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2020年8月29日 (土)

今週の読書は経済書を中心に計3冊!!!

今週の読書は、経済書を中心に以下の3冊です。MMTについて勉強をし始めているわけですが、やや残念な入門書でした。でも、網羅的に取りまとめ、体系的な情報を提供しようとしている姿勢はいいんではないでしょうか?

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まず、野口旭『経済政策形成の論理と現実』(専修大学出版局) です。著者は、専修大学経済学部の研究者であり、リフレ派のエコノミストです。私がジャカルタにいるころですから、世紀の替わり目付近で日銀を速水総裁が率いていたころ、本書の著者の野口教授が、いわば、リフレ派のスポークスマンのような立ち位置で、私が記憶する範囲では、それほど上品でもない論争を日銀とリフレ派の間で繰り広げ、リスレ政策の選択に至らなかった、というのが歴史的な経緯ではなかろうかという気がします。ただ、私はジャカルタにいましたので、詳細な部分は把握していません。ですから、私のゲスの勘ぐりでは、著者の意図はそこにお話を持っていこうとしているんではないか、という気がしなくもないんですが、自由貿易が実際の政策としてはなぜ採用されないのか、といったカギカッコ付きの「周辺議論」もふんだんに取り入れています。ケインズ的な経済政策が、現在のネオリベラルなエコノミストの元祖的なフリードマンやルーカスなどからの批判を取り入れて柔軟に発展し、現在でも十分に生き残っている、というのは、その通りだと私も考えています。ただ、私の極めて素直な感想として、本書については私の目から見ていくつか問題点があります。私の独特の表現ながら、第1に、評価関数が明確ではありません。政策目標としては、マクロ経済の安定に加えて、適切な雇用、所得、物価の達成、といったホワッとした言及があるだけです。マクロ経済政策ながら、どうしてもリフレ政策が底流に流れていて、格差是正とかはまったく視野に入っていないようですし、別の意味で、オピニオンリーダーたる政治家やメディアが経済政策の専門家と異なる評価関数を持っている可能性はかなり大きいと考えるべきです。例えば、著者自身も、「黒田以前の日銀は、その政策上の優先順位を、明らかにデフレの克服よりは伝統的金融政策の枠組みをできるだけ守ることの方に置いていた。」(p.299)と指摘しているわけですし、昨今のGoToトラベルなんて、ホントに新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を受けた観光業界への救済を目指しているのか、それとも政治家の利権確保が主たる眼目なのか、やや怪しいところもあります。要するに、著者ご自身の評価関数も、自分の考えが実行される点が、高い優先順位となっている可能性が疑われます。加えて、第2に、第1の点とも関連して、前の日銀との論争でもこの著者の悪いところであったと私は考えているんですが、専門知と称して上から目線を示して、世間知を極めて低く見ている点です。私は長らくの公務員としての経験から、いろいろあっても、主権者が投票で示した評価関数に従って経済政策を企画立案するのが公務員に課せられたマンデートであり、長期的に見れば、主権者は正しい選択を示すものである、という信念を持って仕事をしていました。本書の著者とはかなり見方が異なると自覚しています。というか、そう考えないと、お仕事を進める意欲をなくしそうな場合もありました。かつて、IMFのエコノミストが博士号を持った専門家の意見が正しいような発言をして批判されたと記憶していますが、少なくとも国内の経済政策を考える場合、主権者たる国民の支持なくして、専門知を振りかざすだけでは、政策的な成果を上げられるとは、私にはとても思えません。

