毎月勤労統計に見る賃金はまだ下がり続けるのか?
本日、厚生労働省から昨年2020年12月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、先月から久しぶりに取り上げています。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で▲3.2%減の54万6607円となっており、景気に敏感な所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月から+2.5%増となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
20年12月の実質賃金、前年同月比1.9%減 冬の賞与減で
厚生労働省が9日発表した2020年12月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.9%減少した。冬の賞与や残業代の減少が響いた。
名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は、前年同月比3.2%減の54万6607円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が0.1%減、ボーナスなど特別に支払われた給与は5.4%減、残業代など所定外給与は8.9%減だった。
パートタイム労働者比率は0.25ポイント低下の31.54%だった。時間あたり給与は2.0%増の1204円だった。
同時に発表した20年の実質賃金は前年比1.2%減だった。減少率は、消費税を8%に増税した14年(2.8%減)以来の大きさとなった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、真ん中のパネルが季節調整していない原系列の現金給与指数と決まって支給する給与、一番下が季節調整済みの系列の現金給与指数と決まって支給する給与となっています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

景気との連動性高い所定外労働時間は、わずかな差で1ト月違いながら、私がこのブログ向けに暫定的に仮置した2020年5月の景気の谷にほぼ整合的な形で反転しているのが、上のグラフから見て取れます。ただし、経済産業省の鉱工業生産指数が昨年2020年11~12月と2か月連続で減産している一方で、生産の派生需要である雇用の方の製造業所定外労働時間が逆に増加しているのはやや違和感あります。また、賃金もおおむね2020年5月で下げ止まったところなのですが、2020年11~12月には大きなマイナスを記録しています。引用した記事にある通り、いわゆるボーナスに相当する特別に支払われた給与や残業代など所定外給与の減少が響いているようです。統計がそもそもガタガタな上に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のショックで給与統計は下げ続けており、国民生活はひどいことになっています。
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