2020年7月31日 (金)
基調判断が上方修正された鉱工業生産指数(IIP)と総じて悪化を示す雇用統計!!!
本日は月末最終の閣議日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも6月の統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から+2.7%の増産を示した一方で、失業率は前月からわずかに0.1%ポイント改善して2.8%、有効求人倍率は前月から▲0.09ポイント悪化して1.11倍と、雇用はかつての勢いはありません。いずれも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものと考えるべきです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
6月の鉱工業生産2.7%上昇 5年5カ月ぶり大きさ、自動車けん引
経済産業省が31日発表した6月の鉱工業生産指数速報値(2015年=100、季節調整済み)は前月比2.7%上昇の80.8だった。上昇は5カ月ぶりで、上昇率は2015年1月以来5年5カ月ぶりの大きさ。新型コロナウイルス感染症の影響で5月まで大幅な生産調整をしていた企業が、国内外の経済活動の再開に伴い生産を戻し始めた。
経産省は生産の基調判断を「急速に低下している」から「下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。同様の表現を使ったのは2013年2月以来、7年4カ月ぶり。
生産を業種別に見ると、15業種10業種で上昇した。自動車工業は前月比28.9%増加した。普通乗用車は引き続き生産調整中だが生産水準が上がった。ショベル系掘削機械などの生産用機械工業も10.2%増加した。一方、ポリプロビレンなどの無機・有機化学工業が3.9%減、パルプ・紙・紙加工品工業などは5.7%減った。
出荷指数は5.2%上昇の80.8と、4カ月ぶりに上昇した。上昇率は比較可能な13年1月以降で最大となった。国内外の経済活動の再開や需要増が起因した。
在庫指数は前月比2.4%低下の100.8と3カ月連続で低下した。自動車工業や、液晶パネルなどの電子部品・デバイス工業などで低下が目立った。出荷が伸びたほか、企業が在庫調整も進めた。在庫率は同7.0%低下の138.2と、4カ月ぶりに低下した。
同時に発表した製造工業生産予測調査では、7月が前月比11.3%上昇、8月は同3.4%上昇となった。ただ、企業の予測値には上方バイアスがかかりやすいことや例年の傾向を踏まえ経産省がはじいた7月の補正値は3.1%の上昇となった。経産省は「調査は7月10日が締め切りのため、最近の新型コロナ感染者の増加は織り込まれていない」と説明し、先行きについて「8月以降の生産活動を注視していきたい」と話した。
6月の完全失業率2.8% 求人倍率は1.11倍に低下
総務省が31日発表した6月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント低下の2.8%だった。改善は7カ月ぶり。2月に2.4%だった失業率は4月に2.6%、5月に2.9%と悪化していた。厚生労働省が同日発表した6月の有効求人倍率は1.11倍で5年8カ月ぶりの低い水準となった。雇用環境は総じて悪化している。
完全失業者数(同)は194万人で、3万人減少した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は8万人増、「自発的な離職」は横ばいだった。就業者数(同)は6637万人で8万人増加した。
休業者は236万人で、5月の423万人から減少した。
業種別にみると、建設業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業などで就業者が減った。工事を一時中断や外出自粛の広がりで消費が増えず、非正規社員を中心に雇用を減らす動きが出ている。
厚生労働省が31日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.11倍で前月から0.09ポイント低下した。2014年10月以来、5年8カ月ぶりの水準に落ち込んだ。有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。
6月は有効求人が前月から1.9%減り、有効求職者は5.4%増えた。政府による緊急事態宣言が5月下旬に全国で解除されたことを受けて、職探しを再開する動きが活発になった。前月と比べた新規求職者の伸び率は18.2%と過去最大となり、求人倍率を押し下げた。
いくつかの統計を取り上げていますのでとても長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+1%ほどの上昇との見込みながら、レンジでは▲0.5%~+2.9%でしたので、上限に近い増産を記録したことになります。業種別に詳しく見ると、生産が上昇したのは自動車工業、生産用機械工業、プラスチック製品工業、輸送機械工業(除.自動車工業)、電気・情報通信機械工業、といったところですので、まさに、我が国のリーディング・インダストリーが多く含まれているといえます。逆に、低下したのは無機・有機化学工業、パルプ・紙・紙加工品工業、となっています。製造工業生産予測指数によれば、先行きの生産は足元の7月+11.3%増、8月+3.4%増となっており、上方バイアスを考慮した補正値試算でも+3.1±1.0%増ですから、ある程度の回復は見込めるようです。ただし、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響ので始めた3月の▲3.7%減から、4月▲9.8%減、5月▲8.9%減と累計で▲20%ほどの減産の後、6~7月ともに+3%ほどの増産ですので、足元から目先の先行きで回復が見込まれ、引用した記事にもあるように、経済産業省が基調判断を上方修正したとはいえ、V字回復とはほど遠く回復ペースはかなり緩やかと考えるべきです。

次に、生産指数の4~6月期の四半期データが利用可能になりましたので、景気の現状をごく大雑把に見ておくために在庫循環図を書いてみました。上の通りです。ピンクの矢印の2013年1~3月期から始まって、黄緑色の矢印で示された直近の2020年4~6月期まで、大雑把に、第15循環における2012年の短い景気後退期の後からプロットしていますので、グルッと1周して、ここ1年間、すなわち、4四半期の間、出荷・在庫とも前年比マイナスで第3象限にあります。実は、4~6月期は出荷▲20.5%減、在庫▲3.4%減ですので、出荷の縦軸のメモリの下限▲20%を下回っているのですが、あまりにも見にくい恐れがあって、スコープ外のプロットを許容しています。いずれにせよ、まさに、景気後退まっただ中ながら、景気転換点も近い、という結果なんですが、COVID-19の影響は右下方向へのシフト、すなわち、出荷のさらなる減少と在庫のさらなる積み上がり、という形で現れる可能性があるものと、私は想像しています。四半期データに基づく分析ですので速報性には欠けますが、景気循環の現状を知るために、それなりに注目しています。

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期です。いずれも記事にある通りですが、失業率に関して日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは先月の2.9%から6月は3.1%に上昇するという見込みだったところ、実績はコンセンサスどころか、先月実績も上回る2.8%だった一方で、有効求人倍率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは先月の1.20倍から6月には1.14倍に低下する予想が示されていたものの、実績はコンセンサスを下回る1.11倍でした。正社員向けの有効求人倍率についても長らく1倍を上回っていましたが、先々月の4月統計から1倍を下回るようになり、本日発表の6月統計でもさらに下げています。基本的には、雇用はまだ悪化を続けている、と考えるべきです。人口動態との綱引きながら、景気と人手不足との関係で、私が懸念したように、一気に雇用が悪化するという局面ではないものの、厚生労働省のサイト「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」を見る限り、現時点で利用可能な最新の7月22日現在集計分によれば、解雇等見込み労働者数が4万人に迫っており、その中で非正規雇用労働者数が15千人を超えていますから、決して、楽観できる状態にはありません。ただし、上のグラフを見れば、先行指標の新規求人については反転の兆しがあるように見えなくもありません。
最後に、昨日7月30日に内閣府景気動向指数研究会が開催され、2018年10月を第16循環の山として暫定的に認定しました。景気拡大局面は71か月で終了したことになります。内閣府から公表されている参考資料は以下の通りです。なお、機会があれば改めて取り上げたいと思いますが、景気転換点の認定ないし同定については、それなりに時間がかかるものです。ですから、今回の景気転換点の認定を巡って政府の公式見解が誤りであった、とする見方は、私は正しくないものと考えていますので、一言だけ付け加えます。
2020年7月30日 (木)
商業販売統計の小売業販売の急回復はホンモノか、それとも一時的か?
本日、経済産業省から6月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲1.2%減の12兆2950億円だった一方で、季節調整済み指数では前月から+13.1%増を記録しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が徐々に軽減されてきている可能性があります。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
6月の小売販売額1.2%減 基調判断「持ち直し」に上方修正
経済産業省が30日発表した6月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比1.2%減の12兆2950億円となった。自動車の販売不振や石油製品の価格下落などが響き、4カ月連続で減少となった。
業種別で見ると、9業種のうち4業種がマイナスだった。普通自動車などの販売が不振だった自動車は17.2%減、価格下落の影響で燃料小売業は14.6%の減少だった。一方、エアコンや洗濯機、冷蔵庫、パソコンなどの販売が好調で機械器具小売業は15.9%増と4カ月ぶりに増加した。野菜の相場高や内食需要の高まりなどを背景に飲食料品は3.0%増加した。
業態別にみると、大型小売店の販売額では、百貨店とスーパーの合計が2.4%減の1兆6776億円だった。百貨店は新型コロナの影響による催事の縮小、インバウンド需要の減少などが響き、18.4%減の4260億円だった。スーパーは内食需要の高まりで主力の飲食料品が好調だったことが寄与し、4.7%増の1兆2516億円だった。
コンビニエンスストアの販売額は5.1%減の9596億円だった。客単価の増加はみられるものの、オフィス街や繁華街を中心に客数が減ったことが響いた。
政府の緊急事態宣言が5月25日に全面解除され、外出自粛や店舗の休業による影響は和らぎつつある。1人10万円の特別定額給付金の支給もあり、小売業販売額の減少幅は4月(13.9%減)や5月(12.5%減)よりは縮小した。経産省は小売業の基調判断を前月の「下げ止まりがみられる」から「持ち直している」に上方修正した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期であり、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。もう少しすれば、今年2020年5月が底だった、という暫定的な同定をするかもしれません。

引用した記事の最後にあるように、統計作成官庁の経済産業省では、小売業販売の基調判断を前月の「下げ止まり」から「持ち直し」に上方修正しています。繰り返しになりますが、GDP統計の消費の代理変数となる小売業販売を見ると、季節調整していない原系列の前年同月比は、3月▲4.7%減、4月▲13.9%減、5月▲12.5%減の後、直近で利用可能な6月統計でも▲1.2%であり、確かにマイナス幅縮小していますし、同じ小売業販売の季節調整済み指数の系列の前月比を見ても、4月▲9.9%減から、5月は+2.1%増と小幅なリバウンドを見せ、さらに、6月も+13.1%増を示していますから、この結果を見る限り、基調判断の上方修正はOKなような気がします。もちろん、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的な影響が現れていることは明白で、現状では新たな消費の増大というよりは、外出自粛が解除された効果に過ぎませんが、まだマイナスながら前年同月比でかなりゼロ近いところまで回復しているのは評価すべきという気もします。ただし、グラフなどは取り上げませんが、業態別に売上の前年同月比で見て、百貨店の▲18.4%減はまだ大きく、スーパーの+4.7%増は衣料品が▲4.6%減となった一方で、主力商品である飲食料品が+5.9%増となった結果です。コンビニは在宅勤務が続く中で、オフィス街のある店舗の売上ダウンがあって▲5.1%減を示しています。家電大型専門店販売額は+25.6%増ですから、家電量販店の生活家電、AV家電、情報家電ともに2ケタ増となっています。COVID-19の後の消費のニュー・ノーマルかもしれませんが、家電の大幅増は別としても、エンゲル係数の例にもあるように、日本のような先進国経済の消費が食品販売によって牽引されるとも思えません。
いずれにせよ、日本に限らず、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)で大きなダメージを受けた世界経済の底は4~6月期である可能性が高いとはいえ、第2波や第3波の可能性も排除できませんし、ひょっとしたら、現状がすでにそうなっている可能性すらあります。何よりも、回復ペースは決してV字ではなく、かなりなスローペースを覚悟する必要がある、というのは多くのエコノミストの緩やかなコンセンサスではないかと私は受け止めています。6月の商業販売統計のうちの小売業販売、特に、季節調整済み系列の前月比2ケタ増は、こういったコンテクストで捉える必要があります。
2020年7月29日 (水)
リクルートジョブズによる6月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?
明後日7月31日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる6月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

アルバイト・パートの時給の方は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、ジワジワと停滞感を増していますが、他方、派遣スタッフの方は5月のデータが跳ねています。上のグラフの通りです。現時点で判断するのはややムリで、何があったのかは私には判りかねます。
まず、アルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率はまだ+3%近い伸びながら、人手不足がメディアで盛んに報じられていた半年くらい前の+3%を超える伸び率から比べるとジワジワと低下してきています。三大都市圏の6月度平均時給は前年同月より+2.8%、+29円増加の1,083円を記録しています。職種別では「専門職系」(+31円、+2.7%)、「事務系」(+30円、+2.7%)、「製造・物流・清掃系」(+24円、+2.3%)、「営業系」(+22円、+1.7%)、「販売・サービス系」(+6円、+0.6%)、「フード系」(+5円、+0.5%) と、すべての職種で前年同月から伸びています。地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2019年7月統計から先月2020年4月統計まで10か月連続でマイナスを続けた後、5月度平均時給は前年同月より+3.6%ぞうを記録した後、6月も+3.8%、63円増加の1,704円に引き続き増加しています。職種別では、「営業・販売・サービス系」(+79円、+5.6%)、「医療介護・教育系」(+46円、+3.2%)、「IT・技術系」(+23円、+1.1%)、「クリエイティブ系」(+4円、+0.2%)の4職種が前年同月比プラスとなり、マイナスは「オフィスワーク系」(▲32円、▲2.1%)だけにとどまっています。また、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアでプラスを記録しています。1年近く前年同月比マイナスを続けてきた派遣スタッフの時給が先月からジャンプしたのですが、アルバイト・パートの時給上昇率はジワジワと停滞し始めていますし、2008~09年のリーマン・ショック後の雇用動向を見た経験からも、COVID-19の経済的な影響は底を打ったように見えるものの、雇用については典型的には失業率などで遅行するケースが少なくないことから、先行き、非正規雇用の労働市場は悪化が進む可能性がまだ残されていると覚悟すべきです。同時に、意外と底堅いという印象もあります。
2020年7月28日 (火)
上昇率が拡大した6月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)やいかに?
本日、日銀から6月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+0.8%でした。2月統計の+2.1%まで+2%台をキープした後、3月統計の+1.5%や4月統計の+0.9%から5月統計は+0.5%まで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で一気に上昇率が縮小しましたが、6月統計では+0.8%の上昇とやや上昇幅を拡大しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じように縮小していましたが、前年同月比上昇率としては5月統計を底に、6月統計ではわずかながら上昇幅が拡大して+0.9%を記録しています。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、ロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、6月税除き前年比-1.0% 経済再開で低下幅縮小
日銀が28日に発表した6月の企業向けサービス価格指数(消費増税除くベース)は前年比1.0%低下した。5月確報は同1.3%低下。緊急事態宣言の解除により、経済活動が再開されたことで需要が戻り、マイナス幅は縮小した。
6月総平均(消費税除くベース)の主な内訳をみると、広告が前年比11.9%低下(5月は14.4%低下)した。4-5月は緊急事態宣言による経済活動の停滞で広告出稿が減少していたが、6月は経済活動の再開を受けて、5月は11.1%低下していた新聞広告が同2.2%の上昇に転じた。インターネット広告は同9.7%低下(5月は13.6%低下)だった。
店舗賃貸などを含む「その他の不動産」は同6.7%低下で、5月の同9.1%低下からマイナス幅は縮小した。
情報通信は同0.2%低下で、ポータルサイト・サーバ運営費を含む「インターネット付随サービス」が同4.0%低下(5月は同4.7%)だった。前月までは飲食店を紹介するウェブサイトの掲載単価が大きく下落していたが、緊急事態宣言の解除によって需要が戻った。
いつもは日経新聞から引用することが多いんですが、日経新聞のサイトの記事が会員限定で、加えて、極めて素っ気ないものですから、ロイターのサイトから引用してみました。包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。財の企業物価指数(PPI)の国内物価よりも企業向けサービス物価指数(SPPI)の方が下がり方の勾配が小さいと見るのは私だけではないような気がします。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。もう少しすれば、今年2020年5月が底だった、という暫定的な同定をするかもしれません。