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次に、望月慎『最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本』(秀和システム) です。著者は、「経済学101」というサイトに所属する翻訳者です。私はこの「経済学101」というサイトでは、VoxEUの邦訳を探したりすることもあります。著者は、昨年『立命館経済学』第68巻第2号に「Modern Monetary Theoryの概説」という講演会議事録が寄稿されたのが冒頭に掲載されており、我が所属大学だけに私もこの起用論文は拝読しています。ただ、本書については、かなり当たり前で正統的な経済学でも当然視されているような内容を、クドクドといかにもMMTを主流派経済学から差別化しようとするような印象で取り上げており、やや疑問に感じます。例えば、第6章のストック・フロー一貫モデルなんぞは、MMTの独自の視点でもなんでもなくて、現在の主流派経済学はもとより、おそらく、マルクス主義経済学でも当然のように受け入れられていると思いますし、その他のいくつかの論点についても、MMTとほかの、主として主流派の経済学の差を大きく見せたいのは、本書の立場からして理解できなくもないのですが、やや本末転倒です。MMTの解説については、私が見た範囲では、上に取り上げた野口教授が、これも昨年の『News Week 日本語版』で6回に渡って繰り広げた「MMT (現代貨幣理論) の批判的検討」のコラムが圧倒的に判りやすく、主流派経済学との異同に関して学術的にも正確であったと考えています。確かに、MMTが批判するいわゆる「主流派経済学」は、本書で特に強い批判の矛先を向けられているマネタリズムや貨幣を半ば無視する新古典派経済学だけでなく、それらの成果を批判的に取り入れて構築された広義のニュー・ケインジアン経済学も含むわけでしょうし、新しい経済学として注目されたいのであれば、既存の主流派経済学を強く批判して存在感を示すことも重要ですが、ハッキリいって、ややヤリ過ぎの感を持つ読者もいそうな気がします。単なるいい換えとか、言葉遊びに見えかねない部分も少なくありません。私はMMTに対してそれほど大きな偏見を持っているわけではありませんが、官庁エコノミストとしての役割もあった公務員を定年まで勤め上げた経験から、Job Guarantee Program (JGP) の運用が難しそうな気がします。やや言葉遊びに近い一例として、裁量的財政政策を否定し、機能的財政政策により維持されるJGPなんですが、どこまでdecentなjobを準備できるか、政府のJGPと民間雇用の間でどのような流動性が確保されるのか、おそらく、我が国の財務官僚は私なんぞの不出来だった公務員からかけ離れて優秀ですから、何とかしそうな気がしなくもないんですが、実際の実務面の運用が私には気がかりです。ただ、本書で評価すべきは、断片的な情報にとどまるネット上のMMTに関する情報を、体系的な記述に格段に優れて網羅性も高い書籍として出版された点は大いに有益だと私は考えます。特に、邦文による出版は決して多くないだけに、私のように参考文献として読むエコノミストも少なくないものと期待します。最後に、本書ではなく、寄稿いただいた『立命館経済学』第68巻第2号「Modern Monetary Theoryの概説」の p.200 において、我が国の財政が破綻しない理由について、「なぜ現代日本において横断性条件の"破れ"があるのか?」との問いを提起しています。私は「横断性条件」というのは聞いたことがなかったので、「日本の財政が破綻しない」という意味だろうと解釈して僭越ながらご回答申し上げると、日本経済が動学的非効率に陥っているから、あるいは同じことで、動学的効率性を喪失しているから、と回答しておきます。例えば、とうことで、次の書評と長崎大学のころの私の紀要論文をご覧ください。

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最後に、ジャレド・ダイアモンドほか『コロナ後の世界』(文春新書) です。著者は、ダイアモンド教授のほか、順に、マックス・テグマーク、リンダ・グラットン 、スティーブン・ピンカー、スコット・ギャロウェイ、ポール・クルーグマンの計6人です。インタビュー結果を文章に取りまとめています。まあ、ハッキリいって、各著者のそれまでの論調を繰り返しているに過ぎないとも見えますし、特に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関係しないトピックの方がボリュームとしてはずっと多くなっているのも事実です。これが、2008年のリーマン・ショック後の金融危機とそれに続く大不況(Great Recession)の時期であれば、それまでの自分自身の論調をお菊変更するエコノミスト、典型的には中谷教授などがいたんですが、今回のCOVID-19関係では自己の主張を補強する論点が多く主張されているような気がします。もっとも、それはウィルス感染症という、必ずしも、エコノミストや心理学者などの社会科学を専門分野とする論者からかけ離れた原因だからというのもありますが、まだ、時間がそれほど経過していない、というのもありそうな気がします。数年を経過した後では、また、論調が変化している可能性もあります。いろんな議論があって、すべてを紹介することも出来ないんですが、ひとつだけクルーグマン教授飲み方を示すと、基本的に、私と同じですが、経済のためにはビッグプッシュが必要、という結論を示しています。そのためには金融政策だけでなく、いかにもケインズ政策的な財政政策による景気押上げ策が必要としているんですが、財政収支については、なんと、私と同じ見方を示しています。すなわち、p.173で「国の借金は問題ではありません。金利が成長率よりも低ければ、最終的にはGDPに対する借金の割合は徐々に減っていきます。」と答えています。従来から私が主張している動学的非効率、もしくは、動学的効率性の喪失と同義です。今まで、財政赤字に関して動学的非効率を根拠にしていたエコノミストは私しかいなかったように受け止めていたんですが、とてつもない強敵が現れたと認識しています。

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