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2021年3月20日 (土)

今週はクルーグマン教授の経済書をはじめとして新刊読書は計4冊!!!

今週の読書は、クルーグマン教授の経済書のほか、新書や文庫本の小説まで合わせて計4冊です。そろそろ、春休みも終わりますので、来週からもせっせと経済書を読みたいと思います。それから、ある人から私の読書量を問われたので、「新刊書で読書感想文を書いてブログにポストするのが年間で150冊から200冊くらい。そのほかに、エアロバイクを漕ぎながら読む文庫本が年100冊くらい。」と回答しましたところ、前者の方は記録が残りますので本格的に数えたいと思います。ということで、今年2021年に入ってからの結果は、1月21冊、2月17冊、3月は今までのところ本日分を入れて13冊となり、今年に入ってから合計51冊です。1~3月期で50冊強ですから、やっぱり年間200冊くらいかもしれません。なお、新刊読書ではない綾辻行人『深泥丘奇談・続々』と浅田次郎ほか『京都迷宮小路』はFacebookの「おすすめの本」と「本好きの会」などのグループでシェアしておきました。

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まず、ポール・クルーグマン『ゾンビとの論争』(早川書房) です。著者は、ご存じの通り、2008年にノーベル経済学賞を受賞したエコノミストです。英語の原題はであり、2020年の出版です。『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたコラムやブログを中心に、いくつかのテーマに分類して各セクションにエディトリアルのようなまとめの端書きをおいて取りまとめてあります。なお、翻訳は野村総研の山形浩生さんです。『ニューヨーク・タイムズ』紙のクルーグマン教授の連載は2000年から始まっているそうで、ブッシュ政権8年、オバマ政権8年、そして、トランプ政権4年、本書には収録されていませんが、バイデン政権が始まっていて、見事なくらいに共和党と民主党が交代しています。そして、クルーグマン教授は圧倒的に民主党支持です。というか、少なくともコラムやブログなどではその趣旨を展開しています。経済的には高所得者の減税を志向し、ユニバーサルな医療制度などに否定的な共和党政策を批判しまくっているのが本書です。およそ学識は天と地ほどの違いがあるものの、私と経済学の見地からの見方はよく似通っています。しかし、私の場合は何とか妥協点を見出して現在のネオリベ政策を変更させようとするのに対して、本書で示されたクルーグマン教授の舌鋒は止まるところを知りません。私なんぞの穏健派から見ればヤリ過ぎの観もあります。私なんぞは小心者ですし、大昔のコミンテルン流のディミトロフの統一戦線理論ではないですが、左側からジワジワと右側に支持を広げようとするんですが、クルーグマン教授は一刀両断に「アホ、バカ、マヌケ」で終わっているように見えます。大雑把にいって、分配まで市場に任せるネオリベ政策ではなく、キチンとケアすべきはケアするために政府が分配に一役買うリベラル、さらに、歴史的な流れを押し止めようとする保守ではなく、歴史をさらに一歩前に進めるような進歩派、というのが私の立ち位置です。加えて、イデオロギー的に宗教的・狂信的といえるほどかたくなな態度に終止するのではなく、科学的な知見を認めて柔軟に思考や態度を変更させることも必要です。かつて、今世紀初頭に我が国でリフレ派の経済学が受入れられなかったのも、こういった二分論法的な思考が関係していたのではないか、と私は考えています。ですから、現在のネオリベ政策の診断は尽きているわけで、実際にどのように政策変更、もちろん、必要によっては政権交代を含めての政策変更を成し遂げるのかが問題です。私は、実際の戦略は定評あるコンサルあたりに依頼するのも一案かと考えているのですが、リベラル・進歩派の仲間からは私のような柔軟すぎる見方はなかなか受入れてもらえません。最後の最後に、本書はかなりのボリュームです。一応、それなりに伝統ある大学の経済学部の教授職にあり、かつ、それなりの読書量を誇る私ですら、2日半かかって読了しています。ご参考まで。

