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2020年11月17日 (火)

米国バイデン政権は日本経済にどのような影響をもたらすか?

やや旧聞に属する話題ながら、先週木曜日11月12日に大和総研から「バイデン政権誕生が日本経済に与える影響」と題するリポートが明らかにされています。まず、リポート1ページめの要約を4点引用すると以下の通りです。

[要約]
  • 世界中で注目された 11月3日の米国大統領選挙では、民主党候補のバイデン氏の勝利が確定的となった。バイデン氏の掲げる政策は「大きな政府」を志向する伝統的な民主党の考えに沿ったものである。バイデン氏は法人および富裕層に対する増税を提案しているが、増税による税収増以上に大幅な財政支出を掲げ、総じて見れば景気刺激的な政策を目指している。
  • 議会でのねじれ継続が見込まれる中、民主・共和両党の意見が対立する政策の実現は難しい。共和党が強硬に反対するオバマケアの拡充などが実現する可能性は低く、財政政策の規模はバイデン氏の公約から大幅に縮小する公算が大きい。ねじれ議会シナリオでは、米国の GDP の押し上げ効果は2022年から2025年の平均で+0.5%程度と見込む。
  • 当社マクロモデルを用いた試算では、ねじれ議会下でのバイデン氏の政策が日本の実質GDPに与える影響は、2022年が+0.33%、2023年が+0.54%、2024年が+0.61%と見込まれる。
  • ただし、バイデン氏は"Buy American"による国内製造業の振興を政策として掲げ、公共投資などに伴う米国政府の調達においては、従来以上に米国内からの調達を重視する可能性がある。このため、輸出の増加を起点とした日本経済への影響も限定的となる可能性がある点には留意が必要である。

私のブログのような貧弱なメディアであれば、これだけで十分という気すらします。一応、1点だけ、リポートp.6から 図表4 米国の選挙結果が日本のGDPに与える影響試算 を引用すると以下の通りです。

photo

上のグラフの中で、「トリプルブルー」とは「バイデン氏の掲げる公約が全て実現」するというシナリオで、もうひとつの「バイデン+ねじれ議会」とは「ねじれ議会下において一部の政策(ヘルスケア、税制改革)が実現されない」と想定したシナリオとなっています。ただ、リポートでは財政政策以外にも言及があり、環境規制や金融規制が厳格化された場合には米国経済だけでなく、日本経済にもネガティブな影響が及ぶ可能性があり、また、引用した[要約]の4点目にあるように、米国政府の調達次第では、日本からの輸出を通じた影響が限定的となる可能性も指摘されています。また、詳細なテーブルの引用はしませんが、日本経済への影響については、輸出とそれに誘発される設備投資の影響が大きくなるとの試算結果で、逆から見て、家計の消費や住宅投資への影響は小さいことが示唆されています。

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