回復が遅れる鉱工業生産指数(IIP)と物販は回復続く商業販売統計!!!
本日は月末日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計です。いずれも10月の統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から+3.8%の増産を示した一方で、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+6.4%増の12兆4300億円、季節調整済み指数でも前月から+0.4%増を記録しています。消費の代理変数となる小売販売は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染再拡大で減少が続くという結果が出ています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
10月の鉱工業生産、3.8%上昇 回復なお途上
経済産業省が30日発表した10月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比3.8%上昇し95.0だった。5カ月連続でプラスとなった。経産省は基調判断を「持ち直している」に据え置いた。12月には低下が見込まれ、新型コロナウイルス感染症の再拡大で経済活動が鈍る恐れもある。
新型コロナの影響が出始めた2月は99.5だった。減産が続き5月に78.7まで下がった指数の回復が続くものの、水準はなお低い。
業種別では15業種中12業種が上昇した。自動車工業は6.8%上昇した。自動車に限ってみれば新型コロナの感染拡大前の1月の水準を超えた。海外向けに普通乗用車などの輸出が増え、5カ月連続で回復した。
コンベアなどの汎用・業務用機械工業は17.9%上昇した。コンピューター関連の電気・情報通信機械工業も8.4%上昇した。一方、電子部品・デバイス工業は5.2%低下、航空機部品などの輸送機械工業が9.9%の低下となった。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、11月は前月比2.7%の上昇、12月は2.4%の低下を見込む。経産省は「新型コロナの感染が再拡大しており、国内外経済の下振れリスクにも注意する必要がある」とする。低下が予想される12月については「上昇の連続が一服するということではないか」とみている。
10月の小売販売額 前年比6.4%増 消費増税の反動
経済産業省が30日に発表した10月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比6.4%増の12兆4300億円だった。前年実績を上回ったのは8カ月ぶり。1年前の10月は消費増税前に出た駆け込み消費の反動で落ち込んだため、伸び率が大きくなった。
季節調整済みの前月比でみると0.4%増で、2カ月ぶりにプラスに転じた。10月は新型コロナウイルスの感染拡大が一定程度落ち着いており、消費者心理が改善した。経産省は小売業販売の基調判断を前月から据え置き、「横ばい傾向にある」とした。
自動車小売業は前年同月比16.4%増で、13カ月ぶりにプラスに転じた。家電など機械器具小売業は27.4%増加した。エアコンや洗濯機などの販売が堅調だった。
業態別にみると、百貨店は2.5%減だった。減少は13カ月連続。コロナ感染拡大前の今年1月以来初めて下げ幅が1桁にとどまったものの、落ち込みが長引いている。外出機会の減少などで主力の衣料品の販売が戻らず、回復の重荷となっている。
ふたつの統計を取り上げていますのでやや長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+2.3%の増産との見込みで、レンジでも+1.5%~+4.0%でしたので、ほぼほぼ上限といえます。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前の今年2020年1月の指数が99.8とほぼ100だったんですが、ボトムの5月には78.7と指数レベルで▲21.1、比率で▲22%ダウンし、その後、本日公表の10月統計で95.0ですので、指数レベルで+16.3、ボトムからの比率で77%を回復したことになります。もしも、11月統計が製造工業生産予測指数の補正値通りに+0.4%の増産と仮定しても、まだボトムからの戻りは80%に達しません。加えて、12月は▲2.4%の減産が見込まれていますから、回復の足取りは極めて緩やか、というか、足元のCOVID-19感染拡大を考慮すれば、「緩やか」以上に逆行して再び減産に入る可能性すら考えられます。ですから、10月統計だけを取り出して評価しても、私はそれほど意味あるとは思えません。加えて、我が国のリーディング・インダストリーであり、ここまでの生産の回復を支えてきたのは自動車工業です。すなわち、自動車産業の指数水準を見ると、1月の104.3に対して、ボトムの5月には45.4と半減以下に大きな減産を記録しましたが、10月統計では104.7とパンデミック前の水準を超えています。しかし、他方で、製造工業生産予測指数を見ると、自動車工業のカテゴリーはないんですが、輸送機械工業の分類では11月▲3.9%減、12月▲2.5%減と2か月連続の減産が見込まれています。COVID-19の感染拡大次第では、さらに下振れする可能性が十分あると覚悟すべきです。ペントアップのいわゆる挽回生産が続いて来ましたが、COVID-19パンデミック前の生産水準に戻る前に、国内の感染拡大や欧州のロックダウンによる輸出への影響などから、生産は回復が減速するどころか、回復を続けることすら危うくなった、と私は認識しています。

続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。ということで、小売業販売額の前年同月比で見て、新型コロナウィルス(COVID-19)パンデミック初期の食料品やマスクをはじめとする日用品の買い物をせっせとしていた今年2020年3月の前年同月比+1.6%増を最後に4月からマイナスが続いていたんですが、本日公表の10月統計で久し振りにプラスを記録しています。しかしながら、引用した記事のタイトルの通り、これは前年2019年10月に消費税率の引上げがあって、その直前の駆込み需要の反動として昨年10月統計が大きく落ち込んだため、伸び率が大きく見えていることが一因です。従って、前年同月比+6.4%増はそのままだと過大評価になるわけですが、他方で、季節調整済みの指数で見るとパンデミック初期の今年2020年1月102.6、2月103.1に対して、この水準を初めて超えたのは8月103.2であり、その後も9月103.1、そして本日公表の10月103.5と、かなり底堅い動きを示していることも事実です。もちろん、この商業販売統計は小売業だけであって、サービス業が調査対象外とされており、飲食や宿泊といった対人サービス業におけるCOVID-19のダメージが大きいわけですので、消費がパンデミック前の水準に戻ったと考えるべきではありませんが、COVID-19のダメージが大きいサービスはまだまだとしても、少なくとも物販については底堅い、と考えるべきです。
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