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2020年10月 8日 (木)

大きく回復した9月の景気ウオッチャーと黒字が積み上がる経常収支!!!

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、9月の景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+5.4ポイント上昇の49.3を示し、先行き判断DIも+5.9ポイント上昇の48.3を記録しています。8月の経常収支は、季節調整していない原系列で+2兆1028億円の黒字を計上しています。貿易収支が黒字となっており、原粗油や天然ガスの輸入が量も価格も落ち込んでいます。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の街角景気、現状・先行きとも改善 判断は上方修正
内閣府が8日発表した9月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、3カ月前と比べた足元の街角の景気実感を示す現状判断指数(DI、季節調整済み)は49.3と2018年4月(49.5)以来の高水準となった。前の月から5.4ポイント上昇し、5カ月連続で改善した。2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数(DI、季節調整済み)も48.3と同5.9ポイント上昇し2カ月連続で改善した。
内閣府は、現状の基調判断を「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる」から「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直している」に上方修正した。
新型コロナへの懸念は拭えないものの感染状況が比較的落ち着いていることや政府の需要喚起策、経済活動の再開を好感する声が多かった。現状、先行きとも指数を構成する家計、企業、雇用関連のすべてのDIが上昇した。
足元では「前年超えとはいかないまでも、ある程度の水準まで販売台数が戻ってきている」(東北の乗用車販売店)や「宿泊稼働も50%近くまで回復してきている。特に、9月の4連休はほぼ満室の状況が続き、久しぶりに忙しかった」(南関東の都市型ホテル)などといった声が聞かれた。
先行きについては「新しい生活様式に人々が慣れてくることで、年末の帰省も含めて、徐々に人の動きが活発になると見込まれる」(北海道のスーパー)など、景気改善を期待する声が目立った。政府の旅行需要喚起策「Go To トラベル」を巡っても「東京参加解禁による効果が、大いに期待される」(九州の観光型ホテル)などと需要の押し上げ効果を見込む声が出ていた。
8月の経常収支、2兆1028億円の黒字 前年同月比で黒字幅縮小
財務省が8日発表した8月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆1028億円の黒字だった。黒字は74カ月連続。サービス収支の赤字幅拡大が影響し、前年同月比では323億円減少した。
サービス収支は3166億円の赤字で、前年同月比でみると3151億円減少した。うち旅行収支は新型コロナウイルスの流行で訪日外国人が激減しており、前年同月比87.0%減だった。
貿易収支は4132億円の黒字で、前年同月比でみると3828億円増加した。輸出入ともに減少しており、特に輸入額は前年同月比で22.0%減った。原油や液化天然ガス(LNG)など資源関連が落ち込んだ。
第1次所得収支は2兆2487億円の黒字と、前年同月比で429億円減少した。債券利回りの低下(価格の上昇)で証券投資収益の黒字幅が縮小した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、長かったです。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

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景気ウォッチャーの動向については、先行き判断DIが7月に落ち込んで、ややイレギュラーな動きを示しましたが、その後、8月、9月と順調に回復を見せています。従って、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直している」に上方改定しています。「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」へのビミョーな修正です。まさに、霞が関文学の極みのような気がします。現状判断DI、先行き判断DIともに水準としてもかなり50に近いラインまで戻してきており、マインドの回復が続いていると考えてよさそうです。季節調整済の系列で現状判断DIに着目すると、繰り返しになりますが、9月統計で49.3と50に近い水準まで回復を示しており、これは、2018年10月にピークを付ける前の2018年4月の水準以来です。もちろん、景気後退局面入りの後ながらCOVID-19前の今年2020年1月水準を軽く上回っています。企業セクターと企業セクターに分けてみると、家計動向関連が前月から+5.0ポイント上昇して50.3に達しており、+6.3ポイント上昇した企業動向関連の+47.4を上回っています。特に、飲食関連が+18.1ポイントと大きな上昇で55.0に達しています。Go To Eatが始まる前ながら、期待感が大きいのかもしれません。徒花で終わらねばいいのですが、やや懸念が残らないわけではありません。企業セクターでは、製造業が前月から+8.4ポイント上昇して49.5に達し、非製造業の+4.4ポイント上昇の45.3と少し差。がつき始めています。全般的に、マインドが実体経済に先行して回復するのは通常の景気回復期と変わりないと私は受け止めています。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、COVID-19の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性があります。内外の景気動向の差に基づく貿易赤字が主因となって経常収支が落ち込んでいましたが、季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は先月統計から黒字に転じ、今月の8月統計でも貿易黒字が拡大しいています。経常収支も上のグラフに見られるように、急回復を示しており、COVID-19の影響は最悪期を脱している可能性が高いと考えるべきです。

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