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2020年6月16日 (火)

ニッセイ基礎研リポート「健康に力を入れている企業の従業員は健康か?」

先週金曜日6月12日にニッセイ基礎研から「健康に力を入れている企業の従業員は健康か?」と題するリポートが明らかにされています。今年2020年3月にニッセイ基礎研が実施したアンケート調査の個票を用いた分析結果なんですが、リポートには「コロナ」の単語も現れません。ややリポートのピントがボケているような気がしないでもありませんが、「健康」という単語が何を意味するか、3月調査時点でどのように受け止められていたのかも少し気にかかりつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のテーブルは、ニッセイ基礎研のリポートから p.4 図表2 推計結果 (健康増進に熱心かに関する標準化係数) を引用しています。標準化計数が空欄のままにされているのは、要するに、統計的な有意性が出なかったということなんだろうと解釈して、テーブルの疾病の有無の上の2列、すなわち、脳卒中、心臓病、慢性の腎不全(人工透析治療)の既往歴、さらに、同一の病気やケガによる14日以上の通院歴、といった私にはいかにも重篤に見える従業員の健康については企業が健康に力を入れているかどうかで差はなかった、という結論のようです。ただし、疾病の有無の中でも、心理的ストレスがある(K6が5以上)とは負の相関が認められ、健康に力を入れている企業の従業員は心理的なストレスは少ないようです。次の自覚症状と生産性の列については、自覚症状の個数と自覚症状があった日数については、健康に力を入れている企業では少ないとの結果がある一方で、かといって、それが自覚症状がある場合の生産性との有意な相関はないようです。従業員にとっては自覚症状が少なくていいんでしょうが、企業としては生産性の上昇にはつながっていない、という結果です。私は従業員の立場から、健康に力を入れている企業で従業員の何らかの自覚症状が少ないとか、短いというのは大いにいいことだという気がしていますが、もっと企業サイドのコスト・コンシャスな面からは、企業の生産性に結びついていないのであれば「ムダ玉」という見方をしそうな右派エコノミストもいそうな気がします。さらに、企業が従業員の健康に力を入れていれば、従業員の方でも、ヘルスリテラシーや主観的な健康感が高かったりするのは当然のように見えます。ただし、因果関係は逆かもしれない点には注意が必要です。すなわち、個々の従業員のヘルスリテラシーが高いので、従業員の集合体としての企業が健康に力を入れている、というような気もします。
最後に、従業員の健康行動については、いっそう判りにくくなっています。企業が従業員の健康に力を入れていれると、喫煙や食生活の乱れが少ないというのは、特に、喫煙については今日びのご時世ですから、これはよく判ります。でも、健康診断を受けなくなるというのはモラルハザードを生じるんでしょうか。加えて、運動習慣がモノにならず、過度な飲酒も矯正されない、というも同様にモラルハザードで、勤め先が健康に力を入れていれば、多少の不健康な行為をしても何らかの救済措置が期待できる、ということなんでしょうか。ただ、リポートではモラルハザードの指摘ではなく、「過度な飲酒や運動習慣は、職場における取り組み以上に、個人の価値観やライフスタイルの影響が大きいのかもしれない。」と個人責任で結論しています。個人の責任で結果が出るんなら、こんな調査は意味ないと思うエコノミストは私だけでしょうか?

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