大きく低下した12月の景気ウォッチャーと黒字の続く経常収支の先行きやいかに?
本日、内閣府から昨年2020年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲10.1ポイント低下の35.5を示した一方で、先行き判断DIは+0.6ポイント上昇の37.1を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆8784億円の黒字を計上しています。貿易収支が黒字となっており、米国や中国向けの自動車輸出などが回復している一方、輸入は原油を中心に前年同月から減少を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
20年12月の街角景気、現状判断指数は2カ月連続悪化
内閣府が12日発表した2020年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は35.5で、前の月に比べて10.1ポイント低下(悪化)した。悪化は2カ月連続。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は37.1で、0.6ポイント上昇した。改善は2カ月ぶり。家計動向、企業動向が改善した。
内閣府は基調判断を「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさが残る中で、持ち直しに弱さがみられる」から「新型コロナの影響により、このところ弱さがみられる」に変更した。
20年11月の経常収支、1兆8784億円の黒字 77カ月連続黒字
財務省が12日発表した2020年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆8784億円の黒字だった。黒字は77カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆5500億円の黒字だった。
貿易収支は6161億円の黒字、第1次所得収支は1兆7244億円の黒字だった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

よく知られているように、消費者マインド指標としては、本日公表の景気ウォッチャーとともに消費者態度指数があり、どちらもこのブログで取り上げているところながら、消費者態度指数はダイレクトに消費者世帯のマインドを調査しているのに対して、景気ウォッチャーは消費者マインドを反映しそうな事業者の供給サイドの指標となっています。ということで、先行き判断DIがわずかながら上昇した一方で、現状判断DIは10月の54.5から11月には前月差▲8.9ポイント低下の45.6に落ちた後、さらに、12月統計では▲10.1ポイントの低下で35.5まで下げてしまいました。このため、引用した記事にある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」から「このところ弱さがみられる」に変更しています。いうまでもなく、悪化の大きな要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大であり、逆に、先行き判断DIは感染拡大が終息に向かうことを期待している可能性があると私は受け止めています。ですから、12月統計の現状判断DIを少し詳しく見ると、企業動向関連では、製造業・非製造業ともに前月差マイナスなのですが、非製造業のほうが大きな落ち込みを示していますし、家計動向関連では、飲食関連が▲20.5ポイント、サービス関連が▲19.9ポイントといずれも大きなマイナスを記録しています。先行きについては、繰り返しになりますが、先行き判断DIがわずかながらプラスを示しており、COVID-19終息期待があると想像されますが、もう、エコノミストの領域ではなさそうな気がしています。

次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、COVID-19の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性がある一方で、第3波による2番底の可能性も排除できない、と考えています。内外の景気動向の差に基づく貿易赤字が主因となって経常収支が落ち込んでいましたが、季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は7月統計から黒字に転じ、本日公表の11月統計でも貿易黒字が拡大しいています。ただし、輸出の増加というよりは、国内景気に下がっ連動した輸入の減少に起因している面が強いと私は受け止めています。いずれにせよ、欧州でCOVID-19第3波によりロックダウンに入っている国もあり、あらゆる経済指標の先行きはCOVID-19次第と考えざるを得ません。
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