繰り返しになりますが、消費税を含んだベースの企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、昨年2019年10月の消費税率引上げに伴って+2%に達した後、今年2020年に入って2月+2.1%まで+2%台を続けた後、3月+1.5%、4月+0.9%、5月+0.5%とCOVID-19の影響により一気に上昇幅を縮小した後、直近で利用可能な6月統計では+0.9%を記録しています。ただし、3月統計では消費税の影響を除くベースの前年同月比上昇率が▲0.3%とマイナスに転じた後、6月統計の▲1.0%までマイナスが続いています。いうまでもなく、SPPIの上昇率縮小は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による影響と考えるべきです。サービス価格について、SPPIはもちろん、CPIのコンポーネントでも、人手不足に起因して堅調と考えられていましたが、雇用がかなり怪しくなり始めた印象もありますし、宿泊サービスのように需要が「蒸発」すれば、需給ギャップに従って価格が弱含むのは当然です。もちろん、宿泊サービスだけでなくCOVID-19の影響により、さまざまな分野のサービスへの需要が低迷しており、本日公表の6月統計のSPPIのコンポーネントである大類別について、消費税の影響を除くベースの前年同月比▲1.0%に対する寄与度を見ると、景気に敏感な広告が▲0.59%、さらに、不動産が▲0.20%、情報通信が▲0.06%、リース・レンタルが▲0.05%、諸サービスが▲0.04%、などとなっています。なお、最後の諸サービスに宿泊サービスが含まれています。政府がムリヤリに始めた東京都を除くGoToキャンペーンで、宿泊サービスの価格水準は少しくらい戻ったりするんでしょうか?
本日公表された企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率もそうですし、いろんな指標を見ても、2020年5月が景気の谷であったのではないかというエビデンスが積み上がりつつあります。景気動向指数を待ちたい気もしますが、景気動向指数と連動性が極めて高い明後日公表の鉱工業生産指数(IIP)もひとつの判断材料にして、暫定的な景気の谷を同定するかもしれません。
2020年7月27日 (月)
第一生命経済研リポート「GoToキャンペーンと消費減税」やいかに?
連休に入る前の木曜日7月22日に第一生命経済研から「GoToキャンペーンと消費減税」と題するリポートが明らかにされています。タイトルから明らかな通り、私も前々から疑問に感じていたGoToキャンペーンよりも、その財源を使って消費税率を一時的に下げた方がいいんではないか、という議論を展開しています。リポートの主張すべてに賛同するわけではありませんが、いくつかの点で私もまったくそのとおりだと思う部分も少なくないことから、図表とともに簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上のグラフはリポートから GoToトラベルの追加需要創出効果 の試算結果のグラフを引用しています。詳しく書くと、GoToキャンペーンに伴う観光需要創出効果として、以前、GoToトラベルの効果だけで+0.7~+1.4兆円の中央値となる+1.0兆円程度の効果を試算していたらしいのですが、東京除外による▲0.1兆円の効果ダウンはまだしも、東京都民を中心とした旅行マインドが低下するためさらに▲0.3兆円の需要創出が失われ、結果的に、合わせて▲0.4兆円の下振れが生じて、+0.6兆円程度の効果しか見込めなくなる可能性があると、東京除外によりGoToトラベルの需要創出効果がほぼ半減する可能性を指摘しています。
次に、上のグラフはリポートから 現在の1年目乗数 のグラフを引用しています。詳しく書くと、内閣府の「短期日本経済マクロ計量モデル (2018年版) の構造と乗数分析」から、個人所得税、法人所得税、消費税の乗数を算出しています。個人所得税、法人所得税については内閣府のペーパーから直接引用できるのですが、消費税についてはリポートで独自の計算をしており、単純にいえば、消費増税ケースのシミュレーション結果が「消費税率を1%ポイント引き上げた」ケースで示されており、個人所得税や法人所得税の名目GDP1%減税と平仄を合わせようと試みているようです。結果として、リポートでは、全品目に対して軽減税率を適用すれば、直接的な実質GDP押上げ効果は+2.7兆円(GDP比+0.5%)となるとした上で、これを英独などにならって半年限定で実施すれば、「財源はGoToキャンペーンの1.7兆円に7000億円を上乗せした2.4兆円程度で済み、実質GDP押上効果も1.3兆円程度が期待できる」と指摘しています。
リポートでは、期限付きの消費税率引下げの実例を独英から取っているんですが、消費税+減税でgoogle検索をかけると、日本共産党の機関紙「赤旗」7月24日付けで、その独英も含めてもっとも詳細な「各国の主な付加価値税減税措置」が取りまとめられていました。上の画像の通り、引用しています。記事のタイトルは「消費税 19カ国が減税 コロナ禍経済対策」なんですが、やっぱり大国に注目して、サブタイトルで「英国 飲食などを半年間20%→5% 独 首相『将来世代の活動を保証』」と英独をに着目しています。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の抑え込みと経済活性化の間には、経済学でいうところのトレードオフがあります。ですから、政府は経済活性化のバイアスを持つのに対して、野党や政府と一定の緊張関係にあるメディアなどはCOVID-19抑え込みを志向する可能性が大いにあります。経済活性化の一環であるGoToキャンペーンを中止して、その財源をすべて医療やCOVID-19抑え込みに振り向けるというのは、どうも党派的な対立を激化させかねないと私は危惧しています。しかし、GoToキャンペーンの財源に少しプラスして消費税率を一時的に軽減するのであれば、何ら根拠ありませんが、コンセンサスが出来そうな気もします。しかも、私が知る限り、財務官僚は極めて優秀です。私のようなボンクラ元官庁エコノミストと違って、10月実施の税制改正案なんて、然るべきスジでリーダーシップを発揮すれば、数日で出来上がりそうな気もします。
2020年7月26日 (日)
終盤8回に打者一巡の猛攻で一気に逆転し中日にカード勝ち越し!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 5 | 2 | 9 | 12 | 2 | |
中 日 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 10 | 2 |
中盤までは配色濃厚ながら、8回の打者一巡の猛攻で中日に一気に逆転勝ちでした。素直に流れに乗って、9回には4番大山選手にダメ押しツーランも出ました。逆転タイムリーの梅野捕手は好調を維持している一方で、不振にあえいでいた近本選手が4安打、ケガから復帰後冴えなかったボーア選手にもホームランが出て、打線は勢いを取り戻しつつあるように見えます。先発岩貞投手が早くに降板しましたが、最後のルーキー小川投手までリリーフ陣は走者を出しながらもゼロに抑え切りました。昨日勝っていれば3タテだったんですが、まあ、仕方ありません。
次のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!
2020年7月25日 (土)
好投の先発西投手を貧打で見殺しにして中日に惜敗!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | |
中 日 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | x | 1 | 8 | 0 |
貧打のゼロ行進で中日に完封負けでした。先発西投手が7回1失点の好投だったんですが、見殺しでした。でもまあ、こういう試合もあります。全試合を勝てるわけでもありません。岩崎投手が登録を抹消された中で、ガンケル投手が1イニングをピシャリと3人で抑えたのが収穫かもしれません。打線の中では、サンズ外野手が好調を維持しているように見受けられます。
明日は、
がんばれタイガース!
今週の読書は経済書や教養書とともに計5冊!!!
今週の読書は、いまさらながらの米国サブプライム・バブル崩壊をかなり幅広いリンケージの中で捉え直した『暴落』をはじめとして、欧州トップクラスの知識人であるアタリの食に関する教養書、新書や文庫本まで含めて計5冊です。
まず、アダム・トゥーズ『暴落』上下(みすず書房) です。著者は、英国出身で米国コロンビア大学の歴史研究者であり、エコノミストではありません。本書の英語の原題は Crashed であり、2018年の出版です。ということで、タイトルから想像される通り、2007-08年の米国のサブプライム・バブル崩壊をテーマとしています。2020年半ばの現時点から考えれば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が万円して大きな経済への下押し圧力が加わっているわけですから、10年余り前のリーマン・ショックかよ、という意見にも私は理解しないでもありませんが、最初に書いたように著者はエコノミストではなく、ジャーナリストでもなく、歴史研究者ですから、ヒストリアンがイベントを検証するには10年やそこらの時間が必要なのかもしれません。ただ、上下2巻で本文だけでも通しの700ページ余りが振られているように、しかも活字もかなり小さく、それなりのボリュームで、単に米国のサブプライム・バブル崩壊だけではなく、時間的、というか、歴史的なタイムスパンも長く、地理的なスコープも米国に限られず、かなり広く取っています。という意味で、私もそれほど幅広いものではありませんが、米国サブプライム・バブル崩壊に関しては、ジャーナリストやエコノミストの手になるものを何冊か読みましたし、エコノミストの観点からはそれなりに考えもしましたが、本書のようにこのイベントを世界的な広がりを持ったグローバル・ヒストリーの観点から、また、ギリシャに端を発した欧州債務危機などの経済的影響だけでなく、その後の2016年の米国大統領選挙や英国のBREXIT国民投票などまで、政治経済全体に渡ってのスコープを示している例は少なかったような気がします。もちろん、かなりのボリュームとはいえ、我が日本はほとんど登場しません。大西洋を挟んだ欧米中心史観であるものの、東欧やロシアまではカバーしています。特に、経済学的に新しい視点が提供されているわけではありませんが、いろいろな事実を歴史家の観点から、すなわち、ジャーナリストとはまた違った意味で、事実の間にそれなりの連続性、あるいは、場合によっては因果関係を示唆する形でいろいろな事実を整理したのは、それなりに意味のある作業であったろうと思います。
次に、ジャック・アタリ『食の歴史』(プレジデント社) です。著者は、もはや紹介するまでもなく、フランスを代表する知識人であり、マクロン仏大統領を政界に押し上げた、ともいわれています。私の限りある読書の範囲の最近に限っても、2017年12月に『2030年ジャック・アタリの未来予測』、2018年8月に『新世界秩序』、2019年1月に『海の歴史』と毎年のように読んでいたりします。本書のフランス語の原題は Histoires de l'alimentation であり、2019年の出版です。食や農業というか、食料生産の歴史を解き明かすところから始まり、従って、それがタイトルになっていますが、それだけではなく、後半では、肥満をはじめとする健康のほか、工業生産された食品の安全性や遺伝子組換え作物(GMO)の問題点、などなど、幅広い観点から食について議論しています。特に、前半の歴史編で欧州の食の中心だったフランスから、すべての世界の中心に成り上がった米国に食文化の中心が移ったため、食事が家族団欒や宴会のバンケットから個食になって、しかも短時間で済ませるようになり、最後に行き着いたその典型はファストフードである、と結論しています。そうかもしれません。しかし、その前に、本書でも指摘されているように、食事がカロリー単位で測られるようになったあたりから、そういった兆候は出ていたような気もします。もちろん、フランス人である著者の目から見た記述ですから、フランスに甘く、米国に厳しい、といったバイアスはあるかもしれません。不満が残ったのは2点で、第1に、農業の始まりと人口増加の因果関係が逆ではないか、という点です。すなわち、本書では、増加した人口を養うために定住して農業を始める、という歴史観が示されていますが、これは逆のような気がします。第2に、米国に入る前に、もう少し欧州でフランスだけが農業大国になって、英独などが食料輸入国になったあたりの歴史をていねいに展開してほしかった気がします。ただ、おそらく、米国化された食料生産システムや食文化、特に、遺伝子組換え作物(GMO)については、私は本書の見方が正しいと受け止めていますが、逆の党派的な観点を持つ人も少なくないものと想像します。最後の最後に、私は経済学的な観点から交易の利益を重視していて、いわゆる「地産地消」的な農作物の狭い地域的な流通や消費については否定的な見方を示してきたんですが、本書のようなトレーサビリティや人工的な保存の問題点を指摘されると、確かに「地産地消」も一理ある、と考えるようになってきました。そのあたりの境目はビミョーかもしれません。
次に、瀬名秀明ほか『ウイルスVS人類』(文春新書) です。NHKのBS1スペシャルで放送された「ウイルスVS人類」の第1回と第2回の対談集に少しだけコラムを加えるとともに、第3部として司会進行の瀬名秀明の書き下ろしを加えた、まあ、記録集です。第1部の第1回放送は、そもそもの歴史から説き起こし、その昔のペスト、21世紀に入ってからのSARSやMARSと今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)との関連も含めて、政府の専門家会議メンバーをはじめとしていろいろな感染症分野の専門家とのお話が収録されています。第2部はカギはワクチンと治療薬の開発に焦点が当てられています。私はこのブログでも何度か表明しているように、COVID-19の終息の絶対条件はワクチンないし特効薬の開発だと考えています。ですから、本書に注目して、ということもあります。なお、これも書いたような気がしますが、私の奉職する大学の事務方は「ウィズ・コロナ」という表現がどうも好きなようで、いろんな文書で現れます。しかし、コロナとの共存なんて、少なくとも個人的には私はご免こうむりたいと考えています。本書でも大昔のペストが取り上げられていますが、ここ何十年もペストのことなんか考えずに我々は仕事を、そして、生活しているわけで、「ウィズ・ペスト」なんて誰も考えてもいません。それと同じことで、罹患したとしても致命的な影響はこうむらず、手軽に、とまではいいませんが、特効薬的なものがあって治療が十分可能である、という状態まで自体を改善する必要があります。今はシリーズがかなり進んで、私は4回目を少しだけ見た記憶があります。司会進行の瀬名秀明は、あえてカテゴライズすればSF作家であり、私も『パラサイト・イヴ』は読んだことがあります。薬学博士でもあり適任かもしれません。
最後に、小松左京・吉高寿男『日本沈没2020』(文春文庫)です。Netflixで配信された同名のアニメのノベライズ版です。もちろん、その昔の小松左京『日本沈没』が元になっています。舞台は主として現在2020年の東京です。駒沢オリンピック公園近くに住む武藤一家が主人公です。父の航一郎は舞台制作会社で照明技師、母のマリはフィリピン人で、若いころは競泳選手、今はリゾートホテル勤務で世界を飛び回っており、姉弟の子供2人の姉の歩が中学生で日本代表にも選ばれようかという長距離走のアスリート、弟の剛は小学生でeスポーツでオリンピック出場を夢見ています。この一家に加えて、ご近所さんや途中からユーチューバーのカイトなどとともに、日本沈没とともに移動するストーリーですが、多くの死人が出ます。まあ、仕方ないのかもしれませんが、私は人がいっぱい死ぬストーリーにはそれほどの感動は覚えません。ですから、NHKの大河ドラマなんかでも、戦国時代モノは避けていたりします。ということで、まあ、荒唐無稽といえばそれまでなんですが、SFですからそれもアリです。どちらにせよ、現代はもはやインターネット接続なしには何もできなくなったのだろう、と感じたのが私の一番の感想です。やっぱり、オリジナルの小松左京作品の方の出来が素晴らしかっただけに、それと比較するのはムリがあるかもしれません。なお、私はオリジナルの『日本沈没』とともに『日本沈没第2部』も読んだ記憶があります。この機会に、こういったオリジナル作品を読み返すのも一興だという気がします。
2020年7月24日 (金)
国連開発計画(UNDP)報告書 "Temporary Basic Income" は何を目指すのか?
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の途上国への影響に関して、昨日7月23日、国連開発計画(UNDP)が実施した社会経済的な影響評価を基に、"Temporary Basic Income: Protecting Poor and Vulnerable People in Developing Countries" と題する報告書が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。国際機関のこういった報告書に注目するのは、私のこのブログの大きな特徴のひとつですので、連休まっ最中ながらグラフ引用して簡単に取り上げておきたいと思います。
上のグラフは、リポート p.9 から Figure 2. Monthly Cost of a Temporary Basic Income to Poor and Vulnerable People under Different Scenarios ($ billion) を引用しています。なお、引用はしませんが、次のページの p.10 には Table 2. Monthly Cost of a Temporary Basic Income under Different Scenarios, by Regions ($ billion and % of regions' GDP) と題する地域別にブレークダウンしたテーブルもあります。UNDPでは、1か月当たり1,999億ドルあれば、132の開発途上国で貧困ライン以下か、わずかにそれを超える程度の所得以下で生活する27.8億人に一時的にベーシックインカムを保証できると試算しています。なお、先にボヤッと書いた「貧困ライン以下か、わずかにそれを超える程度の所得以下で生活する」貧困ラインとは、南アジアとサラハ以南アフリカでは1日3.2ドル、東アジア・太平洋と中東・北アフリカでは1日5.5ドル、欧州・中央アジアと中南米・カリブでは1日13ドルに設定されており、一番上の1か月1.999億ドル必要なケースはこの貧困ラインに達するまでの金額が支給されると仮定して試算されています。そして、1か月2,570億ドルあれば、これらの人々に中央値の半分の所得、すなわち、我が国やOECDなどで定義している相対的貧困ラインにほかならない所得との差額を支給でき、さらに、1か月4,650億ドルあれば1日当たり5.5ドルのベーシックインカムを支給できると試算しています。加えて、UNDPではCOVID-19の経済的影響を勘案すれば、3か月ないし9か月の支給が必要と主張しており、もしも仮に、6か月の支給を行うとしても、2020年中に予測されるCOVID-19対策費のわずか12%であり、途上国が2020年中に支払うことになっている対外債務の3分の1に過ぎないことから、今年の債務返済に充てられる予定だった資金の使途を変更し(repurposing fiscal resources directed to external debt)、このベーシックインカムに充てることも、各国が必要な資金を賄う方法のひとつであると示唆しています。
何度か繰り返していますが、今回のCOVID-19の経済的影響を考えると、もちろん、需給両面からの経済の下押し圧力が最も重大ではありますが、同時に、交易の利得が失われることも無視すべきではありませんし、加えて、最大の政策的な手当てを必要とするのは不平等の拡大であると、私は考えています。ですから、先週から今週にかけて、第一生命経済研の女性雇用に関するリポート、OECD「雇用見通し」、テレワークによる格差拡大を批判したIMF Blog、さらに、COVID-19とは関係ないながら「国民生活基礎調査」における相対的貧困率、などなどをこのブログで取り上げてきました。今回のCOVID-19による日本の不平等の拡大は欧米諸国よりも厳しいと私は考えています。なぜなら、同じような新自由主義的な政策によるものとはいえ、例えば、英米では富裕層がさらに所得を増加させることにより不平等が拡大している一方で、日本では低所得層の賃金が伸び悩むことにより不平等が拡大しているからです。一昨日取り上げた「国民生活基礎調査」でもそうですし、例えば、学術的な研究成果では、不勉強な私が見た中ですら、「バブル/デフレ期の日本経済と経済政策」の第6巻『労働市場と所得分配』(慶應義塾大学出版会)に収録されたいくつかの論文でも確認されています。そして、今回のCOVID-19による不平等の拡大は、IMF Blogの指摘する通り、テレワークの難しい低賃金労働者に重くのしかかっており、その意味で、日本の経済社会にとって、不平等対策ないし貧困対策はとても緊急度が高い、と考えるべきです。
2020年7月23日 (木)
やっぱり景気の山は2018年10月だったのか?
今日の朝刊で相次いで報じられていますが、やっぱり、現在の第16循環の景気の山は2018年10月だったと内閣府が景気動向指数研究会で認定する運びとなりそうです。取りあえず、日経新聞と朝日新聞の記事へのリンクは以下の通りです。
私のこのブログでは、ローカルルールとして、今年2020年3月6日付けの景気動向指数を取り上げた記事から、2018年10月を景気の山として暫定的に同定し、グラフの影をつけたりしています。直近の5月ころが谷だった、という気もしますので、そのうちに、ローカルルールを設定したいと思います。一応、参考まで、7月7日付けの記事で景気動向指数を取り上げた際のグラフは以下の通りです。

