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2020年11月14日 (土)

今週の読書は超難しい経済書をはじめとして新書も入れて計4冊!!!

今週の読書は、重厚なマクロ経済学の超難しい学術書をはじめとして、それなりにボリュームある以下の4冊です。実は、久しぶりに経済週刊誌から今年のベスト経済書のアンケートが届きました。長崎大学に出向していたころから数えてほぼほぼ10年ぶりです。こういったベスト経済書の回答については、私はケインズ的な美人コンテストに似たアプローチを取ります。すなわち、株式投資の際によく引き合いに出されるケインズ的な美人コンテストは、ホントに自分自身が美人と思うかどうかではなく、コンテスト参加者が広く美人と受け止めるかどうかに従って投票する、というものですが、こういった経済書アンケートについては、逆に、トップになりそうな経済書を選んでしまうと、私なんぞは著名エコノミストに埋もれてしまう恐れが高く、トップグループの経済書を選ぶのではなく、2番手か3番手の経済書を選んで、その上で、目立つような気の利いたコメントを付ける、という戦略を取ります。どうしても、今年はAI/デジタル経済、あるいは、最新のコロナとかがキーワードになります。そうでないニッチな経済書を選考したいと思います。

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まず、吉川洋『マクロ経済学の再構築』(岩波書店) です。著者は日本を代表するエコノミストであり、専門分野はマクロ経済学です。ほぼほぼ私と同じ専門分野なんですが、まあ、そこは比べるのも畏れ多いというものです。本書の中身は基本的にタイトル通りであり、1970年代にケインズ経済学がインフレを招いたことによりネオリベ的な方向につながったクラシカルな経済学の批判、すなわち、マクロ経済学のミクロ的な基礎づけに対する批判で成り立っています。特に、DSGEモデルに発展した実物的景気循環理論(RBC)や雇用のサーチ理論などに対して、ヘテロな個人に対応して代表的な消費者・家計や雇用者といったホモな存在を強く否定し、それらに対置するに、統計物理学に基づく経済物理学を応用しています。一番判りやすいのがp.35にある概念図であり、個別のミクロ経済主体がバラバラに集まってマクロを形成しているのではなく、まずミクロの経済主体の周囲に小宇宙があって、その小宇宙がマクロを形成している、というものです。加えて、価格がすべてではない(p.37)、とか、供給サイドの生産性の伸び悩みではなく需要の飽和こそが経済成長を規定する(第5章)とか、同じ5章の一部ながら、生産=供給サイドと需要サイドをつなぐルイス2部門モデルとか、アカデミックなレベルはかなり異なるとしても、私の従来からの主張と極めて類似した論点が含まれていることは感激しました。しかし、いかんせん、アカデミックなレベルが高すぎます。税抜8000円という価格も数が出ないという価格付けなんだろうという気がします。おそらく、大学院のそれも博士後期課程の教科書なんだろうと私は受け止めています。というのも、一応、それなりのレベルを誇る大学の経済学部教授を職業とする私からみても難解です。誠に失礼ながら、一般のビジネスパーソンの通常業務にとって有益かどうかは議論が分かれます。

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次に、ジェフリー・ディーヴァー『カッティング・エッジ』(文藝春秋) です。著者はご存じのミステリ作家であり、本書は著者の代表的な2シリーズのうちのNYをホームグラウンドとする四肢麻痺の犯罪科学者リンカーン・ライムのシリーズの最新巻です。と行っても、実は、著者の新しいシリーズの『ネヴァー・ゲーム』というコルター・ショウを主人公とする新刊が出たと新聞で見て探したところ、昨年に本書がすでに出版されていたという事実を知った次第で、お恥ずかしい限りです。ということで、ストーリーとしては、ニューヨークの有名なダイアモンド・デザイナーと顧客の計3人が殺害された事件から始まって、著者独特のどんでん返しが何回か繰り返されます。まあ、それにしても、ニューヨークの地価に豊かなダイアモンド鉱脈が眠っているというのは、誰がどう見てもムリがありますから、さらにその先のどんでん返しがありそうなのは容易に想像できますので、それほどの意外感はありません。前作『ブラック・スクリーム』ではニューヨークを飛び出してイタリアに出向いて国際的な活躍を見せつけたライムとサックスの夫婦は、本書ではニューヨークから、というよりも、ライムは自宅のタウンハウスからすら出ませんし、前作と比較して地味な印象は免れません。おそらく、著者もその点は自覚しているようで、ご本人の登場はともかく、著者のもうひとつの看板シリーズの主人公であるキャサリン・ダンスへの言及があったり、本書のケースの背景にウォッチメイカーがいたりと、それなりに工夫は凝らされています。まあ、私のように本書の著者のファンであれば、押さえておくべきアイテムであることは間違いありません。

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次に、橘永久&ジェフリー・トランブリー『日本人の9割がじつは知らない英単語100』(ちくま新書) です。著者は、開発経済学の研究者と英語コミュニケーションの研究者です。これはなかなかに面白い英語の本です。日本人の多くが馴染みある単語であっても、ネイティブがまったく異なる意味で使っている単語を、タイトル通り、100取り上げています。どこかに書きましたが、和足は大学の経済学部でこの2020年度下半期には週6コマもの授業を受け持っているんですが、何と、加えて負担が重いことに、うち週2コマが英語の授業だったりします。それなりに、教える方の私も下調べをしたりして英語力がついた気がしなくもなく、そのおかげか、いくつかすでに知っている、使っている単語もあったりしました。経済学とは馴染みの深い094 wageなんかがそうです。また、090 tipは本書にはズバリの用法はありませんでしたが、tipping pointなんて使い方はよく知られているような気もします。また、080 sportについては、『グレート・ギャッツビー』で村上春樹が日本語に訳し切れなかったold sportなんて、呼びかけも取り上げて欲しかった気がします。

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最後に、辻田真佐憲『古関裕而の昭和史』(文春新書) です。最後に、古関裕而本です。著者は、よく知りませんが、軍歌の研究者とどこかで見た記憶があります。まあ、古関裕而とはそういう存在なのかもしれません。もっとも、私が盛んに古関裕而の新書を読んでいるのは、当然ながら、NHKの朝ドラ「エール」の影響です。朝ドラ「エール」もいよいよ最終場に差しかかってきましたが、本書でも明らかにされているように、古関裕而のお坊ちゃん育ちのいい性格とともに、金子の猛女振り、かかあ天下振りもより一層に明確にされているような気がします。朝ドラの最後は東京オリンピックなんでしょうか。

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