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2021年1月 7日 (木)

コロナ禍で毎月勤労統計に見る賃金は下げ続ける!!!

本日、厚生労働省から昨年2020年11月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、久しぶりに取り上げています。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で▲1.1%減少の27万9095円となっており、景気に敏感な所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月から+0.6%増となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

11月の実質賃金、前年同月比1.1%減 賞与の減少響く
厚生労働省が7日発表した2020年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.1%減少した。実質賃金の減少は9カ月連続。新型コロナウイルス感染症の影響による企業業績の悪化などを背景に賞与が減少した。
名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は27万9095円で前年同月比2.2%減った。減少は8カ月連続。内訳をみると、賞与など特別に支払われた給与は22.9%減少し、減少幅は19年2月以来1年9カ月ぶりの大きさとなった。厚労省の担当者は、新型コロナの影響で「企業は賞与を減額したり、支払いを遅らせたりしたようだ」と説明した。
残業代など所定外給与は10.3%減で減少は15カ月連続となった。一方、基本給にあたる所定内給与は0.1%増の24万5779円と微増だった。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.2%増の1205円だった。パートタイム労働者の比率は前年同月から0.10ポイント低い31.62%で、低下は10カ月連続。新型コロナの影響でパートタイムの新規採用者数が減ったり、契約の更新を見送ったりした可能性が高い。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、真ん中のパネルが季節調整していない原系列の現金給与指数と決まって支給する給与、一番下が季節調整済みの系列の現金給与指数と決まって支給する給与となっています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

photo

景気との連動性高い所定外労働時間は、わずかな差で1ト月違いながら、私がこのブログ向けに暫定的に仮置した2020年5月の景気の谷にほぼ整合的な形で反転しているのが、上のグラフから見て取れます。季節調整済みの系列で見て、11月の所定外労働時間は前月からわずかに+0.6%の伸びとなっており、雇用が生産の派生需要であることから、鉱工業生産指数(IIP)が横ばいだったのに対応していると考えるべきです。賃金もおおむね2020年5月で下げ止まったところなのですが、2020年11月には再び下げ幅を拡大しています。引用した記事にある通り、いわゆるボーナスに相当する特別に支払われた給与の減少が響いているようです。季節調整していない原系列の統計で見て、▲22.9%減となっています。逆に、きまって支給する給与は▲0.7%減まで下げ幅を縮小させています。ただ、よくよく考えると、ボーナスは11月よりも12月の給与により大きなインパクトがあると考えるべきであり、の12月統計ではさらに賃金の下げ幅が大きくなると覚悟すべきです。統計がそもそもガタガタな上に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のショックで給与統計は下げ続けており、国民生活はひどいことになっています。

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