最後に、内閣府の景気循環日付のサイトも、今一度ご参考まで。
2020年7月22日 (水)
シーソーゲームで勝ち切れず広島と引き分け!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | 十 | R | H | E | ||
広 島 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 3 | 8 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 3 | 12 | 1 |
シーソーゲームで広島と引き分けでした。9回表に逆転されながら、そのウラに土壇場で追いつきました。今年の規定に従って、10回で引き分けでした。9回ウラに追いついたんですから0.5勝ともいえますし、9回表を逃げ切れなかったので0.5敗ともいえます。まあ、甲子園でのゲームですし、勝ち切れなかった、という気がします。
明日も、
がんばれタイガース!
厚生労働省「国民生活基礎調査 (2019年調査)」に見る貧困率をどう考えるか?
やや旧聞に属する話題ですが、7月17日に厚生労働省から昨年2019年調査の「国民生活基礎調査」の結果が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。例年の通り、世帯、所得、健康、介護について取りまとめられていますが、2018年調査はほぼ3年に1度のいわゆる大規模調査の年に当たり、相対的貧困率が算出されています。私は10年ほど前ながら、「相対的貧困率に関する考察: 第14循環における動向」と題した紀要論文を書いたこともあり、貧困や格差の議論は正面から取り上げておきたいと思います。特に、今回の報告では、子供の相対的貧困率について、特に「大人が1人」というカテゴリーを設けて、ほぼ1人親に近い「大人が1人」の子供の貧困率がとても高い点が浮き彫りになっています。まず、その貧困率の年次推移のグラフを示すと以下の通りです。

上のグラフを見れば明らかなんですが、2019年の貧困ライン、すなわち、等価可処分所得の中央値の半分は127万円となっており、貧困ラインに満たない所得の世帯の構成員の比率である相対的貧困率は15.4%と算出されており、前回調査の2015年から▲0.3%ポイント低下しています。また、17歳以下の子どもの貧困率13.5%と、これも、前回調査の2015年から▲0.4%ポイント低下しています。なお、いかにもお役所らしくてややこしいことながら、17歳以下で定義される子供がいる世帯のうち、世帯主が18歳以上65歳未満で子供がいる世帯を「子供がいる現役世帯」と呼び、子供だけでなくその世帯員の貧困率は12.6%と、大人の世帯員も含めた貧困率は子供の貧困率よりも低くなっているのですが、逆に、大人が1人の貧困率が48.1%と極めて高くなっています。大人が2人以上の貧困率が10.7%に比べて際立っています。「大人が1人」というのは、おじいさん・おばあさんなどのケースもあるとはいえ、ほぼ1人親に近いんではないかと私は想像しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響もあって、私の実感では経済的な格差は拡大しているような気がします。従って、今後の格差是正の議論でも、これらの統計の結果を考えれば、以下の2点が取り上げられることを私は期待しています。まず、第1に、上のグラフでも明らかな通り、青いラインの全体の貧困率が1980年代半ばの12%から2019年には15%を超える水準にほぼ一貫して上昇している点です。加えて、第2に、1人親に近い概念であろうと想像される大人1人の「子供がいる現役世代」の貧困率が極めて高い、すなわち、かつての1990年代終わりの60%超の水準から低下しているとはいえ、まだ50%近い水準にとどまっている点です。

最後に、所得水準についても見ておきたいと思います。すなわち、上のグラフの通りですが、貧困ラインの設定の基礎となる所得の中央値の推移を示しています。1988年から1991年のバブル末期にグンと伸びたのはやや徒花とはいえ、1990年代終わりの300万円に近い水準から2019年には▲40万円近く低下しています。ですから、デフレで価格の低下があるとはいえ、中央値が低下した分、貧困の強度は強まった、と考えるべきです。この点は忘れるべきではありません。
最後の最後に、どうも、経済開発協力機構(OECD)の方で所得定義の新基準が出されたようで、可処分所得の算出に用いる拠出金の中に、新たに自動車税等及び企業年金・個人年金等を追加した新基準に基づき算出した相対的貧困率もリポートに示されています。今日のブログでは、過去の統計からの接続性を優先して旧基準の計数で議論しています。悪しからず。
2020年7月21日 (火)
4-5月のマイナス圏を脱した消費者物価指数(CPI)の先行きをどう見るか?
本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIは前年同月と比べて横ばいを示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は前月5月統計と同じ+0.4%でした。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により国際商品市況で石油価格が低迷しているのが、物価上昇率を低く抑えている一因となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の消費者物価、横ばい エネルギー価格の下落和らぐ
総務省が21日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比で横ばいだった。前月まで2カ月連続で下落していた。新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした原油安に伴うガソリンなどのエネルギー関連の価格下落が和らいだ。食料品や交通費も上昇した。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.1%下落だった。
ガソリンや電気代、都市ガス代などのエネルギーは前年同月比で5.3%下落した。5月(同6.7%下落)と比べると下落率は縮小した。原油価格は前年の同時期と比べると水準は低いままだが、足元では回復基調にある。
高速道路料金の休日割引が6月中旬まで適用除外となっていたことも、交通費の上昇に寄与した。昨年10月の消費税率引き上げの影響による、すしやビールなど外食の価格上昇も続いた。
一方、インバウンド(訪日観光客)の大幅減少や国内の外出自粛の影響で、宿泊費が引き続き落ち込んだ。19年10月からの幼児教育無償化の影響で、幼稚園や保育所などの料金も下落した。
生鮮食品を除く総合では全523品目中、388品目が上昇した。下落は118品目、横ばいは17品目だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.9と前年同月比0.4%上昇した。天候不順や、外出自粛に伴う「巣ごもり」需要からじゃがいもやトマトなどの生鮮野菜の価格が上昇した。生鮮食品を含む総合は101.7と0.1%上昇した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.1%の下落でしたので、実績がやや上回ったものの、まずまずジャストミートしたといえます。4~5月統計ではコアCPI上昇率がマイナスに落ち込んだ要因としてエネルギー価格の下落が上げられていましたが、引用した記事の通り、直近の6月統計では引き続き下落しているものの、その下落幅が小幅になって影響が和らいでいます。すなわち、4月▲4.7%、5月▲6.7%と、それぞれ下落し、ヘッドラインCPIの前年同月比上昇率に対する寄与度が4月▲0.37%、5月▲0.54%だったのが、6月には前年同月比で▲5.3%の下落ながら、寄与度は▲0.42%とマイナス幅がやや縮小しています。引き続き、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による石油をはじめとするエネルギー価格からの影響が大きいとはいえ、最悪期は脱した可能性があります。ただし、先行きが楽観できるハズもなく、ひとつは10月統計から昨年の消費税率引上げの影響が剥落します。もうひとつは、6月統計では、昨年10月の消費税率引上げから始まったキャッシュレス決済のポイント還元の終了直前に耐久財への駆込み需要が発生した可能性があり、この効果が来月からすぐに剥落します。例えば、前年同月比で見て、家庭用耐久財は5月▲1.3%下落が6月には+2.5%に跳ね上がっており、教養娯楽用耐久財も5月の+2.4%から6月には+3.1%に上昇幅を拡大しています。すべてではないでしょうが、一部なりとも、こういった耐久財の価格上昇はキャッシュレス決済のポイント還元が6月末で終了することに伴う駆込み需要の影響の可能性があります。
他方で、明日の7月22日からGotoキャンペーンが始まります。東京発着はダメになって、キャンセルが相次いでいるとの報道を見ましたが、大混乱の中で、宿泊料などの需要が「蒸発」した分野をはじめとして、どれだけ物価へのインパクトがあるかどうか、私には疑問です。常識的に考えて、Gotoキャンペーンに合わせて値上げにトライする宿泊業者は少ないような気もします。いずれにせよ、この先、年末くらいまで物価は低空飛行が続くものと考えるべきです。
2020年7月20日 (月)
6月貿易統計を見て先行きの道のりの長さを実感する!
本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲26.2%減の4兆8620億円、輸入額も▲14.4%減の5兆1309億円、差引き貿易収支は▲2688億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
6月の輸出26.2%減 3カ月連続の貿易赤字
財務省が20日発表した6月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2688億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は256億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比26.2%減の4兆8620億円、輸入額は14.4%減の5兆1309億円だった。中国向け輸出額は0.2%減、輸入額は0.8%増だった。
取りあえず、コンパクトに統計のヘッドラインを取りまとめた記事を引用しています。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲350億円の貿易赤字が予想されていて、引用した記事とビミョーに違うんですが、その後、改定されたのかもしれません。いずれにせよ、前年同月の2019年6月は+5881億円の黒字を計上していましたし、季節調整していない系列で3か月連続、季節調整済みの系列で4か月連続の貿易赤字を計上しています。輸入も減少しているわけで、特に、国際商品市況で石油価格が大きく下落して、我が国の輸入原油への支払いも減っています。例えば、原油及び粗油の6月の輸入はキロリットル単位の数量ベースでは前年同月比で▲14.7%減ですが、価格とかけ合わせた金額ベースでは▲71.8%減と、何とも⅓を割り込むまで減少しています。なお、今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響については、生産などの供給面に加えて、外出の抑制などに伴う需要面も含め、需給両面からの経済活動の下押し圧力の強まりがありますが、さらに、交易の利益が失われるというのが大きなマイナスであると私は考えています。アダム・スミスがピンの製造工程で見たように、国内でも協業に基づく分業により比較優位に基づく生産が行われていますが、いうまでもなく、交易の最大の利益は天候や天然資源をはじめとして、生産要素賦存やスキルが大きく異なる外国との交易で生み出されることは当然です。その意味で、COVID-19の経済的な影響の最大のものは貿易で生じる可能性が高い、と私は考えています。