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次に、原田ひ香『一橋桐子(76)の犯罪日記』(徳間書店) です。著者は、著書多数の小説家ながら、私はこの作品が初めてでした。タイトル通り、高齢女性が生活に困り始めて、犯罪に走って刑務所に入ろうと試みるというストーリーです。章別構成として、万引から始まって、紙幣贋造、闇金関与、詐欺、誘拐に最後は殺人まで、いろいろと凶悪犯罪を試みるのですが、すべてが上手く行かずに、結局は、周囲の人に支えられて幸福な老後を送る、というハッピーエンドになります。つまらない筋の運びと考える読者もいそうですし、私もそれを理解できなくもありませんが、最近の小説は深みがなくてやたらと心温まるストーリーが主流になった気がしますので、そういった小説を好きな人にはオススメです。私自身はビミョーなところです、というのは、私自身は前々からいわゆる青春小説が好きで、例えば、フィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』は別格としても、大学生の青春を取り上げたものとして、吉田修一でいえば『横道世之介』、三浦しをんはいろいろありますが、『風が強く吹いている』などなど、万城目学のデビュー作『鴨川ホルモー』、あるいは、高校生を主人公にしたものであれば、これまた、サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を別格としても、恩田陸の『夜のピクニック』とか、朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』、宮下奈都の『羊と鋼の森』なんかです。そして、振り返ってみると、小学生のころには『次郎物語』を読んだ記憶ある人も多いのではないでしょうか。その意味で、この作品はタイトル通りに70代半ばの高齢女性を主人公にしていて、私もとうとうその年齢に達したのかと觀念してしまいそうになりました。たぶん、そうなんでしょう。これから、我が国の高齢化とともに、こういった高齢者を主人公にした小説がヒットするようになるのかもしれません。でも、年齢に抗して『推し、燃ゆ』のような世界を楽しみたいと思います。でも、まだ読んでいなかったりします。

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次に、山竹伸二『ひとはなぜ「認められたい」のか』(ちくま新書) です。著者は、哲学・心理学の分野で批評活動を展開する批評家ということで、特に、ジャーナリストでもないし、ましてや研究者でもありません。本書の承認欲求という点では、私なんかのシロートはまずマズローの5段階を思い出しますし、本書でもチラリと触れています。現代日本の社会にそれほどネグレクトがいっぱいあるわけでもありませんし、私くらいの年齢に達すると他人様の評価も気にならないことはありませんが、我が道を行く方がラクですし、わがままをいうのは年寄りの特権と考えていたりします。ただ、もちろん、古典的なルース・ベネディクトの『菊と刀』において論じられたように、西洋的な内部からくる罪と日本的な外部からくる恥の文化的な特徴は昔からあるわけでしょうし、特に、現代日本では同調圧力が極めて強いわけですので、そういった評価や承認も生きていく上で必要性が高くなっているのは私でも理解できます。少し前には禁煙ファシズムという言葉もありましたし、昨年来のコロナ禍の中でマスクや咳エチケットなどの圧力が高まっていることは私のような鈍感な年寄にでもヒシヒシと感じられます。本書ではさまざまな角度から承認欲求を考えていますが、特に、存在の承認と行為の承認に分けて考察を進め、後者はともかく、前者の存在の承認は基本的人権の自由そのものという指摘は、そうかも知れないと思わせるものがあります。他方で、承認不安は自分自身に自信がないということの裏返しなわけで、他者とうまく付き合う一方で、自己の確立なども必要そうな気がします。最後に、著者はカウンセラーでも研究者でもなく、批評家ですので、解決策を本書に求めるのは間違っています。著者も解決策らしきものを提示してしまっていますが、あまりに一般的で適用可能性はかなり低いと考えるべきです。その点だけは注意が必要です。

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最後に、G.K.チェスタトン『知りすぎた男』(創元推理文庫) です。著者は、ミステリ好きなら知らない人はいないでしょう。ブラウン神父のシリーズで有名です。本書は、記者のハロルド・マーチをワトソン役とは少し違うものの相棒にして、上流社会の政治家ホーン・フィッシャが探偵を務める短編ミステリが8話収録されています。タイトルは収録順に、「標的の顔」、「消えたプリンス」、「少年の心」、「底なしの井戸」、「塀の穴」、「釣師のこだわり」、「一家の馬鹿息子」、「彫像の復讐」となっています。英国の総理大臣や閣僚クラスとも親交ある探偵で、英国上流社会の謎を解くんですが、もちろん、殺人事件も少なくありません。主として、政治や政治家に絡んだ事件が多い印象です。植民地統治論や小英国主義など、パクス・ブリタニカの世界で大英帝国を形成していたビクトリア時代が舞台です。チェスタトンといえば逆説的な謎解きもあるんですが、本書に収録された短編は、ミステリとしてはそれほど難解なものではなく、むしろ、文学や音楽などの上流社会らしい教養を楽しむ中身といえるかもしれません。ただ、繰り返しになりますが、政治や政治家が絡んだミステリですので、それなりに重厚という表現ではないにしても、シリアルな内容の謎となっています。ブラウン神父シリーズ以外のチェスタトンの作品としては、私はこれまでに『奇商クラブ』と『ポンド氏の逆説』くらいしか読んだことがなかったのですが、そういった政治とはほとんど関係のない市民階級のミステリとは、また違った味わいのある短編集です。好き嫌いは分かれるかもしれませんし、ミステリとしてはそれほどの秀作というわけではありませんが、文庫本で300ページほどのボリュームですので、時間つぶしにはもってこいです。

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