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2021年1月27日 (水)

国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し改定」やいかに?

昨日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。pdfの全文リポートもポストされています。ヘッドラインとなる世界経済の成長率は2021年+5.5%、2022年+4.2%と見込まれており、昨年2020年10月時点での「世界経済見通し」から2021年は+0.3%ポイント上方修正されました。2022年は変更ありません。

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まず、IMFのサイトから成長率見通しの総括表 Latest World Economic Outlook Growth Projections を引用すると上の通りです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響により、昨年2020年は大きく成長率が落ち込んだものの、ワクチン開発への期待などについては不透明感はまだ強いものの、今年2021年はリバウンドが見込まれています。なお、上のテーブルに見られるように、日本の成長率については、2020年に△5.1%のマイナス成長と、先進国平均を下回る成長率であったにもかかわらず、今年2021年は+3.1%、来年2022年は+2.4%と、それなりのリバウンドを見せるものの、先進国平均を下回る成長率と見込まれています。

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その成長率の基礎、というか、GDPの水準を中国と先進国と中国を除く新興国・途上国の地域の3分割でプロットしたのが上のグラフです。IMFのリポートから Figure 1. Divergent Recoveries: WEO Forecast for Advanced Economies and Emerging Market and Developing Ecocnomies 引用しています。赤い折れ線グラフの中国はかなりのハイペースでCOVID-19パンデミック前の水準に戻りつつあるように見えますし、青の先進国もまずまずといったところですが、黄色の中国を除く新興国・途上国については、傾き=成長率こそもとに戻りつつありますが、GDPの水準を取り戻すのにはまだ時間がかかりそうです。

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そして、そのCOVID-19パンデミック前と比較したGDPの損失をもう少し詳しい地域別にプロットしたのが上のグラフです。IMFのリポートから Figure 4. GDP Losses Relative to Pre-COVID by Region 引用しています。米国のロスがもっとも小さく、次いで、権威主義国家として強力なロックダウンを実行した中国が続いています。もっとも損失が大きいのは中国を除くアジア新興国となっています。世界でもっとも死者数が多くなっている米国の産出ロスが小さいという結果には、違和感を覚えるエコノミストも少なくありません。要するに、国民の生命を犠牲にして経済を守った、という推測ができるかもしれません。もっとも、私が従来から主張しているポイントで、この推計には機会費用や外部経済が含まれておらず、市場価格だけで試算した結果ではなかろうか、と想像しています。COVID-19で死亡した米国人の生命の価値はゼロとされているのではないか、と危惧しています。日本政府も第3次補正予算にしつこくGoToトラベル事業の経費を積んでいます。ワクチンの開発が進んだとはいえ、COVID-19の感染拡大を許容し、すなわち、感染拡大による死者の増加を容認するかのごときGoToトラベル事業の推進などの経済活性化政策には私は強く反対します。

最後に、IMFの政策提言には、COVAXファシリティによるワクチンの全世界的な流通を確保するための多国間協力 "COVAX facility to accelerate access to vaccines for all countries" とか、不平等に対応して現金給付や低所得家計への医療費補助などの社会的扶助の強化 "strengthening social assistance as needed (for example, conditional cash transfers and medical payments for low-income households)" など、極めて必要性の高い政策がある一方で、いくつかの国では債務リストラが不可避 Debt restructuring may be unavoidable for some countries なんて、重要性も緊急性も極めて低い政策も上げられていたりします。

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