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2020年10月12日 (月)

下げ止まりつつある機械受注とまだまだ前年比でマイナス続く企業物価指数!!!

本日、内閣府から8月の機械受注が、また、日銀から9月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+0.2%増の7525億円と、まだまだ受注額は低水準ながら、プラスの伸びを記録し、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.8%の下落を示しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の機械受注、前月比0.2%増 基調判断「下げ止まりつつある」に変更
内閣府が12日発表した8月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は、前月比0.2%増の7525億円だった。増加は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測(中央値)は1.0%減だった。製造業で「はん用・生産用機械」がけん引した。
製造業の受注額は前月比0.6%減の3113億円だった。3カ月ぶりの減少で、17業種のうち9業種で増加、8業種で減少した。モーターやコンベヤーなどの受注が増え「はん用・生産用機械」が27.2%増と大きく伸びた。石油精製関連の受注も増え「石油製品・石炭製品」は65.7%増加した。一方、「化学工業」や「造船業」の減少が目立った。
非製造業は6.9%減の4123億円と、2カ月ぶりに減少した。「金融業・保険業」(38.1%減)や「建設業」(10.4%減)は受注額が減った。一方、旅行業を含む「その他非製造業」(17.2%増)や「情報サービス業」(11.3%増)の伸びが顕著だった。
季節調整を個別項目ごとに行ったため、それぞれ減少だった製造業、非製造業の合計が全体(0.2%増)と一致していない。
受注総額は19.8%増えた。外需は5件の大型案件が入り49.6%増と14年4月以来の伸びとなった。官公需の受注額は防衛省等の案件で28.3%増えた。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は15.2%減だった。
内閣府は基調判断を「減少傾向にある」から「下げ止まりつつある」に上方修正した。上方修正は19年4月以来、1年4カ月ぶりとなった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
9月の企業物価指数、前月比0.2%下落 新型コロナが下押し
日銀が12日発表した9月の企業物価指数(2015年平均=100)は100.1と、前月比で0.2%下落した。下落は4カ月ぶり。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、企業の生産活動の回復が鈍く、企業物価の下押し要因となった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。4~6月の原油価格の下落を背景に電力・都市ガス・水道が大きくマイナスになったほか、金属製品や生産用機器なども物価を押し下げた。
一方で、足元の国際商品市況の回復を受けて、非鉄金属やスクラップ類の物価上昇が下支えした。
前年比では0.8%下落と、7カ月連続の下落だった。
円ベースで輸出入物価をみると、輸出物価は前月比で0.1%上昇、前年同月比では1.5%下落した。輸入物価は前月比で0.2%上昇、前年同月比では10.1%下落した。
企業物価指数は消費増税を含んだベースで算出している。消費増税の影響を除いた企業物価指数は前月比で0.1%下落と、4カ月ぶりに下落した。前年同月比では2.3%下落した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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まず、コア機械受注に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で前月比▲0.2%の減と報じられています。もっとも、レンジはかなり広くて▲6.5%減~4.0%増、ということでした。まあ、プラスの増加とマイナスの減少の符号の違いこそあれ、予想の範囲内で大きなサプライズはないものと私は考えています。ただし、製造業、電力と船舶を除く非製造業とも前月比マイナスでしたので、季節調整の綾で製造業+非製造業がプラスになっているわけですから、基調がそれほど強くないのは一目瞭然です。それでも、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「減少傾向にある」から「下げ止まりつつある」に上方修正しています。上の私の作成した後方6か月移動平均のグラフはもとより、内閣府の資料にある後方3か月移動平均でもまだプラスには転じていないように見受けられます。季節調整済の系列の前月比こそ2か月連続で増加を示しましたが、電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注の水準ではまだまだ低い、といわざるを得ません。すなわち、今年2020年6~8月の3か月合計で22,104億円にしか達せず、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前の昨年2019年10~12月期26,164億円、10~12月期25,698億円はいうに及ばず、今年1~3月期の25,526億円と比べても▲15%近くの減少となっています。ただし、需要者サイドから見ると、5月を底として、自動車・同付属品やはん用・生産用機械、また電気機械などが上向きになりつつあるのも事実です。例えば、自動車・同付属品を見ると5月に前月比▲14.9%減で底を打った後、6月+7.8%増、7月+6.2%増、そして、8月も+6.6%増と、順調な増加が続いています。逆側から見ていますが、自動車などの我が国リーディング・インダストリーが資本財を需要しているのは、すなわち、生産を増加させつつある、という意味合いが読み取れます。機械受注や設備投資の先行きは決して楽観できないものの、COVID-19パンデミックから1年をへる年明けころから回復に向かう可能性がある、と私は見ています。コア機械受注の先行指標である外需が増加しているのも、先行き増加の方向を裏付けていると考えるべきです。

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次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、機械受注と同じように、このブログのローカルルールで勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。ということで、まず、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、中央値で前月同月比▲0.5%の下落、ということでしたので、やや下落幅が大きい印象があります。ひとつの要因は、石油価格から遅れて動く電力・都市ガス・水道です。季節調整していないながら前月比で▲0.09%と大きなマイナス寄与を示しています。円建ての輸入物価で石油・石炭・天然ガスが+0.15%のプラス寄与を記録しているのと対象的です。石油価格はまだ前年同月比でマイナスですが、徐々にマイナス幅を小さくして下げ止まりつつあり、5月の▲73.8%の下落から、直近の9月統計では▲26.0%となっています。何度か、このブログでも繰り返しましたが、我が国の物価動向は日銀の金融政策よりも、国際商品市況における石油価格からの影響の方が大きいような気すらしますので、石油価格の回復とともに下落幅が縮小することを私は期待しています。もちろん、来月の10月統計から昨年2020年の消費税率引上げの影響が剥落しますので、前年同月比上昇率がさらに落ち込む可能性は覚悟せねばなりません。例えば、8月の国内物価の消費税の影響を除くベースでの前年同月比上昇率は▲2.3%となっています。そして、最大の下落幅を記録しているのは、やっぱり、石油・石炭製品の▲15.5%だったりします。引用した記事にもあるように、COVID-19の影響も大きいんでしょうね。

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