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2020年11月 2日 (月)

みずほ総研「インバウンド蒸発による悪影響の総括的検証」やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週10月28日に、みずほ総研から「インバウンド蒸発による悪影響の総括的検証」と題するリポートが明らかにされています。1ト月半ほど前の9月17日付けのこのブログで紹介したように、私も紀要論文で「訪日外国人客数およびインバウンド消費の決定要因の分析: VAR過程に基づく状態空間モデルの応用」とのタイトルで、小難しい状態空間モデルをVARプロセスで応用して、インバウンド消費の分析をしていますので、インバウンド消費や新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などについても、私も十分な関心を持っています。ということで、リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 図表2 世界産業連関表を用いたインバウンド蒸発によるGDP下振れ率の試算 を引用すると上の通りです。経済協力開発機構(OECD)による2015年基準の OECD Inter-Country Input-Output (ICIO) Tables を基に、非居住者家計による国内での直接購入がすべてゼロになったケースを試算しています。クロアチア、マルタ、キプロスなどの欧州の小国が並びますが、タイ、ギリシャ、ポルトガルなどでGDP下押し効果が極めて大きいことが明らかで、日本は試算対象の中で下から数えて4番目と、インバウンド蒸発の影響は小さくなっています。GDPのサイズが大きいこともありますが、まだまだ観光立国にはほど遠い、ということなのだろうと私は理解しています。

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次に、リポートから 図表4 インバウンド蒸発による生産下振れ率の試算・主要業種別 を引用すると上の通りです。これも、インバウンド消費額の全項目がゼロになった場合の試算です。日本は世界の中では影響小さいとはいえ、もちろん、産業ごとにインパクトは異なるわけで、軽く想像される通り、宿泊業や航空輸送でインバウンド消費蒸発の影響大きい、との結果が示されています。ついで、運輸附帯サービスや貸自動車業などでもマイナスの下振れが大きく、加えて、ボリュームの大きい小売でもかなりの影響あるものと私は考えています。

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最後に、リポートから 図表5 インバウンド依存度・都道府県別 を引用すると上の通りです。各都道府県のインバウンド消費を各都道府県の名目GDPで除したパーセント表示です。インバウンドに限定せずとも、沖縄・京都・北海道といった観光の比率がいかにも高そうな道府県に加えて、東京や大阪といった東西の大都市がトップ5に上げられています。まあ、当然でしょう。京都の先斗町でもインバウンド消費が蒸発して、飲食店が苦しい経営に陥っているらしい、という噂を私も聞いたことがあります。

最後に、リポートでは、国内観光需要に対するCOVID-19の影響も試算していて、インバウンド消費と同じで、宿泊業、航空輸送、運輸附帯サービスといった業種で影響が大きく、「観光関連業への支援継続が必要であるが、悪影響の大きい業種・地域に的を絞った支援の拡充が望まれる」と結論しています。

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