下げ幅を拡大した企業物価指数(PPI)とプラスに転じた法人企業景気予測調査をどう見るか?
本日、日銀から11月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲2.2%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
11月の企業物価指数、前年比2.2%下落 石油製品の下げ響く
日銀が10日発表した11月の企業物価指数(2015年平均=100)は99.9と、前年同月比で2.2%下落した。前月比では横ばいだったが、ドバイ市況の悪化で石油製品などの価格下落が続いたのが響いた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。ガソリンなど石油製品に加え、電力・都市ガス・水道の価格下落が指数を押し下げた。自動車販売の回復でタイヤなど関連製品の生産が戻りつつあり、化学製品の価格は前月比で上向いたものの、前年比では下落が続いた。
円ベースで輸出入物価をみると、輸出は前年同月比2.1%下落し、前月比では横ばいだった。輸入は前年同月比10.6%下げたが、前月比では0.5%上昇した。
日銀は「経済活動の改善ペースは緩やかなものにとどまっている」と指摘。企業物価についても、新型コロナウイルスの感染拡大が「国際商品市況と国内需給の両面から大きな影響を与え続けている」とした。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、ヘッドラインの国内物価の前年同月比が▲2.2%の下落でしたので、ジャストミートしました。季節調整していない原系列ながら、前月比は保合いだったんですが、電力・都市ガス・水道や石油・石炭製品が大きなマイナス寄与を示していて、引用した記事の通り、「ドバイ市況の悪化で石油製品などの価格下落」が主因であろうという印象です。前年同月比でも、石油・石炭製品は11月に▲18.5%の下落と、10月の▲16.2%から下げ足を速めています。電力・都市ガス・水道もご同様で11月▲-10.0%と、10月の▲8.5%から下落幅が拡大しています。もちろん、背景には新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックがあるわけで、欧州の中では再びロックダウンを始めた国がある一方で、ワクチン接種も始まっており、専門外の私には方向性はよく判りません。でも、我が日本については、ワクチン接種が大規模に始まったとの報道には接しておりませんし、緊急事態宣言は出ていないものの、第3波を思わせるくらいに感染者数が増加しており、世界の中で遅れ始めている印象を感じます。来年のオリンピックを強行するためなんですかね?

続いて、本日、10~12月期の法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは上の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。これまた、直近の2020年4~6月期直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。ということで、統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元10~12月期で+11.6でした。2020年4~6月期に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応した緊急事態宣言によるロックダウンの影響を受けて、大きなマイナスを記録した後、2四半期連続のプラスを記録しています。大企業のうち、製造業+21.6、非製造業は+6.7ですから、いずれもプラスとはいえ、中国経済回復の恩恵を受ける製造業と、大きく回復したとはいえ宿泊・飲食でまだ低い水準を続ける非製造業の差が出ています。先行き2021年1~3月期の見通しは+3.1、4~6月期は+2.2とプラス幅が縮小していくのは、この統計のクセのようなものと私は考えています。
さて、来週月曜日公表予定の12月調査の日銀短観やいかに?
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