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2020年8月25日 (火)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング「新型コロナウイルス感染症によって拡大する教育格差」やいかに?

先週金曜日の8月21日に三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「新型コロナウイルス感染症によって拡大する教育格差」と題するリポートが明らかにされています。小学生から高校生の子どもがいる世帯の親 2,000人に対して実施した独自のアンケート調査を用いて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が雇用・教育の双方を通じて子どもにどのような影響を与えたのかを明らかにしようと試みています。私も4月から教育の現場に転じて教師として働いていて、リモートのオンライン授業なんぞをやったりしているわけで、COVID-19が教育に及ぼす影響はとても気にかかるところです。50ページ超のそれなりのボリュームあるリポートですので、主としてリポート冒頭数ページの【要旨】からいくつか図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、教育に入る前に、親の雇用との関係で、就業形態別にCOVID-19の感染拡大による離職・転職確率を就業形態別に示したグラフをリポートから引用すると上の通りです。直感的に、というか、常識的に理解できるところですが、非正規・自営・正規の順で離職確率が高くなっています。おそらく、所得についても非正規よりも正規の方が高いのが一般的でしょうから、以降に引用する結果などに照らし合わせても、親の雇用と子供の教育にはそれなりの因果関係があるものと考えるべきです。そうです。おそらく、因果関係であって、相関関係ではありません。子供の教育状況が親の雇用に影響を及ぼすよりは、親の雇用や所得がまずあって、それが子供の教育に影響を及ぼすと考えるべきです。

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次に、世帯年収・世帯構造別と学校の成績を示したグラフをリポートから引用すると上の通りです。これも、直感的に理解できる通り、おおむね所得が高いほど成績もいい、という結果が示されているんですが、年間所得が1500万円を超えるリッチな富裕層よりも、1000万円前後か少し上回るくらいのいわゆるアッパーミドル層の方が子供の成績がいい、と回答しています。そうなのかもしれません。

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次に、世帯年収・世帯構造別とパソコン・タブレットPCをいずれも保有していない割合、および、臨時休校前後での成績別の勉強時間を示したグラフ2枚をリポートから引用すると上の通りです。これも、直感的に理解できる通り、まず上のパネルから、おおむね所得が高いほどパソコン・タブレットPCの所有率が高い、しかしながら、年間所得が1200万円を超えるリッチな富裕層よりも、1000万円前後か少し上回るくらいのいわゆるアッパーミドル層もかなり所有率が高い、との結果が示されています。なお、リポート p.26 には、年間世帯所得別・世帯構造別のICT機器の保有状況のグラフが示されており、年間所得が400万円未満層ではPCよりもスマートフォンの保有率が高い一方で、400万円超層ではこれが逆転してPCの保有率の方が高くなっていることが示されています。引用はしませんが、これも注目の結果のひとつかもしれません。加えて、下のパネルから、真ん中よりも上の成績と回答したグループの勉強時間がかなり長くなっています。

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注目点のひとつとして、臨時休校および所得減少による生涯逸失所得の割引現在価値が試算されているところ、最後に、この所得逸失価値を示したグラフをリポートから引用すると上の通りです。試算式はリポート p.44 に示されているんですが、既存研究から教育年数が1年短くなると賃金が▲9.3%減少すると仮定しています。いくつかのグラフを見ている限り、年間所得1500万円超のリッチな富裕層よりも、むしろ、1000万円前後のアッパーミドル層の方が子供の成績がいいと回答したり、パソコン・タブレットPCといったICT機器の保有状況が高かったりしたんですが、最後の最後で逸失利益を試算すると、差は小さいながら、ほぼほぼ所得が高いほど臨時休校および所得減少による逸失価値も小さい、との結果が示されています。いうまでもありませんが、要するに、親の雇用も含めて、COVID-19の影響による臨時休校などの教育への影響は、現在の格差を拡大する方向で作用する、との結論です。

昨年2019年10月に、文部科学大臣が大学入試への民間英語試験の導入に関して「身の丈」発言をして大きな批判が寄せられたことは、例えば、朝日新聞の記事に見られるように、記憶に新しいところです。COVID-19による教育への影響を考えるにつけ、「身の丈」で対応していては格差が広がるばかりです。もちろん、教育については所得の観点からだけ評価されるべきではありませんが、少なくとも、少人数学級やICT機器への補助など、考えられる政策はいくらでもあります。

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