輸出については、このCOVID-19の感染拡大以降で、先月の5月統計が最大の前年同月比マイナスとなる▲28.3%減の後、6月統計では▲26.2%減と、わずかにマイナス幅が縮小しましたが、はかばかしい回復は見られません。上のグラフに見られる通りです。特に、輸出数量の前年同月比で見て、5月▲27.3%減から、6月でも▲27.1%減と、ほとんど変わりありません。COVID-19がこのまま終息すれば、先行きの輸出は緩やかに増加するものと私は考えています。主要な最終需要地である欧米先進国ではロックダウンなどの措置が段階的に緩和されており、経済活動を再開する動きが見られることが要因として上げられます。こうした流れが今後も継続すれば、輸出は徐々に回復すると考えられるものの、回復の足取りは鈍くCOVID-19前の水準に戻るにはかなり長い期間を要しそうです。加えて、米国では第2派の感染再拡大の懸念があり、すでに米国の一部の州では経済活動の再制限の措置が取られているのも事実です。従って、ロックダウンなどの措置が再び各地で広がれば、輸出の減少基調が継続する可能性は十分残っていると考えるべきです。要するに、COVID-19の感染拡大次第、ということです。
2020年7月19日 (日)
2020年7月18日 (土)
5回の猛打一挙6点をバックに西投手が完投で中日に連勝!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
中 日 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 3 | 9 | 1 | |
阪 神 | 0 | 0 | 2 | 0 | 6 | 0 | 0 | 0 | x | 8 | 5 | 1 |
今週の読書は話題の『現代経済学の直観的方法』をはじめとして経済経営書など計5冊!!!
今週の読書は、なかなか興味深い経済書や経営書をはじめとして、責任論、さらに、民主主義やファシズムを考えさせられる学術書・教養書、さらに、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のための自粛や営業規制による貧困層への影響を速報した新書、と以下の計5冊です。
まず、長沼伸一郎『現代経済学の直観的方法』(講談社) です。著者は、よく知らないんですが、各種の「直観的方法」シリーズの出版で著名な方だと認識しています。いずれもブルーバックスで、『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』と『経済数学の直観的方法 確率・統計編』を私も読んだ記憶があります。2017年3月4日付けの読書感想文でアップしてあります。出版社のサイトなどに従えば、本書の原案は、実に30年以前からあったとか、また、書籍の帯には「私は30年前にこの本のベースとなる論考に出会い大きな衝撃を受けた」とあります。私は不勉強にして知りませんでした。ただ、経済学的にはマイクロな選択の理論はほとんど含まれておらず、マクロ経済的な物価とか成長の議論が中心と考えるべきです。そして、第8章の仮想通貨とかは30年前にはないので、まあ、それなりの時期に書かれているんだろうという気はします。注目すべきは、最終章の「縮退」という概念です。もっとも、ローマクラブ的なゼロ成長主義に起源を持つんではないかと思えますし、それほどめずらしくもなく、いかにも低成長の続く日本らしい発想ですが、それがサステイナブルな成長かどうかについては、本書では特に議論されていない、としかいいようがありません。そういったモデルが考えられる、というに過ぎません。私は、本書冒頭で高らかに宣言されている資本主義の特徴である「プラスの金利」がその後、何ら本書の中で考慮されていないのが残念です。すなわち、資本主義にプラスの金利があるのは、中世的な経済停滞ともいい得るほぼほぼ成長のない世界から、現実の成長率がプラスに転じたからであり、その逆ではありません。勝手にどこかで誰かがプラスの金利を設定したから経済成長が始まったのではなく、経済が産業革命の少し前あたりから成長するようになったので、金利がそれに従ってプラスになったわけです。ですから、時間的な先行性とともに因果関係も経済成長が先立っているというのが一般的なモデル解釈であろうと思います。ですから、中世的な経済停滞に入れば、何らかのタイムラグはあるものの、世界経済がプラスの金利を失い、ゼロ成長に落ち着く、そう「落ち着く」わけです。ただ、私なんかは成長そのものを自己目的化するわけではなく、まだ、格差や貧困が残る中で成長の必要性を主張しているわけです。ですから、ある意味で社会主義的な充足された経済社会になればゼロ成長でも、もちろん、人口動態次第ではマイナス成長でもOKだという気がします。ただ、すでに充足された人たちが、まだ充足されていない貧困層や格差を放置したまま「縮退」を経済政策の目標とすることには大きな疑問が残ります。世界は、資本主義に基づいて、さらに生産性を高めて affluent society を実現し、世界から貧困を大きく削減した後に、次の経済社会システムに進むのではないでしょうか。
次に、トム・ピーターズ『新エクセレント・カンパニー』(早川書房) です。著者は、マッキンゼーの経営コンサルタントであり、今は独立しているのかもしれません。その昔の1980年代に「新」のつかない『エクセレント・カンパニー』をウォータマンとの共著で出版しています。我が家の本棚に並んでいたりします。なお、先週忘れていたんですが、リフキン『エントロピーの法則』も我が家の本棚にあったりします。英語の原題は The Excellence Dividend であり、前の『エクセレント・カンパニー』が、実は、In serach of がついていたりしますので、邦訳タイトルとビミョーに違っています。2018年の出版です。本書の内容は、当然ながら、邦訳タイトルではなく英語の原題に沿っているわけで、特に会社に焦点を当てているわけではありません。あくまで「エクセレント」を突き詰めようとしています。邦訳にある人工知能(AI)との対比もほとんどありません。前の「新」のつかない『エクセレント・カンパニー』は1983年の邦訳出版ですから、私の記憶にはほとんど残っていませんが、多国籍企業を取り上げて、エクセレントな多国籍企業には国境がない、という趣旨のような帯がまだついています。本書では、会社ではなく経営者ないしマネージャーにスポットを当てており、エクセレントな経営者ないしマネージャーのソフト面の解明、というか、著者が体験した中からソフト面の重要性を抜き出そうと努めているように私には見受けられます。まあ、「ケーススタディと4でもいいかもしれません。すなわち、戦略や数字あるいは分析などの経営学的なツールややり方よりも、組織文化が重要であり、顧客よりむしろ従業員を厚遇し、雇用の安定に努めるというのも含めて、人の重要性をしつこいくらいに繰り返しています。そして、イノベーションは「数撃ちゃ当たる」法則と「失敗は成功のもと」法則ですから、ある意味で、実に明快です。類書にあるように、戦略と組織と人と金の使い方でイノベーションが進むような幻想を見事に打ち砕いてくれています。邦訳もよく考えられていて、ある意味で、サリンジャー的な英語表現7日もしれないと、最後に解説があったりします。前の『エクセレント・カンパニー』もそうだったのかもしれませんが、ある意味で、机上で練り上げられた合理的な戦略を精緻な数値分析でもって進めるのが企業経営の要諦なんかではなく、人が寄り集まって組織文化を作ってエッサワッサと運営するのがエクセレントな企業、というわけなのかもしれません。もっとも、企業経営なんぞはまったく知らない私の読書ですから、間違っていそうな気もします。
次に、ヤシャ・モンク『自己責任の時代』(みすず書房) です。著者は、ドイツ出身で、現在は米国の大学に在籍している政治学の研究者です。同じ著者の『民主主義を救え!』を昨年2019年11月3日付けの読書感想文で取り上げています。英語の原題は The Age of Responsibility であり、2017年の出版です。最後の訳者の解説にもある通り、邦訳タイトルには「自己」を忍び込ませてあります。ということで、我が国では、イスラム原理主義のテロ集団の人質になったような極端な例を含めて、正規雇用の職につけない若者や貧困に陥って何らかの社会保障の援助を受ける場合、あるいは、ひどい場合には、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)などの感染症への罹患まで、様々な局面でカギカッコ付きの「自己責任」が強調され、セイフティネットの整備はおろか、社会政策的な施策の責任を政府から免責するかのような新自由主義的な論調がもてはやされた時期がありました。それは決して日本だけのことではなく、同じように新自由主義的な経済政策の下で、1980年代の英国サッチャー政権や米国レーガン大統領のころから、政府の責任ではなく国民個々の自己責任が強調されている中で、本書は、というか、本書の著者は、自分の不注意や怠慢、怠惰などで貧困などの経済的な困難や苦境にある国民には、社会保障の給付はすべきではない、といった論調に対して批判的な観点から責任論を解き明かして、組み立て直そうと試みています。こういった責任論に対して、責任緩和的な福祉国家論から、国民個々人の責任の遂行を追求する新自由主義的な国家論まで、さまざまな議論を紹介するとともに、批判的な検討を加えています。私は、左派的な大きな政府を志向するわけではありませんが、本書でも展開されているような運の要素も結果に影響を及ぼすわけですから、結果をすべて国民個人に帰責することは、当然ながら、不適当であり、セイフティネットよりももう少し広い、というか、政府における格差解消や平等の実現に向けた幅広い政策が必要と考えます。ただ、最後に、本書はかなりの程度に学術書です。すなわち、かなり難易度が高い仕上がりとなっています。それなりの覚悟を持って読み始める必要がある点は指摘しておきたいと思います。
次に、田野大輔『ファシズムの教室』(大月書店) です。作者は、甲南大学のファシズムなどの研究者であり、大学の授業でナチス的なファシズムの体験学習を実行した際の経験が本書に収録されています。ミルグラム実験とか、ジンバルドー教授のスタンフォード監獄実験などのように、いわゆる「上からの指示」による非人道的な虐待行為、あるいは、それを集団で実行することによる責任感の麻痺をファシズムのひとつの特徴として、その点を拡大した体験学習によるファシズムの恐ろしさを大学生に教えようと試みるものです。受講する学生が集団で無地の白いシャツにブルージーンズという制服に見立てた格好をし、サクラに立てた色物の柄シャツ学生を糾弾し、また、これもサクラの教室外においてカップルで過ごしているリア充学生を糾弾するなど、ナチスの突撃隊がユダヤ人に対する行為を少しスケールダウンして実行してみて、実は、本書には明記されていなかったように感じましたが、いとも簡単に大衆が操られるという意味で、実に身近にファシズムの「種」が潜んでいるのだ、と実感させられます。もちろん、ナチスだけでなく、かつての日本のファシズムでもなく、目の前で展開されている現代日本のヘイトスピーチなどにも極めてよく当てはまる気がするのは私だけではなかろうと思います。この体験学習は映画『THE WAVE ウェイヴ』にヒントを得たものであると作者はいいますが、こういった球団行為は映画にはないらしいですので、いろいろと工夫はされているものと思います。その意味では、同じ大学教員として私なんぞの凡庸な教員にはマネの出来ないものかもしれません。いくつか、学生の実際のリポートらしきものが画像で示されていましたし、授業の評価が高いとの結果も示されていましたが、凡庸な大学教員としてはややスレスレという実感もあります。よほどうまくやらないと逆効果にもなりかねませんし、実際に、2018年を最後にこの授業が中止されたというのも事実です。「責任からの開放」だけでなく、実は、多くの人に潜むポリティカル・コレクトネスへの密かな反発、というか、反発まで行かないまでも、決して全面的に同意することの出来ない「本性」のようなものが私はある時点で噴出する可能性があり、ひとつは2016年年の米国大統領選挙とかでそれは国民的な規模で現れましたし、一部の集団ながら我が国のヘイトスピーチでも見られます。そういった本物ではない旧来からの価値観の一掃も同時に求められているような気がします。
最後に、中村淳彦『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書) です。著者は、貧困や風俗に働く女性などを中心に取材を続けているジャーナリストです。本書のタイトルは「貧困女性」となっていますが、取材対象となっている女性は、もちろん、貧困であることは間違いないのですが、ほぼほぼ風俗サービスに勤務する女性ばかりです。ある意味で、女性のインフォーマルかつ最後のセイフティネットが風俗産業、ないし、非合法な売春、あるいは、それに類したカラダを売る行為と、本書でも指摘しています。そういった女性たちは、本書では、貧困そのものと指摘されており、私もかなりの程度に同意します。もちろん、私自身は定年まで国家公務員として勤務し、現在は大学教員に再就職しているわけで、本書の著者が取材しているような世界については皆目土地勘がありませんし、この方面に詳しいハズの著者自身が「発言のすべてが現実離れしている」とか、「嘘か本当かわからない話」と認めているわけで、中には、「常識やモラル、倫理観がある一般社会では聞くことができない異常な話」もあったりする中で、どこまで現実として受け取っていいのか判りかねますが、少なくとも、終章で展開されている著者の経済学的、ないし、経済政策論的な視点は十分に受け入れられるものです。平成の時代の新自由主義的な経済政策により、女性を始めとする経済的な弱者が貧困に追い詰められ、団塊の世代や正社員に居座り続ける比較的年齢層の高い世代が、そういった女性の性風俗従事者のサービスを買う、という構図はかなり正確だと思います。新自由主義的な経済政策の一環で、派遣労働の対象業種の拡大により、非正規の低賃金職種に追い詰められた女性や若者に関する指摘はとても鋭いと私は受け止めましたし、2004年に改組された学生支援機構(JASSO)の奨学金制度への著者の批判や疑問も、極めて真っ当なものです。世代を継承しかねない貧困の連鎖を断ち切るために、大学進学というのは極めて重要な役割を果たすべきなのですが、その経済的な基礎を提供する奨学金制度が新自由主義的な歪みを体現しているのは、大学教員として、とても悲しく残念な思いです。でも、終章で著者が期待しているようなコロナ禍による経済政策の転換は、私は望み薄だと考えています。
2020年7月17日 (金)
Millionaires for Humanity は何を求めているのか?
やや旧聞に属する話題ですが、今週月曜日の7月13日にディズニー家の相続人であるアビゲイル・ディズニー女史をはじめとする7か国80人余りの百万長者が、Millionaires for Humanity というサイトを立ち上げて、"Today, we, the undersigned millionaires, ask our governments to raise taxes on people like us. Immediately. Substantially. Permanently." のためステートメントを公表しています。この引用文は第2パラで太字になっています。さらに、第4パラでは、"The problems caused by, and revealed by, Covid-19 can't be solved with charity, no matter how generous. Government leaders must take the responsibility for raising the funds we need and spending them fairly. We can ensure we adequately fund our health systems, schools, and security through a permanent tax increase on the wealthiest people on the planet, people like us." と表明し、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)によって引き起こされた問題は慈善団体ではなく、政府のリーダーが責任を持って対応すべき旨を主張しています。まさにその通りだと私も考えます。
私の目が行き届かなかった部分はあるかもしれないものの、日本のメディアでもいくつかのニュースがあり、中でも、Harper's BAZAARのサイトが英語の原文をもっとも忠実に翻訳していたように思います。海外も含めていくつか本件を報道しているメディアへのリンクを示すと以下の通りです。私は英語とスペイン語しか理解しませんので悪しからず。なお、外国メディアの中でも上の方の3機関はまずまず有名で、Hindu BusinessLine もインドの経済紙だろうと想像つくと思いますが、最後の El Cronista はアルゼンチンの経済紙です。私はアルゼンチンの隣国チリの日本大使館で経済アタッシェをしていましたので、少しだけ馴染みがあります。
- NHK: 世界の富豪83人「私たちに課税を」 新型コロナ
- Harper's BAZAAR: 「富裕層に増税を」! ディズニー創業者の孫アビゲイルなど83人が訴え
- SankeiBiz: コロナ対策「富裕層増税を」 資産家団体が各国に呼び掛け
- 中国新聞: 私たちに増税を!
- Financial Times: Never fear, Millionaires for Humanity are here
- CBS: Millionaires say "tax us, tax us, tax us" to pay for coronavirus aid
- Fortune: Meet the millionaires who want to be taxed to pay for the coronavirus
- Hindu BusinessLine: Are the Indian rich immune to the 'tax us' syndrome?
- El Cronista: 'Millionaires for Humanity': una 'picardía argentina' viralizó el reclamo
最後に、下の画像は Financial Times のサイトと El Cronista のサイトから引用しています。FT の風刺画の一番上に陣取っている金持ちがもっているカップの "MFH" は、まさに、Millionaires for Humanity の略です。El Cronista のドル札の肖像画はマスクをしています。まあ、いろんな受け止めがあるということで、ここは興味本位に引用してみました。再び、悪しからず。
2020年7月16日 (木)
IMF Blog "Teleworking is Not Working for the Poor, the Young, and the Women" まさにその通り!!!
やや旧聞に属するトピックながら、先週7月7日付けのIMF Blogのサイトに、"Teleworking is Not Working for the Poor, the Young, and the Women" と題する記事がアップされています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のためにテレワーク=在宅勤務が広がっていますが、貧困層、若者、女性には不利になり、格差が拡大する懸念を表明しています。一昨日の『OECD 雇用見通し』と同じで、COVID-19の経済的な影響を単なる需要の停滞や生産の縮小による景気下押しだけでなく、格差の面からも考えるべき、という国際機関の問題意識のひとつではないかと考えます。グラフを引用しつつかんたんに取り上げておきたいと思います。
まず、上のグラフは、IMF Blogのサイトから The richer are more mobile と題する散布図を引用しています。ドットの単位は国であり、横軸は購買力平価で表示した1人当りGDP、すなわち、一般的に豊かさと考えられている指標であり、縦軸はテレワークのしやすさの指数です。直線で近似すれば、大雑把に正の相関がありそうですし、2時曲線で近似すれば、どうも、原点に対してconcave、というか、上方に対してconvexな曲線が引けそうな気もします。従って、豊かな国ほどテレワークがしやすい、という結論が得られそうです。
次に、上のグラフは、IMF Blogのサイトから Not at home と題するヒートマップ・グラフを引用しています。下から上に行くほどテレワークがしやすく、左から右に行くほど高給、という2次元ヒートマップです。テレワークしにくいのは、下から順に、宿泊・飲食、建設、運輸、事務補助、卸売・小売などが並んでいて、上の方には情報・通信、金融・保険などが位置しています。これも、大雑把に、左下から右上にヒートアップしていますから、テレワークしやすい産業ほど高給であり、逆に、所得分布の底辺に位置する労働者は、飲食・宿泊などCOVID-19による影響が大きい上にテレワークにも不向きなセクターとなっています。
実は、このIMF Blogの記事のバックグラウンドには学術論文があり以下の通りです。この論文を読むと、ヒートマップはセクター別だけではなく、職種別にも示されていて、これまた、テレワークしやすい職種ほど高給、という結果が示されています。テレワークのしやすさ指標のデータ作成方法なども、もちろん、詳しく記述されています。それほどのボリュームではありませんので、ご興味ある向きにはオススメしておきます。
さて、COVID-19のパンデミックについては、東京都が昨日から警戒レベルをもっとも深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げ、今日も280人以上の感染者を確認した旨の朝日新聞の報道があったりする中で、政府はGoToキャンペーンを強引に進めようとしているやに報じられています。もちろん、エコノミストの端くれとして経済活性化も重要な課題と理解していますが、国際機関ではCOVID-19による格差問題も重要な課題として分析が進んでいる一方で、我が国ではまだ大きな議論にはなっていないようにも見受けられます。貧弱なメディアながら、私はこのブログで格差問題への取り組みの重要性を強調するとともに、誠についでなんですが、感染拡大への影響はシロートとはいえ、観光関係者へは別の手立てを考えることとして、GoToキャンペーンは中止すべきと主張したいと思います。
2020年7月15日 (水)
日銀「展望リポート」の経済見通しやいかに?
本日、日銀は昨日から開催していた金融政策決定会合にて「展望リポート」を発表しています。景気の現状については、リポート冒頭で「わが国の景気は、経済活動は徐々に再開しているが、内外で新型コロナウイルス感染症の影響が引き続きみられるもとで、きわめて厳しい状態にある。」としています。まあ、順当な判断ではなかろうかという気がします。他方で、文書には出来なかったようですが、日経新聞のサイトでは、黒田総裁が記者会見で「消費は対面サービス関係は完全には戻らないが、モノの消費、生産は底を打った」と発言した旨が報じられています。これも順当なところかと私は受け止めています。
実質GDP | 消費者物価指数 (除く生鮮食品) |   | ||
消費税率引き上げ・ 教育無償化政策の 影響を除くケース | ||||
2020年度 | -5.7~-4.5 <-4.7> | -0.6~-0.4 <-0.5> | -0.7~-0.5 <-0.6> | |
4月時点の見通し | -5.0~-3.0 | -0.7~-0.3 | -0.8~-0.4 | |
2021年度 | +3.0~+4.0 <+3.3> | +0.2~+0.5 <+0.3> | ||
4月時点の見通し | +2.8~+3.9 | 0.0~+0.7 | ||
2022年度 | +1.3~+1.6 <+1.5> | +0.5~+0.8 <+0.7> | ||
4月時点の見通し | +0.8~+1.6 | +0.4~+1.0 |
「展望リポート」 p.8 にある2020~2022年度の政策委員の大勢見通しのテーブルは上の通りです。各セル下段の< >内は中央値となっています。ただし、4月時点の見通しに中央値がないのは、4月の「展望リポート」に明記されているように、「先行きの不確実性が従来以上に大きいことに鑑み、各政策委員は最大1.0%ポイントのレンジの範囲内で見通し(上限値・下限値の2つの値)を作成することとした」ためです。それから、上のテーブルは、私のタイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」からお願いします。さ来年の2022年度になっても物価上昇率は目標の+2%にはるかに達しない、という結論となっています。
2020年7月14日 (火)
2ケタ安打の6得点でヤクルト初戦に完勝!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
ヤクルト | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 2 | 0 | 0 | x | 6 | 12 | 0 |
投打がかみ合ってヤクルト初戦に完勝でした。先発秋山投手は不安定な立ち上がりで2失点し、4回に逆転した後の5回にも失点して同点に追いつかれたりしていましたが、今夜は打線がさらに得点を重ねるとともに、リリーフ陣が無失点に抑え切り、ヤクルトを寄せ付けませんでした。先発が降板した後にホームランでダメ押し点を入れられるというのは大きいと思います。安打数が倍なら、得点も倍で、完勝といえます。
明日も、
がんばれタイガース!
OECD Employment Outlook 2020 に見る新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の雇用への影響やいかに?
やや旧聞に属する話題ですが、7月7日に経済協力開発機構(OECD)から OECD Employment Outlook 2020 が公表されています。OECD Library のサイトではpdfの全文リポートも利用可能です。まず、リポートp.18のInfographicを引用すると以下のとおりです。
6つのパネルから成っています。左上のパネルでは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に伴う最近の失業率の上昇、右上は雇用維持政策による効果、左の真ん中は2007-08年のリーマン・ブラザーズ破綻時と比較した今回のCOVID-19による喪失マンアワーの比較、右の真ん中はロックダウン時の在宅勤務の割合、左下が上位4分位と下位4分位で労働市場から退出した格差、右下が2つのシナリオに従った雇用の喪失となっています。6月11日付けのブログで「OECD経済見通し」を取り上げた際にも紹介しましたが、COVID-19がこのまま終息していく「単発シナリオ」single-hit-scenario と今年2020年中に第2波の感染拡大が襲来する「双発シナリオ」double-hit-scenario の両方を分析の対象としています。
300ページを大きく超える英文のリポートですので、とても全部は目を通し切れていませんが、Infographicのほかに、ひとつだけグラフに注目しておきたいと思います。上の通りです。Infographicの真ん中左側のマンアワー喪失を主要国別に見ています。リポートp.37から Figure 1.9. The cumulated impact of the COVID-19 crisis on employment and hours of work is ten times greater than during the global financial crisis を引用しています。データのアベイラビリティに国ごとに少し差がありますが、3か月間の累積マンアワー喪失をCOVID-19パンデミックとリーマン・ブラザーズ破綻後の金融危機と比較して、約10倍のマンアワー喪失があったと結論しています。そもそも、累積マンアワー喪失が他国と比較して小さい日本でも、3か月後の比較ではCOVID-19が金融危機のショックを大きく上回っているように見えます。
また、Infographicの右上のグラフでは、雇用維持策の重要性が強調されていて、このInfographicの基となるグラフはリポートp.36 Figure 1.8. Participation in job retention schemes has been massive in some countries となります。しかし、なぜか、日本はグラフに現れません。ほかに、引用はしませんが、リポートp.60の Table 1.1. Countries have adjusted existing job retention schemes or adopted new ones やp.72の Table 1.3. Countries across the OECD have taken measures to improve support for workers and households not covered by unemployment benefits or job retention schemes では、OECD加盟各国における雇用維持策と家計への所得支持策をテーブルに取りまとめています。日本の政策としては、workers in non-standard jobs への雇用維持策や家計への New universal transfers が目立っています。特に、後者の給付金は我が国のほかは米韓しか実施していない政策です。
今回のリポートでは、特に、低賃金労働者や女性や若者などがCOVID-19deより大きなダメージを受けいる点が強調されています。近く取り上げたいと思っていますが、IMF Blog でも "Teleworking is Not Working for the Poor, the Young, and the Women" という記事が7月に入ってからアップされています。かつて、悪名高きワシントン・コンセンサスを推し進めた国際機関も、もはや、不平等から目を背けることが出来ないほどに格差は拡大しています。
2020年7月13日 (月)
第一生命経済研リポート「女性雇用により厳しいコロナショック」やいかに?
先週金曜日の7月10日付けで第一生命経済研から「女性雇用により厳しいコロナショック」と題するリポートが明らかにされています。現下の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために、いろんな「自粛」や営業の規制などが実施されてきましたが、まあ、東京のホストクラブは数少ない例外としても、小売業とか飲食業とか宿泊業などに対する下押し圧力が強い印象で、女性雇用に対する下押しが強まっている可能性を指摘しています。私もその通りだと思いますし、ワクチン・特効薬開発が必要との結論も、従来から指摘しているように、まったく同感ですので、簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。
上のグラフはリポートから、業種で異なる就業者数の変化を引用していますが、まず、リポートでは今年2020年4~5月の雇用者について性別の前年同月差を見ると、男性が▲22.0万人、女性▲33.5万人と女性の雇用者減が男性の1.5倍を超えており、そのひとつの背景を女性の就業率が高いサービス業の需要喪失にあるとして、上のグラフを示しています。左から見て、建設では男性の就業者減の方が断然大きく、製造業でも男女差はそれほどない一方で、卸小売、宿泊飲食サービス、生活関連サービス娯楽、といったもともと女性就業比率の高い産業では、そもそも就業者の減少幅が大きい上に、男性と比べて女性の就業者の減少が大きい、との統計が示されています。
上のグラフはリポートから、非正規雇用比率を引用していますが、次に、リポートでは女性の非正規比率の高さと非正規雇用がいわゆる「雇用の調整弁」として使われる場合が多いと指摘しています。すなわち、好況時には人で不足とともに女性や高齢者などの非正規雇用が増加しやすい一方で、現下のような激しい雇用へのショックを生じている場合は職を失いやすいのは事実かもしれません。労働経済学では、その昔には、女性パートや学生アルバイトについては、男性労働者をコアに見立てた上で、「縁辺労働者」と呼んでいた時代もあります。そして、その昔の日本の労働や家庭の実態とは、そのコアな男性正社員が無限定・無制限に会社のために働き、夫不在の家庭を専業主婦の妻が家事や育児などをやりくりする、というモデルを基に、労働政策や社会政策が立案・実行されて来たという歴史があります。例えば、モデル家庭として、正社員の夫と専業主婦の妻と2人の子供の4人家族を設定したりしていたのは事実です。他方、こういった歴史的な経緯をそろそろ脱却して、ワーク・ライフ・バランスはもとより、女性労働や高齢者の働きやすい環境を整備したり、年金や医療といった政策を、COVID-19によるショックでさらに深く追求すべき段階に来ていることも事実です。
加えて、リポートでは、EC市場の成長やサブスク市場の拡大が小売業などから女性雇用を減少させる、なども取り上げられていますが、もっとも重要な最後の結論で、「求められるワクチン・特効薬開発と女性雇用創出」を上げています。後段の「女性雇用創出」はもちろん重要ですが、やっぱり、ワクチン・特効薬の開発により従来型の人と人が触れ合うことが感染のリスク低く行えるようにすることがもっとも重要だと私も考えており、従来からこのブログでも主張している通りです。なぜかは知りませんが、私の勤務する大学の経営陣は「ウィズ・コロナ」という用語を多用しているように感じていて、私は「ウィズ・コロナ」とか、「コロナウィルスとの共存」なんてのは、少なくとも個人的にはご免こうむりたいと考えています。私の嫌いな「敗北主義」的な雰囲気も感じてしまいます。話は脱線しますが、阪神が今季開幕時に負け続けていた際、「打線を固定しろ」とか、「捕手はxxで固定しろ」とかいった論調がスポーツ紙に出ていましたが、あくまで、ジタバタと手を変え品を変えて対応する矢野監督を私は支持します。そんなのは勝っていくうちに自然と固定されるもので、「負けてもいいから固定しろ」というのは敗北主義そのものです。ダメな時はいろいろとやってみるべきだと私は考えています。話を本筋に戻すと、感染力が格段に違いますので、その昔のペスト禍と現在のコロナ禍を同一視することは適当ではありませんが、ペストを気にした日常生活が現時点でありえないわけですし、コロナウィルスに対応する「新しい生活様式」なんてものが必要でなくなるくらいに、ワクチンや特効薬の開発が進んでほしいと私は願っています。
2020年7月12日 (日)
4番大山選手が2打点を上げ先発岩貞投手が抑えて横浜にカード勝ち越し!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
横 浜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 4 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | x | 2 | 8 | 1 |
先発投手と4番打者の活躍で横浜に勝ち越しでした。昨夜と同じ8安打2得点なんですが、今夜は先発岩貞投手が8回までゼロを並べました。最後のスアレス投手はまたまた失点し、セーブはついたものの安定感にやや欠けるような気がしてなりません。球速ではスアレス投手ですが、安定感では岩崎投手の方に分があるようにも感じます。いずれにせよ、先発投手と4番打者がヒーローインタビューに並ぶのはいいものです。
1-0のリードでお風呂に入り始めて、一抹の不安はありましたが、今日は勝ってよかったです。
次のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!
2020年7月11日 (土)
クローザーの藤川投手が抑え切れずに横浜に逆転負け!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
横 浜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 4 | 10 | 0 | |
阪 神 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 8 | 1 |
最終回を藤川投手が抑え切れずに横浜に逆転負けでした。5連勝はなりませんでした。先発西投手はよく投げましたが、ご自慢のリリーフ陣のうちセットアッパーのスアレス投手が失点し、クローザーの藤川投手がエラーもあったとはいえ、ソト選手に逆転ツーランを浴びました。ボーア選手のツーランだけでは勝てません。開始時刻が遅れたとはいえ、10時をはるかに超える熱戦でした。悔しいです。勝ちたかったです。
明日は、
がんばれタイガース!
今週の読書は経済書のほかに時代小説の文庫本も含めて計5冊!!!
今週の読書は、大学の図書館で借りたのと京都市図書館で借りたのと2冊の経済書をはじめとして、好きな時代小説のスピンオフ3冊の文庫本と、合わせて計5冊です。大学の図書館は、教員については200冊まで6か月借りられるそうで、さすがに質の高い学術書も多いわけで、活用が進むような気がしますが、学生や院生諸君のためになるべく早めに返却したいと思います。
まず、ジェレミー・リフキン『グローバル・グリーン・ニューディール』(NHK出版) です。著者は、本書では文明評論家となっており、その昔の『エントロピーの法則』から最近の『限界費用ゼロ社会』などまでベストセラーも多く、私もかなり読んだ記憶があります。英語の原題は The Global Grren New Deal であり、日本語の邦訳タイトルはそのままに、2019年の出版です。もちろん、1930年代の米国ローズベルト大統領によるニューディール政策の現代版、特にエネルギーに焦点を当てた政策提案、ということになります。ただし、直接には、本書の冒頭にあるように、2019年2月にオカシオ=コルテス下院議員とエド・マーキー上院議員が議会に提出した「グリーン・ニューディ-ル」決議案に基づいていることを著者自身が認めています。ということで、私が少し前に読んだ『限界費用ゼロ社会』(読書感想文は2016年1月23日)を基に、私の目から見れば、資本主義が大きく変容し、中長期的には雇用が市場セクターから社会的経済=ソーシャル・エコノミーや共有型経済=シェアリング・エコノミーに移る(p.28)とともに、第2部の第5章では、CalPERSといった巨大な年金基金などが、日本でいうところのESG投資を始めて、マルクス主義的なものではない雇用者の支配が投資の面で始まる可能性を示唆しています。実は、余談ながら、私がジャカルタにいた今世紀初頭に、CalPERSがインドネシア国債を投資不適格に格付けし、大騒ぎになった記憶があります。それはともかく、本書では、脱炭素のために化石燃料から再生エネルギーへの転換を図るため、決定的にインフラが重要と主張しています。そうかもしれません。そして、そのインフラを整備するのは政府、特に米国では連邦政府であり、「市場の見えざる手」に任せておくことは適当ではないと強く主張し、1980年代の英米でのサッチャー政権やレーガン政権の進むめたインフラ・サービスの民営化を資産剥奪=アセット・ストリッピングとして否定しています。議論は極めて単純にして、自明なくらい明確です。ただ、現代貨幣理論の財政運営と同じで、実際の政策運営は、たぶんスカスカで、多くの批判がある可能性もありますが、方向としては極めて画期的であり、おそらく、本書の指摘に近い線で歴史が進むような気が私はしています。最後に、どうでもいいことながら、ITC化やIoTなどの通信技術やインターネットの普及などとの議論が少しあいまいです。エネルギー政策を切り離すのか、それとも一体的なものとして取り扱う何らかの必然性あるのか、私は読みこなせませんでした。
次に、尾木蔵人『2030年の第4次産業革命』(東洋経済) です。著者は、シンクタンクである三菱UFJリサーチ&コンサルティングの国際アドバイザリー事業部副部長らしいんですが、コンサルタントではなかろうかと思います。最初に、どうでもいいことながら、直前に取り上げたリフキン『グローバル・グリーン・ニューディール』で「第3次産業革命」と呼んでいるのが、本書では「第4次産業革命」になっています。まあ、同じ内容だろうと私は受け止めていますが、ややこしいことに変わりはありません。本書では、MaaS、5G、IoT、AIなどといった私でも聞いたことのあるテクノロジーとともに、私ごときでは聞いたこともないスマートダスト、サイバーフィジカルシステム、マスカスタマイズ、などの新技術も取り上げています。また、製造業をサービス業とともに焦点を当てており、特に、著者の東京外大ドイツ語学科卒業という経歴からしても、いくつかの国のうちでドイツも大きな注意が払われています。一例として、クツなんて、というと失礼かもしれませんが、ナイキの南アジアのスウェット・ショップが一時注目されたことが私の記憶に残っていたりする一方で、本書ではアディダズのドイツでの生産が新しい潮流として取り上げられていたりします。やっぱり、第3章の注目企業がもっとも紙幅が割かれていて読ませどころなんだと思います。ドイツからはアディダス、シーメンス、また、米国のアマゾン、マイクロソフト、テスラ、加えて、中国ではアリババ、テンセントに対して、日本からはデンソーやユニクロなどが取り上げられています。繰り返しになりますが、決してITC関連企業のトップ技術を持つサービス業だけでなく、製造業の製造工程にも着目しているという意味で、本書の出来は十分評価されるものと考えます。さらに、第4章では国別の第4次産業革命の取り組みが大雑把に外観されています。ただ、本書では随所に、第4次産業革命は規制のない産業や企業が展開するものであるという視点が貫かれているように私は受け止めました。すなわち、こういった先進技術やそれを駆使した企業や国を紹介する書籍では、判で押したように、日本企業が遅れており、場合によっては周回遅れとか、政府の政策が不十分とか、まさに紋切り型の評価しかしていない一方で、本書では、あくまで個別企業に軸足をおいて、政府の政策の重要性は認識されているものとは思いますが、個別企業の事業展開を広く紹介する点が優れていると感じました。グローバルに展開する企業に対して、あくまで国別の視点で凝り固まって、まったくステレオタイプの批判しか持ち合わせていない類書とはかなり違う読み応えがあります。しかも、私のような技術的なシロートにも事例が豊富で読みやすいと感じました。
最後に、佐伯泰英『奈緒と磐音』、『武士の賦』、『初午祝言』(文春文庫) です。双葉文庫から出版されていて、第51巻で完結した居眠り磐音のシリーズのスピンオフ短編集です。昨年から今年2020年に渡って、なぜか、双葉文庫ではなく、文春文庫から出ています。『奈緒と磐音』はそのものズバリで小さいころからの、というか奈緒が生まれる直前からの奈緒と磐音の馴れ初めを展開します。『武士の賦』では軍鶏の喧嘩剣術と蔑称された痩せ軍鶏の松平辰平とでぶ軍鶏の重富利次郎の2人に、後に利次郎と祝言を上げ夫婦になる雑賀衆の女忍びである霧子をからめた青春物語です。最後の2章に挿入された川越藩での大捕物は、いかにも取ってつけたような感がありますが、私も含めたこのシリーズのファンにはうれしい展開のような気がします。最後の『初午祝言』は表題作の品川柳次郎とお有との祝言をはじめ、後にうなぎ職人・幸吉と祝言をあげるおそめちゃんの小さいころの夏の思い出「幻の夏」、南町奉行所の名物与力・笹塚孫一がまだ17歳のとき謀略により父親の命を奪われる「不思議井戸」、向田源兵衛が女掏摸の用心棒を務め殴られ屋になった経緯を明らかにする「用心棒と娘掏摸、刀剣の研ぎ師・鵜飼百助が用心棒として半日だけ磐音を雇う「半日弟子」と、相互にそれほど関連のない、まさに、スピンオフの短編集です。私は居眠り磐音シリーズの続編で、磐音の嫡男である空也を主人公にした空也十番勝負シリーズはそれほどの興味も覚えず、作者自身も尻切れトンボでシリーズを終えてしまいましたが、コチラの居眠り磐音の続編の方がまだマシ、という気がします。ただ、私自身は読んだことがないのですが、この作者のスペインものはもっとひどいというウワサを聞きました。単なるウワサの聞きかじりですから、念のため。
2020年7月10日 (金)
実に効率よく青柳投手が5回完投で横浜を破って阪神4連勝!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
横 浜 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 4 | 0 | |||||
阪 神 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0x | 3 | 7 | 0 |
5回表をしのぎ切ったところでお風呂に入りましたが、お風呂から上がると、青柳投手の5回完投で阪神が4連勝でした。1回の先制パンチが大いに効きました。5回まで何とかやれたのは甲子園を整備する阪神園芸さんのおかげです。
明日も、
がんばれタイガース!
前年同月比マイナスとはいえ6月の企業物価指数(PPI)は下げ止まったのか?
本日、日銀から6月の企業物価 (PPI) が公表されています。企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲1.6%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の企業物価指数、前月比0.6%上昇 原油や銅価格の回復で
日銀が10日発表した6月の企業物価指数(2015年平均=100)は99.6と、前年同月比で1.6%下落、前月比で0.6%上昇した。前月比で上昇に転じるのは5カ月ぶり。6月は新型コロナウイルスの感染拡大で停滞した経済活動の再開が広がった。原油や銅の価格が回復したことで、企業物価は5月と比べて上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。新型コロナの影響で、企業物価指数は5月にかけて大きく下落していた。品目別に見ると原油や銅相場の影響を受けやすい石油・石炭製品や非鉄金属で5月から価格が回復した。
円ベースでの輸入物価は前年同月比15.6%下落した。前月比では0.9%上昇した。円ベースでの輸出物価は前年同月比で4.1%下落し、前月比では0.8%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。消費増税の影響を除くベースでの企業物価指数は前年同月比で3.1%下落、前月比では0.6%上昇した。前年比の上昇率は17年1月以来の大きさだった。
前月比では回復に転じものの、前年から比べると低い水準であることには変わりなく「新型コロナが企業物価の重しとなっている状況には変わりがない」(日銀)という。日銀は今後も、国内外の実体経済の回復が企業物価に与える影響を注視する姿勢だ。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

