マイナス幅を拡大した1月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から1月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は▲0.5%の下落でした。変動の大きな国際運輸を除くと▲0.4%の下落と、いずれも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応した緊急事態宣言の影響でマイナス幅を拡大させています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
1月の企業向けサービス価格、前月比0.6%下落 緊急事態宣言の再発令で
日銀が22日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.1と、前年同月比で0.5%下落した。また、前月比では0.6%下落し、前月比の下落は20年5月以来8カ月ぶりとなった。
新型コロナウイルスの感染再拡大を受けた二度目の緊急事態宣言の発令により、宿泊サービスの需要が減少。価格の下押し圧力となった。
テレビ広告は前月、広告予算を消化する動きで堅調だったが、新型コロナの再拡大で企業の出稿需要が減った。
2月以降も新型コロナの影響が続く中、日銀は「価格の下落圧力が強まるかどうかについて、不確実性が高い」との姿勢を示した。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは55品目、下落は55品目だった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。財の企業物価指数(PPI)の国内物価よりも企業向けサービス物価指数(SPPI)の方が下がり方の勾配が小さいと見るのは私だけではないような気がします。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

上のグラフで見ても、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、2019年10月の消費税率引上げの効果が剥落した昨年2020年10月からマイナスに陥っていて、それでもまだ、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内物価上昇率よりは、人手不足の影響などから高い上昇率を示しています。しかしながら、引用した記事にもある通り、宿泊サービスが昨年2020年12月の前年同月比▲28.2%下落から、1月統計では▲37.9%下落とマイナス幅を大きくしています。先週公表された消費者物価指数(CPI)では、GoToトラベル事業の停止に伴って、1月統計で宿泊料のマイナス幅が大きく縮小して、CPIの下落幅の縮小にもそれなりに寄与していたんですが、総務省統計局のCPIと日銀のSPPIで大きな不整合となっています。GoToトラベル事業は、観光を目的とした旅行に限定されており、昨年2020年11月からはビジネス出張には適用されなくなりましたから、こういった違いを生じています。ですから、SPPIの宿泊サービスの大きな下落は、GoToトラベルによるものではなく、需要の減少に起因しています。加えて、景気に敏感な広告も同じです。すなわち、昨年2020年12月の▲1.5%下落から、1月統計では▲3.8%に下げ幅を拡大しています。テレビ広告、新聞広告、インターネット広告と枕を並べて下落幅を拡大しています。これも需要不足の経済状況を反映していると考えるべきです。大類別による寄与度で見ると、宿泊サービスは諸サービスに含まれ、労働者派遣サービスや土木建築サービスがまだプラスですから、大類別としてはプラスの寄与を示していますが、広告の寄与は▲0.18%ですし、不動産も▲0.11%、運輸・郵便も▲0.10%、などが大きなマイナス寄与といえます。物価目標に近づく気配すらありません。
物価にせよ、何にせよ、まったくもって経済指標はすべからく新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック次第なのかもしれません。
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