基調判断が1年ぶりに上方修正された景気動向指数をどう見るか?
本日、内閣府から8月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から+2.1ポイント上昇して88.8を、また、CI一致指数も前月から+1.1ポイント上昇して79.4を、それぞれ記録しています。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、前月統計まで12か月連続で「悪化」だったんですが、1年ぶりに「下げ止まり」に上方修正されています。まず、とても長い記事なのですが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
13カ月ぶり「悪化」脱却も低水準、8月の景気指数
内閣府が7日発表した8月の景気動向指数による基調判断は「下げ止まり」となり、13カ月ぶりに「悪化」を脱した。海外経済の回復を受け、輸出や生産が持ち直した。国内の個人消費や設備投資には停滞感が強く、指数の水準はなお低い。7~9月期の国内総生産(GDP)は外需がけん引し、年率14%程度のプラス成長が見込まれる。
景気の現状を示す一致指数(CI、2015年=100)は生産や雇用など10の指標から算出する。8月の指数(速報値)は79.4と前月から1.1ポイント上がった。
指数の動きから機械的に算出する景気の基調判断は19年8月から12カ月続いた「悪化」から「下げ止まり」に上方修正された。上方修正は「悪化」が「下げ止まり」に一時的に転じた19年5月以来1年3カ月ぶりだ。
「下げ止まり」は景気後退の動きがいったん止まっている可能性が高いことを示す。
8月は公表済みの8指標のうち、輸出数量指数や鉱工業生産など6指標が上昇に寄与した。海外経済の回復に伴い、米・欧・アジアの主要地域すべてで輸出数量が増加した。特に自動車関連の輸出が拡大しており、国内の生産にも波及した。
内需関連の指標は弱い。8月の小売業の商業販売額は前年同月比でマイナスが続き、一致指数へのプラス寄与度は小さかった。有効求人倍率と、設備投資の勢いを映す投資財出荷指数の2指標は前月を下回り、指数を押し下げる方向に働いた。
内需の停滞を反映して、一致指数の上げ幅は6月の3.2ポイント、7月の3.9ポイントから8月は1.1ポイントまで縮小した。新型コロナウイルスの感染拡大前(1月)の水準の9割も取り戻していない。
経済活動が制限された4~6月期の実質GDP成長率は、前期比年率でマイナス28.1%と戦後最大の落ち込みとなった。7月以降は内需主導での経済回復が期待されたが、実際には夏場の感染再拡大で個人や企業の心理が悪化し、内需が伸び悩んだ。海外経済の回復ペースは早く、結果として外需が日本経済を引っ張る形となっている。
日本経済研究センターが毎月まとめる民間エコノミストの経済見通し「ESPフォーキャスト」でも内需の失速が目立つ。7日まとめた10月分では20年7~9月期のGDPが予測平均で前期比年率14.15%増と9月調査(14.07%増)とほぼ同じだったが、内訳が変わった。
GDPへの内外需の寄与度予測をみると、9月時点では内需が8.57%、外需が5.50%寄与する見通しだった。10月分では内需の寄与度が7.60%に下がり、外需の寄与度が6.55%に上がった。個人消費と設備投資の予測が下振れした一方で、輸出は上方修正されたためだ。
予測では10~12月期は4.75%、21年1~3月期は2.91%と成長率が鈍化していく。冬に向けて国内で再び感染が拡大すれば、個人消費や設備投資の回復ペースはさらに鈍るおそれがある。今のところ堅調な海外経済にも、感染の再拡大や米大統領選などのリスクがくすぶっている。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。
何とか、CI一致指数は久々の前月差プラスを記録しています。8月統計でプラス寄与の大きかった系列は、輸出数量指数、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)などとなっています。逆に、有効求人倍率(除学卒)や所定外労働時間指数(調査産業計)のマイナス寄与が目立っており、まあ、景気回復局面ではどうしようもないのかもしれませんが、海外や企業部門が景気を牽引する一方で、雇用は家計部門はまだまだ停滞を示しています。これから、輸出や企業部門の回復が雇用を通じて家計に、どれくらいのタイミングでどれくらいの力強さで波及するか、が大きなポイントになります。新自由主義的な経済政策で、家計を犠牲にして企業を優遇するような方向では、景気回復の恩恵が格差解消につながったり、家計が景気回復の恩恵にあずかれずに、苦しい国民生活が続くことになりかねません。その意味で、7月27日付けのこのブログで取り上げたように、英国やドイツをはじめとするいくつかの先進国で実施されている時限的な消費減税が日本でも有効と私は考えています。
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