まず、PPIのうち国内物価の前年同月比上昇率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で▲2.0%の下落、レンジ上限は▲1.6%減ということでしたので、まあ、こんなものかという気もします。国内物価の季節調整していない原系列の前月比+0.6%への寄与度を見ると、石油・石炭製品が+0.51%、非鉄金属が+0.08%と、とこの2類別で殆どを説明できてしまいますし、これに続くのがスクラップ類+0.06%ですから、中国が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの最悪期を脱した影響が大きいと考えるべきです。おそらく、日本国内の景気動向も4~5月ころが底だったと考えられますから、需給ギャップから見ても6月統計で下げ止まりを示すのは自然な流れと私は受け止めています。ですから、世界経済、というか、先進国経済を中心とする世界経済における需給ギャップも考慮すれば、国内物価だけでなく、輸出物価も輸入物価も、そして、需要段階別で見ても、素原材料も中間財も最終財も、すべてのカテゴリーで下げ止まっているのが上のグラフから見て取れます。しかし、他方で、いま上げたすべてのカテゴリーの企業物価上昇率がマイナスであるのも事実ですし、PPIターゲットではなくCPIターゲットとはいえ、+2%の日銀の物価目標からはほど遠い、という点も決して忘れるべきではありません。
2020年7月 9日 (木)
ボーア選手のツーランで巨人を撃破し阪神3連勝!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
読 売 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 3 | 0 | |
阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | x | 2 | 7 | 2 |
今夜は今季の甲子園開幕戦です。その開幕戦で、ボーア選手のツーランが巨人を撃破し阪神が3連勝でした。先発ガルシア投手は6回を無失点に抑え、クローザー藤川投手は1失点ながら、最後を締めました。ボーア選手が打ち出したので、明日からも楽しみです。
明日の横浜戦も、
がんばれタイガース!
先月の大幅減からわずかに増加に転じた5月の機械受注をどう見るか?
本日、内閣府から5月の機械受注が公表されています。機械受注のうち、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+1.7%増の7650億円と小幅ながら反転増加を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。
機械受注、5月1.7%増 製造業は15.5%減
内閣府が9日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.7%増の7650億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3.1%減だった。
うち製造業は15.5%減、非製造業は17.7%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は16.3%減だった。内閣府は基調判断を「足元は弱含んでいる」で据え置いた。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

