改善が鈍化する10月統計の米国雇用統計をどう見るか?
昨夜、米国労働省から10月の米国雇用統計が公表されています。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響から、非農業雇用者数は4月の大幅減の後、5月統計からはリバウンドして10月にも+638千人増を記録しています。同じく、失業率も一気に悪化した4月からのリバウンドが続き、6.9%に改善しています。でも、まだ、COVID-19前の昨年2019年11~12月や今年2020年2月には3.5%だったわけですから、それらと比べるとまだ2倍近いの水準であることも確かです。いずれも季節調整済みの系列です。まず、やや長くなりますが、USA Today のサイトから統計を報じる記事を最初の5パラだけ引用すると以下の通りです。
Economy adds 638,000 jobs in October as unemployment falls to 6.9% amid COVID-19 spikes
The U.S. economy added 638,000 jobs in October as payroll growth roughly held steady despite a surge in COVID-19 cases and Congress's failure to provide more aid to unemployed Americans and struggling businesses.
The unemployment rate fell from 7.9% to 6.9%, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 600,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
The report comes as Democrat Joe Biden edged closer to victory in a presidential election that partly served as a referendum on President Trump's response to the pandemic and its punishing economic toll.
Although last month's employment gains were outsized by historical standards, the increases have slowed for four straight months since peaking at 4.8 million in June. The nation has recovered about 12 million, or 55%, of the 22 million jobs wiped out in the health crisis as states have reopened restaurants, shops and other businesses shuttered by the outbreak, and brought back many furloughed workers.
やや長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。
米国の失業率については、4月統計で14.7%と一気に悪化した後、5月13.3%、6月11.1%そして、7月10.2%まで2ケタが続いた後、8月には8.4%と10%を割り込み、9月には7.9%、そして、10月統計でも引き続き低下して6.9%まで達しました。ただし、リバウンドの方も徐々に減衰してきた気がします。米国非農業部門雇用者の伸びも、4月に前月差で▲2000万人超の減少を見た後、5月+2725千人増、6月+4781千人増、7月+1761千人増、8月+1493千人増、9月+672人増と急速に縮小し、10月+638千人増と、失業率の改善幅も、非農業部門雇用者の増加幅も、急速に改善幅が縮小しています。なお、6月が大きかったのは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する米国の対応に起因するんだろうと思います。そして、10月の雇用増については、引用した USA Today の記事では、3パラめに "Economists had estimated that 600,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey" とあるように、市場の事前コンセンサスはBloombergを引いて+600千人増でしたから、ややこれを上回ったとはいえ、ほぼほぼ予想通り、というカンジではないかと思います。ただ、私が不思議に思うのは、Bloomberg の記事では "580,000 median estimate of economists surveyed by Bloomberg" とされており、少し違いがあったりします。いずれにせよ、米国の雇用改善のペースは明らかに落ちており、従って、COVID-19前の水準への米国経済の回復にはかなりの期間を要する、と見るエコノミストが多数派であろうと私も考えています。
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