(▲3.4%)
n.a.
日本総研▲0.5%
(▲2.1%)
1~3月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資がプラスに転じるほか、民間在庫、公共投資も上方修正となる一方、個人消費は下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲2.1%(前期比▲0.5%)と、1次QE(前期比年率▲3.4%、前期比▲0.9%)から上方修正される見込み。
大和総研▲0.6%
(▲2.4%)
1-3月期GDP二次速報(6月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲2.4%と、一次速報(同▲3.4%)から上方修正されると予想する。
みずほ総研▲0.5%
(▲2.1%)
消費活動や生産活動に対する新型コロナウイルスの影響が本格化する4~6月期の実質GDPは、さらに大きく落ち込む見通しだ。
国内では4月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言が出され、外出自粛の要請に加え、娯楽施設などを対象に休業要請がなされた。4月16日に緊急事態宣言の対象は全国に拡大され、5月4日には緊急事態宣言が5月末まで延長された。その後、段階的に緊急事態宣言が解除され、5月25日に全国で解除がなされるに至ったものの、解除後も感染拡大第2波への懸念がある中では消費活動の急速な回復は見込みがたい。外食、娯楽、宿泊・旅行向け支出が大幅に減少している(JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」によれば、4月後半は1月後半比で70~90%減)ほか、自動車販売も4月以降は落ち込んでいる。4~6月期の個人消費が1~3月期を超える大幅なマイナスとなることは避けられないだろう。
ニッセイ基礎研▲0.5%
(▲2.0%)
6/8公表予定の20年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.5%(前期比年率▲2.0%)になり、1次速報の前期比▲0.9%(前期比年率▲3.4%)から上方修正されると予測する。
第一生命経済研▲0.5%
(▲2.1%)
上方修正が予想されるとはいえ、19年10-12月期の大幅マイナス成長(前期比年率▲7.3%)の後であるにもかかわらず2四半期連続でのマイナス成長という姿は変わらない。景気が極めて厳しい状況に置かれているという認識を変える必要はない。また、現在公表されている4月分の経済指標は、緊急事態宣言発令の影響もあって軒並み急激な悪化となっている。4-6月期の景気が記録的な落ち込みになるとの見方も変える必要はないだろう。
伊藤忠総研▲0.5%
(▲1.8%)
設備投資は前期比プラスに上方修正されるものの、前の期(10~12月期)に大幅に減少した反動の範囲であり、先行指標の弱さや4月以降の景気の落ち込み加速を踏まえると再び減少に転じる可能性が高いため、設備投資が調整局面に入っているという見方を変える必要はないだろう。
そして、1~3月期はコロナ感染拡大の影響を受けた輸出や個人消費の落ち込みによりGDP成長率が2四半期連続のマイナスとなり、続く4~6月期には一段と大幅なマイナス成長が見込まれることにも変わりはない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.6%
(▲2.5%)
6月8日に内閣府から公表される2020年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.6%(年率換算-2.5%)と1次速報値の同-0.9%(同-3.4%)から上方修正される見込みである。もっとも、修正幅はそれ程大きくはなく、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、個人消費を中心に景気は年度末にかけて急速に悪化したとの判断が修正されることはない。
三菱総研▲0.6%
(▲2.4%)
2020年1-3月期のGDPの減少幅は縮小する見込みだが、2015年10-12月期以来の2期連続のマイナス成長であるほか、2020年4-6月期は前期比年率で20%を超える落ち込みが予想され、日本経済が厳しい状況であることに変わりない。