まず、コア機械受注に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で前月比▲3.2%の減少、レンジ上限は+2.1%増ということでしたので、上限に近いとはいえ、まあ、こんなものかという気もします。単月での振れの大きい統計ですし、それだけに、上のグラフでも6か月後方移動平均をボールドで示し、そのトレンドを示しグラフはまだ上向きになっていませんので、統計作成官庁である内閣府でも基調判断を「足元は弱含んでいる」で据え置いています。妥当なところかという気がします。加えて、これも季節調整済みの系列で見て、製造業が前月比▲15.5%減と先行指標である外需の落ち込みに連動する形で4か月連続での減少を記録しています。我が国のリーディング・インダストリーである自動車・同付属品が今年2020年2月から4か月連続の前月比マイナスを記録しているのはやや気がかりです。非製造業の+17.7%増は運輸業・郵便業、金融業・保険業、通信業などからの受注増であり、人手不足など、それなりの要因は十分に予想されるところです。ただ、何といっても、先行きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大次第という面があるものの、決して、明るい展望が開けているわけでもなく、仮に機械受注統計が4月で底を打ったとしても、その後の設備投資の回復はかなり緩やか、というか、むしろ、設備投資は緩やかな減少を続ける可能性もあります。人手不足に起因する代替設備需要はあるものの、企業業績の悪化に加えて、不確実性も払拭されていないからです。
2020年7月 8日 (水)
大きく改善して1月水準に戻りつつある景気ウォッチャー!!!
本日、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+23.3ポイント上昇して38.8を示し、先行き判断DIも+7.5ポイント上昇して44.0を記録しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆1768億円の黒字を計上しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
6月の街角景気、過去最大の上げ幅 経済活動再開で
新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ景況感が急速に改善している。内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査によると、街角景気の現状判断指数(DI、季節調整済み)は38.8と、前月比23.3ポイント上昇した。上げ幅は比較可能な2002年以降で最大だった。
改善は2カ月連続で、感染拡大前の今年1月の水準(41.9)に近づいた。6月25~30日に景気に敏感な業種・職種の経営者や現場の担当者ら約2千人に景況感を聞いた。
政府は5月25日に緊急事態宣言を全国で解除した後、段階的に経済活動のレベルを引き上げた。客足に回復の兆しがみられことから、小売りや飲食関連の景気実感が急速に改善した。
5月の経常収支、1兆1768億円の黒字 71カ月連続黒字
財務省が8日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆1768億円の黒字だった。黒字は71カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆894億円の黒字だった。
貿易収支は5568億円の赤字、第1次所得収支は2兆434億円の黒字だった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

引用した記事にもあるように、景気ウォッチャー現状判断DIの季節調整済みの系列で見て、6月統計は38.8と新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が大きく拡大する前の今年2020年1月の水準である41.9にかなり近づきつつあります。ただし、現状で、東京都の感染者数が連日100人を超えていることに見られるように、それほどマインドの回復が順調に進むとは思えず、特に、今は政府も東京都などの地方公共団体も強気ですが、COVID-19の第2波や第3波次第ではマインドは再び急速に悪化する懸念は残ります。もちろん、これだけ急激な変化幅を見せたわけですので、統計作成官庁である内閣府では基調判断を5月の「悪化に歯止めがかかりつつある」から、6月統計に対しては「持ち直しの動きがみられる」に上方修正しています。すべてのコンポーネントが底を示していた4月統計から2か月連続の改善なわけですが、もっとも懸念されるのは雇用関連DIの戻りが遅い点です。すなわち、現状判断DIの季節調整済み系列について、4月から6月統計への2か月の差を見ると、現状判断DI全体では2か月で+30.9ポイントの上昇を示していますが、COVID-19による経済的な影響が最も大きかった飲食関連の+42.7ポイントをはじめとして、家計動向関連が+35.8ポイント改善している一方で、企業動向関連ではそもそもダメージが家計動向関連ほど大きくなかったことから+20.5ポイントの改善にとどまっていますし、特に、雇用関連では+21.1ポイントとなっています。企業動向関連と同じで、雇用に関しては短期にはどうしようもない人口動態から人手不足が進む中で、もともとCOVID-19のダメージが小さかったとはいえ、家計の消費の原資に直結する雇用の改善の動向はやや気がかりなところです。

