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2020年11月19日 (木)

今冬の年末ボーナスはコロナ禍の影響で大幅ダウンか?

先週から今週にかけて、例年のシンクタンク4社から2020年年末ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。可能な範囲で、消費との関係を中心に取り上げています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想、と聞き及んでおり、ベースが違っている可能性があります。私の方で詳細な確認は取っていませんが、注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
国家公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研37.9万円
(▲2.6%)
66.1万円
(▲3.9%)
リーマン後と比べると、一部の業種・企業に新型コロナの悪影響が集中している点が特徴的。中小企業では、既に今夏の賞与において、飲食、生活関連サービスなどを中心に支給労働者数が急減。もっとも、賞与支給がなかった企業は、一人当たり平均支給額算出に際し除外されるため、もともと支給水準の低い企業の支給見送りに伴い、中小企業の一人当たり支給額はかえってプラスに。一方大企業では、新型コロナ前に夏季賞与の水準が妥結していた企業も多く、業況悪化の反映は年末賞与から本格化する見込み。
みずほ総研36.0万円
(▲7.5%)
72.3万円
(▲3.8%)
民間企業・公務員を合わせた冬季ボーナスの支給総額は、前年比▲9.3%とリーマンショック後以来の大幅マイナスが見込まれる。夏冬合わせて雇用者報酬のおよそ2割を占めるとされるボーナス減少の影響は大きく、今後の消費回復への重石となろう。
また、今冬のボーナスは、特に特定業種におけるボーナスの大幅減少が懸念される。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、宿泊・飲食サービス業(247.8千円)、生活関連サービス・娯楽業(263.6千円)の賃金水準(月額)は全体平均(307.7千円)対比でもともと低い水準にある。これら特定業種に属する労働者の一部は所得水準が低い中、ボーナスが急減し、深刻な所得減少に直面する可能性が高い。既に国民全員に対して、1人当たり10万円の特別定額給付金が支給されたが、政府には、こうした所得の急減に見舞われた労働者に対象を絞って、給付金を再度支給するなど、支援を一層強化していくことが求められよう。
第一生命経済研(▲8.0%)n.a.冬のボーナスは一段の悪化が必至である。多くの企業では春闘時にボーナス支給額を決めることから、20年の春闘では新型コロナウイルス前の業績をもとに交渉がされていた。そのため、夏のボーナスは、新型コロナウイルスによる悪影響を反映しきれていない。一方、今冬のボーナスでは、急激に落ち込んだ20年度前半の業績を元に支給する企業が夏対比で増えることから、大幅悪化が避けられない。加えて、厳しい経済状況を受けて、ボーナスの支給を見送る企業も増加することが予想される。ボーナスの支給がない労働者も含めた平均では前年比▲11.5%と、二桁の減少になるだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング34.8万円
(▲10.7%)
65.8万円
(▲4.3%)
企業業績の悪化に伴う人件費削減の動きから雇用者数の増加は頭打ちとなったことに加え、ボーナスの支給を見送る事業所も増えるとみられ、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数は4,257万人(前年比-2.4%)と、リーマンショックの影響が大きかった2009年以来11年ぶりに減少することが見込まれる。また支給労働者割合も82.5%(前年差-2.4%ポイント)と、1990年以降での最低水準にまで低下するだろう。これにより、ボーナスの支給総額は14.8兆円(前年比-12.8%)と大幅に減少する見通しである。支給総額の大幅な減少は、コロナ禍からの回復の過程において、個人消費の足を引っ張り、日本経済の回復を阻害することが懸念される。

もはや、コメントする気力もありませんが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で年末ボーナスは総崩れです。しかも、民間企業が賃上げしないために、国家公務員のボーナスも▲0.05か月分引下げとの人事院勧告が10月7日に出ています。1人当り支給額もマイナスなら、支給人数も減少することが予想されており、その積である支給総額はダブルパンチで大きなマイナスと見込まれています。日本総研を別とすれば、支給総額はほぼ▲10%のふたケタ減が予想されています。恒常所得仮説ではボーナスは消費には影響しないとの結論が導かれますが、もちろん、実際には、消費にもそれなりの影響が出るものと考えるべきです。しかも、いくつかのシンクタンクのリポートで明記されているように、COVID-19の経済的な影響は業種によってかなり大きなばらつきがあり、もともと給与水準が低い業種の雇用者、あるいは、非正規雇用者がさらにボーナスの支給減、あるいは、ひどい場合には、支給停止すらあり得ます。GoToキャンペーンが悪いとはいいませんが、何らかの政策的な救済が必要です。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから 年末賞与の支給総額(前年比) を引用しています。

photo

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