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2021年2月 8日 (月)

3か月連続で低下した景気ウオッチャーと貿易黒字の続く経常収支!!!

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2020年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲3.1ポイント低下の31.2を示した一方で、先行き判断DIは+3.8ポイント上昇の39.9を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆1656億円の黒字を計上しています。貿易収支が黒字となっており、米国や中国向けの自動車輸出などが回復している一方、輸入は原油を中心に前年同月から減少を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

街角景気3カ月連続悪化 1月、20年5月以来の低水準
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令で街角景気の二番底が鮮明になった。内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査によると、景気の現状判断指数(DI、季節調整値)は前月比3.1ポイント低い31.2だった。飲食関連の落ち込みなどで3カ月連続の悪化となり、17.0だった2020年5月以来の低水準に沈んだ。
調査期間は1月25~31日。政府はそれに先立つ7日に1都3県に緊急事態宣言を再発令し、13日に11都府県に広げた。小売関連が30.8と5.2ポイント、サービス関連が22.8と4.3ポイントそれぞれ下がった。12月に18.5ポイント下がった飲食関連は15.1と最も低い水準だった。
内閣府は街角景気の基調判断を「このところ弱まっている」とした。
2~3カ月先の景気に対するDIは3.8ポイント上がり39.9となった。
20年12月の経常収支、1兆1656億円の黒字 輸入減で貿易収支が増加
財務省が8日発表した2020年12月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆1656億円の黒字だった。黒字は14年7月以降78カ月連続で、前年同月に比べ6207億円増加した。貿易収支の増加が寄与した。
貿易収支は9651億円の黒字で、前年同月に比べ8949億円増加した。原油などのエネルギー資源の輸入減を反映した。中国向けのプラスチックや非鉄金属の輸出が増えた。
第1次所得収支は6492億円の黒字と、前年同月に比べ2074億円増加した。日本企業の海外子会社からの配当金の受取が増えた。
同時に発表した20年の経常収支は17兆6976億円の黒字で、前年比で2兆8283億円減少した。新型コロナウイルス感染症の流行による訪日外国人の減少で、サービス収支が赤字に転じたことが影響した。債券利回りの低下による受取利子の減少で、第1次所得収支の黒字幅も縮小した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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よく知られているように、消費者マインド指標としては、本日公表の景気ウォッチャーとともに消費者態度指数があり、どちらもこのブログで取り上げているところながら、消費者態度指数はダイレクトに消費者世帯のマインドを調査しているのに対して、景気ウォッチャーは消費者マインドを反映しそうな事業者の供給サイドの指標となっています。ということで、先行き判断DIがわずかながら上昇した一方で、現状判断DIは10月の54.5を直近のピークとして、11月には前月差▲9.2ポイント低下、12月にも▲9.5ポイント低下、と続き、今年2021年1月も▲3.1ポイント低下して、3か月連続の低下で31.2まで下げてしまいました。このため、引用した記事にある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「このところ弱まっている」に変更しています。先月統計では「このところ弱さがみられる」でしたので、私は下方修正だと受け止めています。もちろん、悪化の大きな要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大であり、逆に、先行き判断DIは感染拡大が終息に向かうことを期待している可能性があるんだろうとしか考えられません。1月統計の現状判断DIを前月からの差で少し詳しく見ると、家計動向関連の▲4.1が企業動向関連の▲0.9と比べて、かなり大きな低下幅を示しています。COVID-19は企業部門よりも家計部門へのダメージの方が大きいとの街角の判断です。私はこれは正しいんだろうと受け止めています。繰り返しになりますが、先行きについては「景気の先行きに対する判断理由」でワクチンに言及する見方がとても多く、COVID-19終息期待があると想像されるものの、もう、エコノミストがコメントする領域ではなさそうな気すらしています。ただ1点だけ、先進国の中でもワクチン接種がここまで遅れているのは日本くらいで、政府の失政といわざるを得ません。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、COVID-19の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性がある一方で、第3波による2番底の可能性も排除できない、と考えています。ただし、季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は7月統計から黒字に転じ、本日公表の昨年2020年12月統計でも貿易黒字は高い水準を維持しています。ただし、輸出の増加というよりは、国内景気に連動した輸入の停滞に起因している面が強いと私は受け止めています。例えば、季節調整済みの系列の前月比で見て、12月の輸出は△2.0%減であるのに対して、輸入は+0.1%増となっています。いずれにせよ、欧州でCOVID-19第3波によりロックダウンが続いている国もあり、経常収支をはじめとして、あらゆる経済指標の先行きはCOVID-19次第と考えざるを得ません。

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