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2021年2月26日 (金)

増産を示した鉱工業生産指数(IIP)と減少した商業販売統計の違いやいかに?

本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+4.2%の増産でした。商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲2.4%減の12兆970億円、季節調整済み指数では前月から▲0.5%の低下を記録しています。消費の代理変数である小売販売額は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第3波の感染拡大による影響、さらに、それに対応した緊急事態宣言の影響と考えるべきです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の鉱工業生産、4.2%上昇 2月予測は2.1%上昇
経済産業省が26日発表した1月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比4.2%上昇の97.7だった。上昇は3カ月ぶり。生産の基調判断は「持ち直している」に据え置いた。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比4.0%上昇だった。
出荷指数は3.2%上昇の95.8で、在庫指数は0.2%低下の95.1。在庫率指数は6.3%低下の106.5だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では、2月が2.1%上昇、3月は6.1%低下を見込んでいる。
1月の小売販売額、2.4%減
経済産業省が26日発表した1月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比2.4%減の12兆970億円だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が5.8%減の1兆6275億円だった。既存店ベースでは7.2%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は4.4%減の9290億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+4.0%の増産との見込みでしたので、ほぼほぼジャストミートしています。ただ、産業別に季節調整済みの系列の前月との比較で詳しく見ると、汎用・業務用機械工業と電子部品・デバイス工業が前月から2ケタ増を示したほか、電気・情報通信機械工業や生産用機械工業なども増産に寄与しています。他方、自動車工業を除く輸送機械工業と石油・石炭製品工業が減少しています。大雑把にいって、昨年2020年11~12月と2か月連続の原産の反動の要素がありますが、それにしても、指数水準は2020年10月の95.2を大きく上回る97.7ですから、昨年2020年5月を底とした生産の回復傾向が継続していると私は考えています。ひとつの根拠は製造工業生産予測指数であり、2月はさらに+2.1%の増産を見込んでいます。予測誤差のバイアスを取り除いた試算値でも▲0.4%の減産ですから、ほぼ横ばいと考えられます。ですから、統計作成官庁である経済産業省が基調判断を「持ち直している」に据え置いたのは、これらの実績統計を見る限り、当然とわたしは受け止めています。しかし、留保は必要で、もうひとつの可能性として、中華圏の春節休暇が2月中旬に当たっているため、その直前の1月に駆込み輸出が発生した可能性も否定できません。もしそうであれば、2月の生産は横ばいどころか、大きな減産となる可能性も否定できません。加えて、いずれにせよ、昨年2020年暮れあたりから日本も含めて、世界的に新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第3波のパンデミックが始まっており、特に、日本のようなワクチン接種後進国では隔離を含めたソーシャル・ディスタンシングで対応せねばなりませんから、生産の先行きがそれほど明るいとは、私にはとても思えません。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、鉱工業生産指数(IIP)と同じで、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。ということで、季節調整していない原系列の統計の前年同月比では2か月連続で、季節調整した系列の前月比でも3か月連続で、いずれでも小売販売額はマイナスを記録し、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「弱含み傾向」に据え置いています。2点だけ、強調しておきたいと思います。第1に、小売販売額は基本的に物販だけでサービス消費が含まれていない点です。COVID-19の経済的な影響については、基本的に、物販よりも外食とか宿泊などの対人接触型のサービスに大きく現れます。繰り返しになりますが、日本のようなワクチン接種後進国ではCOVID-19パンデミック防止のためにはソーシャル・ディスタンシングで対応せねばなりませんから、そうなります。ですから、消費の代理変数とはいえ、サービスを含めた消費全体では物販を主とする小売販売額の商業販売統計よりもさらに大きなマイナスとなっている可能性があります。総務省統計局の家計調査にもっと信頼性あれば、ソチラも見たい気がします。第2に、生産が昨年2020年5月を底に回復を示している一方で、小売販売額は季節調整済みの系列で見て、3か月連続で前月比マイナスを続けているわけですから、まったく内需中心の回復からほど遠く、輸出頼みの景気回復になっている可能性があります。3月に入れば、総合的な経済指標であるGDP統計2次QEが内閣府から公表される予定となっていますが、まだ昨年2020年10~12月期の統計です。足元の今年2021年1~3月期のGDP統計の公表は5月まで待たねばならないとはいえ、我が国の景気はかなり複雑な動きを示し始めていますので、確かな統計でキチンと判断すべきと考えます。

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