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2020年9月24日 (木)

第一生命経済研のリポート「携帯料金引き下げの家計への影響再考」やいかに?

予定通りに新総理大臣に就任した菅総理ですが、いろんな経済政策の中で、携帯電話通信料の値下げが注目されています。官房長官のころからの持論で、日本の携帯電話通信料が高すぎるとしばしば指摘してきたのも事実です。その意味で、やや旧聞に属する話題ながら、9月18日に明らかにされた第一生命経済研リポート「携帯料金引き下げの家計への影響再考」を簡単に取り上げておきたいと思います。
というか、その前に、ここ数年、総務省で実施している「電気通信サービスに係る内外価格差調査」というのがあり、この調査結果がそもそも発端となっています。例えば、今年2020年6月30日の公表後の最新結果のうち、各国でシェア1位の事業者の大容量プラン20GBの料金を比較したものであり、総務省の調査結果(概要)から引用しています。

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上のグラフを少しアレンジして、以下のニュースでも取り上げられています。

第一生命経済研のリポートでは、携帯電話通信料は徐々に値下がりしている一方で、消費支出に占める携帯電話通信料はむしろ上昇を示していると主張しています。その根拠となるグラフを第一生命経済研のリポートから引用すると以下の通りです。グラフの通り、平均では2人以上世帯の消費支出に占める携帯電話通信料の比率は3.6%なんですが、当然ながら世代別に差があり、29歳以下では5.6%に達する一方で、30歳代と40歳代は4.4%、50歳代になると4.3%にわずかに低下し、60歳代では3.4%、70歳以上では2.3%に大きく低下しています。これは、携帯電話通信料を消費支出で割っているわけですから、若い世代ほど携帯電話をよく使っているという分子の要因とともに、所得や消費支出が年齢に従って増加するという分母の要因もあります。

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もしも、携帯電話通信料が引き下げられれば「若年層や子育て世帯への恩恵がより大きくなるが、移動通信端末の利用率が低い高齢者層への恩恵が少ない」第一生命経済研のリポートでは指摘しています。シルバー民主主義の時代に支持を得られるかどうかはまた別問題です。ほかに、第一生命経済研のリポートでは、仮に移動通信通話料金が1割安くなると、国民1人当たり年間▲5,300円超、家計全体では▲6,700億円超の負担軽減になると試算しています。ただし、これも当然ながら、所得により携帯電話通信料引き下げの恩恵は異なります。すなわち、世帯主の年収階層別では、年収が650万円以上の世帯では年間▲1.5万円超の負担軽減がある一方で、年収400万円未満では年間▲1万円を下回る軽減にしかならない、とも指摘しています。

いつも、このブログで私が主張している通り、個別の業界の個別の財・サービスをターゲットにして補助金を出したり、あるいは、逆に、料金引き下げを求めるのも、もちろん、それなりの理由はあることなんでしょうが、広く家計一般の購買力を高めるような政策が必要、と私は常々考えています。

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