次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、COVID-19の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性があります。内外の景気動向の差に基づく貿易赤字が主因となって経常収支が落ち込んでいますが、季節調整済みの系列で見る限り、まだ貿易収支は赤字で経常収支も低い水準にあるものの、最悪期を脱して回復に向かっている可能性が高いと考えるべきです。
2020年7月 7日 (火)
悪化を続ける景気動向指数もそろそろ底を打つか?
本日、内閣府から5月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲1.6ポイント上昇して79.3を示した一方で、CI一致指数も前月から▲5.5ポイント下降して74.6を、それぞれ記録しています。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、10か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
5月の景気動向指数、一致指数は10年10カ月ぶり低水準
内閣府が7日発表した5月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比5.5ポイント低下の74.6と4カ月連続で低下した。新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛や企業活動の停滞などを背景に、指数の水準は09年7月(74.2)以来10年10カ月ぶりの低さだった。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のすべてが指数を押し下げた。新型コロナによる雇用環境の悪化を受けた有効求人倍率(除学卒)の影響が最も大きく、生産調整などが響いた鉱工業用生産財出荷指数が続いた。
一致指数の動きから機械的に求める景気動向指数の基調判断は、10カ月連続で「悪化」となった。基調判断が10カ月連続で「悪化」となるのは、08年6月からの11カ月連続以来の長さだ。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比1.6ポイント上昇の79.3と、3カ月ぶりに上昇に転じた。経済活動再開を受けた景況感持ち直しへの期待感から消費者態度指数が改善したほか、東証株価指数の上昇などが寄与した。もっとも、内外需の低迷や新型コロナの「第2波」などへの懸念はくすぶり、水準は依然として低い。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比3.8ポイント低下の94.0と5カ月連続の低下だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

ということで、景気の落ち込みは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものであることは明らかです。すなわち、景気動向指数のうちのCI一致指数を前月との差で見ると、2月こそ▲0.6ポイントで済んだものの、3月には▲4.9ポイントの下降、4月は過去最大の▲8.7ポイントの下降、そして、直近の5月には▲5.5ポイントの下降となりました。まず、一致指数を詳しく見ると、引用した記事にもある通り、有効求人倍率(除学卒)のマイナス寄与がもっともお菊、次いで、 鉱工業用生産財出荷指数、さらに、生産指数(鉱工業)の順となります。速報段階で利用可能な7系列はすべてマイナスを記録しています。他方で、CI先行指数は5月は上昇に転じています。消費者態度指数のほか、新規求人数(除学卒)やマネーストック(M2)(前年同月比)のプラス寄与が大きくなっています。先月末に公表された鉱工業生産指数(IIP)を取り上げた際にも、6月の製造工業生産予測指数がプラスを示していることから、ひょっとしたら、5月がCOVID-19による景気後退の底かもしれない、と示唆しましたが、同じことは景気動向指数のCI先行指数からも見て取れます。ただし、5月単月でわずかな上昇ですから、まだ、3か月後方移動平均すらプラスにはなっていません。何度も繰り返しになりますが、この4~6月期が景気の底になる確率はかなりある一方で、その先の景気回復は極めて緩やかなものとなる確率はそれ以上に高いのかもしれません。

最後に、本日、厚生労働省から5月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、そろそろ、先月あたりから取り上げてみようかと考えてグラフを書いています。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で▲2.1%減少の26万9341円となっています。実質賃金も同じく前年同月比▲2.1%の減少です。COVID-19の影響で残業が大幅に減少したため、所定外給与が名目で▲25.8%の減少を示しています。景気動向指数のトピックに隠れて、こっそりと持ち出しておきたいと思います。
2020年7月 6日 (月)
ピュー・リサーチ・センターによる米国大統領選挙の支持階層分析やいかに?
6月30日付けで、米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから Public's Mood Turns Grim; Trump Trails Biden on Most Personal Traits, Major Issues と題する調査結果が明らかにされており、Trump Trails Biden というタイトルから明らかな通り、米国大統領選挙の支持階層分析が示されています。
上のグラフは、ピュー・リサーチのサイトから As in 2016, wide divides by gender, race and ethnicity, age and education in 2020 voter preferences と題するグラフを引用しています。米国大統領選挙の候補と考えられる民主党の売電上院議員と共和党のトランプ現米国大統領を比較して、その支持層を性別・人種別・年齢別・学歴別、などで分類しています。全体として、10%ポイント前後の支持率の差があるのは多くの世論調査結果で共通しているように私は受け止めています。その上で、性別には大きな特徴はないものの、人種別には黒人やヒスパニックでバイデン候補がリードしています。年齢では若いほど、また、学歴が高いほどバイデン候補の支持が大きい、との結果が示されています。これは4年前のBREXITの英国国民投票とかなり類似していると私は考えています。典型的には、PoliticoのGuàrdiaリポートが明らかにしています。4年前の2016年のBREXITの国民投票でも、年齢が低いほど、また、学歴が高いほど、Remainの投票割合が高い、との結果となっています。おそらく、4年前の米国大統領選挙でもご同様だったんではないかと私は想像していますが、それでもトランプ米国大統領が選挙で勝ったわけですから、示唆に富む分析結果ともいえます。
さて、今年の米国大統領選挙を制するのは誰なんでしょうか?
2020年7月 5日 (日)
お目覚めボーア選手の満塁弾で広島を逆転し阪神連勝!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 0 | 0 | 5 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 | 8 | 0 | |
広 島 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 6 | 2 |
ボーア選手のグランドスラムで広島を逆転して阪神が連勝でした。先発西投手は3失点ながら8回を抑えきり、マルテ選手に代わって4番に座った大山選手も昨日に続いてホームランを放り込み、サンズ選手からも2号が飛び出し、ホームラン攻勢で広島を粉砕しました。特に、ボーア選手のホームランは、まさに、「打った瞬間」というヤツで、打たれた投手も、守っていた鈴木右翼手も、見上げるだけで一歩も動きませんでした。昨日に続いて、ひょっとしたら、このまま調子が上向くかもしれない、と期待なのか、錯覚なのか、させてくれる試合運びでした。それにしても、今季は阪神に取りこぼしたチームが優勝戦線から脱落するんではないか、と見られていましたが、広島がそうなのかもしれません。
明日も、
がんばれタイガース!
2020年7月 4日 (土)
今シーズン一番の試合運びでタイガース快勝!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 2 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 1 | 1 | 9 | 15 | 0 | |
広 島 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 3 | 11 | 0 |
ゴルフのティーショットで私くらいのヘタッピーだと「本日一番」というのがありますが、今日の試合は阪神が今シーズン一番の試合で広島に快勝でした。広島のエース大瀬良投手を打ち崩して、マルテ選手のホームランで始まった後、近本外野手や梅野捕手が打って、ヒーロー・インタビューは先発して6回を3失点に抑えた岩貞投手でと、ひょっとしたら、明日から調子が上向くかもしれない、と期待なのか、錯覚なのか、させてくれる試合運びでした。まあ、明日の試合も西投手の先発ですし、楽しみにしたいと思います。
明日も、
がんばれタイガース!
今週の読書は話題のMMTを取り上げた経済書をはじめとして計4冊!!!
今週の読書は、話題の現代貨幣理論(MMT)を取り上げた経済書をはじめとして、私の専門分野である時系列分析の学術書も含めて、以下の通りの計4冊です。關西に引越して来て3か月あまりとなり、だんだんと読書のペースが整って来た気がします。
まず、永濱利廣『MMTとケインズ経済学』(ビジネス教育出版社) です。著者は、シンクタンクのエコノミストです。本書の巻末にある著者ご紹介で、略歴の後にいくつか公職を書いていますが、最初の研究会委員は私がお誘いしたもので、その次の学会の幹事については、私も面識ありますので、引越しと転職のお知らせをメールで送った記憶があります。ということで、本書では、注目の現代貨幣理論(MMT)を軽く解説しながらケインズ経済学との関係を、これまた、軽く解説しています。他に、いくつかの論点も整理されていて、アベノミクスは国際的に標準的な経済学に則った政策であるとか、まあ、エコノミストの間では一般的なの理解が展開されていたりします。MMTと私なんぞの標準的、というか、主流派経済学との関係については、著者のオリジナルな理解というよりは、本書にも明記されているように、専修大学の野口教授がニューズウィーク日本版で連載していたコラムを基にしています。どんどんと前置きが長くなりましたが、要するに、MMTと主流派経済学の違いは3点あり、第1に、MMTでは、中央銀行は自然利子率に金利を固定するだけで政府からの独立性も不要で、何ら権能を持ちません。第2に、失業の発生している不況下における財政政策の役割については、MMTと主流派で違いはとても小さい一方で、完全雇用下で政府支出を増加させれば、主流派はクラウディングアウトが生じると考えますが、MMTはクラウディングアウトが生じるかどうかどうかはともかく、インフレの加速をターゲットに政策運営をすべきと考えます。第3に、MMTにはケインズ経済学におけるIS-LM分析のフレームワークにおけるような財市場の分析は存在しません。現在の日本経済に当てはめて考えると、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が及ぶ前ですら、完全雇用までまだスラックがあって物価が上昇しなかったわけですから、MMTと主流派経済学の間に、控えめにいっても、大きな違いはありません。ただ、政府で長らく官庁エコノミストの役割を担ってきた私の目から見て、財政政策で物価をコントロールするのはかなりムリがあるような気がします。機動的な政策運営は可能なんでしょうか。やや疑問に思わないでもありません。最後に、本書は決して学術書ではないとはいえ、引用などで少し気にかかる点があります。本文に一括して明記されているとはいえ、専修大学の野口教授がニューズウィーク日本版で連載していたコラムからダイレクトに切り取っている部分があるほかに、私の目についたところでは、インフレ目標に従ったLM曲線の下方シフト(p.18)も、参考文献にあるとはいえ、杏林大学の西教授の論文から出展を明記せずに引用しているようで、ややアブナい気がしないでもありません。著者は、アベノミクスの政策を強力に支持するエコノミストですので、がんばればひょっとしたら、片岡さんや安達さんの後の日銀審議委員になれる資格があると私は考えているだけに、もう少しマナーに則った著書に仕上げて欲しかった気がします。
次に、平井健之『財政運営の時系列分析』(晃洋書房) です。著者は、大学の研究者であり、私とそう年齢は違わないようなのですが、本書は学位請求論文だそうです。その昔の京都大学経済学部でも、少し前に亡くなった私の恩師などは早々に博士の学位を取得していたんですが、定年退職間際に学位取得するのがひとつのファッション的な要素を持って見られていた時期もあったような記憶があります。それはともかく、私が10年ほど前まで役所から出向して勤務していた長崎大学経済学部で最初に書いた紀要論文が財政の持続可能性に関する検定のサーベイでしたので、本書についても興味をもって読みました。基本的に、私の興味範囲と同じで時系列データによる日本の財政に関する数量分析なんですが、ひたすら計量検定をしている印象があります。博士学位請求論文であれば、それでOKなのかもしれませんが、学術書とはいえ一般の出版社から公刊するのであれば、その数量分析が経済学的にどういった意味を持っているのか、などにももっとていねいに示して欲しかった気がします。少なくとも、私の紀要梵文では、Hamilton and Flavinの論文は「直感的には、財政のプライマリー・バランスに関して検証していると考えて差し支えない。」とか、Bohnの検定が「最も緩やかなものと考えられ、直感的には、プライマリー・バランスが赤字であっても、その赤字幅が縮小していれば財政は持続可能と判断される。」とかの解説を付けています。一応、役所からの出向者ですので、ちゃんと理解している証拠を示しておいたわけです。本書でも、それくらいの解説は欲しい気がします。もうひとつは、検定せずとも無条件に財政が持続可能なケースが2つある点への言及がありません。ひとつは、本書でもチラリと別の意味で言及しているリカード等価定理が成立している場合で、もうひとつは、成長率が国債金利を上回って動学的非効率が生じているケースです。このりカード等価定理は時系列データを用いて検定の対象になりますし、動学的非効率についても理論モデルで示すことができるハズですから、できることであれば、1章を割いて、この2ケースについても取り上げるべきではなかったか、という気がします。なお、ついでながら、順序が逆になるものの、先に取り上げた『MMTとケインズ経済学』では、動学的非効率という学術用語は使っていませんが、国債金利と成長率の大小で財政破綻が生じなくなることは言及されていますので、完全な学術書である本書でも何らかの指摘が欲しかったと思います。最後に、時系列VARモデルでのインパルス応答関数の見方に疑問が残ります。特に第8章の地方財政の分析では、2標準偏差のコンフィデンス・インターバルがほとんどのケースでゼロをまたいでいるにもかかわらず、そういった統計的な有意性を軽視する形で結論を急いでいるというか、自分なりの結論を強引に持ち出しているような気がします。
次に、魚柄仁之助『国民食の履歴書』(青弓社) です。著者は、食文化研究家と紹介されています。本書では、いわゆる日本食の代表としての寿司とか天ぷらなどではなく、タイトルに有るように国民食ですから家庭料理の代表として、上の表紙画像に見えるように、カレー、マヨネーズ、ソース、餃子、肉じゃがを取り上げています。可能な範囲で婦人雑誌などをさかのぼって当たり、紹介されているレシピにそって実際に調理してみた結果が報告されています。さらに、それらの雑誌や書籍の図版が極めて豊富に紹介されています。ですから、現在の時点で考えられている料理ではなく、その時点で考えられていた料理が並びます。その昔は、レストランでの外食などが一般的ではなく、今でいえば高級料理店のシェフ、というか板前さんがそのお店の料理のレシピを紹介したりしています。さらに、興味深いのは戦時下で代用食のようなレシピも豊富に収録されています。加えて、著者の解説がなかなかにユーモアたっぷりに洒落ています。私がなるほどと思ったのは、餃子の章で、よくいわれるように、中国は水餃子、日本は焼餃子らしいんですが、当然のように、出征も含めて中国大陸で餃子に接した人が国内に持ち込んだわけで、それまで餃子については皆目情報がなかったわけですので、それぞれに持ち帰った情報に基づく餃子がアチコチで作られたため、「本家」だとか、「元祖」だとかで、日本全国いろんなところで餃子の食文化が花開いた、という見方です。これには私も大いに納得してしまいました。ただし、最終章の肉じゃががいわゆるお袋の味になった歴史的な推察にはやや疑問があります。というのは、肉じゃががそうでもないかもしれませんが、食文化の背景には、食品会社の陰謀とまではいわないとしても、それなりのプロモーションがあったのではないか、と私は想像するのですが、その点について、著者の目配りが欠けています。私の知る範囲で、典型的なケースはバレンタインデーのチョコです。本書で指摘されているように、極めて短期間に肉じゃががお袋の味になった背景に、バレンタインデーのチョコに類似した何かがあるんではないか、という気がしないでもありません。しかし、著者にはそういった視点はないようです。
最後に、左巻健男『学校に入り込むニセ科学』(平凡社新書) です。著者は、理科教育の研究者であり、東京大学教育学部附属中学校・高等学校の教諭から、いくつかの大学に転じています。私も教員に復帰して、学校教育の現場に怪しげな情報がいっぱいあることは認識していますので、それなりの興味をもって読み始めました。本書では、『水からの伝言』やEM菌をはじめ、ゲーム脳や親学などなど、一見して科学的な装いをしながら、実際には科学的な根拠はなく、教員や生徒の「善意」を利用して勢力を拡大してきたニセ科学について、そのオカルトまがいの内容を明らかにしています。加えて、そういったニセ科学の背後に潜む右翼勢力についても言及しています。本書では著者の専門領域から、理科、自然科学に限定されているんですが、経済学なんて学問分野ではもっと怪しげな情報でいっぱいです。そもそも、経済学はそこまで発達した学問分野でないことも確かです。ただ、本書ではプレゼンの仕方が下手というか、何というか、読む人によっては特定の集団を攻撃しているように見えるかもしれません。リフレ派のエコノミストが日銀をしつこく批判した今世紀冒頭の状況をついつい思い出してしまいました。それにしても、自然科学に疎い私でも、明らかに怪しげなニセ科学がいっぱい取り上げられているんですが、おそらく、本書でも指摘されているように、宗教的な色彩や個人崇拝により、学校にニセ科学が持ち込まれないように、教員として心したいと思います。
2020年7月 3日 (金)
米国雇用統計のリバウンドをどう評価するか?
日本時間の昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響から、非農業雇用者数は4月の大幅減の後、5~6月統計ではリバウンドして6月には+4,800千人増を記録しています。同じく、失業率も一気に悪化した4月からのリバウンドが見られ、11.1%に改善しています。でも、まだ、10%を超える水準です。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから統計を報じる記事を最初の6パラだけ引用すると以下の通りです。
4.8M jobs added and unemployment falls to 11.1% as more states reopen after COVID-19 shutdowns
The U.S. economy added a record 4.8 million jobs in June as states continued to allow businesses shuttered by the coronavirus to reopen and more Americans went back to work, even as massive layoffs have persisted.
The unemployment rate fell to 11.1% from 13.3% in May, the Labor Department said Thursday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 3.1 million jobs were added in June.
But while the rebound in employment has soundly topped estimates, a surge of new infections in many states threatens to curtail gains in coming months.
The number of Americans on temporary layoff fell by 4.8 million to 10.6 million as many laid-off workers were called back amid state reopenings. About 60% of unemployed workers were on temporary layoff, down from 73% in May. At the same time, 2.9 million people had permanently lost jobs in June, up from 2.3 million the prior month, in a sign more employers are cutting ties with workers.
The Labor Department separately reported Thursday that 1.4 million Americans filed initial jobless claims last week, down from 1.5 million the prior week, a sign that a historically high number of workers continue to be laid off. Claims have reached a staggering 48 million the past three months.
やや長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期だったんですが、米国経済が長らく景気回復・拡大を続けているために、このグラフの範囲外になってしまっているものの、現在の足元で米国経済が景気後退に入っていることは明らかです。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。

