輸出金額が25か月ぶりに前年同月比プラスを記録した12月の貿易統計をどう見るか?
本日、財務省から昨年2020年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比+2.0%増の6兆7062億円、輸入額は▲11.6%減の5兆9552億円、差引き貿易収支は+7510億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
20年12月の貿易収支、7510億円の黒字 通年は3年ぶり黒字
財務省が21日発表した2020年12月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7510億円の黒字だった。黒字は6カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は9427億円の黒字だった。
輸出額は前年同月比2.0%増の6兆7062億円、輸入額は11.6%減の5兆9552億円だった。中国向け輸出額は10.2%増、輸入額は1.8%増だった。
併せて発表した20年の貿易収支は6747億円の黒字だった。通年ベースの黒字は3年ぶり。輸出額は19年比11.1%減の68兆4067億円、輸入額は13.8%減の67兆7320億円だった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は+9427億円の黒字でしたので、やや市場予想よりも下振れたとはいえ、それほど大きなサプライズはなかったと私は受け止めています。広く報じられている通り、貿易をはじめとする我が国の経済活動も新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を受けましたが、本日公表の貿易統計についても、かなりの程度に回復を見せている一方で、12月統計では輸入金額が前年同月比で11月からマイナス幅を拡大してます。現時点では、欧州をはじめとして世界的に再びロックダウンが広がっているとはいえ、諸外国の供給制約によるものではなく、COVID-19の第3波の影響による国内経済活動の伸び悩みに起因すると私は受け止めています。もちろん、輸出も輸入も上の季節調整済みの系列のグラフに見られる通り、最悪の時期は脱しています。他方で、ここ1~2か月で輸出の伸びが鈍化し、輸入はマイナスに転じているのが見て取れます。世界と日本におけるCOVID-19の影響に起因するとしか考えられません。従って、今後の先行きは極めて不透明です。

続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額指数の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国向けの輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、2枚めと3枚めのグラフについては、わけが判らなくなるような気がして、意図的に下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。輸出金額について、季節調整していない原系列の貿易指数の前年同月比で見て、何と、25か月ぶり、すなわち、2018年11月以来のプラスの伸びを示しています。もっとも、輸出数量はまだ△0.1%のマイナスです。まあ、輸出数量についてもほぼほぼゼロにまで回復してきたと評価することは可能かもしれません。ただし、12月から年明けにかけて、COVID-19の第3波なのか、変異種による感染拡大なのか、私は専門外でよく判りませんが、感染がまたまた拡大しているように見えます。従って、我が国でも首都圏や京阪神を中心として都市部で緊急事態宣言が出たりしています。先行きははなはだ不透明と考えざるを得ません。
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