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2020年11月28日 (土)

今週の読書はコロナ危機に関する経済書と家族に関する社会学書と新書が3冊の計5冊!!!

今週の読書は、主流派のエコノミストによる経済書と広く社会学ないし社会科学の専門書に加えて、大学に再就職してから学生諸君にオススメするために盛んに読んでいる新書3冊の合計5冊、以下の通りです。

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まず、小林慶一郎・森川正之[編著]『コロナ危機の経済学』(日本経済新聞出版) です。経済産業研究所の関係者の研究者が集まって、まさに、コロナ・パンデミックの経済学を展開しています。第1部 今、どのような政策が必要なのか、と、第2部 コロナ危機で経済、企業、個人はどう変わるのか の2部構成であり、各部が10章ずつの大量の論文を収録するとともに、序章や終章まであって、とても盛りだくさんな内容です。ただ、それだけに、精粗まちまちな印象はありますが、この時期のこのテーマの出版でそこまで求めるのは酷というものだと私は思います。まあ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)とは何の関係もなく、おそらくは従来からの自説を展開しているだけ、に近い印象の論文も第9章と第10章をはじめとして、いくつか含まれているような気がします。加えて、私なんかにはとても勉強になるんですが、一般のビジネスパーソンに役立つというよりは、学術書の要素の方が強そうです。私が特に興味を持ったのは、第1に、パンデミックに関するSIRモデルです。古い古いモデルで、1927年にKermackとMcKendrickの論文で明らかにされています。このSIRモデルにおいては、国民を免疫のない非感染個体(S)と感染個体(I)と免疫を保持した回復個体あるいは隔離個体(R)の3カテゴリーへ分割され、①非感染個体(S)は感染個体(I)に移行し、その際、非感染個体(S)と感染個体(I)の積に比例して定率で移行します。そして、②感染個体(I)は別の定率で回復個体あるいは隔離個体(R)に移行します。また、③感染期間は指数分布に従うとして、この①から③が仮定されます。時刻tの時点における免疫のない非感染個体数S(t)と感染個体数I(t)と回復個体あるいは隔離個体数R(t)の3つの未知関数の時間変化に伴う増減は時間tで微分されていますから、その連立微分方程式を解けばいいわけです。これで理解できた人は素晴らしく頭がいいんですが、私自身もまだ一知半解な部分も残っています。少なくとも、パラメータを置いて表計算ソフトで手軽に計算できそうな気がします。そのうちに挑戦したいと思います。第2の関心は、当然ながら、雇用に関するものです。第2部のいくつかの章で格差の拡大、エッセンシャル・セクター労働者の過重労働の問題、在宅勤務の生産性の問題、などが取り上げられていました。現時点までの、というか、本書が執筆された5月時点くらいまでのデータでどこまで実証分析が可能なのかの問題はありますが、ongoingで展開している問題ですので、こういった分析を早めに世に問うのはとても意味あると私は受け止めています。

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次に、津谷典子ほか[編著]『人口変動と家族の実証分析』(慶應義塾大学出版会) です。多数に上るチャプターごとの著者は、津谷教授の定年退職を記念して集まられたような雰囲気があり、最後に、津谷教授の履歴・研究業績が示されています。どちらかといえば、家族を中心にしているので人口学や社会学の系統なんだと私は理解していますが、経済学とも密接に関連していることは事実です。私は大学で学部でも大学院でも「日本経済論」という授業を担当していて、この授業の呼称は10年ほど前の長崎大学とも共通するのですが、マクロ経済学の応用分野である日本経済論いついては、日本経済の大きな特徴である少子高齢化や人口減少をどこまで重視するのか、というスタンスの違いが現れます。本書は人口減少を人口変動のひとつのバリエーションとして分析対象としており、まあ、人口増加はスコープ外ながら、人口変動が経済に及ぼす影響も同時に別の意味でスコープ外となっています。私自身は人口減少は日本経済の停滞の要因である可能性は否定しないものの、それほど大きな影響を及ぼしているとは考えていません。ほかにいっぱいあります。ただし、高齢化については財政や社会保障の分野、特に、サステイナビリティの観点から大きな影響があると考えています。それほど突き詰めて考えたことはないという気もしますが、ある意味で、役所のカルチャーの部分もあろうかと思います。例えば、平成20年版の「経済財政白書」の第3章などでは、明確に人口減少が成長率の低下につながることを否定していますし、逆に、14~15世紀のペストのパンデミックが成長率を引き上げた事例なども紹介していたりします。ですから、吉川先生の中公新書『人口と日本経済』なんかもすんなりと頭に入りました。かつての日銀白川総裁が藻谷浩介『デフレの正体』に飛びついて、デフレは日銀の金融政策が悪いからではなくて人口減少のせいである、年て主張し始めたときはとても下品なものを感じました。まあ、それはともかくとしても、本書は完全な学術書です。家族というマイクロな社会学の対象から、マクロ経済学への橋渡しとなるのが人口動態だと私は考えています。その意味で、なかなかに勉強になる読書でした。少なくとも、私の専門分野からして、実証的な分析手法に大きな違いはなかったような気がします。