米国に限らず、経済指標が4月や5月に大きく悪化したのは、いうまでもなく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のためのロックダウンなどの措置によるものであり、その後の感染拡大と経済回復のトレードオフに直面して、いろんな方向性が示されているところですが、米国は我が国や欧州と比較して、明らかにCOVID-19の感染拡大防止よりも経済回復に力点をおいているように見受けられます。しかし、その米国においてすら、雇用の回復が緩やかであるわけですので、我が国などにおける経済政策の方向性も、十分、米国政策動向を考えて策定されるべきです。特に、従来から、米国は我が国などに比較して、雇用では賃金という価格ではなく数量ベースの調整、すなわち、雇用者の増減で労働市場の調整が行われる経済構造になっていましたので、雇用者や失業率の大きな変化が生じているわけですが、6月の雇用増+4,800千人増をもって、「単月で過去最大」とトランプ米国大統領が発言したと、日経新聞のサイトで報じられていますが、4月に20,000万人超の減少があったわけですので、まだまだ雇用回復の道のりは長いと覚悟すべきです。事実、米国議会予算局(CBO)では、7月2日に10年間の長期経済見通し An Update to the Economic Outlook: 2020 to 2030 を公表しましたが、失業率は今年2020年に10.5%、来年2021年7.6%、そして、2025-30年になっても米国失業率は4.4%に高止まりし、COVID-19パンデミック前の2019年の水準である3.5%には戻らない、と予測しています。CNNの報道などでも注目しています。

最後に、上のグラフは時間当たり賃金の動向をプロットしています。雇用統計と同じように、4月統計で大きくジャンプし、その後、5~6月統計と落ち着きを取り戻し始めていますが、少なくとも米国連邦準備制度理事会(FED)の金融政策に対する指標としての役割を取り戻すまでは、もう少し時間がかかりそうです。
2020年7月 2日 (木)
何をやっても勝てないタイガースは泥沼の4連敗!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 6 | 0 | |
中 日 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | x | 4 | 7 | 2 |
ようやく、僅差の負けゲームができるようになった気がします。ハッキリいって、今年はもういいですから、来年を見据えた戦いをして欲しい気がします。
明日は、
がんばれタイガース!
総務省統計局「緊急事態宣言下における国内移動者数の状況」に見る東京都からの脱出やいかに?
一昨日の6月30日付けで総務省統計局から「統計Today No.157」として、「緊急事態宣言下における国内移動者数の状況」と題するリポートが公表されています。『住民基本台帳人口移動報告』からのリポートで、実は、6月10日にも同じ『住民基本台帳人口移動報告』を基にした3月と4月の国内移動のリポートが「統計Today No.156」として公表されていますが、後者の「統計Today No.156」は通常の年度替わりの移動や引越しシーズンの特徴を取りまとめただけなのに比べ、前者の「統計Today No.157」ではタイトル通りに緊急事態宣言との関連に焦点が当てられています。実は、私はこの「統計Today」というシリーズは書いたことがないのですが、別シリーズの「統計リサーチノート」というのは、統計局に出向していた際にいくつか書いた記憶があります。それはともかく、グラフを引用しつつ簡単に見ておきたいと思います。なお、この『住民基本台帳人口移動報告』では、あくまで引越しに伴う移住のことを「移動」と定義していますので、電車に乗って買い物に行ったり、通勤とか、宿泊を伴うとしても旅行なども、この統計で定義する「移動」ではありません。この点は注意が必要です。また、統計局より1日早く、6月29日付けでみずほ総研から同じ趣旨の「コロナで東京の転入超過数が急減」と題するリポートも明らかにされています。こちらもご参照かもしれません。
上のグラフはリポートから引用していて、最近7年間の月別の東京都の転入超過数をプロットしてあります。リポートのタイトルこそ、「国内移動」と気張ってはいますが、実は、このリポートは緊急事態宣言下での東京への人口流入に焦点を当てています。そして、上のグラフから明らかな通り、外国人を含む移動者数の集計を開始した2013年7月以降初めて、わずかに1000人余りではありますが、緊急事態宣言中の2020年5月に東京都は転出超過を記録しています。どこまで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のための緊急事態宣言が影響したのかは、少なくとも現時点では不明ながら、何らかの関係を強く示唆されていると感じるのは私だけではないと思います。ここ数年で月単位で見ても、東京に移り住む人の数が一貫して東京の外に出る人数を上回っていたにもかかわらず、緊急事態宣言が出された後の今年2020年5月にはこれが逆転し、ネットで見て東京から外に移り住む人の数の方が多くなったわけです。どうでもいいことながら、我が家のカミさんと私は3月に東京から移り住んでいます。
まず、地域的な要因を探ったのが上のグラフであり、リポートから引用していて、道府県別の東京都への転入者数の前年同月差、すなわち、2019年5月と2020年5月の差をプロットしてあります。明らかに東京近郊の首都圏から東京に移り住む人の数が減っていることが理解できます。首都圏のほかでは、大阪府、愛知県、福岡県といった人口の大きな府県が続いています。でも、大雑把にいって、埼玉県、千葉県、神奈川県からの転入が減っていることが大きな要因です。
次に、年齢的な要因を探ったのが上のグラフであり、リポートから引用していて、5歳階級の年齢別の東京都への転入者数の前年同月差、すなわち、2019年5月と2020年5月の差をプロットしてあります。20歳代前半をピークにして、大雑把に、年齢とともに徐々に転入超過者数のマイナス幅が小さくなっており、明らかに若年層を中心にした東京転入減だということが理解できます。すなわち、これらのグラフを並べると、首都圏3県から20代を中心に、おそらく、進学や就職などの機会で東京に移り住むのをヤメにして、地元から通学・通勤する方を選択した人が昨年より多くなった、という結果なのであろうと想像されます。そして、時期的に2020年5月が緊急事態宣言下であったということは、要因のひとつがCOVID-19であろうという点も示唆されている気がします。ただし、東京一極集中はともかく、首都圏への集中が緩和された、ということにはならないんではないか、と私は受け止めています。
最近、東京でのCOVID-19感染者数がジワジワと増加の兆しを見せていて、1日あたりで今日は100人超との速報を見ました。クラスターの発生した周辺を重点的に検査しているから、との発表もあるようですが、この東京からの純転出という統計は、現在、東京都知事選挙の終盤戦で、小池都政への批判もひょっとしたら含まれているのかもしれません。たぶん、違うとは思いますが。
2020年7月 1日 (水)
貧打の上にエラーも出て先発投手が大量失点し勝てないタイガース!!!
一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
阪 神 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 3 | 7 | 3 | |
中 日 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 | 0 | 0 | 0 | x | 6 | 10 | 1 |
貧打のゼロ行進の上にエラーも出て先発投手が大量失点では勝てません。まだ100試合あるわけですし、もっとひどいタイガースも見てきたんですが、それにしても、どこまで続く泥沼なんでしょうか。
明日は、
がんばれタイガース!
急激に悪化した企業マインドを反映する6月調査の日銀短観をどう見るか?
本日、日銀から6月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲26ポイント低下して▲34を示した一方で、本年度2020年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比▲0.8%の減少と3月調査の結果から下方修正されてます。日銀短観の設備投資計画は統計のクセとして、6月調査は3月調査よりもハネ上がるのが通例なんですが、極めて異例の結果となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
大企業製造業の景況感、11年ぶり低水準 日銀6月短観
日銀が1日発表した全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はマイナス34になった。リーマン危機後の2009年6月以来11年ぶりの低水準だ。3月の調査から26ポイントの落ち込みで、悪化幅は過去2番目の大きさ。新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に経済活動が停滞している影響がくっきり表れた。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。大企業製造業のマイナスは2四半期連続。QUICKが事前に集計した民間予測の中心値(マイナス31)を下回った。悪化は6四半期連続になる。かねて米中貿易摩擦で業況が悪化していたところに新型コロナの世界的な流行が追い打ちをかけた。
非製造業はマイナス17で25ポイント悪化した。過去最大の悪化幅だ。中小企業の景況感も悪化した。製造業はマイナス45で30ポイント下がった。
大企業の景況感は小売業だけが改善し、他の業種は軒並み悪化した。DIが最も低かったのはコロナ禍が直撃する宿泊・飲食サービスでマイナス91だった。入国制限や外出自粛で観光客が「蒸発した」(日銀)。レジャー施設などを含む対個人サービスは64ポイント下がり、マイナス70となった。感染防止のため長期間の営業自粛を余儀なくされたためだ。
製造業で最もDIが悪かったのは基幹産業である自動車だ。マイナス72で55ポイント下がった。09年6月(マイナス79)以来の低い水準だ。自動車販売の急減で生産調整を余儀なくされている。
小売業はプラス2で9ポイント上昇した。食品スーパーやホームセンターで「巣ごもり需要が好調だった」(日銀)という。
先行きは大企業(全産業)がマイナス21と5ポイントの改善を見込む。ただ、新型コロナの感染者はブラジルやインドなど新興国で増加に歯止めがかからず、経済活動を再開した米国でも再び増えている。先行きの不透明感は強い。
やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月、あるいは、四半期ベースでは2018年10~12月期を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

まず、先週6月26日付けのこのブログでも日銀短観予想を取り上げ、大雑把に、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが▲30前後という結果をお示ししていましたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく大企業製造業の業況判断DIが▲31と報じられていますので、実績が▲34ですから、やや下振れした印象はあるものの、現在までの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を考慮すれば、ほぼ「こんなもん」と受け止められているような気がします。私が見た範囲で特徴的だったのは、もちろん、細かい産業別規模別に見ればバラツキは大きいものの、規模別で大企業・中堅企業・中小企業の分類、また、産業も大きく製造業と非製造業であれば、2×3の6カテゴリーで見て、3月調査から6月調査への変化幅は▲25から▲30の範囲にあります。より細かく見ると、非製造業のうちでも小売業は3月調査から6月調査への変化幅で見て、大企業こそ記事にもあるように+2と企業マインドが改善している一方で、同じ小売業でも中堅企業は▲16と3月調査から悪化していますし、中小企業では▲18と悪化幅が大きくなっています。そして、小売業に限らず、先行きについては大企業と中堅・中小企業とで明暗が別れています。すなわち、大企業では製造業・非製造業ともに先行き業況判断DIは改善すると見込んでいるのに対して、中堅・中小企業では足元から先行きにかけてもさらに悪化すると考えています。上のグラフに見られる通りです。ただし、改善の方向を示すとはいえ、大企業でもまだDIの水準は大きなマイナスのままです。ということで、変化方向ではなく6月調査の業況判断DIの水準に着目すると、特に低水準となっているのは製造業では自動車、非製造業では宿泊・飲食サービスとなっています。ですから、COVID-19の感染拡大防止のための世界的なロックダウンや外出自粛の影響が大きいのはいうまでもありません。繰り返しになりますが、先行きもヘッドラインとなる大企業製造業こそ3か月先には▲27と改善する見込みを示しているものの、まだまだDIの水準としては低いと考えるべきですし、製造業でも非製造業でも、中堅企業と中小企業は先行きさらなる悪化が見通されています。何度も繰り返しましたが、日本を含む先進国経済については4~6月期で底を打つ可能性が高いものの、その後の回復はかなり緩やかになるものとの予想が強まっています。

続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも過剰感が高まる方向なんですが、DIの水準として、設備についてはすでにプラスに転じて過剰感が発生している一方で、雇用人員については大きく不足感が緩和されたとはいえ、まだ過剰感が発生するには至っておらず、絶対的な人数としては不足感が残っている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。ただ、我が国人口がすでに減少過程にあるということが企業マインドによく反映されていることは事実です。安倍内閣はかつて賃上げを経済界や経営者団体に要請したこともあったんですが、それでも賃金が上がらなかったのですから、マインドだけに不足感があり、経済実態としてどこまで不足しているのかが、私には謎です。グローバル化が進む中で生産関数が同じ産業では賃金が途上国や新興国の水準に影響を受けるというのが国際貿易論の結論ですが、そうなのかもしれませんし、違うかもしれません。他方で、ITC化などのスキル偏重型の技術進歩のため格差が拡大している、というのが主流派経済学の主張です。これもそうなのかもしれませんし、違うかもしれません。

日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。最初に書いた通り、日銀短観の設備投資計画のクセとして、3月調査時点ではまだ決まっている部分が少ないためか、3月には小さく出た後、6月調査で大きく上方修正される、というのがあったんですが、今年度2020年度だけは違っています。3月調査の設備投資計画から6月調査では全規模全産業で下方修正されています。これは、リーマン・ブラザーズ破綻直後の2009年度に3月調査で▲14.3%減から6月調査の▲17.1%減に下方修正されて以来の異例のパターンです。加えて、2019年度の設備投資計画も最後の6月調査による実績では前年度比マイナスとなりました。ただ、上のグラフは全規模全産業をプロットしてありますが、大企業全産業では+3.2%増と底堅い設備投資計画が示されています。ただし、グラフは示していませんが、設備投資の決定要因としては将来に向けた期待成長率などとともに、足元での利益水準と資金アベイラビリティがあります。6月調査の日銀短観でも全規模全産業の経常利益の2020年度計画は前年比で▲20%近いマイナスですし、資金繰り判断DIは中小企業でとうとうマイナスに悪化しています。この資金繰りについては、日本政策金融公庫が実施している「中小企業景況調査」でも5月からマイナスに転じており、日銀としても何らかの中小企業向け資金繰り支援策を考慮する必要があるんではないか、と私は考えています。

最後の最後に、日銀短観を離れて、本日、内閣府から6月の消費者態度指数も公表されています。6月の消費者態度指数は5月から+4.4ポイント上昇して28.4となり、2か月連続で前月を上回りました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる。」と上方修正しています。グラフだけ上の通りお示ししておきます。
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