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2021年3月 8日 (月)

景気動向指数と景気ウオッチャーに見る景気回復の兆しをいかに確実にするべきか?

本日、内閣府から1月の景気動向指数と2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気動向指数では、CI先行指数が前月から+1.4ポイント上昇して99.1を、また、CI一致指数も前月から+3.5ポイント上昇して91.7を、それぞれ記録しています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+10.1ポイント上昇の41.3を示し、先行き判断DIも+11.4ポイント上昇の51.3を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+6468億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

1月の景気一致指数、3.5ポイント上昇
内閣府が8日発表した1月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比3.5ポイント上昇の91.7となった。数カ月後の景気を示す先行指数は1.4ポイント上昇の99.1だった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「下げ止まり」から「上方への局面変化を示している」に変更した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。
2月の街角景気、現状判断指数は4カ月ぶり改善
内閣府が8日発表した2月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は41.3で、前の月に比べて10.1ポイント上昇(改善)した。改善は4カ月ぶり。家計動向、企業動向、雇用が改善した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は51.3で、11.4ポイント上昇した。改善は3カ月連続。家計動向、企業動向、雇用が改善した。
内閣府は基調判断を「新型コロナウイルス感染症の影響により、このところ弱まっている」から「新型コロナの影響による厳しさは残るものの、持ち直しの動きがみられる」に変更した。
1月の経常収支、6468億円の黒字 79カ月連続黒字
財務省が8日発表した1月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は6468億円の黒字だった。黒字は79カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆2296億円の黒字だった。
貿易収支は1301億円の赤字、第1次所得収支は1兆4666億円の黒字だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。意図的に短めの記事を選びはしたものの、統計を3種類並べると長くなるのは仕方ありません。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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景気動向指数のうち、CI一致指数についてもう少し詳しく見ると、繰り返しになりますが、前月からは+3.5ポイント上昇して91.7を記録し、3か月ぶりの上昇でした。CI一致指数の水準が90を上回るのは、最初の緊急事態宣言直前の2020年3月の90.0以来10か月ぶりです。さらに、後方移動平均でトレンドを見ると、3か月後方移動平均は+0.90ポイント上昇して、7か月連続の上昇、また、7か月後方移動平均も+2.17ポイント上昇し、3か月連続の上昇となっています。従って、「CIによる景気の基調判断」の基準に示されている通り、7か月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、プラス幅(1か月、2か月または3か月の累積)が1標準偏差分以上となり、かつ、当月の前月差の符号がプラス、の2条件を満たして、引用した記事にあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「下げ止まり」から「上方への局面変化」に上方修正しています。個別系列について、前月差へのプラスの寄与度の大きい順に見ると、有効求人倍率(除学卒)+0.67、鉱工業用生産財出荷指数+0.66、投資財出荷指数(除輸送機械)+0.64、生産指数(鉱工業)+0.59、耐久消費財出荷指数+0.53が+0.5を超えています。まだ、小売業と卸売業の商業販売額はともに+0.10以下のかなり小さな寄与度にとどまっています。他方、2月は2度めの緊急事態宣言が延長されていますが、同時に、医療従事者等のワクチン接種も始まっていることから、先週公表の消費者態度指数や本日公表の景気ウォッチャーに示された消費者マインドも上向いていることから、景気は徐々に回復基調を強める可能性が十分ある、と私は考えています。基調判断の「上方への局面変化」は、「事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す」と定義されていますので、順調に行けば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響による景気後退から脱して、景気の底がいつであったのか、の議論が今年中に決着されると期待しています。ちなみに、私のこのブログでは、2020年5月を景気の底に仮置しています。

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続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、景気動向指数のグラフと同じで、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。ということで、景気ウォッチャーの現状判断DIも先行き判断DIも、およそ+10ポイントの大きな幅でジャンプしました。いずれも、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのコンポーネントが前月から改善を示しています。前月からの改善幅をもう少し詳しく見ると、現状判断DIでは、特に、飲食関連が+16.5ポイント、サービス関連が+12.9ポイント、そして、小売関連が+10.0ポイントと、対人接触の大きなセクターで改善幅も大きくなっています。さらに、現状判断DIでは、家計動向関連よりもむしろ雇用関連の改善幅の方が大きくなっています。雇用が堅調であれば、所得面のサポートにもなりますし、マインド改善だけでなく所得のサポートがあれば、消費の改善に結びつく可能性が高まるものと私は考えています。
景気ウォッチャーの統計を少し離れますが、その意味で、景気回復をより確実かつ力強いものとするため、日本でも財政政策で消費を喚起する政策が必要であると私は考えています。米国では、バイデン政権の目玉となる1.9兆ドル規模の追加経済対策法案が上院で可決されています。米ドルで1.9兆ドルとなれば、日本円であれば200兆円を超えます。対策の一例として、Bloombergの記事Reutersの記事を見ると、年間所得75千ドル(カップルで150千ドル)未満の個人に1400ドルの直接給付するとか、9月まで失業保険給付の上乗せを継続するとかも含まれていて、ワクチン接種の広がりとともに米国経済の回復を強力にサポートするものと私は考えています。米国に比べて、我が国では一般国民に対するワクチン接種が一向に進んでいません。しかも、特定給付金は安倍内閣の1回きりで、菅内閣のもとでは「自助」ばかりが強調されていて、英国やドイツで実施された時限的な消費税率引下げや米国のような所得サポートなどは、まったく視野にも入らないようです。政策の質の違いを感じます。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性があります。少し前まで、COVID-19パンデミックの第3波による2番底の可能性も排除できない、と考えていたのですが、その可能性は世界的にはかなり低下しています。例えば、季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は7月統計から黒字に転じ、本日公表の1月統計でも貿易黒字は高い水準を維持しています。輸出が増加するとともに、国内景気の回復に伴って、輸入も増加し始める兆しが見え、日本だけでなく世界的に経済が好循環に入る可能性があると期待しています。その意味で、繰り返しになりますが、米国景気にフリーライドするだけではなく、日本でも大型の経済対策により景気回復を強力にサポートする段階に達しているように私は考えています。

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