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次に、太田康夫『スーパーリッチ』(ちくま新書) です。著者は日経新聞のジャーナリストです。一昨日のブログで、もっとも重要な新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的帰結のひとつは格差拡大であると、いくつか授業の教材を紹介しつつ主張しましたが、IMFブログやBrookingsなどが社会的な海藻の下の方の女性や黒人や若年者に注目して、支援を呼びかけているのに対して、逆に、本書ではタイトル通りに超富裕層について取り上げています。COVID-19パンデミックでは、インターネット宅配のアマゾンをはじめとして、GAFAとマイクロソフトなどが在宅勤務で収益を増加させ、あるいは、在宅時間の増加とともにSNSも収益を上げていると私は考えており、ますます格差が拡大しています。ただ、決して覗き見趣味ではないつもりですが、本書の第3章で取り上げられているようなスーパーリッチの新貴族文化については、私も興味ないわけではありません。もっとも、私なんぞのサラリーマンで一生を終える一般ピープルには手の届かないことばっかりで、ついついため息が出そうです。特に、従来勢力というか、王侯貴族をはじめとする欧米先進国のスーパーリッチだけでなく、最近の時点でシェアが増加している中国人のスーパーリッチは、かつての日本人的な「成金趣味」がうかがえる部分もありました。格差先進国の中国の動向を中止しつつ、格差拡大が進めば経済社会がどうなるのかについてもエコノミストとして考えを巡らせたいと思います。

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次に、坂本貴志『統計で考える働き方の未来』(ちくま新書) です。著者はリクルートワークス研の研究者です。内閣府に出向して官庁エコノミストとして「経済財政白書」を執筆していた旨の紹介がなされています。失礼ながら、「官庁エコノミスト」のカテゴリーがとても広い意味で使われ始めた気がします。まあ、私も大学教授なんですから、いろんなカテゴリーを幅広く使うのはいいことかもしれません。ということで、高齢社会が進む一方で、様々な観点から高齢者の労働参加促進が政府の重要な政策のひとつとなっており、いくつかの統計からいろんな観点を提示しています。さすがに、私にとっては目新しい視点があったわけではありませんが、楽しく読めるビジネスパーソンも少なくないように思います。政府の視点からは、本書では出て来ませんが、年金支給までなんとか食いつないでもらうために、高齢者をおだて上げてても、企業を叱りつけてでも、なんとか65歳まで所得を政府以外から得て欲しいと考えていることは明白です。ですから、女性雇用などとセ抱き合わせにして、かつ、働き方改革なんて、勤労世代をはじめとして全世代を巻き込む形で高齢者の労働参加を促進する政策が展開されています。しかし、「生涯現役」を喜んで受け入れる高齢者がいる一方で、私もそうですが、従来から主著している通り、「生涯現役」なんて真っ平御免で、一定の年令に達したら引退してラクをしたい、と考える人々も一定数いることは本書でも主張されています。まあ、どこまで健康寿命が伸びるかにも依存しますが、果てしなく「生涯現役」はカンベンして欲しいです。

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最後に、筒井淳也『社会を知るためには』(ちくまプリマー新書) です。著者は、社会学を専門としており、何と、学部は違えども、私と同じ大学の社会科学の研究者です。どこにも明示的に書かれていないんですが、おそらく、大学に入学したばかりの20歳前後の学生を対象にしているんではないか、という気がします。ですから、専門外の私なんかにはそれなりにフィットしたレベル感でした。前の書評と重なりますが、経済学と社会学は同じ社会科学であり、同じ経済社会の分析をします。おそらく、私のような計量的な分析を主とする研究者であれば、分析手法も大きくは違っていません。何が違うかといえば、分析の対象です。経済学が経済行為や経済システムを分析対象とするのに対して、社会学はもっと広義の社会、ないし、経済関係で結ばれているわけではない家族や地域を分析します。ですから、本書のどこかにありましたが、「系」ということばは社会学では「家系」とか、「母系と父系」などのように、家族なんかのつながり方で用いる一方で、経済学では自然科学と同じで「システム」という意味でしか使いません。物理学の「太陽系」と同じです。でも、どちらも社会や社会をなして生活ないし生産している人間はとても緩い関係を保っていますので、太陽系の万有引力の法則みたいなのは十分な説明力を持たない場合がほとんどです。それでも、私は世のため人のために役立つようにと願って経済学の研究と教育を続けています。

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コメント

おはようございます。「働き方の未来」の感想でおっしゃっていますが、誰でも65歳以上で頑張って働きたいわけではない、というのはその通りです。私もこの3年間で、働かない暮らし方のコツを掴んだような気がしますが、何人かの同期生は、定年後の生活のリズムを掴めず、もがいて、結局少しはたらいくようになります。NPOなどに属して、一生を捧げるという人もいますが、怠惰な私にはとても真似ができません。なかなか政府の思惑通りに人は動かないのかもしれませんね。

投稿: kincyan | 2020年11月29日 (日) 06時57分

私は従来から主張している通りで、適当な年齢で隠居してラクをしたいと考えているんですが、やっぱり、「働かない暮らし方のコツ」があるんでしょうかね。おそらくラクをする観点からは、私の場合をはすぐに身につく気がします。

投稿: ポケモンおとうさん | 2020年11月29日 (日) 08時39分

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