アベノミクスにおける非正規雇用の増加をどう見るか?
昨日10月19日付けで、第一生命経済研から「非正規雇用に対する誤解」と題するリポートが明らかにされています。アベノミクスの間に大きく増加した非正規雇用について批判は大きいものの、不本意非正規雇用が大きく減少している点などにも着目しています。グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきます。

まず、上はリポートから正規と非正規の雇用者数の推移のグラフを引用しています。総務省統計局のデータに独自に季節調整をしているようです。総選挙が2012年12月に実施され、アベノミクスは事実上2013年から始まりましたが、2019年末までに正規雇用が+175万人増、非正規雇用が+349万人増と、ほぼほぼ非正規の増え方が正規の2倍に達しています。しかも、正規雇用は着実に増加している一方で、非正規雇用は昨年2019年10月の消費税率引上げ、さらに、今年2020年に入ってからの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックなどの要因で、いわゆる「雇用の調整弁」として減少を示しているのはグラフから明らかです。

次に、上はリポートから一般とパートの時給の推移のグラフを引用しています。いずれも、2013年に入ったあたりから極めてわずかながら上昇を示しています。ただ、直近の2019年時点で一般が2500円を超えているのに対して、パートはその半分以下となっています。「同一労働同一賃金」は一般とパートの間で必ずしも成り立たない可能性が高いことは私も認識していますが、「雇用の調整弁」として不況下で切り捨てられる可能性が高い一方で、時給は半分以下、というのは何とも非正規雇用の待遇の悪さを露呈しています。

最後に、上はリポートから理由別非正規雇用者数のグラフを引用しています。非正規雇用のうち、大きく増加している理由を見れば、「自分の都合の良い時間に働きたいから」がという理由がもっとも多く、+200万人近くの増加を示しており、「家事・育児・介護と両立しやすいから」も+70 万人以上増えています。要するに、自己都合で非正規雇用に就いている可能性が高いとリポートでは見なしています。他方で、いわゆる不本意非正規と考えられる「正規の職員・従業員の仕事がないから」は▲100万人超の減少となっています。この見方は、昨年2019年などの「労働経済白書」などでも示されています。
従って、リポートでは、「理由を無視して非正規労働者数の増加のみで判断すると、労働市場の改善の判断を誤ることになりかねない」と結論しています。ただ、もう少し踏み込んで考えるべき点が残されており、例えば、リクルートの独自調査などでも、不本意非正規雇用では正規雇用への転換率が10%ほどで、他の理由に比べて仕事の満足度が低い、といった結果とともに、「非正規雇用のままであるがその理由が変わったという人が34.7%いて、不本意非正規ではなくなった人の中で大勢を占めている」と指摘し、諦めの要素が理由の変更という形で入っている可能性、すなわち、不本意非正規雇用が過小にカウントされている可能性が示唆されている、と私は考えています。
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