ということで、先月の1次QEから2次QEは、軒並み上方改定ということで各シンクタンクのエコノミストの結論は一致しているようです。当然ながら、今週月曜日の6月1日に公表された法人企業統計に合わせて設備投資が上方修正されるから、というのがもっとも大きな要因です。しかし、私も月曜日の公表当日は法人企業統計で設備投資がプラスなのは「謎???」としていたんですが、よくよくよく読めば、集計漏れの調査票があるらしい、ということを理解しつつあります。その昔の毎月勤労統計が典型なんですが、成績のいい企業は胸を張って早めに調査票を出す一方で、成績の悪い企業は後からソッと出す、という傾向らしきものが透けて見えますので、今回の法人企業統計でも同じことが生じる可能性が高いと私は考えています。すなわち、財務省の公表資料によれば、「5月10日の回答期限に基づいて回収された調査票の推計結果を『速報』として公表しております。なお、『確報』については、調査票の回答期限を2ヵ月程度延長したうえで、概ね2ヵ月後に調査結果を公表する予定です。」ということのようで、「確報」では「速報」から下方修正される可能性が極めて高いものと私は予想しています。ですから、この2次QEの上方改定は信頼性低い、と私は受け止めています。通常は、1次QEから2次QEへの改定は新たに公表される統計情報に基づいて行われており、今回の場合、1~3月期に関しては明らかに時を経るに従って新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が拡大していると考えるべきですから、新たな情報を取り込めば取り込むほど下方改定されるハズです。そうなっていないのですから、というか、逆に動いているわけですので、この2次QEは、当然、2次QE予想も信頼性低い、と考えざるを得ません。
一応、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。信頼性低いながら、ご参考まで。

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2020年6月 3日 (水)

帝国データバンクによる「速報 新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査 (2020年5月)」やいかに?

毎月、<速報>付きとそうでない2つのバージョンの「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」が帝国データバンクから明らかにされていますが、5月の<速報>バージョンが一昨日の6月1日に出ています。同時にアップされているpdfの全文リポートからグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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見れば判るんでしょうが、上のグラフはリポートから 業績に『マイナスの影響がある』割合 を引用しています。これも見れば判りますが、月次推移でプロットしてあります。「既にマイナスの影響がある」が62.8%と6割を越えましたが、他方で、「今後マイナスの影響がある」は23.3%と減少に転じており、この2つの回答の合計を『マイナスの影響がある』として定義し直すと、86.1%と極めて高率ながら5月は4月から少し低下を示しています。すでにピークアウトしたかどうかは、現時点で判断するのはやや早計な気もしますが、この4~5月あたりがピークの可能性は高いと感じているのは私だけではないような気がします。「マイナスの影響」の水準にもよりますが、この先、かなり長期に渡ってこのマイナスの影響は残ると感じているエコノミストも私だけではないような気がします。

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2020年6月 2日 (火)

楽天インサイトによる「在宅勤務に関する調査」結果やいかに?

先週金曜日の5月29日に楽天インサイトから「在宅勤務に関する調査」の結果が明らかにされています。楽天インサイトでは、これまでも、4月末や5月半ばに同様の調査結果を明らかにしていますが、新たな調査結果とともに継続的に実施している調査の結果などを少し時系列的に取りまとめたような印象です。特に、職種別や県別のデータが時間的に整理されています。いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、ここ1か月くらいの新型コロナウイルス感染症拡大の影響により在宅勤務をしているか、を聞いた結果です。楽天インサイトのサイトから引用しています。在宅勤務の割合は4月10日25.7%、4月17日29.7%、4月24日39.6%、5月1日38.9%、5月8日35.8%、5月15日38.4%、5月22日32.9%と、4月は下旬に向け増加をたどりましたが、5月に入り、引き続き、30%をかなり超えているものの減少の傾向が見られ、もっとも高い4月24日の39.6%からほぼ1か月を経た5月22日32.9%への推移でみると▲6.7%ポイント低下しているのが判ります。少しずつ、緊急事態宣言解除に向けた動きが水面下で進んでいた可能性があります。

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上のグラフは、ここ1か月くらいの新型コロナウイルス感染症拡大の影響により在宅勤務をしているか、を聞いた職業別の結果です。楽天インサイトのサイトから引用しています。真ん中やや上に「教育系」があり、まさに私の所属するカテゴリーなんですが、他と比べて「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、在宅勤務をしていた (現在はしていない)」が20%超と飛び抜けて高くなっています。カッコ内の(現在はしていない)ということは、緊急事態宣言が解除された地域で学校が再開された影響だと思うんですが、早く対面授業が再開されることを私個人としても期待しています。強く期待しています。

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上のグラフは、ここ1か月くらいの新型コロナウイルス感染症拡大の影響により在宅勤務をしているか、を聞いた都道府県別の結果です。楽天インサイトのサイトから引用しています。もっとも早くに緊急事態宣言が出された4月7日の7都府県から始まって、基本的に、感染者の多い都道府県で在宅勤務が進んでいるような印象を受ける地図です。首都圏の一都三県はかなり高い比率を示していて、近畿地方も多くの府県で30%を超えているようです。私もそうです。

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2020年6月 1日 (月)

法人企業統計調査で設備投資増加の謎???

