法人企業統計は企業部門が最悪期を脱した可能性を示唆し、も下げ止まりから改善の可能性!!!
本日、財務省から昨年2020年10~12月期の法人企業統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。法人企業統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は6四半期連続の減収で前年同期比▲4.5%減の332兆903億円、経常利益も7四半期連続の減益で▲0.7%減の18兆4505億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで▲4.8%減の11兆761億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比▲1.2%減の11兆4247億円となっています。加えて、雇用の方は、失業率は前月から0.1%ポイント改善して2.9%、有効求人倍率は前月から0.05ポイント改善して1.10倍と、徐々に下げ止まりないし改善を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
全産業経常利益10-12月0.7%減 製造業10期ぶりプラス
財務省が2日発表した2020年10~12月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の経常利益は前年同期比0.7%減の18兆4505億円だった。7~9月期の28.4%減から減少幅が縮小した。製造業は21.9%増の7兆1837億円で、10期ぶりにプラスに転じた。自動車などの輸送用機械や生産用機械が好調だった。
自動車は国内での販売が特に伸びた。生産用機械は国内外での建設機械などの販売が回復したという。1年前の19年10~12月には米中貿易摩擦や大型台風の影響で製造業の経常利益が落ち込んだ。20年10~12月の回復は「前年が低かったという影響もある」(財務省)という。
非製造業の経常利益は11.2%減の11兆2668億円だった。前期の29.1%減から減少幅を縮めた。新型コロナウイルス禍で打撃を受ける運輸業・郵便業やサービス業が大きな減益となる一方、卸売業・小売業や建設業が全体を押し上げた。小売業では在宅需要の高まりで家電の販売が好調だった。
財務省は経常利益が大幅に回復したことについて「業種ごとにばらつきがある」と指摘した上で「総じて言えば持ち直してきている」と評価した。
全産業の売上高は4.5%減の332兆903億円、設備投資は4.8%減の11兆761億円と、それぞれ7~9月期から下げ幅を縮小した。設備投資は製造業が8.5%減と落ち込みが大きい。全体を押し下げた食料品や電気機械などで前年度の大型投資の反動が出たという。
1月の失業率2.9%、有効求人倍率1.10倍 2カ月ぶり改善
総務省が2日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は2.9%と前月に比べ0.1ポイント低下した。厚生労働省が同日発表した1月の有効求人倍率(同)は1.10倍で前月から0.05㌽上昇した。いずれも2020年11月以来、2カ月ぶりに改善した。緊急事態宣言による雇用情勢への影響は1月時点では見極めづらく、改善が続くかは見通せない。
1月の完全失業者は前年同月比で38万人増加した。正社員は36万人増え、8カ月連続で増加した一方、非正規は91万人減り、11カ月連続で減少した。非正規の厳しい雇用情勢が続いている。
昨年末からの感染の急拡大を受け、1月8日には緊急事態宣言が再び発動した。1月の休業者は244万人で前月から42万人増えた。休業者は597万人と過去最高に増えた昨年4月と比較すると大幅な拡大はみられなかった。昨年4月の緊急事態宣言と比較すると営業制限の対象業種や地域が絞られているためとみられる。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。1月は企業からの有効求人が前月から3.1%増え、働く意欲のある有効求職者は2.3%減った。厚労省の担当者は「緊急事態宣言の影響は遅れてあらわれる可能性があり、2月や3月の雇用情勢は慎重にみている」と語る。
雇用の先行指標となる新規求人(原数値)は前年同月比で11.6%減った。減り幅を産業別にみると、宿泊・飲食サービス業(37.5%減)や生活関連サービス・娯楽業(26.2%減)、卸売業・小売業(17.2%減)が大きかった。
雇用情勢は地域や産業によってばらつきは大きい。就業地別の有効求人倍率は最高の福井県が1.64倍で、最低の沖縄県は0.77倍だった。東京都は0.91倍だった。
産業別の就業者数を対前年の増減でみると、宿泊・飲食サービス業(39万人減)や卸売・小売業(22万人減)は減少した一方、医療・福祉(29万人増)や建設業(22万人増)は増えた。
新型コロナに関連した解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は2月末時点で累計9万人を超えた。厚労省が全国の労働局やハローワークを通じて集計した。
やたらと長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月ないし4~6月期を直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

法人企業統計については、メディアでは季節調整していない原系列の統計の前年同期比で報じられることが多い一方で、私はGDP統計との関係でどうしても季節調整済みの系列で見る場合が多いんですが、上のグラフでも明らかな通り、企業部門では売上高や経常利益については完全に最悪期を脱しているように見えます。加えて、売上高も経常利益も水準として決して低くありません。特に経常利益はほぼ新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前に水準を取り戻しています。すなわち、COVID-19パンデミック前の2019年10~12月期の経常利益は17.6兆円でしたが、本日公表の2020年10~12月期には17.3兆円まで回復を見せています。もちろん、回復の方向にあることは見ての通りです。その一方で、設備投資は相変わらず低迷したままです。さらに、今日のところは後に雇用統計が控えていますので、いつもの労働分配率や利益剰余金のグラフは省略していますが、利益剰余金については、COVID-19パンデミック前の2019年10~12月期のピークから、昨年2020年1~3月期、4~6月期、7~9月期と3四半期連続で減少を見た後、直近でデータが利用可能な2020年10~12月期には回復に転じています。当然ながら、人的接触の大きな宿泊や飲食といったCOVID-19の感染拡大のために影響大きいセクターはあるわけで、企業部門すべてが回復というわけではないのは十分に承知していますが、先進国の中でもワクチン接種が飛び抜けて遅れているわけですので、もう一度、政策的な支援の重点を消費者=国民に向けることも大いに考えるべきではなかろうか、という気がしています。

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについては、失業率が3.1%だった一方で、有効求人倍率は1.03倍でしたので、昨年2020年の暮からのCOVID-19パンデミック拡大と今年2021年1月からの緊急事態宣言で、いずれも横ばいないし小幅の悪化を見込んでいたわけですが、実績は市場の事前コンセンサスとは逆に雇用改善と出たわけですから、それなりに雇用は底堅い、と私は認識しています。人口減少の経済的影響がまだ残っている可能性があるわけです。ただし、失業率の関係では、失業者が12月の210万人から1月には203万人に▲7万人減少している一方で、引用した記事にもあるように、休業者は逆に+42万人増加しています。特に、対人接触の多い宿泊業、飲食サービス業では休業者が+16万人増、卸売業、小売業でも+5万人増などと、全体の+42万人増のうちの半分がこの2業種となっています。有効求人倍率の方でも、全国レベルでは1倍を上回っていますが、都道府県別では1倍を割り込んでいる地域も少なくなく、例えば、これも引用した記事にもある通り、就業地ベースで東京都ですら1倍を割っており、東京都をはじめとする1都3県では軒並み1倍を下回っています。近畿圏でも、兵庫県は1倍を超えていますが、京都府と大阪府ではまだ1倍を下回ったままです。このように、全体として雇用は堅調ですが、産業別・地域別では改善の足並みはバラバラです。
| 固定リンク
コメント