伸びが鈍化した商業販売統計と改善示す雇用統計!!!
本日、経済産業省から商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。まず、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.7%増の12兆5700億円、季節調整済み指数では前月から▲2.0%減を記録しています。また、雇用統計については、失業率は前月から0.2%ポイント改善して2.9%、有効求人倍率も前月から+0.02ポイント改善して1.06倍と、11月については雇用指標は改善を見せました。いずれも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が和らいでいるものと考えるべきです。日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
11月の小売販売額0.7%増 百貨店は15.1%減
経済産業省が25日発表した11月の商業動態統計によると、小売業販売額は前年同月比0.7%増の12兆5700億円となった。2カ月連続で前年を上回った。自動車小売業や家電量販店の販売が増えたものの、百貨店は引き続き振るわず、スーパーの衣料品の落ち込みも続いている。
業態別では、家電量販店は通信家電や生活家電などの販売が伸び、25.3%増となった。2019年10月の消費増税の影響で同年11月の販売額が落ち込んでいたため、今年は伸び率が大きくなった。
百貨店は前年同月比15.1%減と14カ月連続で減少した。新型コロナウイルスの感染拡大で遠のいた客足が戻らず、主力の衣料品で同19.0%減と下げ幅が大きかった。スーパーの販売は、飲食料品が4.7%増加したものの衣料品の落ち込みが続き、全体では2.1%増だった。
経産省は基調判断を前月から据え置き、「横ばい傾向にある」とした。季節調整済みの前月比でみると2.0%のマイナスだった。業種別では自動車小売業が前年同月比3.4%増、家電など機械器具小売業が同26.2%増加した。
失業率、11月2.9%に改善 有効求人倍率は1.06倍に上昇
総務省が25日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は2.9%で、前月比0.2ポイント低下した。低下は6月以来5カ月ぶり。厚生労働省が25日発表した11月の有効求人倍率(同)は1.06倍で前月から0.02ポイント上昇した。
総務省の担当者は「11月の雇用情勢はよくなったものの、底を打ったとは言えない」と分析する。12月以降、新型コロナウイルスの感染が本格的に再拡大しており、今後の情勢は不透明だ。
就業者数(原数値)は前年同月比55万人減の6707万人となり、8カ月連続で減少した。正社員は6カ月連続で増加する一方、非正規は62万人減と9カ月連続で減った。
雇用情勢は産業別でばらつきが大きい。就業者は情報通信業(前年同月比19万人増)や医療・福祉(同26万人増)で増える一方、宿泊・飲食サービス業(同29万人減)は大きく減った。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示すもので、改善は2カ月連続。1月から9月まで9カ月連続で低下し、10月から上昇に転じていた。11月は企業からの有効求人が前月から3%増え、働く意欲のある有効求職者は1.5%増えた。
就業地別でみた都道府県ごとの有効求人倍率は最高の福井県が1.61倍で、最低の沖縄県は0.79倍だった。東京都は7月から5カ月連続で1倍をきり、11月は前月比0.01ポイント低下の0.89倍だった。地域ごとの感染状況の違いが雇用情勢にも影響を与えているとみられる。
新型コロナに関連した解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は12月24日時点で7万8979人と8万人に迫る。厚労省が全国の労働局やハローワークを通じて集計した。解雇後の状況を把握できているわけではないため、この集計には既に再就職できた人も含まれている。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、とても長くなってしまいました。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。
小売業販売額の前年同月比で見て、新型コロナウィルス(COVID-19)パンデミック初期の食料品やマスクをはじめとする日用品の買い物をせっせとしていた今年2020年2月の前年同月比+1.6%増を最後に3月からマイナスが続いていたんですが、10月統計で久し振りにプラスに転じたものの、本日公表の11月統計では伸びが大きく鈍化して+0.7%増を記録しています。しかしながら、先月統計の公表時にも指摘した通り、先月10月統計は前年2019年10月に消費税率の引上げがあって、その直前の駆込み需要の反動として昨年10月統計が大きく落ち込んだため、伸び率が大きく見えているわけですから、今日発表の11月統計は「こんなもん」という気もします。ただし、季節調整済みの指数で見ると前月比▲2.0%減と落ちていますので、やや伸びが鈍化しているというのも事実なんだろうと受け止めています。もちろん、この商業販売統計は小売業だけであって、サービス業が調査対象外とされており、飲食や宿泊といった対人サービス業におけるCOVID-19のダメージが大きいわけですので、サービスも含めた消費がパンデミック前の水準に戻るのには、まだ時間がかかりそうです。
続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。まず、失業率について、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは3.1%、有効求人倍率の日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは1.04倍でしたので、いずれも前月統計から横ばいと予想されていたのですが、実績はいずれもこの市場の事前コンセンサスよりも雇用が改善しつつあることを示しており、そこそこ雇用は底堅い、と私は認識しています。人口減少の経済的影響が人手不足としてまだ残っている可能性があるわけです。ただし、引用した記事にもあるように、地域別や産業別でばらつきが大きく、東京都の有効求人倍率が低下を続けている背景はCOVID-19の感染拡大があるのは容易に想像されるところです。もちろん、現時点でもCOVID-19の第3波の感染拡大は終息しているとはとても思えず、再びロックダウンに近い措置を必要とする可能性も否定できませんし、先行きは何とも不透明です。
最後に、参考ながら、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大や重傷者の増加などにより医療体制が逼迫していると報じられていますが、総務省統計局の労働力調査の追加参考表「就業者及び休業者の内訳」を見ると、休業者を主要な産業別に分類している表3から、医療・福祉の休業者が11月には26万人に上っており、卸売業・小売業の21万人、製造業の19万人、宿泊業・飲食サービス業の11万人よりも多くなっています。就業と休業のシステムはよく判りませんが、こういった休業者を活用することは難しいのでしょうか?
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