本日、財務省から1~3月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高はほぼ3年ぶりの減収で前年同期比▲6.4%減の347兆8257億円、経常利益は2四半期連続の減益で▲4.6%減の18兆5759億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで▲3.5%減の11兆6303億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比▲4.2%減となっています。なお、設備投資についてはソフトウェアを含むベースです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期の設備投資、4.3%増 法人企業統計、売上高や経常利益は減少
財務省が1日発表した1~3月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比4.3%増の16兆3525億円で、2四半期ぶりに増加した。発電所への投資があった電気業が39.2%増、駅周辺の再開発投資をした運輸・郵便業が12.3%増となるなど、非製造業全体が6.2%増と2四半期ぶりに増加したことが寄与した。
製造業も0.6%増と2四半期ぶりに増加した。医療機器向けの業務用機械が大幅に伸びた。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、前年同期比で3.5%増、季節調整した前期比は7.2%増だった。
全産業の売上高は3.5%減の359兆5572億円と、3四半期連続の減収だった。新型コロナウイルスの感染拡大で宿泊業などサービス業が17.5%減、資源価格の下落で卸売・小売業が9.4%減となり、非製造業全体で5.9%減となったことが影響した。製造業は電気機械などが好調で2.9%増だった。
全産業ベースの経常利益は32.0%減の15兆1360億円と、4四半期連続の減益となった。減少率は2009年7~9月期(32.4%減)以来の大きさだった。新型コロナの影響でサービス業など非製造業が32.9%減、自動車や鉄道車両といった輸送用機械など製造業が29.5%減となった。
財務省は今回の法人企業統計の総括判断について「今期の経常利益は新型コロナの影響により厳しい経済全体の傾向を反映している」とした。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や投資動向を集計した。今回の結果は内閣府が8日発表する1~3月期GDP改定値に反映される。今回は新型コロナの影響で企業事務が遅れ、調査票の回収率が低下しているため、7月末をめどに同調査の確報値を公表する。同様の措置は11年3月の東日本大震災発生後以来2度目。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月ないし10~12月期を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整済みの系列で見て今年1~3月期には、経常利益が大きく落ちた一方で、売上高と設備投資が増加を示しています。極めて予想外と私は受け止めています。売上については、特に製造業で増加しており、これは季節調整していない原系列の統計で見ても同じです。原系列の統計で見て、製造業の中で増収の寄与が大きいのは電気機械と輸送用機械となっています。他方、経常収益は季節調整済の系列で見て前期比2ケタ減、季節調整していない原系列なら前年同期比で▲30%を超える減少となっています。産業別でーたは季節調整していない原系列しかないながら、製造業でいえば、輸送用機械や化学、非製造業ならサービス業や卸売業・小売業など幅広い業種でマイナスとなっていて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が見られると私は受け止めています。それにしても、売上や設備投資が1~3月期に上向いたのは不思議です。特に、設備投資増は謎で、逆に、この反動もあって、4~6月期には売上も経常利益も設備投資もそろって大きく減少に転ずるのは確実です。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、一番上のパネルで労働分配率が上昇しているのは景気後退期に入ったひとつのシグナルです。雇用保蔵が始まっているのでしょうが、リーマン・ブラザーズ破綻後のような「派遣切り」などを招かないような対策が必要なことはいうまでもありません。繰り返しになりますが、真ん中の設備投資比率の上昇は謎です。一番下の利益剰余金はややペースが鈍化しているように見えますが、1~3月期までは、COVID-19の影響をものともせずに右肩上がりを続けています。

本日の法人企業統計を受けて、来週月曜日の6月8日に1~3月期GDP統計2次QEが公表される予定となっています。基本的に、設備投資を中心に上方改定されるものと私は考えていますが、いずれにせよ、日を改めて2次QE予想として取り上げたいと思います。

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