米国ニューヨーク連銀のブログに見る新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響による労働市場の不平等の拡大やいかに?
やや旧聞に属する話題かもしれませんが、米国ニューヨーク連銀のブログである Liberty Street Economics のサイトで、ちょうど1週間前の2月9日に新型コロナウィルス感染症(COVID-19)がもたらした労働市場における不平等について、COVID-19 and Labor Market Outcomes と題して3回の特集が組まれています。ソースは以下の通りです。
- Some Workers Have Been Hit Much Harder than Others by the Pandemic
- Understanding the Racial and Income Gap in Commuting for Work Following COVID-19
- Black and White Differences in the Labor Market Recovery from COVID-19
何度か、私がこのブログで強調したように、COVID-19の経済的帰結のもっとも重要なポイントのひとつは不平等や格差の拡大です。ニューヨーク連銀のエコノミストも基本的に私と同じ視点に立っているように受け止めています。いくつかグラフを引用して簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、最初のポストである Some Workers Have Been Hit Much Harder than Others by the Pandemic から判りやすいグラフを2点結合して引用すると上の通りです。タイトルは、上が Steeper Job Losses Seen for Lower-Wage Workers であり、下が Higher-Wage Workers Are More Likely to Work Remotely となっています。とても判りやすいと思います。上のパネルから、年収85千ドルを超える高収入の労働者はほとんど職を失わなかった一方で、30千ドル未満の低所得労働者はCOVID-19パンデミック前の2月を起点として、大きく職を失った上に、昨年いっぱいの期間ではその回復も遅れています。下のパネルから、同じ賃金階級で見て、高賃金労働者ほどリモートで仕事ができることが明らかに示されています。
次に、2番めのポストである Understanding the Racial and Income Gap in Commuting for Work Following COVID-19 からは、これほど判りやすいグラフがなかったものですから、グラフの引用はしません。2番めのポストでは、米国の郡 county ごとに通勤の問題に注目しています。そして、結論として、低所得の黒人やヒスパニック系が多数を占めるコミュニティにおいては、在宅勤務への切換えができず、その分、COVID-19への脆弱性が高かった可能性を示唆しています。
最後のポストである Black and White Differences in the Labor Market Recovery from COVID-19 から Labor Force Exit from Unemployment Remains Elevated for Blak Workers と題するグラフを引用すると上の通りです。このポストでは、就業から失業への移行に加えて、正規雇用と非正規雇用=臨時雇用の間の移行、さらに、失業者の労働市場からの退出、などについての分析結果を示しています。上のグラフから、黒人は白人に比べて失業してそのまま労働市場から退出するケースが多いことが示されています。いい働き口がないからと推測されます。
私は学生諸君への授業でも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済的帰結として、不平等の拡大を上げていて、とても深刻に受け止めています。授業の最後には、学生諸君に対して、たとえCOVID-19に耐性ある職業に就けたとしても、決して、格差や不平等で苦しんでいる人たちへの思いやりを忘れないよう、強く訴えておきました。
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