下方修正された昨年2020年10-12月期GDP統計速報2次QEをどう見るか?
本日、内閣府から昨年2020年10~12月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+2.8%、年率では+11.7%と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で大きなマイナスとなった4~6月期から、7~9月期に続いて2期連続のプラス成長とリバウンドを見せていますが、1次QEからはやや下方修正されました。他方、GDPの実額としては、COVID-19パンデミック前の一昨年2019年10~12月期の548.8兆円にまだ届かない541.6兆円の水準ですし、何よりも、今年2021年に入ってCOVID-19感染拡大第3波により、東京や大阪などに2度めの緊急事態宣言が出された影響もあって、エコノミストの間では1~3月期はマイナス成長が確実とみなされています。その意味で、まだまだ、本格的な回復には時間がかかり、不透明さも払拭されていない気がします。ワクチン接種がいつの時点で広がりを見せるか、気にかかるところです。まず、日経新聞のサイトから長い記事を引用すると以下の通りです。
20年10-12月期の実質GDP改定値、年率11.7%増 速報値より下振れ
内閣府が9日発表した2020年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比2.8%増、年率換算では11.7%増だった。2四半期連続で増えた。速報値(前期比3.0%増、年率12.7%増)から下方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比3.0%増、年率12.6%増と、速報値からやや下振れするとみられていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比2.3%増(速報値は2.5%増)、年率は9.6%増(同10.5%増)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比2.2%増(同2.2%増)、住宅投資は0.0%増(同0.1%増)、設備投資は4.3%増(同4.5%増)、公共投資は1.5%増(同1.3%増)だった。民間在庫の寄与度はマイナス0.6%分(同マイナス0.4%分)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス1.8%分(同プラス2.0%分)、輸出から輸入を引いた外需はプラス1.1%分(同プラス1.0%分)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス0.3%(同プラス0.2%)だった。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2019/10-12 | 2020/1-3 | 2020/4-6 | 2020/7-9 | 2020/10-12 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産 (GDP) | ▲1.8 | ▲0.6 | ▲8.3 | +5.3 | +3.0 | +2.8 |
民間消費 | ▲3.4 | ▲0.2 | ▲7.2 | +2.6 | +2.0 | +1.7 |
民間住宅 | ▲1.9 | ▲3.7 | +0.5 | ▲5.7 | +0.1 | +0.0 |
民間設備 | ▲4.5 | +1.4 | ▲5.9 | ▲2.4 | +4.5 | +4.3 |
民間在庫 * | (▲0.1) | (+0.1) | (+0.1) | (▲0.2) | (▲0.4) | (▲0.6) |
公的需要 | +0.5 | ▲0.2 | +0.6 | +2.5 | +1.8 | +1.7 |
内需寄与度 * | (▲2.5) | (▲0.2) | (▲5.2) | (+2.6) | (+2.0) | (+1.8) |
外需寄与度 * | (+0.6) | (▲0.4) | (▲3.1) | (+2.6) | (+1.0) | (+1.1) |
輸出 | +0.2 | ▲5.3 | ▲17.2 | +7.4 | +11.1 | +11.1 |
輸入 | ▲3.2 | ▲3.1 | +1.3 | ▲8.2 | +4.1 | +4.0 |
国内総所得 (GDI) | ▲1.9 | ▲0.5 | ▲7.3 | +5.2 | +3.0 | +2.7 |
国民総所得 (GNI) | ▲2.0 | ▲0.2 | ▲7.4 | +5.0 | +3.2 | +3.0 |
名目GDP | ▲1.2 | ▲0.5 | ▲7.9 | +5.5 | +2.5 | +2.3 |
雇用者報酬 | ▲0.2 | +0.3 | ▲3.6 | +0.6 | +0.8 | +0.8 |
GDPデフレータ | +1.5 | +0.9 | +1.4 | +1.2 | +0.2 | +0.3 |
内需デフレータ | +1.0 | +0.8 | ▲0.0 | +0.2 | ▲0.6 | ▲0.6 |
上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された昨年2020年10~12月期の最新データでは、前期比成長率が7~9月期に続いてプラス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち赤の消費と黒の純輸出が特に大きなプラス寄与を記録しています。

繰り返しになりますが、昨年2020年10~12月期のGDP成長率は、季節調整済みの系列で見て、前期比2.8%、年率11.7%となり、1次速報の前期比3.0%、年率12.7%からわずかに下方修正されています。大雑把にいって、内需の各需要項目がチビチビと下方修正された一方で、この内需各需要項目の伸びの鈍化を受けて輸入の伸びが下方修正されたため、外需については小幅に上方修正されています。ただ、内需需要項目の消費、設備投資をはじめとして下方修正されたものの、寄与度ベースでは在庫のマイナス寄与が大きく、というか、よりマイナスに寄与するように修正されています。成長率にはマイナス寄与が大きくあったわけですが、逆から見れば、昨年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに起因して積み上がった在庫の調整が進展した、と私は受け止めています。ですから、1次QEから2次QEへの修正幅が事前の予想通りに小幅であったこと併せて、それほど成長率の下方修正として悲観的になる必要はないものと受け止めています。実質GDPの実額を見ても、2019年10月からの消費税率引上げ直前の2019年7~9月期は559.1兆円に対して、2020年4~6月期には500.1兆円まで落ち込みましたが、2四半期かけて10~12月期には541.6兆円まで回復しましたので、▲59兆円の落ち込みのうち41.5兆円と70%を取り戻したことになります。まだ70%回復にとどまっている現段階で、問題は足元の1~3月期です。年始早々から、COVID-19パンデミックの第3波に伴い、都市部の一部都府県に緊急事態宣言が発せられて、首都圏の1都3県以外の関西圏などは2月いっぱいで解除されたものの、首都圏については2週間の延長がなされています。従って、足元1~3月期はマイナス成長が確実です。ただ、昨年2020年4月からの緊急事態宣言と比べて、飲食店の営業が時間短縮にとどまり全面休業ではなく、地域的にも限定されていることから、成長率もそれほど大きなマイナスにはならないものと多くのエコノミストは考えています。例えば、ニッセイ基礎研のリポートでは「2021年1-3月期は前期比年率▲6.0%と3四半期ぶりのマイナス成長を予想するが、落ち込み幅は前回の緊急事態宣言時を大きく下回るだろう。」と結論されています。同様に、大和総研のリポートでも1~3月期は年率▲5.1%のマイナス成長と見込んでいます。
すべてではありませんが、ワクチン接種の遅れが人的接触を必要とするセクターの消費の抑制要因のひとつとなっています。ワクチン接種の遅れを取り戻し、回復を確かなものとするために、米国並みの200兆円とはいわないまでも、私は財政による家計の所得へのサポートが必要と考えています。
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