労働政策研究・研修機構ディスカッションペーパー「コロナ禍における在宅勤務の実施要因と所得や不安に対する影響」を読む!!!
昨日の経済産業研究所のディスカッションペーパーに続き、今日も労働政策研究・研修機構(JILPT)から10月29日に明らかにされたディスカッションペーパー「コロナ禍における在宅勤務の実施要因と所得や不安に対する影響」を取り上げたいと思います。慶應義塾大学の研究者3名の共著になっています。私自身はペーパーのタイトルの後半である「所得や不安」についてはやや不案内なので、前半の在宅勤務の実施要因について詳しく見てみたいと思います。
ペーパーから 図2 在宅勤務実施率と在宅勤務可能性調整済み在宅勤務実施率 のグラフ4枚を引用すると上のとおりです。(A)雇用形態別、(B)年収別、(C)学歴別、(D)企業規模別の4種類のグラフです。4月時点と5月時点に分けられています。もはや、見れば明らかで、軽く想像される通り、(A)雇用形態別ではパートとアルバイトの在宅勤務実施率が極端に低くなっており、(B)年収別では年収が高いほど在宅勤務実施率が高く、(C)学歴別では4年制大学卒業以上で在宅勤務実施率が高く、(D)企業規模別では大企業ほど在宅勤務実施率が高い、という結果が示されています。なお、画像では「4年制大学卒業以下」となっていますが、「4年制大学卒業以上」のタイプミスだと考えられます。
やや話が逆になるかもしれませんが、このペーパーは労働政策研究・研修機構(JILPT)が連合総研と共同で2020年5月に実施した調査「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」のデータと、これに先立って2020年4月に連合総研により実施された「第39回勤労者短観調査」のデータを基に、さまざまな勤労者の属性を要因分析しています。基本はプロビット分析となっています。上に引用した4つの属性のほか、年齢層ダミー、既婚ダミー、12歳以下の子どもありダミー、要介護者ありダミー、勤続年数、労働組合参加ダミーなどの連続変数とカテゴリカル変数がモデルに加えられていますが、上の画像の変数のほかは目立って統計的に有意な説明要因とはなっていません。煩雑になりますのでテーブルの引用は控えますが、ペーパーp.25にある 表2 個人属性が在宅勤務実施確率に与える影響 に推計結果が示されています。結論のひとつとして、「大卒や正社員、高収入、企業規模の大きい企業の労働者などで在宅勤務実施率が高くなっており、学歴や雇用形態、年収、企業規模などの点で格差が生じている」ことが強調されています。常識的に軽く想像されるとおりなのですが、フォーマルな数量分析で確認されたことは重要だと私は受け止めています。
果たして、コロナ禍による在宅勤務、というか、私の場合はリモートからのオンライン授業なんですが、これはいつまで続けるんでしょうか。昨日取り上げた経済産業研究所による分析でも、在宅勤務はオフィスでのお仕事に比べて⅔くらいの生産性しか上げられません。たぶん、オンライン授業の学習到達度も⅔とか、そんなもんだろうという気がします。強くします。
| 固定リンク
コメント