消費税率引上げの影響が剥落しマイナスとなった10月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は▲0.6%の下落でした。変動の大きな国際運輸を除くと▲0.4%の下落でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
サービス価格、10月0.6%下落
日銀が25日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.2と、前年同月比で0.6%下落した。前年同月比の下落は13年5月以来7年5カ月ぶりとなる。19年10月の消費税率引き上げから1年が経過し、影響が剥落した。消費税率引き上げの影響を除くベースでは、下落は8カ月連続だった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。財の企業物価指数(PPI)の国内物価よりも企業向けサービス物価指数(SPPI)の方が下がり方の勾配が小さいと見るのは私だけではないような気がします。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。
引用した記事にもある通り、本日公表の10月統計から、昨年2020年10月の消費税率の引上げによる物価押上げの影響は剥落しましたので、消費税を含む先月9月統計の+1.3%の上昇から、10月統計では▲0.6%の下落に大きくスイングしました。ただし、先月の9月統計でも消費税の影響を除くベースでは前年同月比で▲0.5%の下落でしたので、ヘッドラインの上昇率で見るほど大きな下落ではないと私は受け止めています。ただ気がかりなのは、消費税の除く「実力ベース」の前年同月比で見て、今年2020年5月の▲1.4%の下落を底に、先月9月統計の▲0.5%まで徐々に下落幅が縮小してきたにもかかわらず、10月統計では▲0.6%に下落幅が再拡大しています。この大きな要因は、消費者物価指数(CPI)と同じで、GoToトラベルによる宿泊費の下落だと私は受け止めています。すなわち、SPPIの宿泊サービスの前年同月比を見ると、8月▲34.8%、9月▲30.1%、に続いて、10月には▲34.5%を記録しています。消費税の影響を細かい品目で取り除くのは難しいので、8~9月の下落率は消費税の影響を含んだベースになって、10月とはベースが異なるんですが、引用した日経新聞の記事にはないものの、ロイターの記事から記者会見を想像する限り、日銀当局はGoToトラベルによって宿泊需要は回復した一方で、ビジネスホテルを中心に関東における値下がりの影響が大きく出た、と説明しているようです。もっとも、SPPIのヘッドライン上昇率がマイナスの下落に転じたとはいえ、上の2枚のグラフにも見られる通り、上のパネルの上昇率で見て、PPIのうちの国内物価よりはまだまだ下落幅が小さいわけですし、下のパネルの指数レベルで見ても、モノの国内物価指数が足元で下落している一方で、サービスのSPPIは足元で上昇しています。従って、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のショックによって、おそらく、人手不足の価格押上げ圧力は、従来ほどではないとしても、まだいくぶんなりとも残っており、そのぶん、モノのPPIよりもサービスのSPPIの方が底堅いという印象を持つのは私だけではないような気がします。
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